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情報技術に関する歴史や文化の本
ここ半年ぐらいスクラップでまとめていた読書ログが一定の分量になったため、記事にすることにしました
気になっている本はまだまだあるのですが、知識欲としては一旦落ち着いたので区切りを兼ねて記します📝
オススメの本があれば教えてもらえると嬉しいです📖
モチベーション
- 2010年代からITエンジニアとして働きはじめたため、それ以前にあった出来事や歴史を知らない
- 最新の技術書やネット記事を読んでも、過去にどんなことがあったか、どんなことが考えられていたかはあまりわからない
- 名著と呼ばれるものは数多くあるが、どれから読みはじめればより理解が深まるのかわからない
- 例えば 人月の神話 は、当時に対して一定の事前知識があった方がより楽しめる本だと感じる
- 当時についての事前知識を持たない一技術者の視点から、それらの本を読んで感じたことをまとめるとよいのでは
- 興味を持った領域でどの本を最初に読むか比較しながら決められる
- 人は忘れる生き物だが少しずつメモを取っておけば記憶の目次にできる
- 筆者は内容のほとんどを既に忘れています🤪
諸注意
- 読書ログ中の
オススメ度
は、初学者にとっての読みやすさ
を示すものと考えてください- 以下のような要素を持つ本は★が多いです
- 文章が平易であったり、日本語訳が自然である
- 本の扱うテーマがシンプルで、記憶に残りやすい
- ユーモアがあり、楽しく読むことができる
- 読んだけど敢えて書かなかった本も何冊かあるので、この記事に書いている本は基本的に全てオススメできる本です📚
- 以下のような要素を持つ本は★が多いです
- 登場人物や感想は、読み終えた後に筆者がその場で書き残したものです
- 内容が不正確であったり、本を語るうえで重要な要素が抜け漏れている可能性大です
- 発行年は本の後ろに書いてあるものを適当にコピーしているので、初版や底本の年を正しく記したものではありません
-
その出来事からどのくらい後の時代に書かれた本か
という観点が読んでいて割と重要に感じたためメモしているものです
-
- 本へのリンクは、電子書籍があったものは電子書籍、ないものは物理本にしました
年表
mermaidの練習がてら、ガントチャートを使って歴史上のできごとと本が取り扱う時期をまとめてみました
スクラップを眺めながら「本でこういう話が出てきたな~」と思い出しながら書いたため、重要事項の抜け漏れがたくさんあるものと思います🙏
ご指摘いただけたら、適宜加筆したいと思います
ハード・OS
チューリングを読む コンピュータサイエンスの金字塔を楽しもう
オススメ度: ★★★
発行年: 2011年
取り扱う時代: 1900~1960年代
主な登場人物: アラン・チューリング、フォン・ノイマンなど
-
CODE コードから見たコンピュータのからくり などの執筆で知られるチャールズ・ぺゾルド氏が書いたチューリングの解説本
- 氏の執筆した論文「計算可能数とその決定問題への応用」の訳文の間にぺゾルド氏による解説が多量に挟みこまれる構成が取られている
- 数学書というよりもドキュメンタリーの趣がある
- 論文の執筆背景の中でエニアック 世界最初のコンピュータ開発秘話 に登場するジョン・モークリー氏なども登場し、黎明期のコンピュータが発明されるのと前後してどのようなことが考えられていたのか知れる
- コンピュータが実際に誕生する前に、それが持つ可能性や制限が明らかにされていたという事実は結構衝撃的だった
- 氏の執筆した論文「計算可能数とその決定問題への応用」の訳文の間にぺゾルド氏による解説が多量に挟みこまれる構成が取られている
- 数学の知識がない人でも楽しめるように様々な工夫が凝らされている
- 序盤の章は、そもそも数とはなにかといった基本的な話や、チューリングの論文の前に存在していた数学上の諸問題に関する解説、それらにまつわる歴史的な話が散りばめられており、興味深く読める
- 書籍中の至る所で、初回の通読時は論文の証明部分は読み飛ばしてよいと念を押してあり、罪悪感も少ない
- 一方で、実数と計算可能数の話など、数学的なエッセンスの部分は平易な言葉で説明してくれているので、置いてきぼりにされる感覚もほとんどなかった
- チューリングマシンを知る過程で数や計算に対しての理解が深まったところで、
第Ⅳ部 展望
が用意されておりとても面白かった- 知性の話は、昨今の生成AIの発達を見ていると感慨深く読めた
- 序盤の章は、そもそも数とはなにかといった基本的な話や、チューリングの論文の前に存在していた数学上の諸問題に関する解説、それらにまつわる歴史的な話が散りばめられており、興味深く読める
先駆の才 トーマス・ワトソン・ジュニア
オススメ度: ★★
発行年: 1991年
取り扱う時代: 1920~1980年代
主な登場人物: トーマス・ワトソン・ジュニア、トーマス・ワトソン・シニア、プレス・エッカート、ジョン・モークリー、フレデリック・ブルックスなど
- IBMの2代目社長であるトーマス・ワトソン・ジュニア氏の自伝
- 生まれてからIBMの社長を引き継ぎ退任するまでの半生が語られる
- ハッカーズをはじめとした多くの本でIBMが官僚的組織であるといった表現がされていることや、そうした指摘をおこないたくなるほど寡占的な大企業であった…といったコンテキストについて当時の状況を深く知りたくなったので読んだ
- 自伝として非常におもしろかった
- 本の前半は自身と父との関係性の話が占めており、企業経営者の息子として生まれることの苦悩が伺える
- 特に、自身が若いころ落第者であったという認識や、IBMを経営していくにあたっての苦悩が率直に語られていて、感情移入して読める部分も多かった
- 情報技術の話は多く出てこないが、技術系の本では深堀されることのない周辺状況や時勢を知れて楽しかった
- パンチカードやメインフレームの普及によってIBMがアメリカ社会に及ぼした影響の大きさ
- IBMはサービスを売る会社、またかつては家族的会社であったこと
- (当たり前なのかもしれないが)第二次世界大戦中はみな戦争をしていて、トーマス・ワトソン・ジュニア氏も従軍しており、その中での経験が企業経営にも活かされていたこと
- もともとの興味としては、System/360や700/7000シリーズといったIBMのメインフレームに関するエピソードを知りたいと思っていたが、本の文脈としては技術的な深堀はなされないので、そうした期待がある場合は別の情報源をあたった方がよい
- と言いつつ、日本語訳されている本などは皆無な模様…
- 本の前半は自身と父との関係性の話が占めており、企業経営者の息子として生まれることの苦悩が伺える
- 人月の神話 や エニアック 世界最初のコンピュータ開発秘話の副読本として読むとよさそう
エニアック 世界最初のコンピュータ開発秘話
オススメ度: ★★
発行年: 2001年
取り扱う時代: 1930~1970年代
主な登場人物: プレス・エッカート、ジョン・モークリー、フォン・ノイマンなど
- 世界初の大型電子式汎用コンピュータであるENIAC(Electronic Numerical Integrator and Computer)が誕生するに至った経緯と、中心的な開発者であったエッカート氏とモークリー氏の生涯についてまとめられている
- ENIACの前にあった計算機に関するコンセプトがどのようなもので、それらとENIACがどのように異なるか
- プログラム内蔵方式(ノイマン型コンピュータ)とパンチカードを用いたデータ入力
- 電子式と機械式
- 真空管(第一世代コンピュータ)とリレー素子
- ENIACの開発後に二人が辿った運命
- EDVACの開発
- ノイマン氏やゴールドスタイン氏、大学との確執
- 特許権にまつわる裁判
- その結果が70〜80年代の米国に与えた影響
- IBMの特許の話はフリーソフトウェアと自由な社会でも少し触れられていた
- その結果が70〜80年代の米国に与えた影響
- ENIACの前にあった計算機に関するコンセプトがどのようなもので、それらとENIACがどのように異なるか
- 他の本より少し前の時代の本なので、現代の自分たちが直接的に使っているものはほとんど出てこないが、様々な物事の成り立ちや今日につながる話を知れておもしろい
- 第二次世界大戦の戦況がENIACの開発に与えた影響
- コンピュータの元々の意味
- ここに興味を持った人はPROVING GROUND コンピューター誕生の歴史に隠れた6人の女性プログラマー を読むとよい
- IBMやUNISYSの成り立ち
- 成功の話というよりは、敗北・失敗の話である
- (現代の方式の)コンピューターの発明者と聞かれるとフォン・ノイマンが頭に思い浮かぶが、そこには複雑な経緯があったこと
- 技術的な成功とビジネス上の成功が必ずしも一致しないこと
- ただ、没後他者によってこのような本が書かれていること自体が、最終的には事実は世に広く知られることを示しているように思った
PROVING GROUND コンピューター誕生の歴史に隠れた6人の女性プログラマー
オススメ度: ★★
発行年: 2024年
取り扱う時代: 1930~1940年代
主な登場人物: ENIAC6(ケイ、フラン、ルース、ジーン、ベティ、マーリン)、ジョン・モークリー、プレス、エッカートなど
-
ICANNの創設にも関わったインターネット政策と知的財産の専門家であるキャシー・クレイマン氏が、大学時代にENIACプロジェクトについて感じたある疑問を発端に、プログラム技師の女性たちの活躍や生涯を記したドキュメンタリー
- 同氏により制作され2014年に公開されたThe Computersという映画の書籍版
-
エニアック 世界最初のコンピュータ開発秘話 がENIACの開発者であるモークリー氏とエッカート氏にフォーカスしているのに対して、本書はENIACを実際に操作していた人々について焦点があたっている
- コンピューター技術の歴史書であることに加えて、女性史としての側面も持っている
- 第二次世界大戦中に女性が担った役割
- それらが近代の歴史において欠落しているという指摘
- 著者が収集したオーラルヒストリーを中心に構成されている
- 歴史であれば割愛されてしまいそうな些細な内容についても触れられていることから、彼女たちの心情についてより感情移入して読める
‐ 世界初の職業的プログラマーがどのような仕事をしていたか知れる
- 歴史であれば割愛されてしまいそうな些細な内容についても触れられていることから、彼女たちの心情についてより感情移入して読める
- システムの開発者と運用者が対等な関係を築いていたこと
- ENIACプロジェクトの内実について、友好的な状態にあったことが知れてほっとするような気持ちがあった
- ENIACの運用における詳細
- 操作方法をどうやって学んだか
- どんなトラブルがあって、どのように解決していったか
- コンピューター技術の歴史書であることに加えて、女性史としての側面も持っている
半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防
オススメ度: ★★
発行年: 2023年
取り扱う時代: 1940~2020年代
主な登場人物: ロバート・ノイス、ゴードン・ムーア、ジャック・キルビー、盛田昭夫、モリス・チャンなど
- 半導体産業の成り立ちと、地政学・経済学の観点から見る現況について経済史家である著者がまとめた本
- エンジニア向けの本というわけでもなく、技術的なイノベーションやトピック、産業的な構造(ファブレス企業の台頭)についても本の中で説明してくれるので分かりやすく読める
- 他の本と同じくアメリカの現状に対して提言したい筆者の意図があり、
第49章 半導体の支配という土台
がそれ- 日本に住んでいると自国の判断が愚かであるという言説をよく耳にするが、同じことの米国版を読んでどこの国にも問題はあるものだと思った
- 戦争と名前がついているが話題は多岐に渡り、その上でいずれもよく整理されており読みやすい
- 歴史の軸
- 戦争における計算の必要性
- エニアック 世界最初のコンピュータ開発秘話 でも語られている、真空管からトランジスタ、集積回路への転移
- シリコンバレーの起源
- インテルの発展(と衰退、再興)、ムーアの法則
- 生産のオフショアリングとグローバル化、ファブレス企業
- 武器化した相互依存
- 相手より速く走り、競争に勝つ
- 国の軸
- アメリカ / 日本 / 台湾 / 韓国 / シンガポール / 中国 / ロシアなどの各国が半導体産業の発展においてどのような立ち位置にあるか
- サイバー戦争 終末のシナリオではアメリカとロシアの対立構造についてフォーカスされているが、この本ではアメリカ(とその協力国)と中国との関係性について理解を深めることができる
- アメリカ国内の話としても、NSA(国家安全保障局)が割と出てくるので他の本を読んでいるとシナジーがある
- アメリカ / 日本 / 台湾 / 韓国 / シンガポール / 中国 / ロシアなどの各国が半導体産業の発展においてどのような立ち位置にあるか
- 企業の軸
- インテル / NVIDIA / ARM / TSMC / ソニー / ファーウェイ / サムスン電子 / ASMLなど、半導体産業にどのような企業が関わっているか知れる
- キヤノンやニコンなども出てくる
- インテル / NVIDIA / ARM / TSMC / ソニー / ファーウェイ / サムスン電子 / ASMLなど、半導体産業にどのような企業が関わっているか知れる
- 技術の軸
- x86 / ARM / RISC-VなどCPUアーキテクチャについて
- EUVリソグラフィの話
- 歴史の軸
- 日本については
第三部 日本の台頭
として丸々一部が割かれている- 80年代に電子機器が強かった…くらいの浅い理解しかしていなかったが、なぜそのような状況に至ったかと、そこからどのように影響力を失っていったか知れてよかった
Unix考古学
オススメ度: ★
発行年: 2017年
取り扱う時代: 1960~1990年代
主な登場人物: ケン・トンプソン、デニス・リッチー、ブライアン・カーニハン、ボブ・モリスなど
- UNIXの歴史と周辺技術についてまとめられた本
- 著者の藤田昭人氏が過去に雑誌で連載していた記事を大幅に加筆した上で再編集したもの
- 当時のUNIXのバージョンの変遷や開発環境の話がメインだが、それらに詳しくなくても充分楽しめる
- (UNIXよりも先にあった)メインフレーム向けOSとの対比
- 開発体制
- プログラムの処理形態
- Multicsプロジェクトからの撤退がUNIX誕生の契機となったこと
- C言語やプロセスのfork、パイプが生まれたいきさつ
- 商用UNIXやBSD誕生の経緯
- (UNIXよりも先にあった)メインフレーム向けOSとの対比
- 幅広い事象に触れられているため、他の本の知識を補強できる
- TCP/IPの普及にあたってBSDが果たした役割
- AT&Tの巨大企業としての立ち位置とオープンソース文化、ソフトウェアライセンスの話
- UNIX普及期(1980年代)の文化的な側面を知りたい方はLife with UNIX もオススメ
超マシン誕生
オススメ度: ★
発行年: 1981年
取り扱う時代: 1970年代
主な登場人物: カール・アルシング、エドワード・ラサラ、トム・ウエストなど
- ジャーナリストであるトレイシー・キダー氏が、データゼネラル社で行われていたEagleプロジェクト(Eclipse MV/8000を開発)に密着して執筆したドキュメンタリー
- 1982年にピューリツァー賞 を受賞した
- システム開発というテーマを取り扱った本としては 闘うプログラマー や エニアック 世界最初のコンピュータ開発秘話 などがあるが、著者が描こうとしているテーマが異なるように感じた
- 会社という営利組織において、プログラマーがという職業が持っている特異性を一般人が理解できるよう説明している
- マイクロコード の開発やシステムテストの難しさについて、具体的にイメージができるように丁寧な説明がなされている
- プロジェクトに参画した多くのマイクロキッズ・ハーディーボーイの発言を取り上げて、話を追いながら自然と価値感覚が理解できるようになっている
- 組織やプロジェクト運営におけるマネジメントの役割・価値
- 会社という営利組織において、プログラマーがという職業が持っている特異性を一般人が理解できるよう説明している
闘うプログラマー
オススメ度: ★★
発行年: 2009年
取り扱う時代: 1980~1990年代
主な登場人物: デヴィット・カトラー、ビル・ゲイツなど
- のちのWindows XPやWindows Serverの祖先にあたるWindows NTの開発ドキュメンタリー
- プロジェクトを主導したデヴィット・カトラーからの視点を中心に、グラフィック、ネットワーク、ファイルシステムといった様々なチームにおけるメンバーの活躍や苦悩が語られる
- 数百万行にわたるOSの開発という巨大プロジェクトにおいて、リーダーやメンバーにどのような資質や働き方が求められるか
- 昨今の価値観から考えると厳しい話も多く出てくるが、それを抜きにしてもカトラー氏の仕事に対する姿勢や行動については学べる点が多いと感じた
- 一方でユーモアのある話も少なからずあり、どのような境遇においても笑いは大事だなと思った
- 信頼性の高いOSを開発するのに、90年代当時でどのような技術的取り組みがなされていたか知ることができる
- ビルド・ラボやテスト・チーム、リリース直前のデバッグの話
- 今は比較的標準的な機能となっているプログラムの互換性・移植性について、当時の業界の水準とNTの目指した品質
-
それがぼくには楽しかったからやフリーソフトウェアと自由な社会などの本において、当時のマイクロソフトやビル・ゲイツは業界における体制側として描かれているのみだが、本書を読むと絶えず難しい意思決定をしていたことが知れる
- OS/2を共同開発していたIBMとの関係性
- OS/2やWindows、DOSの開発などの既存事業とのバランスの取り方
- 新たなCPUやUNIXの存在といった市場環境
- 業界からの企業に対する(過度に高い)評価
- この時期のマイクロソフトから見たときにDECが旧弊の企業だったことから、何かについて知るには他の物事との関連性が重要であるように改めて感じた
それがぼくには楽しかったから
オススメ度: ★★★
発行年: 2001年
取り扱う時代: 1980〜1990年代
主な登場人物: リーナス・トーバルズ
- リーナス・トーバルズ氏の自伝
- 共著のデイビッド・ダイヤモンド氏とのやり取りや彼の視点が随所に挟まっており、ルポタージュのような雰囲気もあって楽しく読める
- トーバルズ氏の人生哲学についても多く語られている
- フィンランドに対する解像度が少しあがった気がする
- 他の書籍でも触れられるトピックが色々出てくるので、最初に読むといいかも
- Linuxが生まれた経緯
- 開発が拡大していった理由への考察
- その中でトーバルズ氏がどのような役割を負っていたか
- インターネット黎明期のコミュニティの雰囲気が垣間見えるのもおもしろい
- ソースコードの配布方法
- アンドリュー・タネンバウム氏とのニュースグループでの論争
ネットワーク・Web
ヴィクトリア朝時代のインターネット
オススメ度: ★
発行年: 2011年
取り扱う時代: 1800~1910年代
主な登場人物: クロード・シャップ、ウィリアム・クック、チャールズ・ホイートストン、サミュエル・モールス、ウィリアム・トムソン、トーマス・エジソンなど
- 1800年代以降急速に発展したテレグラフ(腕木通信)および電信の成り立ちと、その後1900年代に電話に取って変わられていく様子について記した本
- 電信の発明の歴史だけでなく、普及に至った経緯やその中で当時の人にどのように受け入れられていったかといった文化史に至るまで広くカバーされている
- 誕生当初、導入にあたって否定的な立場を取る人が多かったこと
- 戦争や商業、新聞などへの影響
- 今日のインターネットでも活躍している様々な概念が、遥か昔にはすでに存在していたことが知れて面白かttあ
- 大陸や海底を横断するケーブルが思った以上に昔からあった
- DNSやエンドツーエンド暗号化の先祖の話が知れる
インターネット・サイエンスの歴史人物館
オススメ度: ★
発行年: 2012年
取り扱う時代: 1910~2000年代
主な登場人物: バネバー・ブッシュ、アイヴァン・サザランド、ジョン・マッカーシー、ドナルド・デイヴィスなど
-
impress Smart Gridで連載されていた同名の記事が書籍化されたもの
- 各回読み切りの連載を一冊の本にしているため同じ内容の話が繰り返し出てくるが、却って内容が頭に残りやすくなって個人的にはよかった
- 内容も割と短めなため読みやすい
- 副題として
情報通信技術の礎を築いた科学者たち
が付いており、ARPANETの成立に関連した人物の生い立ちや偉業について客観的な視点から説明されている
- 各回読み切りの連載を一冊の本にしているため同じ内容の話が繰り返し出てくるが、却って内容が頭に残りやすくなって個人的にはよかった
-
インターネットの起源の副読本として読むとよさそう
- Sketchpadを開発したアイヴァン・サザランド氏やLISPの生みの親であるジョン・マッカーシー氏など、同書では大きくフォーカスされていないが重要な人物についておさらいできる
クロード・シャノン 情報時代を発明した男
オススメ度: ★★★
発行年: 2019年
取り扱う時代: 1910~1990年代
主な登場人物: クロード・シャノン、バネバー・ブッシュ、アラン・チューリング、ジョージ・ブールなど
- 情報量の単位のビットや、情報理論を提唱したクロード・シャノンの生涯について記した本
- 今日の情報の在り方にいかに大きな影響を与えているか、フラットかつ丁寧に紹介している
- 同時代に先行してどのような研究があり、シャノンが示した概念がそれらとどのように異なるかといった観点で話が進むので理解がしやすい
-
16 爆弾級の発見
の章で氏の代表作の論文通信の数学的理論
を説明しているが、話の運び方がめちゃくちゃおもしろいので必読
- 著名な論文を書いた後のテセウスをはじめとした発明やジャグリングの話など、氏の人となりについても事細かに知ることができて満足度が高かった
- 氏の性格が温厚だったこともあり、殺伐としたり衝突したような話がほとんどなく読後感がよかった
インターネットの起源
オススメ度: ★★★
発行年: 2000年
取り扱う時代: 1960~1980年代
主な登場人物: J・C・リックライダー、ローレンス・ロバーツ、ボブ・カーン、ヴィント・サーフなど
- 今日のインターネットの起源にあたる、ARPANETの誕生から廃止に至るまでの変遷を記した本
- 関係者へのインタビューも多くおこなわれたようだが、一貫して著者の客観的な視点から情報がまとめられており読みやすい
- 単純に、ある開発プロジェクトのドキュメンタリーとしておもしろい
- プロジェクトの実現に至るまでに多くの人の思惑や苦心があったこと
- ARPANETの実装技術であるIMP(Interface Message Protocol)の開発と運用
- 通信をするために必要な端末やインターフェース開発の苦労
- ネットワークのデバッグやトラブルシューティングのノウハウ
- IMPがTCP/IPとEthernetに移管されていく様子
- 他の多くの書籍とコンテキストを共有しているため、最初に読む本としてもいいかも
- 情報技術の研究開発の多くが軍事力の強化を目的としていたこと
- 当時の既得権益であったAT&Tと電話事業
- 理論の実践にあたって大学が果たした役割
- 今も身の回りにあるものも色々出てきてリアリティを感じる
- 電子メールという発明の話
- RFC(Request for Comments)の起源
- OSI基本参照モデルとTCP/IPの確執(?)
カッコウはコンピュータに卵を産む
オススメ度: ★★
発行年: 1991年
取り扱う時代: 1980年代
主な登場人物: クリフォード・ストール、ボブ・モリスなど
- LBL(ローレンス・バークレー国立研究所)で天文学を研究しながらシステム管理者として働きはじめたストール氏が、実際に遭遇したコンピュータへの不正侵入事件について顛末を記した本
- 1986年から1988年ごろにかけての出来事をすぐに書籍化したこともあり、当時海外でベストセラーになった
- 事実に基づいた内容だが、全編が筆者を主人公とした一人称視点で語られるため小説として読める
-
フリーソフトウェアと自由な社会の著者であるRMS氏をはじめとして、UNIXに関連の深い人たちの名前が聞かれたり、実際に登場する
- 80年代にどのようなOSやツールを使っていたか、ネットワーク運用がされていたか知れておもしろい
- 様々な(原始的な)ハッキング手法や、それらに対してストール氏がどのように対抗したか
- 全体的に素朴でおおらかな時代であったことがわかる
- ハッカーの監視方法や逆探知のやり方
- インターネットの起源でもARPANETの後継として紹介されているMILNETが舞台となっており、続けて読むと感慨深い
- 80年代にどのようなOSやツールを使っていたか、ネットワーク運用がされていたか知れておもしろい
- 米国の政府機関の人物もたくさん出てくるので、どういうイメージの組織として捉えられていたのか知れる
- CIA / FBI / NSAなどなど。..
- エピローグとして、情報セキュリティの敗北史でも解説されているとある事件の詳細について書かれている
- 併せて読むと楽しめると思います
Webの創成
オススメ度: ★
発行年: 2001年
取り扱う時代: 1980~1990年代
主な登場人物: ティム・バーナーズ・リー
- WWW(World Wide Web)を構想したティム・バーナーズ・リー氏による自伝
- 全編を通じて本人の視点から書かれているため、Webの実現にあたって何がモチベーションであったか細かく書かれている
- 大きく2部に分かれる
- 前半は、URIやWebブラウザ、HTML等の着想に至った経緯とそれによって実現したい未来の話
- 氏が所属していたCERN(欧州原子核研究機構)におけるプロジェクト推進の苦労はARPANETの実現に通ずるものを感じた
- リー氏の考えるWebにおいて、読み取りよりも更新操作が重要であったこと
- 後半は、W3C(World Wide Web Consortium)の設立と、WWWの発展のためにリー氏が行った活動の記録
- 前半は、URIやWebブラウザ、HTML等の着想に至った経緯とそれによって実現したい未来の話
- プレミアがついてしまっているので、読むなら図書館で借りるとよいかも
インターネットの基礎
オススメ度: ★★
発行年: 2014年
取り扱う時代: 1980~2010年代
主な登場人物: 村井純、ヴィント・サーフなど
- 日本のインターネットの父と評される村井氏が、インターネット、ひいてはネットワークの成り立ちや今後の見通しについて幅広く解説する
- 当事者にしか語れないエピソードも数多く出てきておもしろかった
- JUNETおよびWIDEプロジェクトの発足や、UNIXのi18n対応など、氏の功績を広く知ることができる
- 氏が直接関係していない話でも、オリンピックにおけるIT技術の活用の話など、衝撃を受けるものも多かった
- 情報の網羅性・正確性については他の書籍で補完できるとよさそう
- 当事者にしか語れないエピソードも数多く出てきておもしろかった
- 日本人が記したという点で、他の書籍と一線を画する
- 米国に対して日本がどういう立ち位置にあったか、また他の諸外国とはどのような差があったか
- インターネットの普及率や、新技術を早期に自国内で利活用できていたこと
- DNSルートサーバーのひとつが日本にあることの意味・意義について考えさせられた
- 米国に対して日本がどういう立ち位置にあったか、また他の諸外国とはどのような差があったか
- 第二部として、インターネットの起源にも登場するヴィント・サーフ氏が2012年に慶應義塾大学でおこなった講演が収録されている
- 生成AI技術が急速に発展している現代の視点で読むと感慨深かった
余談ですが、NTT技術史料館にて当時実際に使われていた機材の実物を見ることができます
サイバー戦争 終末のシナリオ
オススメ度: ★
発行年: 2022年
取り扱う時代: 1980~2020年代
主な登場人物: -
- ニューヨークタイムズの記者であるニコール・パーロース氏が、自身が取材してきたサイバーテロに関する事件や歴史について纏めた本
- 攻撃に対する技術的な解説よりも、それらが発生する力学や国家間の関係について掘り下げられている
- アメリカを中心においた文章構成となっており、日本からは見えづらいコンテキストについても知ることができる
- 2016年の米大統領選挙や現在も継続しているウクライナ侵攻が、どのような歴史的経緯を持っているか
- 著者の一人称視点で描かれているため、ノンフィクションとしても楽しめる
- 暴露本やスパイ小説のような場面もたびたび出てきて緊張感がある
- 上下巻で20章ほどに分かれており、幅広い時代の様々なトピックを扱う
- 古くは冷戦の時代から絶えず攻防が繰り広げられていたこと
- 当初なんの価値もなかったシステムのバグが、どのようにしてゼロデイ攻撃のためのエクスプロイトとして扱われるようになっていったか
- 売り手・買い手が誰か
- スタックスネット以降、業界のパワーバランスが変わって来ていること
- 章ごとに時代と話題が転換するため、話題を見失ってしまうこともたまにあった
- 日本についてはほとんど言及されておらず、サイバーテロの分野については比較的に防御側の国である印象を持った
- 国際情勢や世界史、政治に関する基本的な知識がないため読み取れていない文意もあるように感じ、勉強したくなった
文化・価値観
世界の技術を支配する ベル研究所の興亡
オススメ度: ★★
発行年: 2013年
取り扱う時代: 1920~2000年代
主な登場人物: ビル・ショックレー、クロード・シャノン、マービン・ケリー、ジョン・ピアースなど
- トランジスタや衛星通信、太陽電池といった発明や、現代のエンジニアにとってもなじみ深いUNIXなどが誕生したベル研究所について、成立から親会社AT&Tの企業分割を経て衰退していった一連の経緯についてまとめた本
- 基本的には時系列に沿って歴史を概観した内容になっているが、多種多様なイノベーションがどのような組織、社会情勢の中で生まれたのか、現代の情報産業と対比しながらまとめられている
- AT&Tという独占企業の存在など今日とコンテキストが異なる部分もありつつも、組織によるものづくりを考える時に参考になる部分が沢山あるように感じた
- 基本的には時系列に沿って歴史を概観した内容になっているが、多種多様なイノベーションがどのような組織、社会情勢の中で生まれたのか、現代の情報産業と対比しながらまとめられている
- 近代の情報技術史の起点となっているため、関連して読むと楽しめる本も多い
なお、ベル研究所という名前の元となった、電話の発明者として知られるグラハム・ベルについては特に説明されないので、興味がある場合は適宜別の本をあたる必要がある
(私は以下の本を読みましたがとてもおもしろかったです…物悲しさを感じる部分もありますが)
情報セキュリティの敗北史
オススメ度: ★
発行年: 2022年
取り扱う時代: 1940~2010年代
主な登場人物: -
- インターネット以前からの情報セキュリティに対する取り組みと、それらがどのような結果に至ったかまとめた本
- 歴史という軸よりは各個のトピックに対しての深堀りがされているが、副読本として読むと解像度が上がってよい
- ランド研究所でおこなわれていた初期の情報技術に関する研究
- セキュリティの観点から見たARPANETやUNIX
- マイクロソフトとオラクルの対比
- 参考文献の数がものすごい
- オススメ度はこの記事の趣旨に添う度合いでつけましたが、とてもおもしろい本です。オススメ
ハッカーズ
オススメ度: ★★★
発行年: 1987年
取り扱う時代: 1950~1980年代
主な登場人物: リチャード・グリーンブラット、リー・フェルゼンスタイン、ジョン・マッカーシー、テッド・ネルソン、ビル・ゲイツ、スティーブ・ウォズニアック、ケン・ウィリアムズ、リチャード・ストールマンなど
- ジャーナリストのスティーブン・レビー氏が、ハッカーと彼らが持っているハッカー思想についてまとめた本
- 前書きで
この本はコンピューター業界の正史ではない
としつつも、100名以上の人と対談して書かれたらしく、独自研究には留まらない読みごたえのある内容だった - 一見して掴みどころがなく難しい題材のように感じるが、多くの傍証を元にした著者なりの考察があり、普遍的なことについて語られているように感じた
- 個人的には、Zennなどにおける技術記事の公開について重なる部分を感じた
- 前書きで
- 大きく3章に分かれる
- MITおよび人工知能研究所(AIラボ)の話
- 最初期のハッカー文化がどこで誕生したか
- MITのテック鉄道模型クラブについて
- どのようなハックがおこなわれていたか
- Spacewar! や Game of Life など、YouTubeで実物を探すとより楽しめる
- 情報技術の大衆化によってハッカーやその思想が希釈・拡大していったこと
- 最初期のハッカー文化がどこで誕生したか
- ホームブリュー・コンピュータ・クラブの話
- コンピューター・リブ の意匠はミームで見たことがあったので成り立ちが知れてよかった
- Appleの創業期の話もおもしろかった
- シエラオンライン(シエラエンターテインメント)社の話
- Apple IIやATARI 800でのゲーム開発
- コンピューターによる個人の能力の最大化
- ハッカー思想と商業主義の不一致
- MITおよび人工知能研究所(AIラボ)の話
- 扱われている時代もトピックも幅広いので、他の本と併せて読むと楽しめると思います
- ハッカーからみたIBMが官僚的な組織で、ハッカー思想と相対するものであったこと
- 色んな本で度々出てくるDEC社のコンピュータ(PDP-8など)がどんな使われ方をしていたか知れる
- 一時期のRMS氏について語られるので フリーソフトウェアと自由な社会 のコンテキストを知ることができる
人月の神話
オススメ度: ★
発行年: 2014年 (1975年)
取り扱う時代: 1960~1970年代
主な登場人物: -
- IBM OS/360やMulticsなど、当時のメインフレーム向けの大規模開発プロジェクトを例に、よりよい進め方やアンチパターンについてエッセイとしてまとめた本
- 著者のフレデリック・ブルックス氏はIBM System/360やOS/360などの開発マネージャ
- 自分はエンジニア成り立ての頃に読んだため、当時は言わんとすることが(特に技術面で現代との乖離が大きく)イメージが難しい部分が多かった
- 古典的名著のため引用元としてよく出てくるので、他の本でキーワードが出てきたときに副読本として関連する章を読んでみる…という読み方をしてもよいかも
- 銀の弾丸(などない)
- ブルックスの法則
- セカンドシステム症候群
Life with UNIX
オススメ度: ★★★
発行年: 1990年
取り扱う時代: 1960~1980年代
主な登場人物: -
- UNIXに関するあらゆる情報を網羅的にまとめた書籍
- 誕生に至る経緯や変遷
- ユーザーグループなどのコミュニティやカンファレンスに関する情報
- UNIXnessを持たないコンピュータや業界との比較
-
Unix考古学 が現在から過去を俯瞰して紹介しているのに対して、本書は1980年代後半時点の趨勢を丁寧に説明していて、特に当時の周辺文化を知るのに優れていると感じた
- HTTPやLinuxなど、90年代以降に発展した技術は(当然ながら)一切出てこない
- それに対してSMTPやFTPは既に存在しているのもおもしろい
- 現代においては脆弱性があるとされるDES が安全な暗号化手法として紹介されている
- C言語に対する解説も、現在普及しているプログラミング言語しか知らない立場からすると興味深かった
- インターネット普及前のコミュニケーションのあり方の紹介がとても面白かった
- Usenet やその運用・参加方法
- ソフトウェア(awkなど)やプログラミング言語の購入方法
- 業界で、好きなエディタはvi(vim)とemacsのどちらか…というような話で盛り上がることがあるが、本書を読む限りはそうした話題も後の世代で過度に脚色された部分があるように感じた
- HTTPやLinuxなど、90年代以降に発展した技術は(当然ながら)一切出てこない
フリーソフトウェアと自由な社会
オススメ度: ★★
発行年: 2003年
取り扱う時代: 1980~2000年代
主な登場人物: リチャード・ストールマン
- GNUプロジェクトの創始者であるストールマン(RMS)氏が書いた複数のエッセイをまとめたもの
- 技術書翻訳を数多く手掛けている長尾高弘氏が携わっており、語の選び方が丁寧であったり本全体での統一感があって読みやすい
- 個人的には、GPL汚染という言葉やGNU Emacsの作者であるという程度のことしか知らなかったため、その背景にどのような経緯や思想があったのか知れておもしろかった
- フリービールではなくて、フリースピーチである
- 各章は独立して書かれたもののため内容の重複がそこそこあり、通して読むと冗長に感じる部分があるかも
- 私有ソフトウェアに対する過激な論調であったり、素人目にしても無理筋のように感じる内容も一部あるものの、その結果として現代のコミュニティ・業界に大きな影響を及ぼしたということが理解できた
- ユーモアのある方なのでフフッとなった箇所も多かった
-
それがぼくには楽しかったからにおいてRMS氏のことが少し出てくるが、この本においてもトーバルズ氏やLinuxについて言及している部分が少なからずあり、続けて読むと理解しやすいように感じた
- 特に20章の
フリーソフトウェア:自由と協力
におけるLinuxとGNUの目的の違いの話
- 特に20章の
教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書
オススメ度: ★
発行年: 2005年
取り扱う時代: 1980~2000年代
主な登場人物: -
- 日本におけるインターネットの普及から2000年代前半までの動向について、インターネットユーザー個人の活動に焦点を当てて概観した本
- 逆に言うと、大企業の動向などについてまとめたものではない
- ARPANET誕生から日本へのインターネット普及までの歴史や、インターネット以前に日本でおこなわれていたパソコン通信についても紹介されている
- 資料性が非常に高い
- ウェブライターである著者のばるぼら氏が、個人で開設していたWebページを再編したもの
- ホームページ、アングラ、匿名掲示板、FLASH、ウェブログなどのカテゴリごとに、ページや文化の盛衰をひたすら羅列していくスタイル
- 多くの事実から見えてくる大まかな流行について解説しているため、説得力がすごい
- 当時を知らないと文字を追うだけになってしまう感もあるので、年表などは適宜流し読みしてもよいかも
- 音楽やミニコミ誌、同人活動といった元々日本にあった文化とインターネット黎明期の繋がりについても知ることができる
- 自分は2000年代前半からインターネットに触れ始めたので、その時点で存在したWebサイトや文化がどのような順序で成立していったか知ることができて非常におもしろかった
- 逆に、SNSや動画サイトからインターネットを知った世代の人には情報の粒度が細かすぎるように感じるかも?
伽藍とバザール
オススメ度: ★
発行年: 1999年
取り扱う時代: 1990年代
主な登場人物: エリック・レイモンド、リーナス・トーバルズ、リチャード・ストールマン
- GNUプロジェクトに関わっていたレイモンド氏が、Linux登場以降のオープンソース界隈について評したエッセイ集
- それがぼくには楽しかったからやフリーソフトウェアと自由な社会に続けて読むのがよさそう
- エンジニアが書いた本であるが、非エンジニアの方にでも読めるような内容を意識しているように感じた
- 文量もそこまで多くない
- 3つの話題が出てくる
- 大規模なシステムの開発手法として、従来の一例としてのGNU Emacs(伽藍方式)とLinux(バザール方式)との比較
- コミュニティにおける文化や所作と、それ以前にあった既存の文化との類似性
- オープンソースの収益性や持続性に対する指摘への反証
- 当時のエンタープライズ領域との距離感や、GitHub以前のオープンソース活動について雰囲気をしれたのもよかった
青空文庫でも日本語訳を読むことができる模様(私は未読です)
Discussion
こちらも追加してはいかが?
超マシン誕生 新訳・新装版 https://amzn.asia/d/2FohNhG
ありがとうございます!
良さそうな本ですね、読んでみたいと思います