SaaS設計レビュー 観点チェックリスト【2025年版】
SaaS設計レビュー 観点チェックリスト【2025年版】
SaaS設計における「レビュー観点が足りない」「属人化している」を防ぐための
設計レビュー観点チェックリストを整理しました。実務でよく聞かれる質問・盲点も交えながら、設計品質を上げる観点を体系的にまとめる試みです。
この記事を英語圏向けに再編したものを MITライセンスのOSSとして公開しています。
👉 SaaS Architecture Review Navigatorまた、この記事群をAIに活用したい方は、こちらの記事を必ず確認してください。
👉 このドキュメントは要約不可です:構造を壊さずAIに読ませるための手引き:要約・誤読・再生成の抑止
概要
このドキュメントは、SaaSの現場で必要と思われる設計観点を体系化したものです
イベント駆動・非同期設計・マルチテナント対応・分散トランザクション・災害対策など、現代的な分散型SaaSに求められる領域を概ねカバーしていると思います
各観点は「背景・概要」「例」「よくある失敗例」「FAQ」「関連観点」によって構成されており、現実の実務に耐えるよう設計しています
🧭 Structure / DeepDive の使い分けについて
本チェックリストは観点を「Structure(構造的原則)」と「DeepDive(実装深度)」に分類しています
用途・役割に応じて、以下のように使い分けてください
区分 | 定義 | 読むべき人 | 目的 |
---|---|---|---|
Structure | 設計の基本構造や責務分離、原則的判断を扱います | 設計初心者、レビュワー、構造全体を掴みたい人 | 抽象と具体の接続、構造ミスの早期発見 |
DeepDive | パフォーマンス、非同期、障害系などの高難度・境界領域を扱います | 設計リーダー、SRE、上級エンジニア | 想定外・トレードオフ・運用まで含めた判断の深堀り |
🧩 読者別:おすすめ読み順ガイド
設計フェーズや立場に応じて、読むべきカテゴリを以下に整理しました
チームでの導入・レビュー支援にも活用してください
読者タイプ | 読むべきカテゴリ | 目的 |
---|---|---|
🐣 設計初心者 | Structure全般(ドメイン、API、非同期、UI、権限) | 責務の明確化、基礎的な設計構造の理解 |
🧠 設計リーダー | DeepDive(パフォーマンス、分散トランザクション、災害対応) | トレードオフ、境界設計、構造的判断の補強 |
🧐 レビュワー | 全カテゴリ+使用例 | 抜け漏れ観点の補完と設計レビューの共通基準構築 |
🛠 SRE / インフラ設計者 | パフォーマンス、非同期、リリース戦略、運用・障害対応 | システム全体の信頼性・耐障害性を支える設計確認 |
設計観点カテゴリ一覧(順次追加)
🚗共通
🏷️ドメイン
Structure
- ドメインオブジェクトが適切に抽象化され、アプリケーション層と適切に分離されているか?
- 不整合なデータが発生しないように、適切なバリデーションが行われているか?
- ありえない状態のオブジェクトが作られないよう、制約が適切に設定されているか?
- 既存のドメインとの整合性を保ち、継承や抽象化の設計が妥当か?
- ドメインの権限管理が適切に適用されているか?
📦 データ
Structure
- データのライフサイクル(作成・更新・削除)が明確か?
- 主要なエンティティのインデックス設計が適切か?
- データ更新時の排他制御・ロック戦略が適切に設計されているか?
- 必要な正規化・非正規化のバランスが適切に設計されているか?
- マイグレーションの影響が考慮され、安全な実施計画があるか?
DeepDive
- イベントのリトライ時にデータの不整合が生じないか?
- 非同期処理のフォールバック戦略が設計されているか?(失敗時の再実行順序やデータの重複生成防止などの考慮)
- 一貫性を担保するための分散トランザクションの必要性が整理されているか?
📊 パフォーマンス・スケーラビリティ
DeepDive
- データベースのインデックス戦略が適切で、クエリの最適化がされているか?
- API のレスポンス時間が適切か?
- キャッシュ戦略が適切に考慮されているか?
- 外部サービスの負荷増大時の影響を最小限にするための設計があるか?
- 負荷増加時のスケールアップ・スケールアウトの方針が整理されているか?
- バックエンドのボトルネックが発生しない設計になっているか?
🔁 イベント・非同期処理
Structure
- 同期・非同期の設計方針が妥当で、業務要件を満たしているか?
- 非同期イベントの遅延やリトライ処理の影響を考慮した設計になっているか?
- サービス間のデータ整合性が保証されているか?
- 依存する外部サービスの障害時の影響を考慮しているか?
🌐 API・権限・セキュリティ
Structure
- API のスキーマが適切に設計され、他の API との整合性があるか?
- 破壊的変更を避けるための互換性保持の設計がされているか?
- APIの権限管理が適切に設計されているか?
- 非同期処理と同期処理の適用範囲が適切か?
DeepDive
🎨 UI・通知
Structure
- 変更の影響範囲が整理され、必要なコンポーネントの再利用が考慮されているか?
- 表示データ量が適切に制限されており、パフォーマンスが考慮されているか?
- メール通知の文面や送信フローに変更がある場合、翻訳フローが考慮されているか?
🧪 テスト
Structure
DeepDive
🚀 リリース・ロールバック
Structure
DeepDive
- システム停止が必要な場合、最小限に抑えられるように計画されているか?
- 段階的リリースが可能な設計になっているか?
- ロールバック手順が用意されているか?
- 重大な変更に対する影響分析が適切に行われているか?
🔰 災害対策・可用性
DeepDive
🛡 非機能要件・運用
Structure
DeepDive
使用例
-
設計時
設計者は設計観点をチェックし、考慮漏れの検討やブラッシュアップを行う -
レビュー前
チームでカテゴリ一覧を確認し、今回の機能に関係する項目をレビュー対象としてラベル付与やチェックボックス化 -
レビュー MTGなど
各観点セクションを開き、背景・失敗例・FAQ を参照しながらレビュー -
レビュー後
洗い出したリスクを Issue 化し、失敗例 → 回避策 テンプレでタスク管理
TIP: Notion/Confluence に “チェックリスト DB” を作り、観点・重要度・影響範囲などを属性管理すると再利用性が向上します
📋 チェックリストDB構成例(Notionなど)
設計観点を継続的に管理・活用するために、NotionやConfluenceなどに以下のようなデータベース構成で展開可能です
フィールド名 | 種類 | 用途・説明 |
---|---|---|
観点名 | Text | チェック項目のタイトル |
カテゴリ | Select | ドメイン / データ / API / 非同期 / etc. |
レベル | Select | Structure / DeepDive |
設計対象 | Multi-select | API / DB / ロジック / 通知 / etc. |
関連観点リンク | Relation | 双方向リンクでナビゲーションを容易に |
重要度 | Select | High / Mid / Low |
状態 | Checkbox | 検討済 / 対応中 / 未確認 |
最終確認日 | Date | 更新・再レビューのトリガー用 |
📘 チーム導入パターン(展開例)
パターン名 | 内容 |
---|---|
📌 Notion DB化 | カテゴリ/重要度/設計対象などを属性管理し、レビューで観点抽出・進捗管理が可能に |
🧪 設計レビュー用テンプレート化 | チェック項目をGoogle Docsなどに転記し、設計資料提出時のテンプレとして使用 |
🛠 レビューMTGでLive参照 | 各観点ページを会議中に参照し、背景・失敗・FAQを踏まえたレビューを進行 |
🔁 再設計時の自己点検 | 重大な仕様変更や構成変更時に「前回見落とした観点」を再スキャンするルールで導入 |
💬 コメント駆動フィードバック | Pull Requestや設計資料のコメント欄で「この観点漏れてませんか?」とリンク付きで指摘可能に |
おわりに
設計レビューは「観点の抜け漏れ」と「属人バイアス」が最大の敵です
本チェックリストが “チームの共通言語” となり、チーム全体の設計品質・スピードを底上げする一助になれば幸いです
フィードバックや追加観点の提案があればコメント欄でどうぞ
memo
観点数が多いのと自分の自由時間の都合とzennの記事作成数の制限により、全公開にはお時間いただくと思います全公開しました
関連観点のリンクは随時更新していきます(なにぶん量が多いためお時間いただきます🙇♂️)全更新しました。関連観点は多すぎても扱いきれないので、多くても4つ程度になるよう絞っています
観点数が多いのを考慮し、実務で運用するためStructure / DeepDiveを活用する自分なりに考えた設計レビュー運用方法もありますが、時間があれば記事にします
🧭 構造で育てる:思考と設計の3層モデル
この知識群は、以下の3つのレイヤーで構成されています。
思考のOSから、育成フレーム、現場実装まで──必要に応じて行き来してください。
-
Layer 1|思考OS(設計思想)
👉 構造で育てる思考:再現可能な成長フレームの作り方 -
Layer 2|成長ラダー(育成フレーム)
👉 構造で育てる設計力:11ステップで学ぶ思考構造と判断の型 -
Layer 3|観点チェック(現場応用)
👉 (このページ)
Discussion
技術者冥利に尽きるというか、非常にうれしいことですが、この記事が多くの人に読まれて驚いています
そしておそらく、中には「AIに活用してみよう」と考えてくださっている方もいらっしゃるかと思います
MITライセンスのつもりで公開しているので、公序良俗に反しない限りどのようにご利用いただいても問題ありません
ただし、私の書いたドキュメントをそのままAIに読ませて学習させると、ほぼ確実にハルシネーションが起こります
かなり盛大にハルシネーションして、いくら正気に戻そうとしても戻ってきません
私はいつもそれを経験をしているので、その対策プロンプトを用意しています
このドキュメントは要約不可です:構造を壊さずAIに読ませるための手引き:要約・誤読・再生成の抑止
この記事には私のドキュメントを学習させる上で、必要なプロンプトが書いてあります
ご活用いただければ幸いです🙇♂️