はじめに
この記事では、統計検定準1級取得に向けて学習したことをまとめていきます。
工学系の数学ではなく数理あるあるの、論述ゴリゴリな解答になっていると思いますのであらかじめご了承ください。
注意:さらに計算過程は数学文化の『省略の美』を無視してエレファントに書いています。
【リンク紹介】
・統計検定準1級のまとめ記事一覧
・これまで書いたシリーズ記事一覧
学習書籍について
この記事では「統計学実践ワークブック」を中心に、学んだことをまとめていきます。記事を読んで本格的に勉強してみたいなと思った方は、是非ご購入を検討なさってください。

参考書籍について
統計実践ワークブックは、大量の知識項目と問題が収められている反面、計算過程や知識背景が大きく省略されているため、知識体系をきちんと学ぶ参考書として東京大学から出版されている名著「統計学入門」を使っています。

母分散の検定
例題
(「統計学入門」より)
ある機器の部品の製造会社で,過去の製品のばらつきは 分散=0.010 であるといわれている。いま,製造方法を,ランダムにデータを取ったところ,
6.28 |
6.33 |
6.52 |
6.44 |
6.31 |
6.44 |
6.40 |
6.49 |
6.68 |
6.34 |
が得られた.方法を変えたことにより,ばらつきに変化が生じたといえるか.
(解答)
「ばらつきに変化は生じていない」という仮説を帰無仮説H_0とし、
「ばらつきに変化が生じた」という仮説を対立仮説H_1
として、統計的仮説検定を行う。ただし有意水準は\alpha = 0.05であると仮定する。
X_1, X_2, \cdots, X_{10}を、正規母集団N(\mu, {\sigma}^2)から取り出した標本とする。X_1, X_2, \cdots, X_{10}は互いに独立でN(\mu, {\sigma}^2)に従う。
今、帰無仮説H_0と対立仮説H_1をそれぞれ次のように仮定する。
H_0 \ : \ {\sigma}^2 = 0.01 \\
H_1 \ : \ {\sigma}^2 \neq 0.01
よって帰無仮説H_0を仮定して、仮定が棄却されるかを調べる。つまり
とする。ここで、X_1, X_2, \cdots, X_{10}の標本平均を\overline{X}とおき、不偏標本分散をU^2とおく。さらに統計量Yを
\begin{alignat*}{2}
Y &= \cfrac{(10 - 1) U^2}{{\sigma}^2} \\
&= \cfrac{9 U^2}{{\sigma}^2}
\end{alignat*}
とおくと、Yは母分散が未知のときの母平均の区間推定の時と同様に自由度10 - 1 = 9のカイ2乗分布に従う。よって棄却域Rをカイ2乗分布表を用いて
\begin{alignat*}{2}
R &= \{ y | y < \chi^2_9 (0.975), \chi^2_9 (0.025) < y \} \\
&= \{ y | y < 2.70, 19.023 < y \}
\end{alignat*}
と定める。ここで\overline{X}の実現値\overline{x}は
\begin{alignat*}{2}
\overline{x}
&= \cfrac{6.28 + 6.33 + 6.52 + 6.44 + 6.31 + 6.44 + 6.40 + 6.49 + 6.68 + 6.34}{10} \\
&= \cfrac{64.23}{10} \\
&= 6.423
\end{alignat*}
であり、U^2の実現値u^2は
\begin{alignat*}{2}
u^2
&= \cfrac{1}{10 - 1} \sum_{i = 1}^{10} (x_i - \overline{x})^2 \\
&= \cfrac{10}{10 - 1} \times \cfrac{1}{10} \sum_{i = 1}^{10} (x_i - \overline{x})^2 \\
&= \cfrac{10}{10 - 1} \times
\left(
\cfrac{1}{10} \sum_{i = 1}^{10} {x_i}^2 - (\overline{x})^2
\right) \\
&= \cfrac{10}{10 - 1} \times \cfrac{1}{10} \sum_{i = 1}^{10} (x_i - \overline{x})^2 \\
&= \cfrac{10}{10 - 1} \times
\left(
\cfrac{6.28^2 + 6.33^2 + 6.52^2 + 6.44^2 + 6.31^2 + 6.44^2 + 6.40^2 + 6.49^2 + 6.68^2 + 6.34^2}{10}
\right) \\
&= \cfrac{10}{10 - 1} \times
\left(
\cfrac{39.4384 + 40.0689 + 42.5104 + 41.4736 + 39.8161 + 41.4736 + 40.96 + 42.1201 + 44.6224 + 40.1956}{10} - 41.254929
\right) \\
&= \cfrac{10}{9} \times
\left(
\cfrac{412.6791}{10} - 41.254929
\right) \\
&= \cfrac{10}{9} \times
\left(
\cfrac{41.26791}{10} - 41.254929
\right) \\
&= \cfrac{10}{9} \times 0.012981 \\
&= \cfrac{0.12981}{9} \\
&= 0.0144
\end{alignat*}
である。したがって、Yの実現値yは
\begin{alignat*}{2}
y &= \cfrac{9 \times 0.0144}{0.01} \\
&= \cfrac{0.1296}{0.01} \\
&= 12.96 \notin R
\end{alignat*}
であるので、帰無仮説H_0は棄却されない。つまりばらつきに変化は生じていない。
参考資料
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