これまでカーネルトリックについて思案してきた。それは絶妙な性質に基づいており、圏論的にほぐすことで興味深いつながりがいろいろ見えてくる。米田の補題もまたその一種であった。本記事ではフーリエ変換とのつながりを見、また圏論的フーリエ変換を見てみる。
ポントリャーギン双対
カーネルトリックの基本的な発想はデータΩを関数空間[Ω,K]へ埋め込むことであった。もとより対象Aを調べるうえでその上の関数を考えること、すなわちHom函手Hom(−,K)でHom送りにすることは数学の常套手段である。対象Aが何かよい数学的構造を持っており、その構造と整合する射(すなわち準同型)を考えると、射の集合Hom(A,K)も制限を受けて何かしらのよい性質を獲得する。その例にポントリャーギン双対がある(記事が参考になる)。
Aがある代数構造(局所コンパクトハウスドルフ可換群)を持っている場合、円周(トーラス)Tへの準同型射の集合A^≃Hom(A,T)にもまたその代数構造が入り、指標群と呼ばれる。さらにG^^≃Gが成り立つ、というのがポントリャーギン双対のあらましである。
またG上のL2関数全体L2(G)に対し、指標群G^≃Hom(G,T)の元がその基底を与える。たとえばG≃TのときG^≃Zとなり、指標は
χn(θ)=einθ
で与えられる。L2(G)の元ϕ,ψに対しては
ϕ(θ)=n∑aneinθ,ψ(θ)=n∑bneinθ
のように分解でき、
⟨ϕ,ψ⟩=2π1∫dθϕˉ(θ)ψ(θ)
とすると
n∑aˉnbn=⟨ϕ,ψ⟩
が成り立つ。すなわちパーセヴァルの等式である。
G≃RのときはG^もRであり、指標はおなじみの
χk(x)=eikx
である。これはG^×G≃R×R上の関数だがカーネル関数にはなっていない(再生性は成立しない)。その代わり積分変換
Fϕ(k)=∫dxeikxϕ(x)
を定義する。そしてやはりパーセヴァルの等式
⟨ϕ,ψ⟩=⟨Fϕ,Fψ⟩
が成り立つ。この内積がL2(G)×L2(G)→Cなるカーネル関数を与えていると思えば、これもカーネルトリックと呼んで差し支えない。
圏論的フーリエ変換
profunctor や end については手前味噌だが他の記事を参照されたい。また本節の内容は書籍を参考にしている。
いま圏C上の bi-profunctor P:C×C↛Cに対し、次のように表記することにする。

下のような函手J:1→C と合わせて次の性質を満たすとき、圏C上のPromonoidal structure をこれらの組(C,P,J)で定める。

ここで Hはhomのことである。Pは結合律を満たす積に、Jは単位元に対応している。もちろんこれらの結合は end で定義されている。
いま以下の性質を満たすprofunctor K を乗法的カーネルと呼ぶ。

K-フーリエ変換
いま f:C→Setsに対し乗法的カーネルKによる変換
FK[f]:X↦∫AK(A,X)⊗fA
(すなわちKan拡張Kanよf)をK-フーリエ変換と呼ぶ。また双対K-フーリエ変換が
FK∨(g):Y↦∫A[K(A,X),gA]
で定義される。*-autonomous 構造の下で
FK[f]≃FK∨[f∗]∗
が成り立つ。また∗を持つ圏Vでenrichされた圏Cにおいて、函手f,g:C→Vに対する内積を
⟨f,g⟩=∫AfA∗⊗gA
で定める。すると圏論的パーセヴァルの等式
⟨f,g⟩≃⟨FK[f],FK[g]⟩
が成立する。Dayは量子論への応用を期待しているようである。
Discussion