情報技術に関する歴史や文化の本
記事化した。今後は以下に加筆する
それがぼくには楽しかったから
オススメ度: ★★★
発行年: 2001年
取り扱う時代: 80~90年代
主な登場人物: リーナス・トーバルズ
- リーナス・トーバルズ氏の自伝
- 共著のデイビッド・ダイヤモンド氏とのやり取りや彼の視点が随所に挟まっており、ルポタージュのような雰囲気もあって楽しく読める
- トーバルズ氏の人生哲学についても多く語られている
- フィンランドに対する解像度が少しあがった気がする
- 他の書籍でも触れられるトピックが色々出てくるので、最初に読むといいかも
- Linuxが生まれた経緯
- 開発が拡大していった理由への考察
- その中でトーバルズ氏がどのような役割を負っていたか
- インターネット黎明期のコミュニティの雰囲気が垣間見えるのもおもしろい
- ソースコードの配布方法
- アンドリュー・タネンバウム氏とのニュースグループでの論争
インターネットの起源
オススメ度: ★★★
発行年: 2000年
取り扱う時代: 60~80年代
主な登場人物: J・C・リックライダー、ローレンス・ロバーツ、ボブ・カーン、ヴィント・サーフなど
- 今日のインターネットの起源にあたる、ARPANETの誕生から廃止に至るまでの変遷を記した本
- 関係者へのインタビューも多くおこなわれたようだが、一貫して著者の客観的な視点から情報がまとめられており読みやすい
- 単純に、ある開発プロジェクトのドキュメンタリーとしておもしろい
- プロジェクトの実現に至るまでに多くの人の思惑や苦心があったこと
- ARPANETの実装技術であるIMP(Interface Message Protocol)の開発と運用
- 通信をするために必要な端末やインターフェース開発の苦労
- ネットワークのデバッグやトラブルシューティングのノウハウ
- IMPがTCP/IPとEthernetに移管されていく様子
- 他の多くの書籍とコンテキストを共有しているため、最初に読む本としてもいいかも
- 情報技術の研究開発の多くが軍事力の強化を目的としていたこと
- 当時の既得権益であったAT&Tと電話事業
- 理論の実践にあたって大学が果たした役割
- 今も身の回りにあるものも色々出てきてリアリティを感じる
- 電子メールという発明の話
- RFC(Request for Comments)の起源
- OSI基本参照モデルとTCP/IPの確執(?)
Webの創成
オススメ度: ★
発行年: 2001年
取り扱う時代: 80~90年代
主な登場人物: ティム・バーナーズ・リー
- WWW(World Wide Web)を構想したティム・バーナーズ・リー氏による自伝
- 全編を通じて本人の視点から書かれているため、Webの実現にあたって何がモチベーションであったか細かく書かれている
- 大きく2部に分かれる
- 前半は、URIやWebブラウザ、HTML等の着想に至った経緯とそれによって実現したい未来の話
- 氏が所属していたCERN(欧州原子核研究機構)におけるプロジェクト推進の苦労はARPANETの実現に通ずるものを感じた
- リー氏の考えるWebにおいて、読み取りよりも更新操作が重要であったこと
- 後半は、W3C(World Wide Web Consortium)の設立と、WWWの発展のためにリー氏が行った活動の記録
- 前半は、URIやWebブラウザ、HTML等の着想に至った経緯とそれによって実現したい未来の話
- プレミアがついてしまっているので、読むなら図書館で借りるとよいかも
Unix考古学
オススメ度: ★★
発行年: 2017年
取り扱う時代: 60~90年代
主な登場人物: ケン・トンプソン、デニス・リッチー、ブライアン・カーニハン、ボブ・モリスなど
- UNIXの歴史と周辺技術についてまとめられた本
- 著者の藤田昭人氏が過去に雑誌で連載していた記事を大幅に加筆した上で再編集したもの
- 当時のUNIXのバージョンの変遷や開発環境の話がメインだが、それらに詳しくなくても充分楽しめる
- (UNIXよりも先にあった)メインフレーム向けOSとの対比
- 開発体制
- プログラムの処理形態
- Multicsプロジェクトからの撤退がUNIX誕生の契機となったこと
- C言語やプロセスのfork、パイプが生まれたいきさつ
- 商用UNIXやBSD誕生の経緯
- (UNIXよりも先にあった)メインフレーム向けOSとの対比
- 幅広い事象に触れられているため、他の本の知識を補強できる
- TCP/IPの普及にあたってBSDが果たした役割
- AT&Tの巨大企業としての立ち位置とオープンソース文化、ソフトウェアライセンスの話
情報セキュリティの敗北史
オススメ度: ★
発行年: 2022年
取り扱う時代: 40~10年代
主な登場人物: -
- インターネット以前からの情報セキュリティに対する取り組みと、それらがどのような結果に至ったかまとめた本
- 歴史という軸よりは各個のトピックに対しての深堀りがされているが、副読本として読むと解像度が上がってよい
- ランド研究所でおこなわれていた初期の情報技術に関する研究
- セキュリティの観点から見たARPANETやUNIX
- マイクロソフトとオラクルの対比
- 参考文献の数がものすごい
- オススメ度はこのスクラップの趣旨に添う度合いでつけましたが、とてもおもしろい本です。オススメ
人月の神話
オススメ度: ★
発行年: 2014年 (1975年)
取り扱う時代: 60~70年代
主な登場人物: -
- IBM OS/360やMulticsなど、当時のメインフレーム向けの大規模開発プロジェクトを例に、よりよい進め方やアンチパターンについてエッセイとしてまとめた本
- 著者のフレデリック・ブルックス氏はIBM System/360やOS/360などの開発マネージャ
- 自分はエンジニア成り立ての頃に読んだため、当時は言わんとすることが(特に技術面で現代との乖離が大きく)イメージが難しい部分が多かった
- 古典的名著のため引用元としてよく出てくるので、他の本でキーワードが出てきたときに副読本として関連する章を読んでみる…という読み方をしてもよいかも
- 銀の弾丸(などない)
- ブルックスの法則
- セカンドシステム症候群
個人的な読書メモです✍
モチベーション
- 2010年代からITエンジニアとして働きはじめたため、それ以前にあった出来事や歴史を知らない
- 最新の技術書やネット記事を読んでも、過去にどんなことがあったか、どんなことが考えられていたかはあまりわからない
- 名著と呼ばれるものは数多くあるが、どれから読みはじめればより理解が深まるのかわからない
- 例えば 人月の神話 は、当時に対して一定の事前知識があった方がより楽しめる本だと感じる
- 当時についての事前知識を持たない一技術者の視点から、それらの本を読んで感じたことをまとめるとよいのでは
- 興味を持った領域でどの本を最初に読むか比較しながら決められる
- 人は忘れる生き物だが少しずつメモを取っておけば記憶の目次にできる
フリーソフトウェアと自由な社会
オススメ度: ★★
発行年: 2003年
取り扱う時代: 80~00年代
主な登場人物: リチャード・ストールマン
- GNUプロジェクトの創始者であるストールマン(RMS)氏が書いた複数のエッセイをまとめたもの
- 技術書翻訳を数多く手掛けている長尾高弘氏が携わっており、語の選び方が丁寧であったり本全体での統一感があって読みやすい
- 個人的には、GPL汚染という言葉やGNU Emacsの作者であるという程度のことしか知らなかったため、その背景にどのような経緯や思想があったのか知れておもしろかった
- フリービールではなくて、フリースピーチである
- 各章は独立して書かれたもののため内容の重複がそこそこあり、通して読むと冗長に感じる部分があるかも
- 私有ソフトウェアに対する過激な論調であったり、素人目にしても無理筋のように感じる内容も一部あるものの、その結果として現代のコミュニティ・業界に大きな影響を及ぼしたということが理解できた
- ユーモアのある方なのでフフッとなった箇所も多かった
-
それがぼくには楽しかったからにおいてRMS氏のことが少し出てくるが、この本においてもトーバルズ氏やLinuxについて言及している部分が少なからずあり、続けて読むと理解しやすいように感じた
- 特に20章の
フリーソフトウェア:自由と協力
におけるLinuxとGNUの目的の違いの話
- 特に20章の
伽藍とバザール
オススメ度: ★
発行年: 1999年
取り扱う時代: 90年代
主な登場人物: エリック・レイモンド、リーナス・トーバルズ、リチャード・ストールマン
- GNUプロジェクトに関わっていたレイモンド氏が、Linux登場以降のオープンソース界隈について評したエッセイ集
- それがぼくには楽しかったからやフリーソフトウェアと自由な社会に続けて読むのがよさそう
- エンジニアが書いた本であるが、非エンジニアの方にでも読めるような内容を意識しているように感じた
- 文量もそこまで多くない
- 3つの話題が出てくる
- 大規模なシステムの開発手法として、従来の一例としてのGNU Emacs(伽藍方式)とLinux(バザール方式)との比較
- コミュニティにおける文化や所作と、それ以前にあった既存の文化との類似性
- オープンソースの収益性や持続性に対する指摘への反証
- 当時のエンタープライズ領域との距離感や、GitHub以前のオープンソース活動について雰囲気をしれたのもよかった
青空文庫でも日本語訳を読むことができる模様(私は未読です)
教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書
オススメ度: ★
発行年: 2005年
取り扱う時代: 80~00年代
主な登場人物: -
- 日本におけるインターネットの普及から2000年代前半までの動向について、インターネットユーザー個人の活動に焦点を当てて概観した本
- 逆に言うと、大企業の動向などについてまとめたものではない
- ARPANET誕生から日本へのインターネット普及までの歴史や、インターネット以前に日本でおこなわれていたパソコン通信についても紹介されている
- 資料性が非常に高い
- ウェブライターである著者のばるぼら氏が、個人で開設していたWebページを再編したもの
- ホームページ、アングラ、匿名掲示板、FLASH、ウェブログなどのカテゴリごとに、ページや文化の盛衰をひたすら羅列していくスタイル
- 多くの事実から見えてくる大まかな流行について解説しているため、説得力がすごい
- 当時を知らないと文字を追うだけになってしまう感もあるので、年表などは適宜流し読みしてもよいかも
- 音楽やミニコミ誌、同人活動といった元々日本にあった文化とインターネット黎明期の繋がりについても知ることができる
- 自分は2000年代前半からインターネットに触れ始めたので、その時点で存在したWebサイトや文化がどのような順序で成立していったか知ることができて非常におもしろかった
- 逆に、SNSや動画サイトからインターネットを知った世代の人には情報の粒度が細かすぎるように感じるかも?
闘うプログラマー
オススメ度: ★★
発行年: 2009年
取り扱う時代: 80~90年代
主な登場人物: デヴィット・カトラー、ビル・ゲイツなど
- のちのWindows XPやWindows Serverの祖先にあたるWindows NTの開発ドキュメンタリー
- プロジェクトを主導したデヴィット・カトラーからの視点を中心に、グラフィック、ネットワーク、ファイルシステムといった様々なチームにおけるメンバーの活躍や苦悩が語られる
- 数百万行にわたるOSの開発という巨大プロジェクトにおいて、リーダーやメンバーにどのような資質や働き方が求められるか
- 昨今の価値観から考えると厳しい話も多く出てくるが、それを抜きにしてもカトラー氏の仕事に対する姿勢や行動については学べる点が多いと感じた
- 一方でユーモアのある話も少なからずあり、どのような境遇においても笑いは大事だなと思った
- 信頼性の高いOSを開発するのに、90年代当時でどのような技術的取り組みがなされていたか知ることができる
- ビルド・ラボやテスト・チーム、リリース直前のデバッグの話
- 今は比較的標準的な機能となっているプログラムの互換性・移植性について、当時の業界の水準とNTの目指した品質
-
それがぼくには楽しかったからやフリーソフトウェアと自由な社会などの本において、当時のマイクロソフトやビル・ゲイツを業界における体制側として描かれているのみだが、本書を読むと絶えず難しい意思決定をしていたことが知れる
- OS/2を共同開発していたIBMとの関係性
- OS/2やWindows、DOSの開発などの既存事業とのバランスの取り方
- 新たなCPUやUNIXの存在といった市場環境
- 業界からの企業に対する(過度に高い)評価
- この時期のマイクロソフトから見たときにDECが旧弊の企業だったことから、何かについて知るには他の物事との関連性が重要であるように改めて感じた
エニアック 世界最初のコンピュータ開発秘話
オススメ度: ★★★
発行年: 2001年
取り扱う時代: 40~70年代
主な登場人物: プレス・エッカート、ジョン・モークリー、フォン・ノイマンなど
- 世界初の大型電子式汎用コンピュータであるENIAC(Electronic Numerical Integrator and Computer)が誕生するに至った経緯と、中心的な開発者であったエッカート氏とモークリー氏の生涯についてまとめられている
- ENIACの前にあった計算機に関するコンセプトがどのようなもので、それらとENIACがどのように異なるか
- プログラム内蔵方式(ノイマン型コンピュータ)とパンチカードを用いたデータ入力
- 電子式と機械式
- 真空管(第一世代コンピュータ)とリレー素子
- ENIACの開発後に二人が辿った運命
- EDVACの開発
- ノイマン氏やゴールドスタイン氏、大学との確執
- 特許権にまつわる裁判
- その結果が70~80年代の米国に与えた影響
- IBMの特許の話はフリーソフトウェアと自由な社会でも少し触れられていた
- その結果が70~80年代の米国に与えた影響
- ENIACの前にあった計算機に関するコンセプトがどのようなもので、それらとENIACがどのように異なるか
- 他の本より少し前の時代の本なので、現代の自分たちが直接的に使っているものはほとんど出てこないが、様々な物事の成り立ちや今日につながる話を知れておもしろい
- 第二次世界大戦の戦況がENIACの開発に与えた影響
- コンピュータの元々の意味
- IBMやUNISYSの成り立ち
- 成功の話というよりは、敗北・失敗の話である
- (現代の方式の)コンピューターの発明者と聞かれるとフォン・ノイマンが頭に思い浮かぶが、そこには複雑な経緯があったこと
- 技術的な成功とビジネス上の成功が必ずしも一致しないこと
- ただ、没後他者によってこのような本が書かれていること自体が、最終的には事実は世に広く知られることを示しているように思った
カッコウはコンピュータに卵を産む
オススメ度: ★★
発行年: 1991年
取り扱う時代: 80年代
主な登場人物: クリフォード・ストール、ボブ・モリスなど
- LBL(ローレンス・バークレー国立研究所)で天文学を研究しながらシステム管理者として働きはじめたストール氏が、実際に遭遇したコンピュータへの不正侵入事件について顛末を記した本
- 1986年から1988年ごろにかけての出来事をすぐに書籍化したこともあり、当時海外でベストセラーになった
- 事実に基づいた内容だが、全編が筆者を主人公とした一人称視点で語られるため小説として読める
-
フリーソフトウェアと自由な社会の著者であるRMS氏をはじめとして、UNIXに関連の深い人たちの名前が聞かれたり、実際に登場する
- 80年代にどのようなOSやツールを使っていたか、ネットワーク運用がされていたか知れておもしろい
- 様々な(原始的な)ハッキング手法や、それらに対してストール氏がどのように対抗したか
- 全体的に素朴でおおらかな時代であったことがわかる
- ハッカーの監視方法や逆探知のやり方
- インターネットの起源でもARPANETの後継として紹介されているMILNETが舞台となっており、続けて読むと感慨深い
- 80年代にどのようなOSやツールを使っていたか、ネットワーク運用がされていたか知れておもしろい
- 米国の政府機関の人物もたくさん出てくるので、どういうイメージの組織として捉えられていたのか知れる
- CIA / FBI / NSA などなど...
- エピローグとして、情報セキュリティの敗北史でも解説されているとある事件の詳細について書かれている
- 併せて読むと楽しめると思います
サイバー戦争 終末のシナリオ
オススメ度: ★
発行年: 2022年
取り扱う時代: 80年代~20年代
主な登場人物: -
- ニューヨークタイムズの記者であるニコール・パーロース氏が、自身が取材してきたサイバーテロに関する事件や歴史について纏めた本
- 攻撃に対する技術的な解説よりも、それらが発生する力学や国家間の関係について掘り下げられている
- アメリカを中心においた文章構成となっており、日本からは見えづらいコンテキストについても知ることができる
- 2016年の米大統領選挙や現在も継続しているウクライナ侵攻が、どのような歴史的経緯を持っているか
- 著者の一人称視点で描かれているため、ノンフィクションとしても楽しめる
- 暴露本やスパイ小説のような場面もたびたび出てきて緊張感がある
- 上下巻で20章ほどに分かれており、幅広い時代の様々なトピックを扱う
- 古くは冷戦の時代から絶えず攻防が繰り広げられていたこと
- 当初なんの価値もなかったシステムのバグが、どのようにしてゼロデイ攻撃のためのエクスプロイトとして扱われるようになっていったか
- 売り手・買い手が誰か
- スタックスネット以降、業界のパワーバランスが変わって来ていること
- 章ごとに時代と話題が転換するため、話題を見失ってしまうこともたまにあった
- 日本についてはほとんど言及されておらず、サイバーテロの分野については比較的に防御側の国である印象を持った
- 国際情勢や世界史、政治に関する基本的な知識がないため読み取れていない文意もあるように感じ、勉強したくなった
半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防
オススメ度: ★★
発行年: 2023年
取り扱う時代: 40年代~20年代
主な登場人物: ロバート・ノイス、ゴードン・ムーア、ジャック・キルビー盛田昭夫、モリス・チャンなど
- 半導体産業の成り立ちと、地政学・経済学の観点から見る現況について経済史家である著者がまとめた本
- エンジニア向けの本というわけでもなく、技術的なイノベーションやトピック、産業的な構造(ファブレス企業の台頭)についても本の中で説明してくれるので分かりやすく読める
- 他の本と同じくアメリカの現状に対して提言したい筆者の意図があり、
第49章 半導体の支配という土台
がそれ- 日本に住んでいると自国の判断が愚かであるという言説をよく耳にするが、同じことの米国版を読んでどこの国にも問題はあるものだと思った
- 戦争と名前がついているが話題は多岐に渡り、その上でいずれもよく整理されており読みやすい
- 歴史の軸
- 戦争における計算の必要性
- エニアック 世界最初のコンピュータ開発秘話 でも語られている、真空管からトランジスタ、集積回路への転移
- シリコンバレーの起源
- インテルの発展(と衰退、再興)、ムーアの法則
- 生産のオフショアリングとグローバル化、ファブレス企業
- 武器化した相互依存
- 相手より速く走り、競争に勝つ
- 国の軸
- アメリカ / 日本 / 台湾 / 韓国 / シンガポール / 中国 / ロシア などの各国が半導体産業の発展においてどのような立ち位置にあるか
- サイバー戦争 終末のシナリオではアメリカとロシアの対立構造についてフォーカスされているが、この本ではアメリカ(とその協力国)と中国との関係性について理解を深めることができる
- アメリカ国内の話としても、NSA(国家安全保障局)が割と出てくるので他の本を読んでいるとシナジーがある
- アメリカ / 日本 / 台湾 / 韓国 / シンガポール / 中国 / ロシア などの各国が半導体産業の発展においてどのような立ち位置にあるか
- 企業の軸
- インテル / NVIDIA / ARM / TSMC / ソニー / ファーウェイ / サムスン電子 / ASMLなど、半導体産業にどのような企業が関わっているか知れる
- キヤノンやニコンなども出てくる
- インテル / NVIDIA / ARM / TSMC / ソニー / ファーウェイ / サムスン電子 / ASMLなど、半導体産業にどのような企業が関わっているか知れる
- 技術の軸
- x86 / ARM / RISC-VなどCPUアーキテクチャについて
- EUVリソグラフィの話
- 歴史の軸
- 日本については
第三部 日本の台頭
として丸々一部が割かれている- 80年代に電子機器が強かった…くらいの浅い理解しかしていなかったが、なぜそのような状況に至ったかと、そこからどのように影響力を失っていったか知れてよかった
ハッカーズ
オススメ度: ★★★
発行年: 1987年
取り扱う時代: 50年代~80年代
主な登場人物: リチャード・グリーンブラット、リー・フェルゼンスタイン、ジョン・マッカーシー、テッド・ネルソン、ビル・ゲイツ、スティーブ・ウォズニアック、ケン・ウィリアムズ、リチャード・ストールマンなど
- ジャーナリストのスティーブン・レビー氏が、ハッカーと彼らが持っているハッカー思想についてまとめた本
- 前書きで
この本はコンピューター業界の正史ではない
としつつも、100名以上の人と対談して書かれたらしく、独自研究には留まらない読みごたえのある内容だった - 一見して掴みどころがなく難しい題材のように感じるが、多くの傍証を元にした著者なりの考察があり、普遍的なことについて語られているように感じた
- 個人的には、Zennなどにおける技術記事の公開について重なる部分を感じた
- 前書きで
- 大きく3章に分かれる
- MITおよび人工知能研究所(AIラボ)の話
- 最初期のハッカー文化がどこで誕生したか
- MITのテック鉄道模型クラブについて
- どのようなハックがおこなわれていたか
- Space War や Game of LIFE など、YouTubeで実物を探すとより楽しめる
- 情報技術の大衆化によってハッカーやその思想が希釈・拡大していったこと
- 最初期のハッカー文化がどこで誕生したか
- ホームブリュー・コンピュータ・クラブの話
- コンピューター・リブ の意匠はミームで見たことがあったので成り立ちが知れてよかった
- Appleの創業期の話もおもしろかった
- シエラオンライン(シエラエンターテインメント)社の話
- Apple IIやATARI 800でのゲーム開発
- コンピューターによる個人の能力の最大化
- ハッカー思想と商業主義の不一致
- MITおよび人工知能研究所(AIラボ)の話
- 扱われている時代もトピックも幅広いので、他の本と併せて読むと楽しめると思います
- ハッカーからみたIBMが官僚的な組織で、ハッカー思想と相対するものであったこと
- 色んな本で度々出てくるDEC社のコンピュータ(PDP-8など)がどんな使われ方をしていたか知れる
- 一時期のRMS氏について語られるので フリーソフトウェアと自由な社会 のコンテキストを知ることができる
先駆の才 トーマス・ワトソン・ジュニア
オススメ度: ★★
発行年: 1991年
取り扱う時代: 20年代~80年代
主な登場人物: トーマス・ワトソン・ジュニア、トーマス・ワトソン・シニア、プレス・エッカート、ジョン・モークリー、フレデリック・ブルックスなど
- IBMの2代目社長であるトーマス・ワトソン・ジュニア氏の自伝
- 生まれてからIBMの社長を引き継ぎ退任するまでの半生が語られる
- ハッカーズをはじめとした多くの本でIBMが官僚的組織であるといった表現がされていることや、そうした指摘をおこないたくなるほど寡占的な大企業であった…といったコンテキストについて当時の状況を深く知りたくなったので読んだ
- 自伝として非常におもしろかった
- 本の前半は自身と父との関係性の話が占めており、企業経営者の息子として生まれることの苦悩が伺える
- 特に、自身が若いころ落第者であったという認識や、IBMを経営していくにあたっての苦悩が率直に語られていて、感情移入して読める部分も多かった
- 情報技術の話は多く出てこないが、技術系の本では深堀されることのない周辺状況や時勢を知れて楽しかった
- パンチカードやメインフレームの普及によってIBMがアメリカ社会に及ぼした影響の大きさ
- IBMはサービスを売る会社、またかつては家族的会社であったこと
- (当たり前なのかもしれないが)第二次世界大戦中はみな戦争をしていて、トーマス・ワトソン・ジュニア氏も従軍しており、その中での経験が企業経営にも活かされていたこと
- もともとの興味としては、System/360や700/7000シリーズといったIBMのメインフレームに関するエピソードを知りたいと思っていたが、本の文脈としては技術的な深堀はなされないので、そうした期待がある場合は別の情報源をあたった方がよい
- と言いつつ、日本語訳されている本などは皆無な模様…
- 本の前半は自身と父との関係性の話が占めており、企業経営者の息子として生まれることの苦悩が伺える
- 人月の神話 や エニアック 世界最初のコンピュータ開発秘話の副読本として読むとよさそう