Prusa MINIでPalette3を試す
今回はPrusa MINIでPalette3の多色印刷を試してみます。初期設定さえ正しく行えば、Prusa MK3Sと同様にプリントできます。
参考にしたのはこちらのページです。このページがなければ攻略に何週間も要したでしょう。執筆者様には感謝です。
なお本記事ではCanvasおよびP2PPの両方での実施例を示しますが、Palette3による多色印刷(1)〜(6)に記載したことは省略し、違いと注意点のみ説明しました。
また本記事で用いたPrusa MINIはクローン品です。純正品とはLO値やHM値などの違いがあるかもしれません。これら初期値に関しては自機に適した値を見出してください。
動作環境など
動作環境
項目 | バージョンなど |
---|---|
PCのOS | Windows 10 Pro 22H1 |
スライサー | Canvas、PrusaSlicer-2.5.0+win64 |
P2PP | バージョン:8.00.49 |
プリンター | Prusa MINIクローン、ファームウェア:4.3.4 |
ノズル | Trianglelab E3D互換品 |
Palette | Palette3 Pro、ファームウェア:22.08.11.0 |
フィラメント | 無名ブランド4色PLAセット(250g×4、Amazonにて購入・当該品は販売終了) |
プリントサンプル
- flap3〜flap6の4枚
1.プリンターの準備
本体の準備
Prusa MINIでは、ガイドチューブを固定する「チューブクリップ」は不要です。その代わりフィラメントセンサーが取り付けてあったら外しておきます[1]。エクストルーダーから短いチューブが出たままになりますが、そのままでOKです。
LO(Loading Offset)値などの計測
参考ページにはLO値が記載されていますが、やはり現物を計測したほうが確実です。
以下の2つの値をフィラメントを使って計測します。
- LO値(ノズル先端からエクストルーダーのギアまでの長さ)
- ガイドチューブの追加長(エクストルーダーのギアから入り口チューブの端まで)
まず無傷のフィラメント(Palette3やエクストルーダーに噛ませてないもの)を用意して、一度ローディングしておきます。入り口のチューブの端の位置に印をつけておきます。
アンロードしてフィラメントを抜き取り、エクストルーダーのギアが噛んだ跡を探します。その端の位置に印をつけます。
筆者の場合、裏と表で20mm程度の差があったので中間の位置に印をつけました。すでに誤差が10mmありますが、目をつぶることにします。
このようにして、先程の2値を計測します。筆者の場合は、以下となりました。
- LO値:379mm
- ガイドチューブの追加長:145mm
これらの数値は、Palette3でのプリンタープロファイル作成時に使用します。
Prusa MINIとPalatte3の配置
Palatte3のガイドチューブは、添付品最短の57cmを使うのがベストです。しかしこの長さだと、Prusa MINIのフィラメント挿入口の位置関係で両者の配置に苦しむことになりました。
結局以下のような配置になりました。Prusa MINIが横向きですが、なんとか操作できます。ビルドプレートのつけ外しがちょっと厄介なのが難です。
以上で準備は終了です。
2.Canvasで実施
プリンターの追加と各種設定変更
ログインしてCanvasを立ち上げたら、最初にプリンター登録します。「Printers」「+New printer」「Preset」とクリックして、「Prusa Mini」を選択し「Create」で作成します。
「Printer Settings」をクリックしてプリンターの設定画面を開きます。最初に「Extruder」を開き、「Bowden tube length」を385mmに設定します。
この値は参考ページ記載の推奨値です。これは最後に追加するフィラメント長を意味します。Palette3はプリント用のフィラメント生成が終了した後、この長さ分フィラメントを進めて切断します。切断してしまうのでLO値(筆者マシンでは379mm)以下だとフィラメントを押し出せなくなりますが、長すぎても無駄になるだけです。
つづいて「Sequence」を開いて、以下の2か所にGコードを追加します[2]。
- 「Start of print」の先頭の行:
M876 P1
- 「End of print」の末尾の行:
M876 P0
これはPrusa MINIをシリアル制御モードに変更するGコードです。これを実行するとLCD表示が変化します。
STLを読み込み、スライスして転送
これ以降は従前の記事で示した手順と同様に、以下を行います。
- STLの読み込み
- 色の指定
- スライス条件設定
- スライス
- Palette3に転送
今回のサンプルは、いつものスプリットフラップです。最小サイズを満たすよう4枚にしました。3色ですが、それぞれ配色のパターンを変えてみました。
プリンタープロファイルを作成
これからはPalette3で操作します。手順は「Palette3による多色印刷(2) 〜Canvas編〜」の「3.実際にプリントしてみる」と同様です。初回なのでプリンタープロファイルの作成を行いますが、これもほぼ同様です。異なる箇所だけ以下に示します。
- 機種名はPrusaのMiniを選択
- LO値、HM値、ガイドチューブ長(Outgoing Tube Length)は以下の値に書き直す[3]
ガイドチューブ長は、57cmに先ほど計測した「ガイドチューブの追加長:145mm」を加算した値です。小数桁の入力はできないので四捨五入しています。
プリント開始
プリントを開始すると、ガイドチューブの先から「ガイドチューブの追加長」分の15cmほどフィラメントが出てきます。
これをPrusa MINIのエクストルーダー入り口チューブに差し込み、ギアにあてがって「Smart Load」をタップします。
非常にゆっくりとロードする上にボーデンチューブの長さがありますので、ノズルに達するまで通常のローディングに比べ数倍の時間がかかります。
プリント中は、Palette3のガイドチューブとPrusa MINIのエクストルーダー入り口チューブが密着するので、ロータリーエンコーダーでの出力長計測に支障はないでしょう。
Prusa MINIはシリアル制御モードで動作しているので、プリント中はこんな画面になります[4]。これにより動作中の操作が制限されます。プリント終了すると元の画面に戻ります。
この通り問題なくプリントできました。
3.P2PPで実施
ここでも「Palette3による多色印刷(4) 〜P2PP初期設定編〜とPalette3による多色印刷(5) 〜P2PP実践編〜」と異なる箇所を中心に説明します。
プリンター設定
16進数32桁の「PRINTERPROFILE」を、Prusa MINI専用の値にします。Prusa MK3Sと同じ値だと、当然ながらPrusa MK3Sのプリンタープロファイルが使われてしまいます。
筆者は以下の値にしました。
;P2PP PRINTERPROFILE=00112233445566778899aabbccddeeff
さらに「EXTRAENDFILAMENT」をCanvasの「Bowden tube length」と同じ385mmにします。(これも+50mmくらいしておいた方が無難でした)
そしてCanvas同様に、以下のGコードを2箇所に追加します。
- 「Gコードの最初」の先頭の行:
M876 P1
- 「終了Gコード」の末尾の行:
M876 P0
プリント設定
筆者環境だけかもしれませんが、デフォルトで「プリント設定」の「複数のエクストルーダー」で「全てのエクストルーダーでプライムを実施」がチェックONになっていました。これをチェックOFFしておきます。
チェックONのままだと、右下に怪しげなパージタワーが追加されてしまいます。
Prusa MINI固有の設定は以上です。当然ながらPrusa MK3Sと共通の種々の設定は必要です。
なお、「Palette3による多色印刷(4) 〜P2PP初期設定編〜」「3.PrusaSlicerの設定」「フィラメント設定」に記載した裏技は不要です。既存のGeneric PLAをベースに必要な設定変更を行うことができます。
プリントの実行
Palette3では、最初にプリンタープロファイルを作成します。P2PPではHM初期値は98%で良好な結果になりました。
この通りP2PPでも問題なくプリントできました。
-
参考ページではそのように指示していたが、フィラメントセンサーによる弊害の有無は不明。筆者は設置上の制約があり、もともとセンサーは取り付けていない。 ↩︎
-
Prusa MK3Sではプリント終了時にエクストルーダーを高速で移動させるGコードを追加したが、Prusa MINIでは不要。 ↩︎
-
Prusa MINIのデフォルトのHM値は92%だった。ちょっと目を疑ったが、試行錯誤の結果93%に落ち着いた。 ↩︎
-
これはCanvasでのプリンター設定で追加したGコード(
M876 P1
など)によるもの。OctoPrintではなくMosaic社のロゴでも表示して欲しいところだが、これはPrusa MINIのファームウェアに書き込まれた画像のようなので、我慢して見続けるしかない。 ↩︎
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