開催報告:【第一回】ケモインフォマティクス×ハッカソン合宿 in 横浜
協働で挑むケモインフォマティクス:合宿活動報告
AIやデータサイエンスの進展により、化学研究のアプローチは大きく変化しています。中でもケモインフォマティクスは、新規分子の設計、物性予測、創薬支援など、多様な分野でその存在感を高めており、研究者にとって不可欠なツールとなりつつあります。
本合宿では、ケモインフォマティクスの知見を実践的に活用しながら、参加者同士が協力して課題に取り組むハッカソン形式のセッションを実施しました。各自の専門性や視点を持ち寄り、短期間でアイデアを練り上げて成果を創出する過程は、まさに協働の力を実感する貴重な機会となりました。
また、合宿の冒頭には、参加者によるショートプレゼンテーションを通じて自身の研究を紹介し合う時間を設け、相互理解を深めるとともに、分野横断的な対話のきっかけを生み出しました。
成果の創出だけでなく、協働を通じた学びと交流を重視した本合宿は、ケモインフォマティクスの可能性を広げる濃密な2日間となりました。以下に、その活動内容と成果について報告いたします。
告知した内容
使用したサービスやサイト
- Zenn:参加者募集の告知に使用
- X(旧Twitter):参加者募集の告知に使用
- connpass:参加者の管理に使用
- GitHub:講師によるテーマ発表やデータ共有に使用
- Docswell:講師によるテーマ発表資料の公開に使用
- Vimeo:講師によるテーマの事前説明動画の配信に使用
- Slack:開催中の主な連絡ツールとして使用
これらのツールを組み合わせることで、告知・運営・技術共有の各面で円滑なハッカソン開催が実現しました。
合宿1日目
ショートプレゼンテーション
合宿の冒頭では、参加者それぞれが自身の研究内容を2分間のショートプレゼン形式で紹介するセッションを実施しました。専門領域が比較的近い参加者が多かったこともあり、テーマの違いやアプローチの工夫に触れることで、より深い理解と新たな気づきが得られる有意義な時間となりました。
また、自身の研究を限られた時間でわかりやすく伝えるという経験は、アウトプット力を磨く貴重な機会となりました。研究内容を整理し、他者に伝えることで、自分自身の取り組みを客観的に見つめ直すきっかけにもなりました。
このセッションを通じて、参加者同士の関係性が自然に深まり、合宿全体の協働にも良い流れを生み出しました。
※ショートプレゼンのスライドは、情報を伏せた状態で公開しています。
ショートプレゼンプログラム
ハッカソン(1日目)
各チームにテーマが渡され、いよいよ本格的な課題への取り組みがスタートしました。参加者はそれぞれの専門性を活かしながら、チーム内で活発に話し合いを重ね、アイデアの整理や方向性の検討に励んでいました。
まだ初対面のメンバーも多く、緊張感が残る場面も見られましたが、それでも少しずつ会話が増え、協力しながら進めようとする姿勢が印象的でした。各チームが試行錯誤しながらも前向きに取り組む様子から、今後の展開への期待が高まる一日となりました。
ハッカソンテーマ
今回のテーマは 化合物の毒性予測(Active / Inactive) を行う2値分類タスクでした。
各チームが限られた時間の中で協働し、モデル構築やデータ解析に取り組みました。
詳細は、講師による資料およびGitHubにてご確認いただけます。
夕食(BBQ🍖)
夕食には屋外でバーベキューを実施し、参加者同士の交流を深めるひとときとなりました。炭火を囲みながら食材を焼き、自然の中で語らう時間は、日中のセッションとはまた違ったリラックスした雰囲気を生み出しました。研究や課題から少し離れ、笑顔と会話が飛び交う場となったことで、チーム内の関係性もより一層強まり、翌日の協働にも良い影響を与えました。
レクリエーション
合宿中のレクリエーションとして、参加者全員でボードゲーム「ito(イト)」を楽しみました。数字を言葉で表現しながら価値観を共有するこのゲームは、初対面同士でも自然に会話が生まれ、笑いの絶えないひとときとなりました。協働をテーマにした合宿の雰囲気にもぴったりで、参加者同士の距離がぐっと縮まる良い機会となりました。
フリータイム
合宿一日目のプログラムを終えた後、参加者は各宿泊班に戻り、自由な時間を過ごしました。談笑しながら一日を振り返る班、ボードゲームで盛り上がる班など、それぞれのスタイルで交流を楽しむ姿が見られました。
この時間は、研究や課題から少し離れて、参加者同士がリラックスしながら親睦を深める貴重なひとときとなりました。自然な会話や笑いが生まれ、合宿全体の雰囲気をより温かく、協力的なものへとつなげる場となりました。
合宿2日目
ハッカソン(2日目)
二日目のハッカソンでは、初日の取り組みを土台に、各チームがさらに課題の深掘りとアウトプットの具体化に取り組みました。前日を通じて少しずつ打ち解けてきたこともあり、チーム内の会話も自然と増え、協力体制がより強まった様子が印象的でした。
この日は、成果報告会に向けて、二日間の取り組みをまとめた発表資料の作成にも力を入れました。各チームが役割分担をしながら、アイデアの整理やスライド構成などを協働で進め、限られた時間の中でも着実に形にしていく姿が見られました。
参加者同士の関係性が深まり、協働の力が成果として現れていく様子は、今回の合宿の大きな収穫のひとつとなりました。
成果報告会
合宿の締めくくりとして、各チームに二日間の活動内容と成果を5分間で発表してもらう報告会を実施しました。限られた時間の中で、課題へのアプローチ、協働の工夫、得られた知見などを簡潔かつ熱意を込めて紹介する姿が印象的でした。
プレゼンを通じて、他チームの視点や手法に触れることができ、参加者同士の相互理解がさらに深まりました。また、短時間で要点をまとめて伝える力や、聞き手を意識した発信の重要性を実感する機会にもなりました。
さらに、報告会の最後には、各班が自分たち以外のチームの中で「良かった」と思う発表に投票する時間を設けました。主催側も投票に参加し、客観的な視点からも評価を行うことで、互いの取り組みを称え合う温かい雰囲気が生まれました。
報告会は、合宿全体の学びと交流を振り返る場として、非常に有意義な時間となりました。
表彰式・閉会式
合宿の最後には、表彰式と閉会式を実施しました。前日のハッカソンの成果、レクリエーションでの取り組み、二日目の5分間プレゼンによる成果報告会など、各プログラムの結果を総合的に得点化し、最も高いポイントを獲得したチームを「最優秀チーム」として表彰しました。
最優秀チームに選ばれたチームはもちろん、惜しくも選ばれなかったチームも、それぞれがこのゼミ合宿を通して一つの成果を生み出すために、全員が自分の役割を果たし、協働して取り組む姿が非常に印象的でした。
表彰式では、互いの健闘を称え合う温かい拍手が送られ、閉会式では参加者全員が達成感と充実感を共有しながら合宿を締めくくりました。短期間ながら濃密な時間を共に過ごしたことで、知識だけでなく人とのつながりも深まる、意義ある合宿となりました。
ポイントの内訳
今回の合宿に対するアンケート結果と感想
アンケート結果
参加者からの声(一部抜粋)
・いつもあまり意見交換をする機会のない方々と相談しながら行うことで、データの見方や整理の仕方、記述子、モデルの検討方法など非常に勉強になる良い機会でした。今後の研究に積極的に活用していこうと思います。
ハッカソン以外の時間もとっても楽しく、次回がすでに楽しみです!笑
・楽しかったです、M1になってもインターンの日程とかぶせないようにして、来年も参加したいです。
・機械学習や分子記述子について初めて学びましたが、とても面白かったです!!
アプローチの仕方も様々で、チーム内でいろいろな手法を出し合って検討することができました。
分子グラフ、フィンガープリントなどもメンバーの方に教えてもらって初めて触ってみました。グラフ理論やネットワークに興味があるので、自分の研究にも取り入れられたらいいなと思ってます
3泊4日くらいでガッツリやれたらもうちょっと仲を深めつつ、より深いところまで議論できたかもと思いました。
次年度以降も、今回のアンケート結果や参加者からの声を参考にしながら、より良い合宿となるよう内容や運営面の改善を重ねていきます。参加者一人ひとりが安心して挑戦でき、学びと交流のある場を提供できるよう、主催一同引き続き工夫してまいります。
まとめ
【第一回】ケモインフォマティクス×ハッカソン合宿 in 横浜は、参加者全員の協力のおかげで無事に成功を収めることができました。初めは少し緊張した空気もありましたが、時間が経つにつれて徐々に打ち解け、自然な会話や笑顔が生まれ、交流が深まっていく様子がとても印象的でした。
今回の合宿では、「スキルを学ぶこと」と「協力して何かを形にすること」の両方を体験することを目的としていました。ハッカソン形式の課題解決、レクリエーションでの交流、夜の自由時間、そして成果報告会など、さまざまな場面を通じて、参加者それぞれが自分の役割を果たしながら、協働の力を実感する2日間となりました。
また、今年度のショートプレゼンは任意参加とし、研究の進捗や発表経験に関係なく、誰もが気軽に挑戦できるよう配慮しました。学会発表にはまだ成果が足りないと感じている方でも、自分の研究を人に伝える経験や、他の参加者の発表・ハッカソンを通じて研究の進め方を学ぶ機会として、この合宿を活用してほしい――それが主催者の願いです。
さらに、ケモインフォマティクスを研究に活用してみたい方や、現在勉強中だけれど一人ではなかなか進めづらいと感じている方にも、ぜひ参加していただきたいと考えています。専門的な知識がなくても、協働の中で得られる気づきや刺激は大きく、誰にとっても学びのある場となるよう設計しています。
そして何より、今回参加してくれた皆さんが今後それぞれの場で活躍されることを心から願っています。学会などで再び顔を合わせる機会があれば、今回の合宿で築いたつながりをきっかけに、今後も互いに刺激し合える関係を続けていけたら嬉しいです。
次年度予告
次年度は、2026年8月下旬に開催を予定しています。ハッカソンでは、自然言語処理とケモインフォマティクスの融合をテーマに、より高度で実践的な課題に挑戦していただきます。
講師は化学と自然言語処理を融合した研究をして論文を執筆されている松元先生、主催は加藤・小出・多田が担当し、参加者の皆さんが安心して取り組める環境を整えてまいります。
今年度の経験を踏まえ、さらに充実した内容でお届けする予定です。ケモインフォマティクスの可能性を広げる場として、ぜひご参加ください。
松元先生が執筆された論文
その他
今回の合宿講師(五東先生)による著書

私たちは、化学と情報科学の交差点で研究を行うグループです。データ駆動型のアプローチを通じて、新しい分子と材料の発見と設計を加速することを目指しています。 poclab-web.github.io/homepage/
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