【前編】その1on1、メンバーの心に届いていますか?
まずは自己紹介
ナレッジワークでエンジニア組織の仕組み作りなどを担当しているsedoと申します。
Enablement Groupという部署に所属していて、社内のプロジェクト管理の仕組みを整えたり、社外への情報発信イベントの運営サポートなどをしています!
前職は、ヤフー(現LINEヤフー)に所属しており、そこでEM(エンジニアリングマネジャー)を担当していました。
ヤフーといえば1on1に力を入れていて、自分もたくさんの1on1を経験し、そこで学んだことの一部をこの記事に書いていきます。
ちょっと紹介
以前に私が投稿した1on1に関する記事を紹介しておきます。ご興味あれば読んでみてください。
【前編】その1on1、メンバーの心に届いていますか?
“伝えたつもり”を越えていく――1on1の鍵は「聴く」ことから
マネージャーの皆さん、こんにちは。
突然ですが、メンバーとの1on1、自信を持って「うまくいっている」と言えますか?
- 「メンバーのために時間はしっかり確保している」
- 「良かれと思って、アドバイスもしている」
- 「目標達成に向けて、具体的な指示も出している」
…でも、なぜでしょう。
メンバーがどこか上の空だったり、指示通りに動いてくれなかったり。
「やる」と言ったことが、なかなか進まなかったり。
「こんなに一生懸命なのに、どうして想いが届かないんだろう…」
そんなふうに、一人で悩みを抱えてしまうこと、ありませんか?
私自身、マネージャーとして駆け出しだった頃、まさに何度もこの壁にぶつかってきました。
でも、それって本当に「熱意」や「スキル」の問題なのでしょうか?
もしかすると、私たちが無意識のうちにやっている1on1の“型” が、知らず知らずのうちにメンバーとの間に小さな溝を作っているのかもしれません。
この前編では、多くのマネージャーが直面する1on1の課題、その根底にある本質を一緒に見つめ直していきたいと思います。
そして、メンバーが自ら考え、動き出し、確かな成長を遂げるための土台となる「信頼関係」を築くために、
その一歩目であり、最も重要な 「聴く」 という姿勢について、私の経験も交えながらお伝えしていきます。
1. 「言ったのに、やってくれない…」そのすれ違いは、なぜ起こるのか?
まず取り上げたいのが、「言ったのに…」という、マネージャーがよく直面するモヤモヤ。
このすれ違いの背景に、一体どんな要因があるのでしょう?
よくある1on1の光景、でも…
マネージャー: 「例の機能開発、どんな進捗かな?」
メンバー: 「あ、はい、進めています…(内心:実は技術的な壁にぶつかって悩んでるけど、うまく言えないな…)」
マネージャー: 「そうか。ただ、今週のスプリントゴールを考えると、少し遅れが気になっていてね。スケジュール通りに進められそう?」
メンバー: 「(正直、かなり厳しいかも…でも『できません』とは言いにくいな…)…はい、大丈夫です。なんとか週末までには形にします…!」
マネージャー: 「分かった、頼りにしているよ。この機能は重要だから、しっかり頼むね。」
一見、ちゃんと会話は成立しているように見えます。
でも、メンバーの本当の「困りごと」にはまったく触れられていません。
こうして、メンバーはプレッシャーを抱えたまま言いたいことが言えず、
マネージャーは状況を正確に把握できないまま、すれ違いが広がっていく…。
このままでは、問題は表に出てこないし、改善も難しいですよね。
自分の経験談からなのですが、こういうコミュニケーションを取るときって、自分も仕事が忙しくて、つい形式的に確認して、無意識に「大丈夫です」を引き出そうとしてるなと振り返ると思いますw
すれ違いを生む、見過ごされがちな「本質」とは?
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目的が「伝えること」で終わっていないか?
マネージャー側の「伝えたからOK」という感覚。
でも、本当のゴールは「相手が納得し、動き出せる状態をつくること」です。 -
コミュニケーションは“キャッチボール”のはずが…?
「ちゃんと伝えた」というのは投げ手の感覚。
相手がちゃんと受け取ったか?を確認しないと、ボールは地面に落ちたままかもしれません。
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「聴いてるつもり」になっていないか?
相手が話し始めたとたんに、「それはね…」「君の場合はさ…」とアドバイスを返していないでしょうか?
判断や評価よりも、まず「理解しよう」とする姿勢が大事です。 -
まず「与える」ことができているか?
指示や評価=Takeばかりになっていませんか?
1on1では、マネージャーから「時間」「関心」「承認」そして真剣に話を聴く姿勢をGiveすることが、信頼関係のスタート地点です。
自分もよくやってしまってたなと思うんですが、プレーヤーとして自分の方が詳しい時が要注意です。自分の方がやり方を分かってるから、それを正確に指示して、上手くいくようにしたいと自分の良心から出てるものなので、なおさらやっかいだなと振り返ると思いますw
2. すべては「信頼」から始まる。その扉を開く鍵は「聴く」こと
メンバーが安心して考えを話し、主体的に動き、成長していくには――
やっぱり 「この人になら弱音を吐ける」 というような、信頼関係が欠かせません。
その信頼という扉を開く鍵は、特別なスキルではありません。
それは、「心を込めて聴く」 という、誰にでもできるごく自然な行動の中にあります。
「聴く」ことは、最高のGiveであり、相手への敬意
信頼は、すぐにはできません。
だからこそ、マネージャーとして最初にできる一番価値あるGiveが、
「あなたの話を、ちゃんと聴かせてください」 という姿勢を行動で示すことなのです。
「あなたの視点や考えを知りたい」――
そんな純粋な関心から生まれるコミュニケーションが、メンバーの心をゆっくりと開いていきます。
何を聴けばいい? メンバーという「人」を深く理解するために
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過去の経験という“物語”に耳を傾ける
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「これまでで一番『やってやった!』と思えた瞬間は?」
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「逆に、大きな壁にぶつかった経験は? そこから得た学びは?」
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→ 価値観や強み、その人らしさが自然と見えてきます。
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今の想いや、未来への希望に寄り添う
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「今の仕事について、正直どう感じてますか?」
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「今後、どんなスキルを身につけたいですか?」
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「最近、気になってることや困ってること、何かありますか?」
※相手が言葉を探していても、焦らず待つのが大事です。
「〇〇さんは、どう思いますか?」など優しく問いかけてみましょう。
どう聴くのが効果的?「聴いてるフリ」を卒業するためのヒント
ケーススタディ|心が通う瞬間 vs 離れる瞬間
NGな例:
メンバー: 「今担当してる〇〇機能の実装でちょっと苦戦してて…」
マネージャー: 「あー、それね。△△の設計が良くないんじゃない?□□さんが前に作ってたやつ参考にすれば?」
メンバー: 「(…そこが問題じゃないんだけどな)…はい、参考にしてみます…」
OKな例:
マネージャー: 「そうなんですね。具体的に、どのあたりが難しいと感じてますか?」
メンバー: 「△△と□□の連携がうまくいかなくて…」
マネージャー: 「なるほど。色々試してみてるんですね。現状わかっていること、もう少し聞かせてもらってもいいですか?」
→ こうした“聴き方”の差が、信頼を築くか壊すかを大きく左右します。
心に響く「聴き方」の基本動作
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姿勢で示す「あなたに集中しています」
- 対面:相手に身体を向け、視線を合わせる
- リモート:画面をきちんと見て、表情にリアクションを
- 内職やスマホのチラ見はNG。通知も切って、環境づくりから!
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反応で伝える「ちゃんと受け止めてます」
- 「うんうん」「なるほど」の相槌やうなずき
- 「それは大変でしたね」など共感の言葉
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質問で深める「もっと知りたい」
- 「なぜそう思ったのですか?」「その時どんな気持ちでした?」など、オープンな質問を意識する
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要約で確認する「こう理解しましたが、合ってますか?」
- 「つまり、〇〇ということですね?」と確認しながら認識を合わせる
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沈黙を恐れず、余白を大切にする
- 言葉に詰まっても急かさない。沈黙は思考の時間。
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「でも」「だって」は封印!
- まずは受け止める。「なるほど、そういう視点もあるんですね」と認めるところから始めよう
この「聴く」という姿勢を、テクニックではなく関心と敬意の表れとして実践すること。
それが、1on1でメンバーと本音で向き合うための、いちばん確かな道です。
そして、この揺るぎない信頼関係こそが、メンバーの自律的な行動と成長を促す豊かな土壌になります。
(前編 了)
さて、信頼関係という名の豊かな土壌は、準備できましたでしょうか?
後編では、この土壌の上に「メンバーの主体性と成長」という名の種をまき、力強く育てていく方法にフォーカスしていきます!
- メンバーの心が動く「依頼・相談の技術」
- 失敗を恐れず前進する「失敗との向き合い方」
- 経験を糧に変える「振り返りの実践」
後編の記事は4/28に公開予定です!
「【後編】メンバーが自ら動き出す!1on1で実践する依頼・相談・成長支援・振り返りの技術」
が公開されました!
…あなたの1on1を、もう一段ステップアップさせるヒントが満載です。
ぜひ、後編も楽しんでください!