文化・プリンシプルとその効果のメカニズム - 反脆弱性と個人と組織 - (結論・骨子編)

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この記事は、「首尾一貫感覚」と継続的に成果を出す人材に続いて、継続的に成果を出す人材・組織ということについての考察を進めたものです。
特に組織的に成果を出す構造を作る上で、しばしば取り沙汰される「文化」という概念がありますが、この文化という概念がどう機能しているものなのか、そのメカニズムについての考察を加え、どういった在り方を目指すべきなのかという事を記します。
アンチフラジャイル・反脆弱性という概念もベースになっていて、不確実性から産まれたカオスエンジニアリング - ブラック・スワンとアンチフラジャイル -の続きにもなっています。

はじめに

企業において、その企業文化の重要性を説く人が多くいます。例えば、自分自身でベンチャー企業の創業CEOをやって、その会社をHPに売り抜き、その後革新的なベンチャーキャピタルを創設して成功を収めたベン・ホロウィッツは、その著書WHO YOU AREにおいて企業文化の重要性とそれを作る方法を説いています。

ここで改めて、「なぜ」企業文化が大事なのか?

この問は、多面的な意味を持ちます。例えば、誤った文化を持つと組織がどうなるか?という事を示すことは、その「なぜ」の一つの回答になります。文化によって組織が盤石になる事例を挙げることも、「なぜ」に対する一つの回答になります。
私がこの記事で焦点をあてたい「回答」は、そのメカニズムです。つまり、文化というものがどういうメカニズムで組織を盤石にし得るのか?という事について、考えた事を書きます。
なお、このメカニズムは非常に複合的なもので、文化以外にも様々な構成要素があります。例えば、個人の価値観・しあわせということ、特に 利他的・非自己中心的な考え方がなぜ満足につながる場合があるのか という事についても、一つの回答が得られたのかな?と思いました。

考えの骨子の骨子(結論)

考えの骨子をまとめていると、骨子だけで2000字を超えてしまったため、まず短く表現しておきます。

文化・プリンシプルは、組織の中で起こる様々な「失敗」を結果的に吸収・好転させる、アンチフラジャイルな状態を保つ為に必要なもの。「何が起こっても成功する組織」を目指す上での基礎になっている。
明確な組織のプリンシプルがあることによって、組織の中の人は腑に落ちた状態で判断ができ、自分自身への執着を無くして純粋にミッションに注力できて、さらに満足度も高まる。バラバラの方向を向いている個人に対して、ある種の指向性を作って成長を加速する枠組として、文化・プリンシプルは機能している。

考えの骨子

  • 文化には、プリンシプルとしての側面がある
    • ここでいうプリンシプルとは、「比較的簡単に検証可能な、少数の明確な行動規範・原理」
      • 物理法則などの原理とは異なる
    • 簡単に判断ができない文化もある → プリンシプルまで落ちきっていない文化
      • 文化を表面的に文字化しても、それが多義的であればプリンシプルではない
      • WHO YOU AREの事例【Uberの"文化"「正しいことをする。」】はプリンシプルではない
      • 文化を全てプリンシプルまで落としこむべき、という事ではない
  • 人間が何かをする時、統計的には必ず「失敗」が発生する
    • 目的を達成しようという思いがあっても、失敗は起こる
    • 同じ目的に対して、意見が衝突することはある
    • 人間には調子が良いときも悪いときもある
  • 個人・組織に限らず、プリンシプルが存在するときは失敗を分析しやすい
    • 「あるべき道」に戻るにはどうすればよいか、原理に基づいて判断ができる
    • 調子が悪くなったときも、プリンシプルに基づいて「戻って来られる」
    • プリンシプルに該当するかどうかは、一種の機械的な判断に近い
      • その瞬間での結果だけを見ると、判断に迷うこともある
      • 行為の過程・本質・思いからプリンシプルに該当するか否かを判断することは難しくない
  • 組織のレベルで見たとき、意見の衝突は本質的には失敗ではない
    • 意見の衝突を通して、最終的に一つのベターな意見に向かうことができれば、衝突には価値がある
      • それはむしろ成功であって、積極的にすべきこと
      • 表面的に衝突していないということは、むしろ衝突材料を内在したままにするということ
        • 蓄積した時にはより大きな衝突・見解不一致に至るリスクがある
    • 表面的な失敗を糧にする→一種の反脆弱性(アンチフラジャイル)
    • 衝突を経て、最終的に結束が深まることもある
    • 意見の衝突の本質は「利害対立」や「議論の勝負」ではなくて「より良い方法の模索」
    • 個人のレベルでも、議論を経て一段深い意見に到達すれば学び・価値がある
  • プリンシプルには「最終的に一つの意見に向かわせる」力がある
    • プリンシプルに基づいて「全員が納得の上で全力を尽くして目標に向かう」事に意味がある
  • 同調圧力にも、表面的には一つの意見に向かわせる力がある?
    • プリンシプルと違って本質的な納得がなく、迷いが生じる
    • 組織的には「上司が言った事に部下が納得していない」のも類似の状態→抑圧的な状態の不健全性
    • 抑圧はふとした瞬間に爆発する→アンチフラジャイルではない
  • プリンシプルや興味の対象が、自己にあるか、自己を超えたところにあるか?
    • プリンシプルが自己の中にあるとき、「自分にとっての失敗」を引きずりやすくなる
      • 「組織における正解」が自分にとっての正解でなく、意見が衝突した時に個人的にそれを引きずる
        • 自分の意見が直接採用されないと拗ねる
        • 主観的には暗中模索をしている気分になる:「意見をしても全然正しい方向に進まない」
      • 「意見の衝突が全く無い他者」はほぼ存在せず、関係を深めるといつかどこかで衝突が起きる
        • 衝突するまでは仲良くなっても、ある衝突の瞬間から拒絶が始まる
      • 自分の意見を否定されることが、自己に対する否定になりやすい
        • 表面的には一意見の否定のはずが、自己のプリンシプル・存在の否定と感じられる
      • 成長の壁を作っている
        • コーチングを受け入れられる姿勢があって、はじめてコーチングに値する(1兆ドルコーチ)
    • プリンシプルが自己を超えたところにあるとき、「自分にとっての失敗」は本質的に失敗ではない
      • 組織として正解に至ることを、素直に自己評価に還元できる→自分の中でも失敗を受け入れられる
      • 組織としてあるべき姿と照らして正しかったか、自分自身で検証ができ、納得もできる
      • 表面的には失敗しても、確実に前進している実感→首尾一貫感覚につながる
      • 積極的な挑戦、心理的安全性の担保が自分の中で得られる
  • 「簡単に、みんなで同じ方向を向く」道具としての、組織のプリンシプル
    • 同調圧力で従わせる文化ではなく、各個人が納得して同じ方向を向く文化
      • 多様性の否定ではなく、多様性がある中で核として共有できるものが何か?ということ
    • 文化、特にプリンシプルを明文化する事の価値
      • ただし、一歩間違えると誤解を生むので、明文化はとても難しい
    • リーダーが進んで実践して、初めて名実ともにプリンシプルになる
      • 「納得していないが上から言われたことをやる」では意味がない
      • ただし、リーダーが実践していればただちに守れるという事でもない
        • プリンシプルと能力を切り離す

骨子だけで長くなってしまったため、具体的な内容は別途記します。
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