【プロジェクト】一緒に山に登れないようなメンバーは、残念だけれどなるべく早めに外したほうがいいという話
はじめに
対象
- チーム編成に悩んでいるITエンジニア向け。
プロジェクトは登山
山のてっぺんに赤い旗が立っている絵を、一度は見たことがあるのではないでしょうか。比喩でも何でもなく、プロジェクトと登山にはいくつかの共通点があります。故に私はこう思います。
「一緒に山に登れないようなメンバーは、残念だけれどなるべく早めに外したほうがいい」
登山経験はほぼないに等しいですが、失敗知識データベースのような事件・事故の事例、失敗学は定期的に追いかけている分野です。特に登山中の遭難事故については、プロジェクト登山に照らしながら見ると他人事とは思えない苦々しさを感じます。
リアル登山では装備の不備や技術不足、コミュニケーションの齟齬や判断ミスは、遭難からの死に直結します。しかしプロジェクト登山では、それらの明らかな過失が可視化されて見えません。技量のあるITエンジニアには、それらの危険要因がハッキリと見えています。
代表的な危険要因
危険要因:明白な知識・実力不足
ビーチサンダルとジャージで登山に行き、遭難して死亡した方がいるそうです(2011年9月 岩手山 遭難事故 - YouTube)。最近では富士山での弾丸登山や、外国人観光客の軽装登山も問題になっています。
また無謀な登山者が雪山の急斜面で身動き取れなくなり、たまたま居合わせた登山経験者達が危険を承知で下山の手助けをした、という事例もあります。助ける方にも二次災害のリスクがあり、無事に生還できたのは奇跡といわれています(2012年5月 富士山 遭難事故 - YouTube)。
時折プロジェクトに「できないことをできると言って入ってくる方」がいらっしゃいます。プロジェクトは登山です。見積の段階で、登頂難易度の予想は付いています。だからこそ面談にリーダーとして同席するとき、「一緒に登山できるだけの実力が備わっているか」を確認しています。
準備期間や教育コストを払う前提なら、伸びしろも含めた実力を測ります。もし納期が差し迫っていて教える時間もないなら、装備も実力も参加時点で伴っていなければなりません。でなければプロジェクトが遭難するだけでなく、最悪助けようとしたメンバーが潰れて離脱してしまいます。
面談の際に実力を測りきれずか、あるいは人数不足からか。実力の伴わないメンバーを参画させる責任者の方がいます。それは難易度の高い登山に遭難リスクを高める足手まといを連れて行くことになるだけです。
なら少ない人数でも玄人だけ集めてデスマーチした方が生存率は上がります。もっとも弾丸登山が危険なのは周知の事実なので、登山計画自体を見直す方が安全だとは思いますが。
危険要因:チームワーク軽視
IT界隈ではブリリアントジャークという呼称で有名ですが、彼も恐らくは登山の世界におけるそれだったのでしょう(2008年5月 立山連峰 遭難事故 - YouTube、2009年 鳴沢岳 遭難事故 - YouTube)。検索すれば詳細は出てきますが、あまり気持ちの良い話ではありません。実力だけは確かだったようです。
一部の現場に見られる現象ですが、ある種の特権を持つ開発者が業務をブラックボックス化し、企業側も技術的な問題解決能力の面で頼らざるを得ず、コミュニケーション面で問題があるが外せないでいるメンバーというのが放置されていることがあります。
しかし彼らは遭難者を量産します。短絡的・個人単独としては成果を上げたとしても、チームで大きな成果を出すために大事なことが抜けているのです。リーダーの意思決定にも対面上は同意しますが、実作業になると異を唱えながら別行動を取ります。
開発現場にあるのは最早チームなどというものではなく、数人の個人プレイヤーが別々に仕事をするだけの、利害関係だけで繋がった烏合の衆に成り果てます。自分のことだけを考えている、プロジェクトのことは考えていない、そんな集団です。
そして気が付いたときには、周囲を巻き込んでプロジェクトを遭難させます。
危険要因:ゴミのポイ捨て
富士山のゴミ問題をご存知でしょうか。近年、登山道や山小屋周辺にペットボトルや弁当容器、煙草の吸殻などが散乱し、深刻な環境問題となっています。問題はこれらのゴミを捨てている人達が、不法投棄は禁止だと知らない訳ではないことです。
プロジェクトにも同様の人物が紛れ込むことがあります。セキュリティガイドラインを理解していながら脆弱性を放置する、契約書に明記された禁止事項を平然と破る、パワハラが問題になることを知りつつ威圧的な態度を取り続ける。彼らは無知ではありません。確信犯です。
こうした人物の恐ろしさは、組織に「悪事も許容される」という空気を醸成することです。良識ある人材は次々と退職し、感染した人間は誠実な業務を放棄します。腐ったみかん、組織の癌です。
登山道のゴミが自然環境と生態系に悪影響を与えるように、プロジェクトでも同じことが起こります。もし誤って招き入れてしまった場合は、直ちに上層部へ報告し隔離・対処することです。そのまま放置すれば悪影響が蔓延し、プロジェクトの現場と組織全体に深刻な影響を与えます。
技術力のある人材ほど業務を囲い込み、組織の自分への依存度を高めます。経営層に相談しても緊急性を理解しようとせず、問題は先送りされます。そしてマナーの良い観光客がいなくなり、問題が顕在化してからやっと重い腰を上げますが、するともう誰も残っていないのです。
おわりに
本記事では登山事故をプロジェクトの問題に重ねて論じましたが、実際に人が亡くなっている事故であることを忘れないでください。私自身も辱めるような意図はありません。ただ過去の失敗から学んで、次に活かすだけです。
後からなら何とでも言えますが、当時の状況や時代背景を踏まえ、「その場にいたとして自分は何ができたか」を想像する視点を持っていただければと思います。読者の皆様におかれましても、茶化したりしないよう配慮いただければ幸いです。
一緒に山に登れないメンバーを見つけたら、冷静に必要な措置を講じましょう。
Discussion