【Snowflake Summit 2025】Platform Keynoteまとめ速報
はじめまして。ナウキャストでデータエンジニアをしている高橋です。
Snowflake Summit 2025に参加してきました。ここではPlatform Keynoteで発表のあった内容をまとめていこうと思います。
Topics
Platform Keynoteでは以下のようなテーマに分けて、新規機能や機能強化の発表がされました。
今回は、テーマ別に発表された機能について、すべてはまとめられないのでいくつか抜粋して紹介します!
- BETTER ECONOMICS(コストマネジメント)
- GOVERN ALL DATA(データガバナンス・セキュリティ強化)
- INTEGRATE ALL TYPE OF DATA(データ統合・データパイプライン)
- DELIVER MORE BUSINESS IMPACT(ビジネスインパクト)
- GET FASTER INSIGHTS(AIを使った分析支援)
- LEVERAGE AI WITH OUR DATA(セマンティックモデル機能)
- ACCELERATE BUSINESS GROWTH WITH AI AGENTS(AI Agent機能)
以下に、Snowflakeが出しているSummitのrelease-noteのまとめもありますので、併せてご覧ください。
BETTER ECONOMICS(コストマネジメント)
Spend Anomalies(Public Preview)
過去の消費量に基づいて支出が予測から外れるコスト異常を自動的に検出して通知してくれる機能です。これまで、カスタムでコーディングしてコスト監視していたものが簡素化される嬉しい機能だと思います。
Adaptive Compute(Private Preview)
Snowflakeが適切なクラスタサイズ、クラスタ数、ジョブの自動停止/再開期間を自動選択してくれるので、ユーザーは、ウェアハウスのサイズや同時実行設定、マルチクラスタウェアハウス設定を意識せずに最小限の設定で稼働してくれるようです。ウェアハウスのいろんな設定を全部最小限にSnowflake側で調整してくれるので、Warehouseの設定を迷わなくて良くなるのが嬉しいですね。
以下で、弊社のメンバーが概要を解説をしてくれているので、よかったらご覧ください
Snowpipeの新しい料金モデル
これまでの複雑な料金体系(ファイル数 × 処理時間による課金)を見直し、取り込むデータ量に基づく、シンプルで見積もりのしやすい料金モデルが導入されたとのことです。ケースによっては、約50%のコスト削減が見込まれるとか。(Snowpipe StreamingとSnowpipe Auto-Ingestの両方に適用)
GOVERN ALL DATA(データガバナンス・セキュリティ強化)
Automatic propagation of user-defined tags(GA)
機密データの自動分類やタグ付け、機密データインサイト、データコピー時に自動でタグを伝播する機能です。オブジェクトのタグが、ソースオブジェクトからターゲットオブジェクトに自動に自動で伝播される構成になりました。タグの管理が簡素化され、行アクセスポリシーや列マスキングポリシーなどのデータ保護ポリシーが一貫して適用されるようになりました。
Role-Based Access Control for Cortex LLM Models(GA)
Snowflake Cortexでのモデルアクセスを管理するCortex LLMモデル向けのロールベースアクセス制御 (RBAC) を発表しました。
これまでは、Snowflake側で用意されたdatabase-role(SNOWFLAKE.COPILOT_USER,
SNOWFLAKE.CORTEX_USER)を利用して権限管理を行うしかなかったですが、これからは細かな権限管理ができるようになりそうです。
External Metadata Management(Private Preview)
Snowflake外部のデータソース(S3, Google Cloud Storage, Azure Blob Storageなど)やBIツール(Power BI、Tableauなど)のダッシュボードやレポートのメタデータをSnowflake Horizonで一元的に管理することができる機能です。
copilot for horizon catalog(Private View)
自然言語でガバナンスに関する質問に回答してくれる機能(ChatBotみたいな)です。例えば、「保護されていないオブジェクトは?」や「タグが不足しているオブジェクトは?」みたいな質問を投げかけることができると紹介されていました。
また、Horizon Catalogのクエリだけでなく、前述のExternal Metadata Managementを利用して、外部データソース(S3, Google Cloud Storage, Azure Blob Storageなど)やBIツール(Power BI、Tableauなど)のダッシュボードやレポートのメタデータも収集し、BIツールへの出力もサポートしているそうです。
その他認証機能のアップデート
- 多要素認証(MFA)の強制
- PAT(Programmatic Access Token)の導入(GA)
https://docs.snowflake.com/en/user-guide/programmatic-access-tokens - 認証アプリのサポート拡充(GA)
https://docs.snowflake.com/en/user-guide/security-mfa-second-factor - ダークウェブでの認証情報検出時の通知(GA)
https://docs.snowflake.com/en/user-guide/leaked-password-protection - 不正アクセス元からのアクセス検知
- 国防総省(DoD)IL5認定など、多数の新規認証を取得
https://www.snowflake.com/en/news/press-releases/snowflake-achieves-department-of-defense-il5-authorization/
以下に、弊社メンバーが、Summitのセキュリティ関連のセッションについてまとめていますので、併せてご覧ください。
INTEGRATE ALL TYPE OF DATA(データ統合・データパイプライン)
Snowflake OpenFlow(一部GA)
構造化・非構造化データを含む様々なソース(PostgreSQL, SharePoint, Google Drive, Slackなど)から別の対向システムにデータ連携を行うデータフローを作成できるそうです。
加えて、Oracleとのパートナーシップにより、XStream APIを介したOracleからのほぼリアルタイムなCDCもサポートされており、Snowflakeマネージドのリソースの上か顧客のVPC内で実行することができると発表されました。
Snowpipe Streamingの強化(Public Preview)
Snowpipe Streamingの新しい高性能アーキテクチャが発表されました。このアーキテクチャは、ほぼリアルタイムのインサイトを必要とするようなデータパイプライン向けに設計されていて、リアルタイム取り込みにおけるスループット(最大10GB/s、4.5秒の取り込みレイテンシ)、効率性、柔軟性、のパフォーマンスが強化されたそうです。
dbt Projects in Snowflake(Public Preview)
dbtプロジェクトをSnowflakeネイティブで開発・テスト・デプロイ可能になることが発表されました!
Snowsight上で、Git連携したワークスペースを作成し、ワークスペース上で、dbt compile
、dbt run
、dbt test
などのdbtコマンドを実行することができる感じですね。下記のYoutubeを見ると、スケジュール機能とDAGワークフローを組むこともできそうでした。
また、dbt Labsとのパートナーシップにより、次期バージョンのdbt FusionエンジンもSnowflake上で利用可能になる予定だそうです。
以下に、簡単にデモンストレーションの紹介をしていますので、よかったらご覧ください。
DELIVER MORE BUSINESS IMPACT(ビジネスインパクト)
Zero-ETL Data Sharing (SnowGrid)
これはSnowflakeが以前から提供されているデータ共有機能のことで、セッションとしてはFiserv社とPayPal社の事例登壇でした。Snowflakeのデータ共有機能を使えばデータコピーが不要であり、処理時間や運用効率が改善されるという内容でしたが、FiservとPayPalという金融・決済業界の大手企業によるデータ共有の事例発表ということで、「Snowflakeのデータ共有機能は安全」というメッセージを感じました。
よかったら弊社メンバーのSnowflake Shareの記事も併せてご覧ください
Snowflake Postgres
純粋なトランザクションストレージを提供するマネージドなPostgreSQLサービスがSnowflakeから提供されるとのこと。ちょうどこのPlatform Keynoteの前日にCrunchy Data社の買収ニュースもあって、話題になってましたね!
近日提供予定とのことで情報のアップデートが楽しみです。
Snow Convert AI
レガシーシステムからSnowflakeにデータとコードの移行を支援するツール「Snow Convert」が無料で利用可能になりました。
また、Snow Convert AIという新機能も発表され、AIによって移行元データベースと移行先のSnowflakeが同じ振る舞いをするか、という検証作業を支援してくれるようになるとのことです。これまでのSnow Convertがデータとコードの「移動」に主眼を置いていたのに対し、Snow Convert AIは移行後の「正確性の担保」や「検証作業の効率化」が可能になりそうです!
いかに弊社メンバーがSnow Convert AIについてまとめているので、併せてご覧ください
GET FASTER INSIGHTS(AIを使った分析支援)
Gen 2 Warehouses(GA)
こちらは先日発表があった次世代版の仮想ウェアハウスですね。
より高速なハードウェアとソフトウェア最適化により、従来の仮想ウェアハウスと比較して2.1倍、Sparkと比較して1.9倍のパフォーマンス向上を実現しているということです。
Data Science Agent(Private Preview)
機械学習(ML)パイプラインの構築を支援するエージェント機能で、近日提供予定ということでした。具体的な機能の紹介まではありませんでしたが、データサイエンティストやMLエンジニアによるアイデア出しから、モデルの本番化までの一連のプロセスを支援する機能のようです。
Cortex AISQL(Public Preview)
Canva社のMoe Kiss氏が登壇し、その中で発表されました。公式ドキュメントも公開されています。
SQLを主要なスキルとするユーザーが、特別なAIの専門知識なしに、自然言語に近い感覚で高度なAI処理をSQLクエリ内に直接記述して実行できる機能です。
テキストだけでなく画像や音声といったマルチモーダルデータに対応しており、新しいファイルタイプも導入され、外部・内部ストレージの非構造化データへの参照をテーブルに格納できるようになります。
セッション中のデモでは、顧客からの苦情(テキスト、画像、音声)をCortex AISQLで分析し、内部のソリューションライブラリと意味的に結合(AI Semantic Join)、月ごとの苦情傾向をAIで集約する様子が示されました。
弊社メンバーがCortex AISQLについてもまとめてくれたので、よかったらご覧ください!
LEVERAGE AI WITH OUR DATA(セマンティックモデル機能)
AI、特にLLMの活用においては、「データがAIに対応できていない」という課題がよく出てきますが、データに意味的なコンテキストを付与し、セキュアにAIを活用できる機能が紹介されました。
Semantic Views(GA), Semantic SQL(Public Preview)
データに関するビジネス的なコンテキスト(メトリクス、ディメンション、定義など)を物理スキーマと紐付けてキャプチャするビューとして、Semantics Viewsという機能が発表されました。
さらにそのSemantic Viewに対して、ディメンションやメトリクスをSQLクエリの中でコンテキストとして指定できるSQL構文が発表されました(Semantic SQL)。BIユースケースとAIユースケースの両方で同じSemantic Viewを利用可能ということで、人間にとってもAIにとってもデータの一貫した理解を促進できるようになりそうです!
Cortex Knowledge Extensions (GA)
ベクトル化され、検索可能な状態になった非構造化データを、Cortex Search経由でクエリ可能にする機能です。USA Today, Associated Press, Washington Postなどのニュースプロバイダーが、Marketplace上で検索可能なデータセットを提供します。
実はPlatform Keynoteの直前に、stackoverflowから以下のような発表がありました。幅広い領域のデータがCortex Knowledge Extensionsとして提供され、SnowflakeのAIエージェント機能がさらに力を発揮しそうですね!
ACCELERATE BUSINESS GROWTH WITH AI AGENTS(AI Agent機能)
Cortex Agents(GA)
Cortex Analyst(構造化データ向け)、Cortex Search(非構造化データ向け)をバックエンドとして、質問応答のためのオーケストレーションと推論を行うエージェントです。
この機能自体は今年の2月に発表されたもので、公式ドキュメントもすでに存在します。
Microsoft Teamsとの連携(Microsoft Teamsのインターフェースからの利用)も発表され、今後2-3週間で利用可能になるとのことでした!
Marketplaceでの生成AIアプリ(Private Preview)
多数のパートナーが、Cortex Agentsを活用した生成AIアプリケーションをMarketplaceに提供し始めているということが語られていました。
セッションの中で、Cortex AIを活用して会話型AIインターフェースを製品に組み込んだ、Luminate社(音楽業界向け分析プラットフォーム)の事例ビデオも紹介されました。厳密にはMarketplaceの事例ではありませんが、Snowflake上で生成AIを活用したアプリケーションが構築され、ビジネス価値を生み出している好例ということで、このようなユースケースがMarketplaceアプリにも展開されていくかもしれません!
Snowflake Intelligence(Private Preview)
Snowflake Intelligenceは、エンドユーザー向けのファーストパーティAIエクスペリエンスであり、現在はプライベートプレビュー、近日中にパブリックプレビューになると発表がありました!
高度な推論能力を持つエージェント機能で、セッション中のデモでは、音楽フェスティバルの運営を想定し、チケット販売トレンドの分析(Cortex Analyst利用)、契約書情報(SharePoint連携、Cortex Search利用)の取得、販売急増の原因究明(複数データソース横断分析、リアルタイムニュース連携(USA Today/Gannett)、マーケティングデータ参照)、そしてGmail連携によるアクション実行までを、自然言語の問い合わせで実現していました!
また、前述のSemantic Viewがこの会話の基盤となっていることも言及され、今回発表された機能たちが深く関わり合っているということがよく分かりました。
弊社メンバーがSnowflake Inteligenceの概要をまとめてくれたので、よかったらご覧ください!
Snowflake Copilot inline(Public Preview)
こちらは最後のサプライズ枠で発表された新機能です!(去年のこの枠はダークモードでしたね笑)発表後に公式ドキュメントも公開されました。
現場ではChristian Kleinerman氏によるライブデモが行われました。動きとしてはコーディングツールのCursorと同じようなイメージで、自然言語で問い合わせるとSQLクエリが生成・修正されて、その変更結果を人間がapplyするかどうかを選択できる感じでした。
非常に開発者体験が良さそうで、私も早く試したくなりました!最後のメッセージもオシャレな演出でしたね。
Summary
今回のPlatform Keynoteをざっっくりまとめると以下のような感じでした
-
コスト最適化とガバナンスの強化
- Adaptive ComputeやSpend Anomaliesなど、コスト管理の自動化・最適化
- データガバナンスとセキュリティの強化(タグの自動伝播、RBAC強化など)
-
データ統合基盤としての進化
- Snowflake OpenFlowによる包括的なデータ統合
- dbt Projects in Snowflakeによる開発効率の向上
- Snowflake Postgresの提供によるOLTP領域への進出
-
AIファーストな機能拡充
- Cortex AISQL、Semantic Views/SQLによるAIとデータの橋渡し
- Data Science Agent、Cortex Agentsなど、AIを活用した開発・分析支援
- Snowflake Intelligence、Copilot inlineによる直感的なユーザー体験
特に印象的だったのは、AIに関する機能が単なる追加機能ではなく、データガバナンスやセマンティックモデルと深く結びついていて、企業のAIを利用したデータ活用をまるっとone platformで完結するような新機能が増えていたように感じました。
また、Oracleとのパートナーシップやdbt Labsとの連携など、エコシステムの拡大も着実に進んでいて、特にdbt Projects in Snowflakeは、弊社でもdbt-coreを利用しているため興味深い内容でした。
以下に私が所属しているナウキャストのSnowflake Summit 2025参加記一覧をまとめておりますので、よかったらご参照ください
Discussion