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Botter自主ゼミノート 6.5 イノベーション過程

2023/02/21に公開

やること

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を読んで、確率微分方程式による最適化問題を解けるようになることです。

これまでのBotter自主ゼミノート

Botter自主ゼミノート 1.2 確定システムの制御の回顧

Botter自主ゼミノート 2.1 確率過程とは?, 2.2 確率過程の数学的表現

Botter自主ゼミノート 1.2 数式導出

Botter自主ゼミノート 2.3 確率モーメント

Botter自主ゼミノート 2.4 確率過程の分類

Botter自主ゼミノート 2.5 エルゴード性

Botter自主ゼミノート 2.6 確率過程の周波数表現

Botter自主ゼミノート 2.7 マルコフ過程

Botter自主ゼミノート 2.8 正規型確率過程

Botter自主ゼミノート 2.9 ウィーナ過程(1)

Botter自主ゼミノート 2.9 ウィーナ過程(2)

Botter自主ゼミノート 2.10 白色雑音

Botter自主ゼミノート 3.1, 3.2 確率変数列の収束

Botter自主ゼミノート 3.3 確率過程の連続性

Botter自主ゼミノート 3.4 自乗平均微分

Botter自主ゼミノート 3.5 自乗平均積分

Botter自主ゼミノート 4.1 確率微分方程式とは?

Botter自主ゼミノート 4.2 確率積分

Botter自主ゼミノート 4.2 確率積分 例題4.1

Botter自主ゼミノート 4.3 確率微分方程式

Botter自主ゼミノート 4.4 伊藤の確率微分演算

Botter自主ゼミノート 4.5 拡散過程

Botter自主ゼミノート 4.6 確率密度関数の時間進化 - コルモゴロフ方程式

Botter自主ゼミノート 6.1 動的システムの推定とは?

Botter自主ゼミノート 6.2 条件付き確率密度関数の時間進化

Botter自主ゼミノート 6.3 モーメント関数の時間進化

Botter自主ゼミノート 6.4 カルマンフィルタ

6.5 イノベーション過程

カルマンフィルタの修正項の意味

式(6.38)で表されるカルマンフィルタには\{dy(t)-H(t)\hat{x}(t)dt\}、式(6.26)で表されるクスナー方程式には\{dy(t)-\hat{h}(t,x)dt\}という観測データによる修正項があります。教科書ではこれらの項がどんな意味を持つかを解説しています。

まず、

d\nu(t) = dy(t)-H(t)\hat{x}(t|t)dt, \quad \nu(t_0)=0 \tag{6.40}

によって定義される線形過程について考えてみます。この解は以下のようになります。

\begin{aligned} \nu(t) &= \nu(s) + \int_s^t dy(\tau) - \int_s^t H(\tau)\hat{x}(t|t) d\tau \\ &= \nu(s) + \int_s^t H(\tau)x(\tau) d\tau + \int_s^t R(\tau)dv(\tau) - \int_s^t H(\tau)\hat{x}(t|t) d\tau \\ &= \nu(s) + \int_s^t H(\tau)[x(\tau) - \hat{x}(\tau)] d\tau + \int_s^t R(\tau)dv(\tau) \tag{6.41}\\ \end{aligned}

ここで\mathcal{E}\{\cdot|\mathcal{Y}_s\} = \mathcal{E}\{\mathcal{E}\{\cdot|\mathcal{Y}_\tau\}|\mathcal{Y}_s\} \: (s < \tau)を利用して

\begin{aligned} \mathcal{E}\{\nu(t)|\mathcal{Y}_s\} &= \nu(s) + \int_s^t H(\tau)\mathcal{E}\{\mathcal{E}\{x(\tau)-\hat{x}(\tau)|\mathcal{Y}_\tau\} | \mathcal{Y}_s\} d\tau \\ &= \nu(s) + \int_s^t H(\tau)\mathcal{E}\{0|\mathcal{Y}_\tau\} | \mathcal{Y}_s\} d\tau \\ &= \nu(s) \end{aligned}

となるので、\nu(t)過程は\mathcal{Y}_tに対してマルチンゲールであることがわかります。さらに

\begin{aligned} \mathcal{E}\{d\nu(t)\} &= \mathcal{E}\{ \mathcal{E}\{ d\nu(t)|\mathcal{Y}_t\} \} \\ &= \mathcal{E}\{ \mathcal{E}\{ H(t)[x(t)-\hat{x}(t|t)]dt + R(t)dv(t)|\mathcal{Y}_t\} \} \\ &= 0 \end{aligned}
\mathcal{E}\{d\nu(t)[d\nu(t)]^T\} = R(T)R^T(t)dt

が成り立ちます。

さらに、\nu(t)過程は正規性過程になるので、結局式(6.40)で定義される\nu(t)過程は共分散マトリクスR(t)R^T(t)を持つウィーナ過程ということになります。この結果から式(6.38)のカルマン方程式は以下のような伊藤確率微分方程式に書き換えることができます。

d\hat{x}(t|t) = A(t)\hat{x}(t)dt+K(t)d\nu(t) \tag{6.45}
K(t) = P(t|t)H^T(t)\{R(t)R^T(t)\}^{-1}

この\nu(t)過程は、ウィーナ過程であるにも関わらず、式(6.41)で書かれている通りその中には観測情報y(t)が入っています。このような過程をイノベーション過程と呼びます。イノベーション過程の重要性は、それが観測過程と等価であることです。

Discussion