🎋

目的別 BambuLab プリンタ本体&AMSの選び方

に公開

結局、どれが良いのか

3DプリンタBambuLabは、日本では2023年の登場以降、徐々に機種が増え、どれがよいのかな?という状況になりつつあると思います。

これまで書いた比較記事を参考に、2025年6月現在のガイドを作ります。
3Dプリンタ本体と、AMSでそれぞれ紹介します。
今回は、スペック別ではなく、「初めて」「多色刷りをする方」「動くものを作る方・締め切りに追われる方」「大きなものを作る・制作物の量産をする方」向けに書きます。

あくまで主観的な整理となるので、直感的に、これが欲しい!があれば、そちらを購入される方が後悔はないと思います。

BambuLab全体の紹介

まず、BambuLab全体の紹介です。
古くから実績のあるPrusaというオープンソースの3Dプリンタをベースに、性能向上を独自に行っている3Dプリンタです。

どれも多色刷りに対応しており、スライサーが扱いやすく、速度も速く、精度も良い印象があります。
メンテナンス、パラメータ調整からも大分解放され、創作に集中できるようになったと感じています。
日本に倉庫があり、リードタイムも短いです。

価格については、公式サイト等で、6月後半の周年や、3月の新生活キャンペーン、10月下旬のブラックフライデー、年末年始などにセールを行っているため、そのタイミングを狙うのも良いでしょう。

3Dプリンタ比較

初めての方

価格 印刷サイズ[mm] 密閉性 失敗検知 おすすめ度
H2D ¥345,800 350×320×325
X1C ¥190,000 256×256×256
P1S ¥109,000 256×256×256 ×
A1 ¥70,800 256×256×256 × ×
A1 mini ¥52,800 180×180×180 × ×

まずはA1 miniでよいと思います。意外と制作自由度は高いです。
10万を切る低価格の機種ではありますが、制作に問題ありません。

A1 miniの造形サイズ、180x180x180は、スマホサイズのものを刷りたければ十分です。
それより大きければA1ですが、個人的には、そのサイズの印刷を行うのであれば、A1よりはP1S、X1Cがよいかなと思っています。
A1は印刷サイズが広く低コストではあるものの、駆動部むき出しで密閉性が低く、温度や湿度の変化に弱く印刷が失敗しやすい上、失敗検知がありません。
X1Cは印刷に失敗した際、検知して止まってくれるため、コストが許せば、X1Cはおすすめです。
P1Sでも良いと思います。筐体がある方が造形物のトラブルは少ないですし、AMSの増築、ノズルの強化といった拡張性も高いため、コスパは良い気がします。

多色刷り(マルチカラー印刷)をする方

対応色数 密閉性 デュアルノズル おすすめ度
H2D 25色
X1C 16色 ×
P1S 16色 ×
A1 4色 × ×
A1 mini 4色 × ×

P1S、X1C、H2Dは、AMSが使え、筐体があることからおすすめしています。
AMSの欄で後述しますが、A1シリーズ対応のAMS liteは、4色までしか使えません。
AMSは4色×4台まで連結可能で、16色まで扱えます。
今後A1シリーズもAMS2 Proに対応するそうですが、筐体の有無の観点から評価は変えないと思います。

また、多色刷りは、色切り替えを行うがために長時間となり、造形物が冷えやすいです。
3Dプリントの成功率は温度に左右されるため、密閉性が高く、温度変化の少ないほうがおすすめです。

主な制作物が、高さ方向での色切り替えで表現できる物であれば、P1S、X1Cでよいと思います。
最近流行りのMakerChipのような2.5次元のもの、立体物では富士山のように少し色切り替えが入る程度のものですね。
たまに複雑な立体物を作る程度であれば、同上です。
また、多色刷りがメインの場合、強度はあまりいらないため、P1Sで十分かと思います。

多色刷りではゴミが増えるため、公式サイトのChipsも活用すると良いでしょう。

多色刷りの観点で、H2Dの方がおすすめな方は以下です。

  • 立体物・平面上に色が複数含まれるものを頻繁に作る
  • 制作物を展示・頒布予定
  • クオリティを求める
  • 白黒、肌色等、混じると目立つ色の印刷物が多い
  • 16色以上の色を使う

多色刷りではたくさんゴミが出ます。造形物よりゴミの量が多いです。
多色刷りでBambuLab H2DとX1Cを比較するという記事で比較をした通り、H2Dはデュアルノズルのため、ゴミの削減と、クオリティアップが期待できます。

ただ、1人での導入が難しく、占有スペースも大きく、価格がテレビとドラム式洗濯機と冷蔵庫を同時に買えるレベルですので、ご家庭への導入は手放しではおすすめできないです…。

動くものを作る方・締め切りに追われる方

移動速度[m/s] 移動加速度[m/s²] 失敗検知 精度 材料の自由度 おすすめ度
H2D 1000 20000
X1C 500 20000
P1S 500 20000 ×
A1 500 10000 ×
A1 mini 500 10000 ×
推奨フィラメント
H2D PLA、PETG、TPU、PVA、BVOH、ABS、ASA、PC、PA、PET、炭素繊維/ガラス繊維強化PLA、PETG、PA、PET、PC、ABS、ASA、PPA CF/GF、PPS、PPS CF/GF
X1C PLA、PETG、TPU、ABS、ASA、PVA、PET、PA、PC、カーボン/ガラスファイバー強化ポリマー
P1S PLA、PETG、TPU、PVA、PET、ABS、ASA
A1 PLA、PETG、TPU、PVA
A1 mini PLA、PETG、TPU、PVA

駆動でも可動でも、動くものを作りたい方、ロボコン・イベントに出る等で、締め切りに追われながらモノづくりをする方には、X1Cがおすすめです。
BambuLab X1CとP1P(P1S)の比較まとめでも書きましたが、簡単にX1CがP1Sに比べて有利な点は以下です。

  • 本体の剛性の高さ
  • マイクロライダーによる一層目検査・AI検知による印刷失敗への対応
  • 耐久性の高いフィラメントへの対応
  • タッチパネルによる操作性の高さ

失敗検知はとても便利です。一層目ではがれていたり、途中でジャムると、アプリで連絡が来て、印刷を勝手に一時停止します。材料も時間も無駄になりません。
締め切りギリギリで焦り、材料が残り少ない時に何度救われたことか…。
焦っているときに、もじゃもじゃが生成されていたら精神的にも参ります。

動くものを作る場合、構造部材には強度と精度が重要となります。
ABSやPETGで対応できる場合もありますが、CF・GFが欲しい場面もあります。
P1Sでも、ノズルを交換すればこれらの材料は使えるのですが、マイクロライダーによる精度管理がなく、精度は落ちやすいと思います。
ちなみにA1シリーズは、ABSが使えないため、少々おすすめできません。

また、ビジョンエンコーダにより高精度で、サポート材を別素材にできて複雑な部品を作りやすいH2Dもお勧めですが、お財布やスペースとの相談は必要です。

P1S、X1C、H2Dは、A1シリーズよりも移動加速度が速く、使える材料も多いため、この順位となっています。
移動加速度が速いと、折り返しが多い場面での差がつきます。

大きなものを作る・制作物の量産をする方

印刷サイズ[mm] 密閉性 失敗検知 おすすめ度
H2D 350×320×325
X1C 256×256×256
P1S 256×256×256 ×
A1 256×256×256 × ×
A1 mini 180×180×180 × ×

前述のようにA1 miniはスマホサイズ、X1C・P1S・A1の256×256×256は、大体Nintendo Switchの横幅サイズです。
それより大きなものは、H2D一択となるでしょう。
着ぐるみの骨格や、ロボット、自作ゲームの筐体など、256×256×256には意外と入らないんですよね…。
また、一個一個は小さいものの、部品を複数組み合わせて使ったり、量産を行う方にも、一度に印刷できる量の多いH2Dはおすすめです。

次点はX1Cです。失敗検知があるためです。大きなものは反りやすいため、この機能は重要になってきます。
あとは筐体の有無でP1S、A1の順となっています。

まとめ

3Dプリンタ本体のまとめです。
バランスを考えると、個人で使う分にはP1Sが一番使い勝手が良いと考えています。
AMSも使えますし、手が出せる値段です。
X1C、H2Dは失敗検知や高精度など、魅力はありますが、BambuLab自体、そこまで失敗しないですし。
A1、A1 miniも、BambuLabの中で比較すればこの評価ですが、他の3Dプリンタと比べると、平均以上ではあると思います。
もちろん、価格相応で、H2Dはとてもスペックが良く、どの場面でも活用できるとは思います。
ただし、半永久的に場所を取り、一人では移動させられないのはネックです。

会社で考えると、X1CやH2Dがおすすめだと思います。共用で使うと印刷トラブルが発生しやすいため。

価格 初めて 多色刷り 動きもの 大きなもの・量産
H2D ¥345,800
X1C ¥190,000
P1S ¥109,000
A1 ¥70,800
A1 mini ¥52,800
詳細スペックを見る
価格 印刷サイズ[mm] 密閉性 失敗検知 精度
H2D ¥345,800 350×320×325
X1C ¥190,000 256×256×256
P1S ¥109,000 256×256×256 ×
A1 ¥70,800 256×256×256 × ×
A1 mini ¥52,800 180×180×180 × ×
対応色数 デュアルノズル 移動速度[m/s] 移動加速度[m/s²] 材料の自由度
H2D 24色 1000 20000
X1C 16色 × 500 20000
P1S 16色 × 500 20000
A1 4色 × 500 10000
A1 mini 4色 × 500 10000
推奨フィラメント
H2D PLA、PETG、TPU、PVA、BVOH、ABS、ASA、PC、PA、PET、炭素繊維/ガラス繊維強化PLA、PETG、PA、PET、PC、ABS、ASA、PPA CF/GF、PPS、PPS CF/GF
X1C PLA、PETG、TPU、ABS、ASA、PVA、PET、PA、PC、カーボン/ガラスファイバー強化ポリマー
P1S PLA、PETG、TPU、PVA、PET、ABS、ASA
A1 PLA、PETG、TPU、PVA
A1 mini PLA、PETG、TPU、PVA

AMS比較

価格 収納個数 連結可能数 乾燥機能 対応機種
AMS2 Pro ¥64,800 4個 4台 H2D、X1C、P1S、A1シリーズ(予定)
AMS ¥45,800 4個 4台 ×
AMS lite ¥39,800 4個 × × A1シリーズ
AMS HT ¥25,800 1個 4~8台 H2D、X1C、P1S、A1シリーズ(予定)

注意ですが、AMS liteはA1シリーズにしか使えず、AMSはX1シリーズ、P1シリーズ、H2Dにしか使えません。
今後、AMS2 Pro、AMS HTは、A1シリーズにも対応するそうです。

AMS liteは、連結不可能で、扱える4色までとなります。
私の経験で言えば、4色はあっという間に超えます。
AMSは連結して16色まで扱えます。
例えば、人型のキャラクターを印刷する場合、髪色、肌色、目の色、服、靴…などと出てくるため、配色はかなり工夫することとなります。
配色に苦戦し、AMSを増設した経験があるため、多色刷りをメインで行う方はAMSとそれを使える機種の選定がおすすめです。

AMSとAMS2 Proで言えば、AMS2 Proが断然おすすめだと思います。
BambuLab AMS2 ProとAMSを比較するでも書きましたが、AMSの乾燥剤は吸湿してべちょべちょになりますので…。
乾燥機能がついており、ロードが速く、メンテナンス性が高いため、今後買うならAMS2 Proが良いと思います。価格差以上の価値があると思います。
AMS HTは、PETG等の高機能素材を高速で乾燥させるAMSです。1色のみです。
Amazonでフィラメントドライヤーを検索すると、安いものが出てきますし、AMS2 Proでも時間はかかりますが乾燥できるため、一旦購入せずにいます。

そもそもAMSは必要なのか?についてですが、多色刷り以外にもさまざまなメリットがありますので、持っていて損はないと思います。

  • フィラメントの入れ替えが自動で楽
  • Auto Refill機能
  • フィラメント乾燥ボックスとして使える
  • 自動でフィラメント情報を認識してスライサーに反映

特に、今のフィラメントを使い切った際に自動で次のフィラメントを使うAuto Refill機能や、フィラメント情報を認識し、印刷時にどれを使うかスライサー上で選択できる機能は、単色刷りでも活きると思います。
以下の記事に詳細は書いています。
https://qiita.com/matsuhachi/items/3ef330546ff2846bbbe0

私の選定

私は、X1CとH2D、AMSを2台、AMS2を1台という構成です。

まず、私自身がロボットを制作しており、またロボットやIoTデバイスをつくるユカイ工学にてエンジニアとして勤務しているため、最初P1SとX1Cが登場した際、高機能なフィラメントも使えるX1Cを買いました。
https://www.ux-xu.com/

ポストに写っている自作クレーンゲームは、X1Cの印刷範囲をギリギリまで使って作っています。
https://x.com/matsuhachi0f/status/1837828222861619453

また、BambuLabを使いこなしていくうちに、ギミック入りチャームを思いつき、その頒布も趣味としています。
元々X1C+AMSだけでしたが、チャームを作るにあたり配色に頭を悩ませ、AMSを追加しました。
https://booth.pm/ja/items/5656371

夫もかなり巨大なロボットを作っており、大型の印刷物が出がちです。
https://x.com/segawachobbies/status/1870898039654883735

多色刷りの量産 & 大型の印刷物 & 機材の取り合い…これらの状況を鑑みてH2Dを導入しました。
3Dプリンタ関連の占有スペースはかなり大きく、私の家は部屋1つ埋まっています…。

ユカイ工学には、私も選定に携わり、X1Cが2台と、H2D、あと、もう一台大きめのものを置いています。
基本的には、単色刷りが多いですが、使う素材も用途も人間も様々で、AMSでの管理が必須となっています。

他のBambuLabの記事はこちら

https://zenn.dev/ux_xu/articles/78a7c9a2a1957c
https://zenn.dev/ux_xu/articles/1ac97ebaa060e2
https://zenn.dev/ux_xu/articles/457c9fd61e0a9d
https://qiita.com/matsuhachi/items/10245626962c8a85987f
https://qiita.com/matsuhachi/items/3ef330546ff2846bbbe0

さらに見てみる
ユカイ工学テックブログ

Discussion