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数学オリンピック2018 1次予選解説 その1

2024/11/30に公開

はじめに

※本記事は、2018/2/3にHatenaBlogに投稿した記事を移行したものです
結構経ってしまいましたが、今年も数学オリンピック国内1次予選 ( JMO ) の問題・解答が公開されました。

ただ、答えの数値は見えますが、実際どう解くかまで出ている訳ではないので、久々に解いて解説してみたいと思います。全4回に分けています。

問題と解説

問題文の詳細については、冒頭のリンクよりご参照ください。以下では要約した問題文で説明していきます。

問1

問題・答え

九九の表に現れる2桁の数 ( つまり 3×7=21等、1桁の整数同士の積で10以上の数 )、5個の組み合わせの中で、各桁に0~9の数字が1度ずつ現れる組み合わせを選んだ場合、5の桁を含む数は何になるか。

答え: 56

解説

使い道がかなり限られる数を先に選んでいき、どの数同士がペアになるかを絞り込んでいきます。

まずは、やはり 9 や 7 がとっかかりになります。

  • 9 … 90以上の数はないため、X9 の形しかなく、2桁では 7×7=49 に限定される。
  • 7 … 70台では 8×9=9×8=72 のみ、X7 の形だと 3×9=9×3=27 のみ。いずれにせよ、2,7 がペアになる。

ここまでで、2,7,4,9 が決定、残り 0,1,3,5,6,8 です。候補が絞られることで更に道ができます。

  • 8 … 80台では 9×9=81 のみ。X8 の形では 4×7=7×4=28, 6×8=8×6=48 があるが、2,4 は使用済みのため除外。残りは 2×9=3×6=6×3=9×2=18。81,18 いずれにせよ、1,8 がペアになる。

これで残り 0,3,5,6 です。ここまで来たら後一息。

  • 0 … 10, 20, 30, 40 しかないが、使えるのは後は 3 しかない。0,3 がペアになる。

ということで残り5,6、この組み合わせでできるのは 7×8=8×7=56 と決まります。

問2

問題・答え

1~9 の数が書かれた9枚のカードを3枚ずつ区別のできない箱に分ける分け方の中で、それぞれの箱の中の3枚の数が等差数列を構成できるのは何通りあるか。

ただし、等差数列が構成できるとは、1,4,7 のように、小さい順にa,b,cとしたときにb-a=c-b が成立することを言う。

答え: 5通り

解説

「区別のできない箱」とあるので、どこに入るかが決定していない中で最小の数をベースにして、地道に数え上げていきます。
つまり、最初は 1 が入る箱の数の組み合わせ、次に残った中から最小 ( 例えば 1,2,3 が使われているなら、4 が最小 ) を選んで、そこからまた3数を見繕い、最後に残った3数が適切か ( 等差数列が構成できるか ) どうか、という順番で見ていくことになります。

  • 1 の入る箱: 1,2,3 ( 残りの内、最小は 4 )
    • 4 の入る箱: 4,5,6 … 残り7,8,9 ○
    • 4 の入る箱: 4,6,8 … 残り5,7,9 ○
  • 1 の入る箱: 1,3,5 ( 残りの内、最小は 2 )
    • 2 の入る箱: 2,4,6 … 残り 7,8,9 ○
  • 1 の入る箱: 1,4,7 ( 残りの内、最小は 2 )
    • 2 の入る箱: 2,5,8 … 残り 3,6,9 ○
  • 1 の入る箱: 1,5,9 ( 残りの内、最小は 2 )
    • 2 の入る箱: 2,3,4 … 残り 6,7,8 ○
    • 2 の入る箱: 2,4,6 … 残り 3,7,8 × ( 等差数列にならない )

上のように列挙した結果、○になるのは5通り、これがそのまま答えということです。

問3

問題・答え

次の図のような四角形ABCDの面積を求めよ。

答え: 68

解説

まず、直角が2つ見えるところから、この四角形は台形であるのですが。

∠C=45°ということで、下の図のように区切ると、長方形と直角二等辺三角形をつなげた形であることが分かります。なので、直角二等辺三角形の同じ長さの2辺の長さをx、長方形のもう1つの辺の長さをyと置くことができます。

そうすると、四角形の面積Sは次のように計算できます。

  • S=\frac{1}{2}x(y+(y+x))=\frac{1}{2}x(x+2y)

それから、斜辺の長さが分かっている2個の直角三角形で三平方の定理を考えると、次の関係が分かります。

  • x^2+(x+y)^2=19^2
  • x^2+y^2=15^2

条件が出そろいましたから、x,yを割り出せば面積Sが計算できるはずです。…が、ここでふと、先ほどの2式の差をとってみます。

\begin{aligned} &~&x^2+(x+y)^2-(x^2+y^2)&=19^2-15^2 \\ &\Leftrightarrow&(x+y)^2-y^2&=19^2-15^2 \\ &\Leftrightarrow&(x+y-y)(x+y+y)&=(19-15)(19+15) \\ &\Leftrightarrow&x(x+2y)&=4\times 34 \\ \end{aligned}

平方の差を和と差の積で置き換えることができるのですが、ここで良く見ると、最後に出てきた式の左辺は面積Sの2倍に他なりません。つまり、

  • 2S=4\times 34

…なんか釈然としない気もしますが、これでS=68と分かってしまい、これが答えとなります。

問4

問題・答え

1111^{2018}を11111で割った余りを求めよ。

答え: 100

解説

なんとなく、数をそのままにらめっこしていても埒が明かないので、1111を2乗してみます。

1111^2=1234321 \\ 1234321\div 11111=111...1000 \\ \therefore 1111^2\equiv 1000~mod~11111

1000=10^3 という綺麗な数が現れました。ここから、

\begin{aligned} 1111^{2018}&=1111^{2\times 1009} \\ &=(1111^2)^{1009} \\ &\equiv(10^3)^{1009}~mod~11111\\ \end{aligned}

これにより、別の数のべき乗に置き換えることができました。

  • (10^3)^{1009}=10^{3\times 1009}=10^{3027} すなわち 1111^{2018}\equiv 10^{3027}~mod~11111

こうなると何が嬉しいかと言うと、10^5=100000\equiv 1~mod~11111 を活かせるところです。つまり、

\begin{aligned} 10^{3027}&=10^{5\times 605+2} \\ &=(10^5)^{605}\times 10^2 \\ &\equiv 1^{605}\times 10^2~mod~11111 \end{aligned}

これでほとんどが1のべき乗の形で消えて、残った10^2=100が答えになります。

問5

問題・答え

黒白互い違いに1列に並んでいる11個のオセロ ( ●○●○●○●○●○● ) を、次のルールに従い裏返していき、最終的に全て黒 ( ●●●●●●●●●●● ) にする裏返し方は何通りあるか。

裏返し方のルールは、

  • 表の色が同じ2個の隣り合わないオセロの間が、全て逆の色の場合、その逆の色のオセロを全て裏返すことができる。
  • つまり、●\underbrace{○\cdots ○}_{白が1個以上連続}●\rightarrow ●\underbrace{●\cdots ●}_{全て裏返す}● もしくは、これの白黒逆のバージョンか、どちらかのみ。

なお念のためですが、オセロは全て、片面が黒、その逆が白となっています。

答え: 945通り

解説

まずはテキトーに裏返してみます。

●○●○\underbrace{●}_{※}○●○●○●\\ ●○●○○○●\underbrace{○}_{※}●○●\\ ●○●\underbrace{○○○}_{※}●●●○●\\ ●○\underbrace{●●●●●●●}_{※}○●\\ ●\underbrace{○○○○○○○○○}_{※}●\\ ●●●●●●●●●●●

なお、裏返すところは※をつけています。…こうしてみると、白黒入り乱れてはいるのですが、良く見ると黒or白、同色の塊の数が11→9→7→5→3→1と減っていることが分かります。

それもそのはずで、一度に塊単位で裏返すのと、その時両隣の塊がつながって1つにまとまるのと、この2点から結局、裏返すたびに 3つの塊がつながって1つの塊になる(塊の数が2つ減る) ということが起こるからです。ということで、塊の数の変化はどのように裏返しても同じです。

さてそうすると、裏返し方が何通りあるか、ですが。それぞれのステップで裏返せる塊は、両端の2つを除いた、それぞれ 9,7,5,3,1 個の候補があります。どこを裏返すかで別の方法ができるわけですから、トータルの裏返し方としては、9\times 7\times 5\times 3\times 1=945 と単純に掛け算した数だけあるということになります。これが答えです。

問6

問題・答え

次の図のように、直角を挟む辺の長さがそれぞれ 1, 1/4 の直角二等辺三角形ABC,XYZ があるとき、AX の長さを求めよ。

答え: \frac{2+\sqrt{79}}{20}

解説

まずは状況を整理しましょう。

直角二等辺三角形というところは、至る所に45°の角がありますから、図中の赤い角・緑の角が合計45°として、色々な所に現れます。挙げると、

  • 赤: ∠BAY=∠CBZ=∠ACX
  • 緑: ∠ABY=∠BCZ

まあなので、△ABY∽△BCZ という相似形も見えるわけですが。そこは置いておいて、寂しい右上部分に着目します。

同じ緑の角ができるように点Wを定めると、△ABY≡△CAW であり、しかも△XAW も直角二等辺三角形となります。

ということで。求めるべき長さをAX=x と置いてみます。

そうすると、AY=x-\frac{1}{4},~AW=\sqrt{2}\cdot x ( AWは直角二等辺三角形の斜辺 )、△ABY≡△CAWから、CW=AYでもあります。

ということで、残ったのはこの図。

xはまだ分かっていませんが、ここまで条件が揃えば、余弦定理が使えます。すなわち、

\begin{aligned} &~&(\sqrt{2}\cdot x)^2+(x-\frac{1}{4})^2-1^2-2\cdot \sqrt{2}\cdot x(x-\frac{1}{4})cos{135^{\circ}}=0 \\ &\Leftrightarrow&2x^2+x^2-\frac{1}{2}x+\frac{1}{16}-1+2x(x-\frac{1}{4})=0 \\ &\Leftrightarrow&5x^2-x-\frac{15}{16}=0 \end{aligned}\\

ということで、方程式を解いて、

\begin{aligned} x&=\frac{1\pm\sqrt{1^2+4\times 5\times\frac{15}{16}}}{2\times 5} \\ &=\frac{1\pm\sqrt{\frac{79}{4}}}{10} \\ &=\frac{2\pm\sqrt{79}}{20} \end{aligned}

2つ出てきた解の内正の方x=\frac{2+\sqrt{79}}{20} が答えと分かります。何というか、補助線一閃がとても強力な感じですね。

終わりに

取り敢えず全体の半分、6問一気に行きました。前半の問題はちょっとしたことに気付けばすぐに解けるようになってますので、落ち着いて取っていきたいところです。

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