[Snowflake Summit2025 参加記] Snowflake IntelligenceとNo-code AgenticAI
はじめに
こんにちは。ナウキャストでデータエンジニアをしているTakumiです。
2025年6月2日〜6月5日まで、Snowflake Summit 2025が開催されています。
2日目のPlatform Keynoteで言及されたSnowflake Intelligence、衝撃でしたね!その後にWhat's New Sessionにて、Product ManagerであるJeffから詳細の説明を受けたのでその内容をまとめたいと思います。
講演の基本情報
講演タイトル
Whats New: Snowflake Intelligence and No-Code Agentic AI
スピーカー
Jeff Hollan - Director of Product, Snowflake Intelligence & Agents, Snowflake
KP (KBI) - Principal Architect / Partner, KBI
講演日時
2025-06-03 13:00–13:45 (現地時間)
Snowflake Intelligence
- データとLLMの安全な接続
- 自社のデータを使ったより発展的な分析
- Agentic AIをノーコードによる構築
の3つを実現する統合プラットフォームです。
Snowflake AI Applications Frameworkの中でユーザーが触るInterfaceの位置付け(図中ではApplication)としています。
最大の特徴は、ノーコード でエージェントを構築し、Snowflake内外問わず様々なデータソースを活用できる点にあります。
Opening Keynoteでも言及があった Easy&Simple を体現しているサービスです。
Snowflake Intelligence へのアクセスはまだ全ての顧客に開かれていない状態。実際にアクセスすると以下のような画面が出てきました。(2025年6月5日現在)
Agentic AIのコア能力
Snowflake Intelligenceで構築されるエージェントには、以下の能力が組み込まれています。
- 計画機能 (Planning): 複雑なクエリを複数ステップに分解し実行計画を立てる
- ツール利用機能 (Tool Use): Cortex Search、Text-to-SQL、チャート生成、SQL実行など多様なツールを活用
- Reflection機能: エージェント自身が能力や限界を理解し、適切な回答範囲を認識
Tool Use で使われる既存のツールとして
- File Upload: ファイルを会話に活用
- Deep Analysis: 難易度の高い質問に答える手がかりを探索
- Web Search: エージェントの知識をインターネット上の情報で拡張(※提供予定)
があるため、自身のデータを用いた分析の実行、資料作成についてはSnowflake Intelligenceのみで完結します。
Snowflake Intelligenceで構築するAgentを構成する要素
コンポーネント | 役割 | キーポイント |
---|---|---|
Cortex Analyst | 構造化データに対するText‑to‑SQL | 業界最先端の精度。組織固有のビジネスセマンティクスを理解し、Semantic Viewと連携して業務語彙(例: profit = revenue)を解決 |
Semantic View | ビジネス文脈の管理レイヤ | ビジネス定義、同義語、検証済みクエリを一元管理。Autopilotで既存ダッシュボードやクエリ履歴から自動生成・継続最適化 |
Cortex Search | 非構造化データ検索 | 埋め込みモデルとキーワード検索を組み合わせたハイブリッド検索 |
Observability | 品質管理と信頼性確保 | 関連性スコア、完全性(Roundedness)スコア、エージェントの思考過程可視化、検証済みクエリの可視化 |
CustomTools | 顧客ごとに独自のツールを実装可能 | StoredProcedureで対応している言語であれば、どの言語で書いてもCustomToolとしてAgentに導入可能 |
データ、エージェント間で一貫したセキュリティ
Snowflake Intelligenceにおいては、「誰が・何を」 見ることができるかをエージェント層とデータ層の両面から担保しています。
具体的には、以下の3点においてセキュリティ管理を実現できます。
- エージェントのObservabilityを制御
どのエージェントがどのデータを参照できるかを、Snowflakeの既存RBAC、Row Access Policy適用することで管理 - アクセス権限の継承
既存のRBACをそのまま適用できるので、エージェント用のロール作成、追加設定なし - 非構造化データの検索結果表示をユーザーIDごとに制限 (Private Preview)
構造化データにおける制限と同様に非構造化データについても検索結果表示を制限
LLMOpsを回すための機能
LLMの改善サイクルを回す上で、AIの可観測性(Observability) は非常に重要な要素です。
Snowflakeは2024年にTrue Eraを買収していたのでいつかくるとは思っていましたが、Agent構築機能と合わせて機能発表となりました。
具体的には、以下のような機能を通じて観測性が実現されています。
- エージェントのパフォーマンスに関する要素を可視化
- 関連性(Relevance): 質問に対する回答や、質問のために取得されたデータの関連度を定量化
- 完全性(Roundedness): エージェントが探して見つけたデータに基づいているか、それとも独自のテキストを作成しているかを示す指標
- ドリフト(Drifting) 発生箇所を検出
-
エージェントの思考プロセス(train of thoughts) を追跡可能
3つの観点からエージェントが特定の結果に至ったプロセスを確認できる- 正しいデータソースに行ったか?
- 正しいデータを取得したか?
- データを得た後に正しい回答を得たか?
No‑Code Agentic AI
Snowflake Intelligenceは、 コードを書かずにエージェント(Cortex Agent)を構築 できます。
この機能で構成されるエージェントは5つの柱で構成されます。
- Orchestration – マルチステップ計画・分解・リライト
- Tool Use – Analyst / Search に加え Web Search や Custom Tool を利用
- Reflection – 自己評価と誤り訂正
- Memory – スレッド管理と Event Table 保存
- Monitor – Feedback 収集、LLM as Judge、可観測性メトリクス
推奨サイズ: 1 エージェント あたり 15〜20 テーブルが推奨です。(Jeff談)
GUI ワークフロー
セッション内で行われたデモでは、以下のワークフローに従って数分でエージェントを構築していました。
前提
- 使用するSemanticView (Semantic Model)がすでに構築されていること
- データソース選択 – Semantic View と Unstructured Service をプルダウンで追加
- オプション設定 – Web Search 有効化 / 使用モデル / カスタムプロンプト
- アクセス制御 – Snowflake RBAC・Row Access Policy をそのまま継承
- デプロイ – クリック 1 つで組織内に公開可能
コスト
ベストプラクティス
Snowfake intelligenceを活用する上でのベストプラクティスについても言及されました。
Snowflake Intelligence向けのベストプラクティスではあるものの、LLMアプリの運用にも適用できるような内容となっていました。
# | ベストプラクティス | 目的/効果 |
---|---|---|
1 | ビジネスオーナー × データオーナーのタッグ | 要件(価値)とデータ品質を両立させ、意思決定を迅速化 |
2 | Start Small ─ 機能・部門を 1 つに絞って実装 → 検証 → 改善 | 早期リリースでフィードバックを獲得し、横展開のリスクを最小化 |
3 | Semantic Model を磨く | コンテキスト追加・同義語定義を強化し、回答精度を向上 |
4 | "Bigger ≠ Better" ─ Semantic View を分割管理 | 小さな View 群の方がエージェントが適切なデータセットを選択しやすく、保守も容易 |
5 | Golden Dataset を用意 | 回帰テスト用の基準クエリ/回答を固定し、機能追加による品質劣化を防止 |
6 | パイロット運用で盲点を洗い出す | 少人数ユーザで試行し、インタラクションの課題や権限漏れを早期発見 |
今後のロードマップ
今後の対応ロードマップとして以下が示されています。
フェーズ/機能 | 概要 | 期待される効果 |
---|---|---|
MCP & A2A Integration | MCP と A2A をSnowflake Intelligenceに統合 | 外部サービス・他エージェントとのシームレスなワークフロー |
Slack / Teams 統合 | Slack/Teamsから直接Snowflake Intelligenceを呼び出せるように統合 | ユーザーは既存の業務チャネルで AI インサイトを即活用可能 |
Spaces (共有ワークスペース) | チャートやインサイトをチームで共有・共同編集できるスペースを提供 | 分析結果のレビュー・意思決定を高速化 |
OpenFlow 1-Click 統合 | OpenFlow コネクタをワンクリックで Snowflake Intelligence に接続(アクセス制御込み) | データソース追加とガバナンス設定の運用コストを削減 |
More Regions | サービス提供リージョンを順次拡大 | データ主権要件への対応とレイテンシ低減 |
まとめ
Snowflake Intelligenceは、
- AIエージェントのノーコード構築基盤
- 高精度な検索機能
- データ層とエージェント層で一貫したセキュリティ管理
を組み合わせた次世代のデータ活用基盤です。Snowflake上でデータをセキュアに保ったまま、誰もがAIエージェントを活用することが可能になります。セッションでは、Snowflake Intelligence前後でどのように業務が変わるかを以下のスライドで表現してました。
ユーザーにとっては、この図くらいビジネスとデータ活用が直結できるようになると嬉しいですね。
(その分データエンジニアの活躍フィールド広がることにもなりそうです。)
参考リンク
Snowflake Intelligence プレスリリース
Snowflake Unveils Snowflake Intelligence: The Future of Data Agents for Enterprise AI
Divide-Then-Align: Honest Alignment based on the Knowledge Boundary of RAG
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