【後編】メンバーが自ら動き出す!1on1で実践する依頼・相談・成長支援・振り返りの技術
まずは自己紹介
ナレッジワークでエンジニア組織の仕組み作りなどを担当しているsedoと申します。
Enablement Groupという部署に所属していて、社内のプロジェクト管理の仕組みを整えたり、社外への情報発信イベントの運営サポートなどをしています!
前職は、ヤフー(現LINEヤフー)に所属しており、そこでEM(エンジニアリングマネジャー)を担当していました。
ヤフーといえば1on1に力を入れていて、自分もたくさんの1on1を経験し、そこで学んだことの一部をこの記事に書いていきます。
ちょっと紹介
本記事の前編はこちらになります。先にこちらを読んでみてもらえると嬉しいです。
他にも以前に私が投稿した1on1に関する記事を紹介しておきます。ご興味あれば読んでみてください。
【後編】メンバーが自ら動き出す!1on1で実践する依頼・相談・成長支援・振り返りの技術
マネージャーの皆さん、こんにちは。
前編では、1on1がうまくいかない原因とその本質、そしてメンバーとの信頼関係を築くための基本、「聴く姿勢」についてお話ししました。
「聴く」ことの大切さ、少しでも伝わっていたらうれしいです。
この後編では、前編で育んだ信頼関係という土台の上に、メンバーの主体的な行動を引き出し、成長を加速させるための具体的な技術について掘り下げていきます。
テーマは、大きく3つ。
- 「効果的な依頼・相談の仕方」
- 「失敗を学びに変える関わり方」
- 「行動を定着させる振り返りの方法」
それぞれ、現場で「あるある」なケーススタディを交えながらご紹介していきます!
1. 「やってみよう!」を引き出す ─ 効果的な依頼・相談の技術
信頼関係ができたら、いよいよ業務の具体的な依頼や相談へ。
ここでのポイントは、「指示」ではなく「依頼・相談」 のスタンスで関わること。
その方が、メンバーの主体性がぐっと引き出されやすくなります。
陥りがちな“雑な指示”とその悲劇…
マネージャー: 「(忙しそうに)A社の件、よろしく!なる早で!」
メンバー: 「(内心:え…A社の“件”ってどれのこと?なる早って…明日?来週?今さら聞けない…)…はい、分かりました!」
(数時間後)
マネージャー: 「A社の件、どうなってる?え、そっちじゃなくて!何やってるんだよ!」
メンバー: 「(やっぱり…)すみません…!」
忙しいとつい、「とりあえずこれ、やっといて!」と要件だけ投げがち。
でも、背景や目的、期待する成果が伝わっていないと、認識ズレや手戻りが発生しちゃうんですよね。
その結果、メンバーのモチベーションは下がるし、マネージャーも二度手間になるという悪循環に…。
これは受けた側として覚えていることが多いなーと思います。
なんか聞きにくい上司からの指示の元、自分で考えて提案してみるけど結局ダメ出しをされる。
これが仕事だよなと思いながらまた提案をしてみる。
これを繰り返していると、モチベーションという有限のリソースがどんどん無くなっていく感覚に陥るよなと感じてましたw
メンバーの行動と納得感につながる「依頼・相談」ステップ
効果的な依頼・相談の6ステップ
-
背景・現状を共有する
→ 何のための仕事か? なぜ今必要か?スタート地点の認識を揃えましょう。 -
目的・ゴールを明確にする
→ 「何を」「いつまでに」「どのくらいの完成度で」必要なのか、あいまいにしない! -
思考プロセスを共有(任意)
→ 「なぜこの依頼なのか」を伝えると、納得感と理解が深まります。 -
アウトプットのイメージを具体化する
→ ラフ案、過去資料、サンプルなどがあるとGood! -
相談できる雰囲気を作る
→ 「どう思いますか?」「やってみてもらえますか?」という柔らかさが大事。 -
任せる
→ 丸投げではなく、ちゃんと「任せる」という信頼のサインを伝える。
この6ステップ、最初は少し手間に感じるかもですが、
丁寧に話すほど“自分ごと化”され、メンバーのやる気と納得感がぐっと高まります。
ケーススタディ:丁寧な依頼・相談
【NGな指示】
マネージャー: 「このバグ、今日中に直して。クレーム来てるから!」
【丁寧な依頼・相談】
マネージャー: 「〇〇さん、少し相談させてください。今、一部のユーザーから“△△の操作でデータが保存されない”という報告が来ていて…」(①背景)
「このままだと業務に支障が出る可能性があるので、早めに原因を突き止めて対応したいんです。」(②目的)
「影響範囲を考えると、できれば明日の午前中までに原因特定、可能であれば修正まで完了したいのですが、このタスク、お願いできますか?」(③期待値)
「関連しそうなコードはこの辺で、以前似た対応をした△△さんが詳しいかもしれません。」(④ヒント)
「もし厳しそうだったらすぐ教えてください。リソース調整や調査のサポートも考えます!」(⑤相談スタンス)
メンバー: 「状況、理解しました。重要そうですね。すぐ着手します。詰まったら相談しますね!」
2. 成長を加速させる ─ 失敗を学びに変える関わり方
どんなに丁寧に任せても、いつも期待通りに進むとは限りません。
時には、ミスや失敗に繋がってしまうことも。
でも――失敗したときこそ、マネージャーの出番です。
「任せる」勇気と、「失敗」を活かす覚悟
メンバーが成長するには、自分で考えて、やってみて、試行錯誤する経験が欠かせません。
細かすぎる指示や過度な管理は、「自分で考える」機会や「挑戦する意欲」を奪ってしまいます。
だからこそ、
- 致命的でない失敗は、むしろ「学びのチャンス」
- 「失敗したらフォローする」という覚悟を持つ
このスタンスがあると、メンバーも安心して一歩踏み出せるんですよね。
自分はメンバーに任せる時は、「なんかあったら自分が謝りにいこう」という気持ちだけ持っていますw
誠意を持って謝れば、意外と皆さん許してくれます。ちょっと小言も言われたりしますがw
心理的安全性があるから、挑戦できる
「失敗しても大丈夫」
「挑戦することが歓迎されている」
こうした空気があるかどうかで、メンバーの行動量も質も、驚くほど変わります。
結果だけでなく「プロセス」も評価する
たとえ成果が出なかったとしても――
- どんな工夫をしたのか?
- 何を学んだのか?
- どう行動したのか?
こうしたプロセスの価値を見つけて承認することで、メンバーは「次はもっと頑張ろう」と思えるようになります。
3. 行動を定着させ、次へつなげる ─ 効果的な「振り返り」の実践
成功でも失敗でも、そのまま流してしまうのはもったいない!
1on1でこそ活きるのが、「振り返り」です。
「やりっぱなし」ではなく、経験を「学び」として定着させることで、持続的な成長に繋がっていきます。
タイミングは“こまめ”が基本
できれば、毎週の1on1やプロジェクトの節目ごとに。
記憶が新しいうちにやることで、よりリアルで具体的な振り返りができます。
ケーススタディ:失敗時の振り返り
【NGな振り返り】
メンバー: 「すみません、昨日リリースした機能でバグが…」
マネージャー: 「なんで気づけなかったの?レビューで指摘されなかった?テストどうなってたの?」
メンバー: 「…すみません…(萎縮)」
【OKな振り返り】
マネージャー: 「まず、対応ありがとう。大変だったよね」
「ユーザー影響が出たのは残念だけど、今回は“何が起きて、なぜ防げなかったのか”を一緒に考えて、次に活かせたらと思ってる」
「どの段階で見落としたのか、どんな対策が考えられるか、一緒に整理してみない?」
メンバー: 「はい…実は〇〇のテストケースが漏れていて…」
マネージャー: 「なるほど。それが分かっただけでも大きな前進だね。次回からどう活かせるか考えよう!」
振り返りのポイント
成功時は:
- Good / Keep: うまくいったことを言語化し、再現性を高める
- More / Try: さらに良くするには?の視点で前向きに
- 感謝と承認: メンバーの努力や成果を具体的に伝える
失敗時は:
- まず共感を: 「大変だったね」「報告ありがとう」と受け止める
- 目的を明確に: 「責めるためじゃなく、次に活かすため」と伝える
- 人ではなく行動に焦点を: 「なぜそうなったのか?」を一緒に分析
- 安心できる空気を: 防衛本能を刺激しない配慮を忘れずに
- 次の一手(Try)を共に考える: 前向きな行動に繋げる
- 学びの価値を伝える: 「これは良い経験だったね」と、成長視点で締めくくる
まとめ:1on1は、メンバーとチームを育てる“成長のエンジン”
ここまで、前編・後編を通してお届けしてきた「メンバーが自ら動き出す1on1」の考え方と実践方法。
1on1は、ただの進捗確認の場ではありません。
マネージャーがメンバーに真剣に向き合い、信頼を築き、成長を後押しするための、すごく大切な時間です。
そして、これは一朝一夕で完璧になるものじゃありません。
だからこそ、まずはできるところから始めること、そして少しずつ自分のスタイルを育てていくことが大事なんだと思います。
最後に、そっと問いかけ。
次の1on1、ちょっとだけ「聴く」姿勢を意識してみませんか?
ちょっとだけ「任せ方」を丁寧にしてみませんか?
そんな一歩が、きっとメンバーの成長につながり、
いつかチーム全体の大きな変化を生み出していく――かもしれません。
あなたの1on1が、誰かの未来をそっと後押しする時間になりますように。