はじめに
この記事では、統計検定準1級取得に向けて学習したことをまとめていきます。
工学系の数学ではなく数理あるあるの、論述ゴリゴリな解答になっていると思いますのであらかじめご了承ください。
注意:さらに計算過程は数学文化の『省略の美』を無視してエレファントに書いています。
【リンク紹介】
・統計検定準1級のまとめ記事一覧
・これまで書いたシリーズ記事一覧
学習書籍について
この記事では「統計学実践ワークブック」を中心に、学んだことをまとめていきます。記事を読んで本格的に勉強してみたいなと思った方は、是非ご購入を検討なさってください。
参考書籍について
統計実践ワークブックは、大量の知識項目と問題が収められている反面、計算過程や知識背景が大きく省略されているため、知識体系をきちんと学ぶ参考書として東京大学から出版されている名著「統計学入門」を使っています。
※ワークブックとしては素晴らしい質だと思いますが、どうしてもその内容量とページ数の都合上、問題のない範囲で削除されているということです。人によっては1冊で問題ない方もおられると思いますが、私には無理でした。
正規分布
確率変数Xが連続型であるとする。このXに対し、確率密度関数fが
f(x) = \cfrac{1}{\sqrt{2 \pi} \sigma}
\exp
\left(
- \cfrac{(x - \mu)^2}{2 \sigma^2}
\right)
\hspace{5mm}
(- \infty < x < \infty)
であるとき、この確率密度関数fを平均\mu、分散\sigma^2の正規分布(normal distribution)といい、N(\mu, \sigma^2)と表す。ただし、\mu, \sigmaは実数で\sigma > 0である。
正規分布の再生性
X_1, X_2, \cdots, X_nが独立で、それぞれ正規分布N(\mu_1, {\sigma_1}^2), N(\mu_2, {\sigma_2}^2), \cdots, N(\mu_n, {\sigma_n}^2)に従うならば、以下の2つが成り立つ。
-
X_1 + X_2 + \cdots + X_nはN(\mu_1 + \mu_2 + \cdots + \mu_n, {\sigma_1}^2 + {\sigma_s}^2 + \cdots + {\sigma_n}^2)に従う。
-
c_1 X_1 + c_2 X_2 + \cdots + c_n X_nはN(c_1 \mu_1 + c_2 \mu_2 + \cdots c_n \mu_n, {c_1}^2 {\sigma_1}^2 + {c_2}^2 {\sigma_2}^2 + \cdots + {c_n}^2 {\sigma_n}^2)に従う。
ただし、c_1, c_2, \cdots, c_nは定数とする。
特にX_1, X_2, \cdots, X_nの確率分布がすべて正規分布N(\mu, \sigma^2)に従うならば、以下の2つが成り立つ。
-
X_1 + X_2 + \cdots + X_nはN(n \mu, n \sigma^2)に従う。
-
\overline{X} = \cfrac{X_1 + X_2 + \cdots + X_n}{n}とするとき、\overline{X}はN(\mu, \frac{\sigma^2}{n})に従う。
正規分布の線形変換
Xが正規分布N(\mu, \sigma^2)に従っているとき、その線形変換Y = aX + bはN(a\mu + b, a^2 \sigma^2)に従う。
(※証明は今後掲載予定・・・(。´・ω・)?)
正規分布の期待値
E[X]:Xの期待値
E[X] = \mu
(※計算過程は今後掲載予定・・・(。´・ω・)
正規分布の分散
V[X]:Xの分散
V[X] = \sigma^2
(※計算過程は今後掲載予定・・・(。´・ω・)
正規分布のモーメント母関数
m(\theta) = E[e^{\theta X}]:Xのモーメント母関数
\begin{alignat*}{2}
m(\theta) &= E[e^{\theta X}] \\
&= \exp (\mu \theta + \cfrac{1}{2} \sigma^2 \theta^2)
\hspace{5mm}
(- \infty < \theta < \infty)
\end{alignat*}
標準正規分布
正規分布N(\mu, \sigma^2)に対して、変数変換Zを
Z = \cfrac{X - \mu}{\sigma}
とおく(この変換を標準化(standardixation)という)。このときZの確率密度関数f(z)は
f(z) = \cfrac{1}{\sqrt{2 \pi}}
\exp
\left(
- \cfrac{ \ z^2 \ }{2}
\right)
\hspace{5mm}
(- \infty < z < \infty)
となり、この確率密度関数f(z)を標準正規分布(standard normal distribution)といい、N(0, 1)と表せる。どんな正規分布も標準化を行うことにより標準正規分布となる。
標準正規分布の確率密度関数
以後、標準正規分布の確率密度関数f(z)を\varphi (z)で表すこととする。
標準正規分布の累積分布関数
標準正規分布の累積分布関数\Phi(z)を以下のように定義する。
\begin{alignat*}{2}
\Phi(z) &= P (Z \leqq z) \\
&= \int_{- \infty}^{z} \varphi (t) dt \\
&= \int_{- \infty}^{z}
\cfrac{1}{\sqrt{2 \pi}}
\exp
\left(
- \cfrac{ \ t^2 \ }{2}
\right) dt,
\hspace{5mm}
Z ~ N(0, 1)
\end{alignat*}
標準正規分布表
標準正規分布は、その便利さから確率変数Zと累積分布関数による確率との関係を一覧にした表が存在する。それが「標準正規分布表」である。その表が以下のとおりである。
\begin{alignat*}{2}
Q(u) &= 1 - \Phi (u) \\
&= \int_{u}^{\infty} \varphi (t) dt
\end{alignat*}
とするとき、uの値に対する確率Q(u)の値は以下のとおりである。
※行はuの一の位と小数第一位の値を表し、列はuの小数第二位の値を表している。
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手作りしました 笑 |
例題
(「統計学実践ワークブック」より)
問6.1
あるテストの受験者は全部で1000人であり、受験者全体でのテストの得点の分布は正規分布N(65, 10^2)で近似できるとする。このテストでA君は85点、B君は60点であった。なお、標準正規分布N(0, 1)の確率密度関数f(z) = \frac{1}{\sqrt{2 \pi}} \exp \left( - \frac{z^2}{2} \right)である。
[1] A君およびB君の偏差値はいくらか。
[2] A君の得点とB君の得点の間に入る受験者の人数はおおよそ何人か。
[3] このテストの全受験者の得点の箱ひげ図を描いた場合、四分位範囲(箱の長さ)はいくらか。
[4] このテストで65点以上の受験者のみを集めた場合、彼・彼女らの得点の平均値はおよそいくらか。
解答
[1] A君およびB君の偏差値はいくらか。
テストの得点をXとすると、題意よりXは正規分布N(65, 10^2)に従う(つまりX~N(65, 10^2)である)。
ここで、一次変換
Z = \cfrac{X - 65}{10} \hspace{5mm} \cdots ①
とおけば、Zは標準正規分布N(0, 1)に従う(つまりZ~N(0, 1)である)。
ところで偏差値とは、正規分布N(50, 10^2)に従う確率変数である。つまり偏差値を確率変数Yとおくと、Y~N(50, 10^2)である。このYとZは次の一次変換の関係をもつ。
ゆえに偏差値Yを求めるための得点Xについての式は、
\begin{alignat*}{2}
Y &= 10Z + 50 \\
&= 10 \times \cfrac{X - 65}{10} + 50
\end{alignat*}
であるから、求めるA君の偏差値は、A君の得点がX = 85より
\begin{alignat*}{2}
Y &= 85 - 65 + 50 \\
&= 85 - 15 \\
&= \underline{70}
\end{alignat*}
またB君はX = 60なので\underline{Y = 45}
[2] A君の得点とB君の得点の間に入る受験者の人数はおおよそ何人か。
テストの得点を標準化して解いていく(∵標準正規分布表を用いて計算したいから)。
まず、A君の得点を標準化した値をz_Aとする。すると①より
\begin{alignat*}{2}
z_A &= \cfrac{85 - 65}{10} \\
&= \cfrac{ \ 20 \ }{10} \\
&= 2
\end{alignat*}
である。同様にB君の得点を標準化した値をz_Bとすると、
\begin{alignat*}{2}
z_B &= \cfrac{60 - 65}{10} \\
&= \cfrac{ \ -5 \ }{10} \\
&= -0.5
\end{alignat*}
である。ゆえに、標準正規分布においてZの取りうる値が-0.5以上2以下となるような確率P(-0.5 \leqq X \leqq 2)は、
\begin{alignat*}{2}
P(-0.5 \leqq Z \leqq 2) &= P(Z \leqq 2) - P(Z \leqq -0.5) \\
&= \Phi (2) - \Phi (-0.5) \\
&= \Phi (2) - (1 - \Phi (0.5)) \\
&= (1 - 0.0228) - (1 - (1 - 0.3085)) \\
& (標準正規分布表より) \\
&= (1 - 0.0228) - 0.3085 \\
&= 1 - 0.3313 \\
&= 0.6687
\end{alignat*}
となる。したがって求める受験者の人数は
\begin{alignat*}{2}
& 1000 \times 0.6687 \\
=& 668.7 \\
\fallingdotseq& \underline{669(人)}
\end{alignat*}
[3] このテストの全受験者の得点の箱ひげ図を描いた場合、四分位範囲(箱の長さ)はいくらか。
四分位範囲は定義より
である。ただし、q_3, q_1はそれぞれ
P(Z \leqq q_3) = 0.75 \\
P(Z \leqq q_1) = 0.25
を満たすものとする。よって、
\begin{alignat*}{2}
& P(Z \leqq q_3) &= 0.75 \\
\Leftrightarrow & \Phi (q_3) &= 0.75 \\
\end{alignat*}
である。標準正規分布表より
である。ここで、
\begin{alignat*}{2}
\cfrac{X - 65}{10} &= 0.67 \\
X &= 6.7 + 65 \\
X &= \underline{71.7}
\end{alignat*}
同様にP(z \leqq q_1) = 0.25を求めるが、これは標準正規分布の対称性から
である。よって、
\begin{alignat*}{2}
\cfrac{X - 65}{10} &= -0.67 \\
X &= -6.7 + 65 \\
X &= \underline{58.8}
\end{alignat*}
以上より、求める四分位範囲は
71.7 - 58.3 = \underline{13.4}
[4] このテストで65点以上の受験者のみを集めた場合、彼・彼女らの得点の平均値はおよそいくらか。
E[X|X \geqq 65]を求める。ここで、
\begin{alignat*}{2}
Z &= \cfrac{X - 65}{10} \\
X &= 10Z + 65
\end{alignat*}
であるから、
\begin{alignat*}{2}
E[X|X \geqq 65] &= E[10Z + 65|10Z + 65 \geqq 65] \\
&= E[10Z + 65|Z \geqq 0] \\
&= 65 + 10 E[Z|Z \geqq 0]
\end{alignat*}
である。つまりE[Z|Z \geqq 0]を求めればよい。ここで、Z \geqq 0のもとでのZの条件付き確率密度関数fは
\begin{alignat*}{2}
f(Z|Z \geqq 0) &= \begin{cases}
\cfrac{\varphi (z)}{f(Z \geqq 0)} & (z \geqq 0) \\
0 & (z < 0) \\
\end{cases} \\
\end{alignat*}
であるので、
\begin{alignat*}{2}
f(Z|Z \geqq 0) &= \int_{- \infty}^{\infty} z f(z|z \geqq 0) dz \\
&= \int_{- \infty}^{0} z \cdot 0 dz +
\int_{0}^{\infty} z \cdot \cfrac{\varphi (z)}{f(Z \geqq 0)} dz \\
&= \int_{0}^{\infty} z \sqrt{\cfrac{ \ 2 \ }{\pi}}
\ e^{- \frac{ \ z^2 \ }{2}} dz \\
&= \sqrt{\cfrac{ \ 2 \ }{\pi}}
\int_{0}^{\infty} z \ e^{- \frac{ \ z^2 \ }{2}} dz \\
&= \sqrt{\cfrac{ \ 2 \ }{\pi}}
\lim_{R \to \infty}
\int_{0}^{R} \left(
- e^{- \frac{ \ z^2 \ }{2}}
\right)^{\prime} dz \\
&= \sqrt{\cfrac{ \ 2 \ }{\pi}}
\lim_{R \to \infty}
\left[
- e^{- \frac{ \ z^2 \ }{2}}
\right]_{0}^{R} \\
&= \sqrt{\cfrac{ \ 2 \ }{\pi}}
\lim_{R \to \infty}
\left(
- e^{- \frac{ \ R^2 \ }{2}} + 1
\right) \\
&= \sqrt{\cfrac{ \ 2 \ }{\pi}} \cdot
\left(
- 0 + 1
\right) \\
&= \sqrt{\cfrac{ \ 2 \ }{\pi}} \\
& \fallingdotseq 0.798
\end{alignat*}
以上より、
\begin{alignat*}{2}
E[X|X \geqq 65] &= 65 + 10 E[Z|Z \geqq 0] \\
&= 65 + 10 \times 0.798 \\
&= 72.98 \\
& \fallingdotseq \underline{73}
\end{alignat*}
参考資料
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