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[読書メモ] UXデザインの教科書

本を読みながら思ったことや、調べた周辺知識を残す

ユーザ体験の全てのタッチポイントをデザインする。どういう状況でどう使ってもらうかを明確化する。

ジャーニーマップ:ユーザー象のペルソナと体験を時系列で視覚化する
ストーリーボード:時間軸で表したシナリオとスケッチで表現する手法
アクティングアウト:体験して実際にたしかめる

デザイン対象の3主体

  • ユーザ、製品サービス、ビジネス

デザインの理論|デザインの実践|デザインの対象領域 の3レイヤ
ユーザ、製品サービス、ビジネスは、対象領域に存在する

ビジネスとはサービスを提供する仕組み
サービスを提供することができなければUXデザインはできない。ビジネス側の視点が不可欠

一口にUXデザインといっても、先の3レイヤがあるという認識が重要

  1. 理論
  2. 実践
  3. 対象領域

実践には、その背骨となる理論が必要
実践には、対象領域にアプローチする能力(知識・スキル)が必要

UXとUXDの違い

  • UX: ユーザ体験。主観的なもの
  • UXD: ユーザと製品サービスの間にある デザインの実践

産業デザインとしては効率性も重要
計画したUXが量産あるいは再生産されるような製品サービスと仕組みを作ることが必要

UXデザインとサービスデザインの違い。産業デザインにおいては、体験のデザインとその仕組み化を対象とするという意味では同じだが力点が異なる

  • UXD: ユーザ視点に力点をおく
  • SD: ビジネスの視点に力点をおく

UXDのアプローチにはインプットとアウトプットがある。

インプットは理論と対象領域から。理論からは実践のための方法論を、対象領域からは実践のゴールを決めるための情報(既存UX、利用文脈、市場など)を得る。アウトプットは基本的に対象領域について行う。(もしかすると、実践を通した学びを理論にフィードバックするアカデミックな活動などもあるかもしれない)

対象領域に対するアウトプットには順番がある。ユーザ中心の設計プロセスとしてはこの順番も大事

  1. 体験価値の設定
  2. 理想のUXと利用文脈の想定
  3. 理想のUXを実現する製品サービスの制作
  4. UXを実現する製品サービスを提供する仕組みの設計

製品やサービスに関わる人は全てユーザに含まれる:利害関係ステークホルダ(ISO/IEC 25010:2011)

ユーザ体験は、使用場面に限定されるわけではない。ユーザと製品サービスの 関わり が体験になる

UXの基本的フレームワーク、 ハッセンツァールモデル

デザイナーの視点とユーザの視点にわかれる

  • デザイナ視点:機能性などの製品の特徴をデザインして製品を作る。ユーザが使ったときの感じ方(結果)には関与できない
  • ユーザ視点:製品を使う体験を通して「表出した製品の性質」を知覚する。それらの性質から、結果として製品の魅力・嬉しさ・満足などの認知的評価判断をする

製品の性質には二つある

  • 実用的属性:使いやすさ
  • 快楽的属性:感情的側面(刺激、自己同定、喚起など)

UXの定義にはさまざまある

共通点がある

  • 主観的評価(ユーザがどう感じるかが最も重要)
  • 消費者とユーザの連続性・一体性(製品を使う前と後で名前は変わるが、利用の段階の一つでしかない)
  • 時間的・長期的視点(体験は関わりであり、一時的なものに限定されない)

体験の期間でことなって知覚されるUXについては、UX白書の期間モデルがある

  • 予期的UX:利用前、経験を想像する
  • 瞬間的UX:利用中、経験する
  • エピソード的UX:利用後、経験を内省する
  • 累積的UX:利用時間全体:利用期間を回想する

期間を意識することで、実現したいUXの解像度があがる。意思決定基準やとるべきアプローチの方向性が明確になる

インタラクティブ製品:スマホや家電など、インタラクティブな操作を伴う製品やサービス。ユーザが理解しなければならないことも多いので、人によって得られる体験が異なり、それによる評価も異なる。

そのため、インタラクティブ製品のUXはユーザのモチベーションに影響を受ける。
このモチベーションとして、強い影響を持つものが二つある

  • 自己効力感:SE(self-efficacy)
  • 製品関与:PI(product involvement)

この二つの組み合わせで、ユーザの製品に対する態度を明確に位置付けることができる。

自己効力感(SE)
心理学者アルバートデューラが定義したモチベーションの一種。やれるかどうか、ではなく、やれるように頑張れると思うか、という効力予期の度合いを意味する。測定尺度があり、特定の製品によらず測定できる。

製品関与(PI)
製品に対する関心の度合い。元々は消費者行動論の研究で重視される概念。
ユーザの個人的な目的や価値観 と 対象となる製品 との 関係の度合い を意味する。

自己効力感と製品関与を軸とした4象限でユーザをマッピングできる。これをSEPIA法と呼ぶ(SEとPIのAnalysisでSEPIA)調査対象者の選定や、簡易なペルソナを作るときのフレームワークとして活用されている。

PI低(興味が弱い) PI高(興味が強い)
SE高(使いこなせる) 冷静・合理的ユーザ マニアユーザ
SE低(使いこなせない) ミニマム利用ユーザ) 期待先行ユーザ

サービスを使うことで、ユーザの中には利用体験が生まれる。日頃から多くのサービスを使うことで、多様な 累積的UX がユーザの中に形成される

それらの蓄積から「ooすればxxを得られる」という抽象化された経験的知識を得る。これがユーザにとっての「行為の意味」であり、これがあるから利用意欲が生まれる

自らの体験を通して形成された行為の価値を 体験価値(experience value) と呼ぶ。体験価値は嬉しさの基準である。

-----概念化--->
[利用体験] => [累積的UX] => [経験的知識] => [体験価値]

現時点の利用体験では満たされない体験価値をユーザ自身が想定することもある。
ユーザの体験価値に着目し、それを実現する新たな手段となる行為を作り出すことがUXデザインの中心的な課題。

ニーズと体験価値

ニーズはマーケティング用語で、主にユーザが製品やサービスに求めているものを指す。
ニーズでは「xxができるoo(手段)がほしい」という表現をする。つまり手段が固定される。

結果に着目したものを本質的ニーズと呼ぶ。手段を固定化せず「xxという結果がほしい」という表現をする。

体験価値は、経験的知識に基づいた行為の価値であり、手段は含まれていない。なので、本質的ニーズ≒体験価値と考えて良い。ただし、体験価値が着目する「ユーザが嬉しいと感じること」は本質的ニーズの着目する「結果」にも縛られない可能性もあるので全く同じではない。

利用文脈
利用文脈は、ユーザが製品サービスを使用する際の状況や、その背景、あるいは使用する前後で起こる様々な出来事のつながりを指している。

ユーザビリティの評価方法に関する規格であるISO9241-11の定義では、利用文脈にはユーザとユーザの行うタスク、設備、環境が含まれるが、 製品そのものは含まれない

一方、HCDの国際規格であるISO9241-210:2010では、デザインのために少なくとも明確にすべき4つの利用文脈をあげ、ユーザの環境とやりたいことのゴール、そしてユーザの特徴やニーズを把握することの重要性を述べている。

  1. ユーザ及び他のステークホルダ
  2. ユーザまたはユーザグループの特性
  3. ユーザの目標と仕事
  4. システムの環境

利用文脈、というトピック自体が範囲が広く複雑。具体的な内容はケースバイケースなので標準化が難しいのかもしれない。

ユーザビリティは、使いやすさとよく訳されるが、正確には「使用性」という訳語になる

製品の持つ基本的な機能を、ユーザに発揮させるために、どれくらい容易に製品の操作が行えるかを表す用語

標準的な定義は、ISO9241-11:1998のもの

ある製品が、指定された利用者によって、指定された利用の状況下(context of use=利用文脈)で、指定された目標を達成するために用いられる際の有効さ(effectiveness)効率(efficiency)および満足度(satisfaction)の度合い

9241-11とは異なる定義のうち、有力なものの一つに、システム・ソフトウェアの品質モデルであるISO/IEC 25010:2010がある。利用品質モデル、製品品質モデル、データ品質モデルの三つにわけている。ユーザビリティは製品品質モデルに含まれ、有効さ、効率、満足度は利用品質モデルに含まれる。

HCDプロセスはUXデザインを実践するためのプロセスとして活用されるデザインの理論

UXデザインとUCDは同義ではないが、HCDプロセスの考え方を活用して取り組む理由がある。

  1. ユーザ中心の開発を行うことで、ユーザ観点からの失敗を極力防ぐことにつながる
  2. 多様な立場のメンバーからなる開発チームにおいて、動き方の基準と共有の目線になる

ISO 9241-210:2010 はHCDプロセスの代表的なガイドライン
HCDプロセスの具体的な取り組み方として、反復設計というコンセプトを示す。

  • 利用状況の明示と把握
  • ユーザの要求事項の明示
  • ユーザの要求事項を満たす設計による解決策の作成
  • 要求事項に対する設計の評価

を繰り返す。繰り返しによって改善する過程はPDCAと基本的に同じだが、checkは当事者の振り返りではなくユーザの評価になる。

HCDには6つの原則がある

  1. 設計がユーザ、タスク、環境の明確な理解に基づいている
  2. ユーザが設計と開発全体を通じて参加している
  3. 設計がユーザ中心の評価により実施され、洗練されている
  4. プロセスを繰り返している
  5. 設計がユーザエクスペリエンス全体に取り組んでいる
  6. 設計チームが学際的なスキルと視点を取り込んでいる

人間中心デザインの目的は、設計プロセス全体を通じて、UXを十分に考慮することにより、良いUXの質を達成することである

HCDプロセスと開発手法の関係

HCDプロセスは、様々な設計・開発手法にくみこんでかつようするものである。
ウォーターフォールでもアジャイルでも適用可能。ただし、HCDプロセスの4つの活動は一つ一つ時間がかかる。なので、ウォーターフォールや反復型開発(スモールWF)とは相性がいいが、XPのようなサイクルが短すぎるものにはそのまま適用することは難しい。

そこで、アジャイルに適したHCDの取り組みが試みられている。アジャイルUCDやアジャイルUX、Lean UXなどと呼ばれる取り組みがそれにあたる。定まった方法があるわけではないが、次の3点が基本的な原理原則になる

  1. 内から外へ:ユーザにとって最も価値の高いコア機能から始める
  2. 平行して:実装とUXデザインを並行して実施する。UXデザインを実装より少し先行させる
  3. 軽い手法で:HCDプロセスの手法を簡易化して用いる

★この辺りもうちょっと調べて、自分たちのプロダクト開発でも考えてみると面白そう&役に立ちそう。短期的には、1サイクルのゴール設定をどうするかという話で、中長期的にはドメイン理解に関する不完全性の取り扱い方な気がする。

ISO以外のHCDプロセス

改善サイクルをつくることは全て共通している。ステップの分け方と位置付けが異なる。
問題発見・解決の流れはだいたい同じ。

ノーマンの人間中心デザイン
デザインのダブルダイヤモンド・デザインプロセスモデルとともに、HCDプロセスをデザイン思考の主要な技法と位置付けている。

ダブルダイヤモンドモデルでは、正しい問題を見つけることと正しい解決を見つけることのそれぞれにおいて、発散と収束によって正しい結論へとたどり着くことを示している。発見と解決の活動を明確に分け、それぞれについて候補を洗い出し絞り込む。(当たり前なことを言ってる感はある)

HCDプロセスは、1. 観察、2. アイデア創出、3. プロトタイピング、4. テストの繰り返しとしており、仕様を決めることはデザインの中で最も難しい部分なので、HCDの原則はできるだけ長い間問題を特定することを避け、代わりに暫定的なデザインを繰り返していくことにあるとしている。

ハートソンとパイラのUXデザインのライフサイクルテンプレート
主にソフトウェアのインタラクションデザインを対象としたUXデザインのプロセスとして、以下の4ステップを1サイクルとしている。ポイントはデザインとプロトタイプを分けていること。

  1. 分析: ビジネスドメイン、ユーザ、ニーズ理解
  2. デザイン: コンセプトデザイン、インタラクション、見栄え
  3. プロトタイプ: デザインの選択肢の具体化
  4. 評価: 検証とリファイン

IDEOのHCDプロセス
IDEOはデザイン思考という考え方を普及させた元締め。企業課題に限らず、社会的課題を解決する方法としても位置付けている。

IDEOには二つのデザインプロセスがある。1つはIDEOの公開するHCDツールキットで、これは社会的課題を解決することを考えてつくられたもの。もう1つは企業の製品開発やデザイン開発を依頼された際のデザインプロセスで、HCDプロセスという名称はつけられていないが実践している内容はHCDプロセスと同様。

HCDツールキットは公開されていて、ダウンロードもできる。IDEOのHCDプロセスは、デザイン対象者(ユーザやステークホルダ)と一緒にデザインを行うことを念頭に置かれている。デザイナがユーザを解釈してデザインする二次的理解によるデザインよりも参加型のデザインを指向している。

HCDの三つのレンズ(有用性、実現可能性、持続可能性)は解決策の判断指標として普遍的であり有用。ただし、参加型デザイン指向であり、ISO9241-210などとは立脚点が異なる。

IDEOのもう一つのHCDプロセスでは、5つの段階でデザインを洗練させる。1. 理解 2. 観察 3. 統合 4. デザイン 5. 実行。このプロセスのなかでも観察が重要で、アイデアのインスピレーションを得るためにもデザイナ自身がユーザの利用環境を訪れたり、実際に体験したりして、文脈を理解することが重要だとしている。

UXデザインは人間の体験を扱うため、その実践には、関連する学問領域の知識も必要。中でも認知工学、人間工学、感性工学は直接的に関わる分野。他にも認知心理学・認知科学、社会心理学、社会学、文化人類学など関連する分野は多岐に渡り、その全てを網羅的に習得することは難しいが、基礎知識に触れておくのは大事。

概念モデル:人間が実世界で何がどのように作用するかを思考する際に、人間の内部に生じたイメージを指す。一般に、概念モデルは、実際のシステムの機能や構造とは関係なく、ユーザが利用経験を通して理解した仕組みの説明。

アフォーダンス:環境や物理的な致傷物が人を含む動物に与える意味。環境の中にある情報のこと。たとえば、40cmほどの木の箱があったときに、多くの人は「座れる」「物をおける」と感じる。これがアフォーダンスであり、この状態を「(物から)アフォードされている」という

シグニファイア:デザインにおいて、モノを適切に使ってもらうための手がかり。ボタンに押せそうな陰影をつける、ラベルをつけるなど

認知工学に基づくデザインの原則として、ノーマンは以下の7つをあげている

  1. 発見可能性:どのような行為が行えるか、機器の今の状態はどうなっているか
  2. フィードバック:行為の結果と、現在の状態についての完全かつ継続的な情報がある。行為が実行されたあと、新しい状態がどうなったかがわかりやすい
  3. 概念モデル:良い概念モデルをユーザの中に形成できれば、理解と制御感につながる
  4. アフォーダンス:望ましい行為を可能にするための環境情報が揃っている
  5. シグニファイア:発見可能性やフィードバックを効果的に与える
  6. 対応付け:制御部と行為の間の関係は良い対応付けの原理に従う。直感的であること
  7. 制約:物理的、論理的、文化的、意味的な制約によって行為を導き、解釈を助ける

★この知識はプロダクトを作る人全員がベースとして持っていると良さそう

ガイドライン:デザインを行う際に用いるルールをまとめたもの。大きく以下の3種類に分けられるが、基本的にライフタイムは数世代にわたる。

設計指針:対象物が横断的な場合、ユーザ中心の考え方に基づくデザインの原則をしめすことが多い。対象物が特定の種類に限定される場合、全体と要素に分け基本的な考え方や原則をしめすことが多い。
デザインガイド:同一製品群での基本的な操作体系を統一させたり、その製品群で使用される操作パターンを整理したりする
スタイルガイド:特定の機種において、画面デザインの詳細について示したもの。デザインの一貫性を主眼においていて、仕様書に使い表現になる

★うちのプロダクトでもスタイルガイドについてはもう作れる。デザインガイドについても作り始められる気がするが必要かは不明。設計指針はまだ無理そうだし必要もない

シュナイダーマンの「8つの黄金律」
とても有名。プロダクト開発に携わる人には絶対に役立つ

  1. 一貫性を持つようにする
    似たような状況や行動のデザインは一貫性を持たせ、ユーザが学ばないといけないことを減らす
  2. あらゆる人のユーザビリティの要求を満たす
    熟練度や、年齢、障害などによらず利用可能にする。ユニバーサルデザイン等と似た文脈の話
  3. 有益なフィードバックを提供する
    どんな操作にもフィードバックがあるべき。頻度や重要性によって適切な量・質を持ったフィードバックを行う。
  4. 完了感を与えるための対話を設計する
    操作にも始まり、中間、終わりがある。一連の操作を完遂した時に、一つのことをやり遂げたという達成感と安心感を与えること
  5. エラーの処理を簡単にさせる
    できる限りユーザが致命的なエラーを起こさないよう設計する。もし起きてしまった時に、可能な限り簡単に対処できるようにしておく
  6. 簡単にやり直しができるようにする
    操作は可逆にすべき。誤ったとしても取り消せるのであればふあんにならず、よく知らない機能でも積極的に試したいと思う
  7. 制御の内部の働きをわかるようにする
    特に経験豊富なユーザは、自分がシステムを制御し、システムは応答しているという感覚を望む。概念モデルに近い話
  8. 短期記憶領域の負担を少なくする
    人間の記憶領域には限度があるので、表示は簡潔にし、一連の動作を学習するために十分な時間を用意する

★ チェックリストを作って、いまのプロダクトの機能を見直すと改善点が見える
★ プロダクトだけでなく、日々の業務改善にも活用できる。執行者である我々が快適に利用可能な業務設計であるほど、業務の効率はよくなる

デザインパターン

ソフトウェアでよく知られたGoFのデザインパターンではなく、ユーザインタフェースのパターン。
考え方は同じで、状況・問題・制約に応じた解決方法のパターン化によって、品質の向上に寄与するもの。

品質が指すのは、ユーザにとってのわかりやすさ。「慣用的である」ことで、初めて目にするインタフェースであっても、経験的な知識を駆使して理解できる。

UXデザインプロセスと主なデザイン手法

フェーズ ステップ デザイン手法
調査・分析 利用文脈とユーザ体験の把握 ユーザ行為の観察/エスノグラフィ, インタービュー/フォトエッセイ/日記法/エクスペリエンス・フィードバック法
調査・分析 ユーザ体験のモデル化と体験価値の探索 KA法/上位下位分析/KJ法/メンタルモデルダイアグラム, ペルソナ/エンパシーマップ, ジャーニーマップ(AS-ISモデル), 問題シナリオ
コンセプトデザイン アイデアの発想とコンセプトの作成 発想法/アイデアソン, バリューシナリオ/ストーリーテリング, UXコンセプトツリー
コンセプトデザイン 実現するユーザ体験と利用文脈の視覚化 アクティビティシナリオ, ジャーニーマップ(TO-BEモデル), 9コマシナリオ/ストーリーボード, アクティングアウト(体験スケッチ)/体験ムービー
プロトタイプ プロトタイプの反復による製品・サービスの詳細化 コンセプトテスト, ペーパープロトタイプ/オズの魔法使い, プロトタイプ/ウォークスルー評価, サービスブループリント, ビジネスモデルキャンバス/CVCA
評価 実装レベルの製作物によるユーザ体験の評価 専門家評価/ヒューリスティック評価/認知的ウォークスルー, ユーザビリティテスト, フィールドテスト, UX指標に基づく評価/UX評価尺度による評価
提供 体験価値の伝達と保持のための指針の作成 コンセプトブック/クレド, デザインガイドライン, アクセスログ解析/コールセンター問い合わせ情報解析

良いデザインプロセスと、良い意思決定は別

UXデザインプロセスにそった開発を行うことで、よいUXを実現する製品やサービスを作ることは可能だが、それによってビジネスが成功するわけではない。どのような判断や意思決定をすべきかについて、デザインプロセスは答えをもっていない。

ユーザ調査には目的が二つある。目的によって手法が異なる。

  1. ユーザ自身の考えを知ること:感情・意見・態度・価値観など
  2. ユーザが置かれている環境全体を知ること:生活世界、利用文脈、社会・文化的背景や物理環境を含む

ユーザ体験のモデル化と体験価値の探索は、ユーザ調査で得られた情報の分析から始まる
この分析で得たいのは、UXデザインとして何を提案するべきなのかの手がかり

  • 発見的・探索的にユーザの体験価値や本質的なニーズの仮説を導出し、デザインが実現すべき体験価値を探索する
  • この後のデザインプロセスをユーザ中心に円滑に進められるよう、ユーザモデルを作成する

ユーザモデル:サービスのもっとも重要で象徴的な人のこと。モデルそのものより、ユーザ調査の結果を分析してモデルを作る作業がより重要。ユーザに共感する作業でもある

この段階では、ユーザ調査で得られた結果を分析することのみに集中する。ビジネス戦略や要求事項のことは一切考えない。ビジネスの要件が明確であればあるほど、分析結果を歪めてしまう。

ビジネスの要求事項を考慮するのは、アイデアの発想とコンセプトの作成の段階

ユーザ調査からデザインを導くアプローチには、いくつか体系化された方法がある

  • コンテクスチュアル・アナリシス:対象となる行為のタスクについて、ユーザの要求事項を導出する
  • コンテクスチュアル・デザイン:ユーザの利用文脈を重視し、理想の仕事のビジョンを策定することで、ユーザに受け入れられるシステムを作る
  • シナリオベースト・デザイン:文章で表現された「シナリオ」をユーザ要求事項やデザイン仕様の表現方法として位置付けた手法
  • ゴールダイレクテッド・デザイン:ユーザの目標をいつも考慮しながらシステムやサービスを設計する手法。
  • ビジョン提案型デザイン手法:調査の分析から得られたユーザの本質的要求に着目し、実現するアイデアを段階的に詳細化しながらシナリオによって表現する構造化シナリオ法を用いて、システムやサービスの企画を行う手法

ユーザモデリングの手法は、大きく3つに分けられる

  1. ユーザの目標の違いに着目した属性モデリング
    • ペルソナ法(ゴールダイレクテッド・デザイン)
  2. ユーザの振る舞いの違いや時間的な変化に着目した行為モデリング
    • タスク分析
    • ワークモデル分析(コンテクスチュアル・デザイン)
    • ジャーニーマップ(AS-ISモデル)
  3. ユーザの行為の価値や意味、理解の違いに着目した価値モデリング
    • KA法(価値分析法)
    • 上位・下位関係分析
    • メンタルモデル・ダイアグラム
    • グランデッド・セオリー・アプローチ(GTA/M-GTA)
    • SCAT

汎用的なモデリング技法

  • KJ法
  • シナリオ法

ユーザモデリングには3階層ある。それぞれ、先述の手法の3分類とリンクしている

  1. 属性層
    ユーザの目標の違いに応じてユーザを類型化することで得られる
  2. 行為層
    ユーザの振る舞いの違いや行為の経時的な変化に応じて、ユーザの行動をパターン化することで得られる
  3. 価値層
    行為に対するユーザの価値観に対応する。ユーザ自身がその行為を行うことで得られる価値や意味、あるいはそれを行う理由などの違いによって類型化することで得られる

ユーザモデリングでは、ユーザ調査で把握されたデータから、ここで示した3つの観点で個別の文脈を切り離す。これによって、得られたデータ同士の比較を通した、共通点や相違点の分析が可能になる。

ユーザモデリングの結果から、いかにデザインを実施するか

  1. 想定ユーザが決まっている時に、そのユーザの体験価値および及本質的ニーズにあたる価値を定める。
  2. 価値を感じられるような行為で、かつ想定ユーザが実施可能な新しい行為を作り出す。

価値層 => 現在の体験価値 着目する体験価値(本質的ニーズ)
      ↑現実のコンテクスト   ↑提案するコンテクスト
行為層 => 現在の行為   新しい行為(実現したいUX)   
      ↑    ↗️
属性層 => 想定ユーザ

目的に合わせ、ユーザモデリングのどの階層の情報をより手厚く収集するかといった観点から、手法の選択・組み合わせを検討するといい。

それぞれの階層に適したユーザ調査の手法と、その結果をもとに行うモデリングの手法との対応関係

階層 ユーザ調査の手法 モデリング手法
価値層 デプスインタビュー、フォトエッセイ 上位・下位関係分析、KA法(価値分析法)
行為層 エスノグラフィ、コンテクスチュアル・インクワイアリ、行動観察(※これらの調査で得られる情報はリッチなので、価値層・属性層についてのインサイトも得られる) ジャーニーマップ(AS-IS)、問題シナリオ、ワークモデル分析
属性層 アンケート、インタビュー ペルソナ法

ユーザモデリングの3階層は、ユーザ調査からUXデザインにつなげるために必要なユーザモデルとして、それぞれの階層の情報が必要であることを示している

著者がおすすめする、UXデザインのための基本モデル「UX三点セット」

価値層:KA法による価値マップ
行為層:ジャーニーマップ
属性層:ペルソナ

アイデアの発想とコンセプトの作成

アイデアの発想そのものは、最もクリエイティブな行為で、手順を辿れば必ずいいアイデアが出るようなものではない。しかし、アイデアの発想をデザイナのスキルに頼っているだけでは、イノベーティブな製品・サービスを生み出すことはできない

UXデザインのプロセスでは、ユーザの体験価値や本質的ニーズの絞り込みを行う。これによって、デザインすべきことの方向性が明確になり、発想するポイントを絞り込むことができる

アイデアの発想は、ユーザ観点からの「体験価値によるアイデア発想」とビジネス観点からの「ビジネスのエコシステムによるアイデア発想」の大きく2観点で行う。両者はそれぞれ独立に考えることもできるが、相互に検討することが大切

体験価値によるアイデア発想:ユーザが純粋に求めるものを発想する
ビジネスのエコシステムによるアイデア発想:組織のビジネス戦略やビジョン、あるいは社内外のビジネス環境の情報を手がかりに、新しいビジネスや仕組みのアイデアを発想する

発想したアイデアは、UXデザインのコンセプトとしてとりまとめ、この段階のアウトプットとする。UXデザインのコンセプトには4つの視点がある。

  1. ユーザ体験の視点
  2. インタラクションの視点
  3. 製品・サービスの品質の視点
  4. ビジネス・仕組みの視点

コンセプトは、これらすべての視点を含んだ物である必要があるが、この後の段階でブラッシュアップをするので、

  • どのようなユーザの
  • どのような体験価値を感じてもらえるようにした
  • どのような文脈で用いる
  • どんなものか

がわかる程度でよい

発想したアイデアを整理し、コンセプトにまとめていく手法は大きく3つに分けることができる

整理対象 手法
1 体験価値によるアイデア UXDコンセプトシート、バリューシナリオ(構造化シナリオ法)、ストーリーテリング、バリュープロポジションキャンバス
2 ビジネスのエコシステムによるアイデア ビジネスモデルキャンバス、リーンキャンバス、顧客価値連鎖分析(CVCA)
3 両者を考慮した統合的なコンセプト UXコンセプトツリー

UXデザインで基本となるのは1の手法だが、ユーザ調査からデザインを導くアプローチに由来するものが多い

UXデザインでは、ユーザの声に対する裏返しのようなアイデアを検討するのではなく、ユーザモデリングの手法を用いて得られた本質的な課題から洞察を得て、体験のアイデアを発想する

[抽象]
↑       洞察・インサイト
|     ↗︎          ↘️
|    分析          理想体験
↓   ↗︎               ↘️
[具体] 調査結果・事実         アイデア発想

UXコンセプトツリー

発想した多くのアイデアから、有力なアイデアを絞る。その際に、複数のアイデアを整理し、目標とするUXの方向性を明確にする方法として、UXコンセプトツリーがある

アイデアに投票する際に複数の観点から投票を行う。

赤シール:自分がユーザユーザだったら使ってみたい
青シール:当社が提供したらウケそう
黄シール:実現可能性が高い

など。一人一人が、各観点で一票ずつ持ち投票する。投票されたアイデアのうち、多様な観点の票が入っていて、得票数の多いものを目安に、有力なアイデアを選出する。その際に、複数の有力なアイデアに共通する体験価値がないか検討する。共通するものは一つのグループとして扱い、アイデアの骨格をツリー上に整理する。

ツリーの階層は

UXコンセプト -> 各サービスの本質的ニーズ -> どうやって実現するか -> キー満足要因 -> 具体提案

という順。最上位のUXコンセプト=実現する体験価値。UXコンセプト各サービスの本質的ニーズの関係は、結果と原因。本質的ニーズが満たされることで体験価値を感じられる。どうやって実現するか、は各サービスの本質的ニーズの具体化手段。この手段のなかで、最低限確保しなければユーザの満足度が下がるものをキー満足要因として取り上げる。

アイデアに共通する体験価値の単位で、複数のアイデアをまとめ、UXコンセプトツリーの形式で表現することで、アイデアそのものの中に含まれるUXデザインの主要な要素を体系的に整理することができる。

コンセプトデザインの段階では、実現する体験にフォーカスするために、あえて具体的な機能や操作の表現をしないようにする

機能や操作を具体的にしないのは、ユーザの体験こそが重要であり、製品やサービスはそれをサポートする手段だから

作成したUXデザインのコンセプトをもとに、

  • コンセプトの製品・サービスが、どのようなユーザ体験となるかを検討し、経時的な体験の様相を資格的に表現する
  • ユーザのモチベーション、環境を含む利用文脈、利用に対する反応を経時的に検討することで、製品・サービスの機能的な要件の概要を明らかにする

コンセプトごとに理想のUXを検討し、ユーザの行動を表現するアクティビティシナリオを作成する。今後の検討作業では、ペルソナや価値マップ、ジャーニーマップなどユーザモデルから離れないように注意する

コンセプトからUXの視覚化の方法としては、構造化シナリオ法が主流
シナリオには、バリューシナリオとアクティビティシナリオがある。バリューシナリオは体験価値を対象とし、アクティビティシナリオはユーザ体験を対象とする。バリューシナリオのほうが抽象度が高いものになる

  • バリューシナリオ:想定ユーザ群を示したキャスト(複数のペルソナ)と目標とする体験価値、提案する製品・サービス概要の三つを記述したもの
  • アクティビティシナリオ:バリューシナリオにさらに行動の情報を付加したもの
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