等式P(|X - E[X]| \geqq \varepsilon) = P(|X - E[X]|^2 \geqq {\varepsilon}^2)の証明
数学科界隈としては高校数学でもおなじみの以下の定理から、この等式は「自明である」という認識です。
\alpha > 0, \ \beta > 0であるならば、
\alpha \geqq \beta \Leftrightarrow {\alpha}^2 \geqq {\beta}^2
\hspace{5mm} \cdots (☆)
しかし、せっかくなのでその自明な等式の証明を覗いてみたいと思います。
用いる知識は大学数学で学ぶ集合の定義以外は、ほとんど高校数学です。
なお、|X - E[X]| > 0, \varepsilon > 0であることは仮定しておきます。
(証明)
P(|X - E[X]| \geqq \varepsilon), P(|X - E[X]|^2 \geqq {\varepsilon}^2)は、定義より
P(|X - E[X]| \geqq \varepsilon)
= \int_{|x - E[x]| \geqq \varepsilon} f(x) dx , \\
P(|X - E[X]|^2 \geqq {\varepsilon}^2)
= \int_{|x - E[x]|^2 \geqq {\varepsilon}^2} f(x) dx
である。よって、以下の等式が成り立てばよい。
\{ x | \ |x - E[x]| \geqq \varepsilon \}
= \{ x | \ |x - E[x]|^2 \geqq {\varepsilon}^2 \}
※式の差分が積分範囲しかないんだから、その範囲が同じだと言えばいいですよねぇ
(Ⅰ)\{ x | \ |x - E[x]| \geqq \varepsilon \} \subset \{ x | \ |x - E[x]|^2 \geqq {\varepsilon}^2 \}を示す。
つまり、任意にaをとり、
a \in \{ x | \ |x - E[x]| \geqq \varepsilon \}を仮定し、a \in \{ x | \ |x - E[x]|^2 \geqq {\varepsilon}^2 \}を示す。
するとa \in \{ x | \ |x - E[x]| \geqq \varepsilon \}の定義より、
|a - E[a]| \geqq \varepsilon
\hspace{5mm} \cdots ①
が成り立つ。ここで、
|a - E[a]| > 0, \ \varepsilon > 0であるならば、
|a - E[a]| \geqq \varepsilon \Leftrightarrow {|a - E[a]|}^2 \geqq {\varepsilon}^2
\hspace{5mm} \cdots (☆)
が成り立っており、さらに仮定より
|a - E[a]| > 0 かつ \varepsilon > 0
であることから、
|a - E[a]| \geqq \varepsilon \Leftrightarrow {|a - E[a]|}^2 \geqq {\varepsilon}^2
を得る。ここで、①より
{|a - E[a]|}^2 \geqq {\varepsilon}^2
を得る。したがって、
a \in \{ x | \ |x - E[x]|^2 \geqq {\varepsilon}^2 \}
が成り立つ。
\newline
(Ⅱ)\{ x | \ |x - E[x]|^2 \geqq {\varepsilon}^2 \} \subset \{ x | \ |x - E[x]| \geqq \varepsilon \}を示す。
つまり、任意にaをとり、
a \in \{ x | \ |x - E[x]|^2 \geqq {\varepsilon}^2 \}を仮定し、a \in \{ x | \ |x - E[x]| \geqq \varepsilon \}を示す。
するとa \in \{ x | \ |x - E[x]|^2 \geqq {\varepsilon}^2 \}の定義より、
|a - E[a]|^2 \geqq {\varepsilon}^2
\hspace{5mm} \cdots ②
が成り立つ。ここで、
|a - E[a]| > 0, \ \varepsilon > 0であるならば、
|a - E[a]| \geqq \varepsilon \Leftrightarrow {|a - E[a]|}^2 \geqq {\varepsilon}^2
\hspace{5mm} \cdots (☆)
が成り立っており、さらに仮定より
|a - E[a]| > 0 かつ \varepsilon > 0
であることから、
|a - E[a]| \geqq \varepsilon \Leftrightarrow {|a - E[a]|}^2 \geqq {\varepsilon}^2
を得る。ここで、②より
{|a - E[a]|} \geqq {\varepsilon}
を得る。したがって、
a \in \{ x | \ |x - E[x]| \geqq {\varepsilon} \}
が成り立つ。
※(☆)の式はすべて同じものです。
(証明終)
【感想】
正直、自明だという記述を見たときは「なんとなく自明なのはわかりきってる気もするけど・・・なーんか気持ち悪いなぁ・・・」と思っていて、いざ証明してみたら「・・・あ、全部書かなくても証明の全体像が見えた。マジで自明なパターンだから書くのやめようかな・・・」と思ったのですが、世の中には自明な証明って意外とないもんなので、世の中に1個くらいは自明な証明が転がっていてもいいかな?なんて思って残しておきます。
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