継読動機の分類体系① ──「最後まで読みたくなる物語」を支える2系統16要素
読者が「続きを読みたい」と感じるとき、その背景にはどのような構造があるのか。
本連載では、それを「面白い」「続きが気になる」の2系統と、それらを構成する全16要素として体系化する。
はじめに
「続きを読みたくなる物語」は、多くの創作者が目指す理想の一つだ。
しかし、その根底にある 継読動機(読者がなぜ続きを読みたくなるのか) は、少なくとも創作現場において、これまで感覚的な経験則として語られるにとどまってきた。
本連載は、この“感覚的な面白さ”を創作現場で共有・設計可能な単位へと分類し、
「最後まで読みたくなる物語」を再現可能な形で創作するための枠組みを提示する試みである。
また、こうした読者心理の構造化は、AIによる物語生成や評価にも応用の余地があると考えられる。
「読者がなぜ読むのか」という心理的メカニズムを理解・再現するうえで、本体系は人間とAIの双方にとって共通の思考基盤となりうる。
そして本体系は、 「ある程度の反証可能性を備えた創作理論」 を志向している。
つまり、実際の作品分析や創作実践によって検証・更新できる“仮説的モデル”として設計されている。
本連載は、次のような読者を想定している。
- 自作や他作品を理屈で分析・改善したい創作者や編集者
- 「読者心理のモデル化」に関心のあるAI開発者
本連載では継読動機を、
「面白いから読む」「どうなるのか気になるから読む」の2系統と、それらを構成する各8要素として以下のように整理していく。
-
実績型(面白いから読む)
- ユーモア・迫力・納得・愛着・誇らしさ・解放・名残惜しさ・意外性
-
好奇心型(どうなるのか気になるから読む)
- 予告・進行・謎・不幸・秘密・因果・関係性・能力
本連載は以下の全4回で構成される。
- 第一回(今回):「最後まで読みたくなる物語」を支える2系統16要素
- 全体像の提示。継読動機の2大分類についての掘り下げ
- 第二回:「面白い」を作る8つの要素
- 実績型の8要素についての掘り下げ
- 第三回:「続きが気になる」を作る8つの要素
- 好奇心型の8要素についての掘り下げ
- 第四回:理論を創作現場で活かすための指針
- 分類体系の活用指針
0. 対象範囲
本体系が対象とするのは、すでに物語を読み始めた読者である。
媒体やUI・時間的余裕・作者ブランドなどの外的要因は考慮しない。
また、本体系の内容は文字作品に限らず、アニメ・漫画・ゲーム等にも応用可能だが、
説明上の便宜として「読者」「読む」等の語を用いる。
1. 継読動機の2分類
読者が物語を読み進めたくなる理由は、次の二系統に大別できる。
| 系統 | 説明 |
|---|---|
| 実績型 | 「面白いから読む」 これまでに得た満足感(=物語の実績)に基づく動機 |
| 好奇心型 | 「どうなるのか気になるから読む」 未来への関心(=好奇心)に基づく動機 |
これは、読者の心理を、時間軸に沿って「 “過去→現在” の満足」「 “未来” への期待」の二系統として分類したものである。
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