自社サイト開発のEM/TL経験者が、現職に入社してから5年弱で読んできた本をまとめる
【🎄Merry Christmas🎄 WWWAVE アドベントカレンダー 12/9の記事です】
株式会社ウェイブでフルスタックエンジニアをしている多田です。
今回は、現職に入社してから5年弱で読んできた本を、ざっくりのステージ別にまとめてみました。
今後のキャリアに悩まれている方や、どんな知識を取り入れていけばいいのか迷っている方々に対して、自社サイト開発のいちEM/TL経験者としての視点が参考になれば幸いです。
※
EM:エンジニアリングマネージャー
TL:テックリード
筆者の経歴
- 大学時代
- 産業組織心理学を専攻。男女比3:7の中で育つ。就職活動にあたって、「そういえば中学の時に個人ブログのHTML, CSSをいじったのがおもろかったなあ…」と思い出し、コンピュータサイエンス未経験OKなIT会社に就職を決意。
- 一社目 ユーザー系IT企業
- インフラエンジニア兼情シス。上司向けの資料作成(パワポ、エクセル)と社内ルールばかりスキルアップする生活に不安を覚え転職。
- 二社目 客先常駐のアプリ開発会社
- 開発エンジニアに転向。お客さん先でSpring Boot(Java)やDjango(Python)などを開発。 エンジニアとして、ビジネスサイドにもっと意見出せる、議論できる環境に憧れ転職。
- 三社目 現在
- 電子コミック配信サイトの自社開発。メンバーとしてRuby on Rails + Next.jsアプリケーションの開発に従事したのち、EM / TLなどを経験。
なぜ 書籍?
今は昔、記憶は定かではないのですが、ある媒体で「書籍は長期的に見れば最強の費用対効果を持つコンテンツである」と語られていたのを記憶しています。(出典がなくごめんなさい)
私自身も、さまざまな情報が即消費される現代だからこそ、腰を据えて挑み、体系的に知識を得られる書籍の価値は、ますます高まっていると感じています。
今思い返すと、私の思考や行動を形づくる源泉の多くは書籍から得てきました。(ちなみに、ここ最近は Podcast に少し浮気していますが、それはまた別の話…)
※前提として私自身が小説好きということもあり活字を読むこと自体が全く苦にならないので、全ての人に書籍が適しているよ!というつもりはないです。あくまでスキルを高める手段の一つとして、読んでいただく方の参考になればと思います。
👶 大大大前提
書籍の紹介の前に…
これは持論ですが、ITエンジニアとしての第一歩は、基本情報技術者相当の知識を持つことかなと思っています。
システムってなんだっけ?ITビジネスってなんだっけ?という本当に本当の基礎の部分があるのとないのとでは、その応用として学んでいく全ての知識の学習スピードに差が出るように思います(体感)
私のように大学の専攻が文系だったりして、教育機関で体系的に勉強していない方は、とりあえず基本情報の資格取得を目指すのも良いと思います!
💻 まず、エンジニアとしての基礎を固める!
オブジェクト指向設計実践ガイド ~Rubyでわかる 進化しつづける柔軟なアプリケーションの育て方
一言コメント:
私はここからはじめました。
今まで現場で書いていたコードはなんだったのか!とカルチャーショックを受けた本。
よりシンプルで、変更に強く、メンテナンスがしやすい、プロのエンジニアとしての コードの書き方を知るテクニックや考え方が詰まっています。
プリンシプルオブプログラミング
一言コメント:
プロのエンジニアとしての思想、心構え系。ある程度はどこから読んでもいいので、しっかり読みこむというより、一回ざっと目を通して、後から「あれそういえば…」ってなった時に立ち返るのがいいかも。
達人に学ぶDB設計 徹底指南書
一言コメント:
ビジネスのためにプログラミングをするなら、ほとんどのケースにおいて避けて通れないのがデータベース。もはやビジネスはデータで成り立っていると言っても過言ではない(過言)
RDBの基礎から、SQLクエリの実例まで示して解説してくれる本。
初学者の方にも、今まで現場の経験でなんとかやってきたよ!という方(つまり私みたいなエンジニア)にもおすすめ。
SQLアンチパターン
一言コメント:
業務で開発をしていると、度重なる仕様変更の結果、魔改造テーブルを見かけることもしばしば。よくない設計のテーブルがクエリパフォーマンスや変更容易性にどれだけ影響を与えることか…
そういったテーブルを「アンチパターン」としてわかりやすく紹介し、どうするのがベストプラクティスなのか、実例付きで示してくれます。良いパターンの中でも「このケースだとこっちの方が良い」「そのケースだとこっちでも良い」と、開発者に複数の選択肢を与えてくれる点が、この本のいいところ!
これを知っておくと「DB初心者」から抜け出せるゾ!
世界一流エンジニアの思考法
一言コメント:
「理解に時間をかける」!!!これ最初のうちは特に大事だと思います、学生時代や社会人なりたてだと、「これってこういうことですよね?」という確認をせずに物事を進めて手戻りが発生するってありがちなので…
プロのエンジニアとしての核となる考え方を作っておけるのでおすすめ。
🕵️ チョット上のエンジニアになる!
より「設計・構造化・改善」に踏み込む本たち。
エンジニアとして一皮むけたい人に。
コードコンプリート(上下巻)
一言コメント:
下巻の内容はそこまで覚えていないですごめんなさい…
ただ、上巻の設計の部分(コンストラクションと言及されている部分)は非常に参考になります。RubyやJavaの実例は少なかったと思いますが、そのような言語を使っている方でも設計の基礎固めとして良いと思う。
テスト駆動開発
一言コメント:
テスト駆動開発とはなんぞや、の部分の解説はもちろんですが、個人的には、「インターフェース(要はクラスやパブリックメソッド)から考え、逆算してロジックを組む」という発想の逆転が目から鱗でした。
間違いなく、自分が生成するコードの方向性が変化するきっかけとなった書籍の一つ。
良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門
一言コメント:
一世を風靡したミノ駆動さんの書籍。書籍の明快さはもちろんですが、個人的にはXに投稿されていた「クソコード動画シリーズ」も深く印象に残るところ…
Web API The Good Parts
一言コメント:
グッドパーツっていうだけあってAPI設計のノウハウが詰まりまくり!個人的には次の「Web APIの設計」と合わせて読んだら基礎も実践もつかめて良かった。
Web APIの設計
一言コメント:
グッドパーツが事例多めなのと比較して、こちらは基礎が学べる本。一貫してる主張は、実装者の都合でAPIを設計すな!使う側の都合でAPIを設計しろ!ということ(私の認識では)。
テスト駆動設計本と合わせて、自分のコーディングの視点が変わるきっかけとなった書籍のひとつです。
Clean Architecture 達人に学ぶソフトウェアの構造と設計
一言コメント:
「決定を遅らせる(あとの工程、特に実装に強く依存しない)」のがアーキテクトの仕事なんだなあと勉強になった本。文体が独特で、いい意味で刺激があります
👯♀️ チームで 活躍する!
「個人」ではなく「チームの成果」を最大化する本たち。 スクラム・アジャイル・協働の基礎。
エッセンシャル スクラム
一言コメント:
「チームでちゃんとスクラムやろうよ(我流じゃなくて)」という想いから読み始めた本。個人的にはチームの輪読会としておすすめできる本です。可能なら、エンジニア以外の他職種(PdM、デザイナー等)も含めてできると良さそう。
問いかけの作法
一言コメント:
スクラムイベントのファシリテーターに悩んでいた時に読んだ本ですが、間違いなくそんな枠に収まる書籍ではありません。問題解決、1on1、ステークホルダーとの交渉、エラー箇所の切り分けまであらゆる業務の「思考の屋台骨」とでもいうべき考え方が学べると思ってます。
Lean と DevOpsの科学
一言コメント:
良いエンジニアリング組織指標=4 keysという考え方を世に広めた本。今では4 keysだけでは事業として先に進めるのは難しいということがわかってきましたが、それでも4 keys自体の有用性が落ちるものではないと思います。
「まず、エンジニアとしてデリバリーに責任持つ」的な部分でどういったところを目指せば良いのか、この本を通して知れると思います。
アジャイルなチームをつくる ふりかえりガイドブック
一言コメント:
振り返りは絶対やりましょう(筆者は振り返り信者です)。 事例が多く載ってるのでインデックス的に使えるのも良いポイント。
カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント
一言コメント:
スクラム→カンバンに移行するにあたって読んだ本。レーン設計の基礎から、組織に導入するステップまで、広く書いてます。
👩💻 いざ テックリードへ!
チーム全体に影響する「技術的な意思決定」を行うにあたっての一助に。
エリック・エヴァンスのドメイン駆動設計
一言コメント:
言わずと知れたDDDの原点にして頂点。まあ確かに難解な本ではありますが100理解したらエンジニアとして心強い財産になるでしょう!(実は私も100理解したとは言いがたい…)
texta.fmさんの1. Software Development in 2003も合わせて聞いていただくと、DDDやPoEAA(エンタープライズ アプリケーションアーキテクチャパターン)と、Ruby on Railsがどう関わるのか的な歴史的な背景が聞けておもろいです。
モノリスからマイクロサービスへ
一言コメント:
マイクロサービスで最初から作れるなら最初からそうしてるわ…でも途中からってどうすんのよ…って悩んでる人におすすめ。途中経過も含めた移行パターンが具体的に例示されてるので、どなたにもイメージしてもらいやすいと思います。
出版当時よりもマイクロサービス自体が民主化した現代、それぞれのパターンごとのメリットやデメリットの事例が多く出回っているので、実際に移行される場合はそれらも併せてみてもらえるといいかと思います。
Googleのソフトウェアエンジニアリング
一言コメント:
「ただ、今、ここで、動くように書く」 → 「これからも継続的に変化し動き続ける」 のように、いちエンジニアとして、開発組織全体として、次のステップに行くために読んだ方がいい本です。 組織としてこういう仕組みづくりがあるといいよって実例がしれるので自分のチームに取り入れてみたいって人にもおすすめ。
サイト・リライアビリティ・エンジニア(SRE)
一言コメント:
基本的には「Googleのソフトウェアエンジニアリング」ともつながる部分が多いですが、中でもポストモーテムの部分が参考になりました。
🏃♂️ ようこそ、はじめてのマネージャー!
チームを見る・意図を伝える・心理的安全性を作る。 初めてメンバーを導く人のための「対人・思考・自己管理」本たち。
エンジニアリングマネージャーのしごと
一言コメント:
EMになって最初に読んだ本。EMとはなんぞやが広く書いてあるとともに、実例も載っている良き本。「はい、明日からあなたがリーダー」と言われても何すればいいん?って困ってる方におすすめ。
※余談ですが この書籍の中では、エンジニアとエンジニアリングマネージャーは全く違うとはっきり書いていますが、自分の実感としてもそうでした。マネージャーになってからもそれまでの「エンジニアとしての」感覚のみで突き進んでいると高確率で詰みます。
「エンジニア」マネージャーではなく、「エンジニアリング」マネージャーなのが最大のポイント。
ヤフーの1on1――部下を成長させるコミュニケーションの技法
一言コメント:
これもEMになって最初に読んだ本。1on1を導入しているのであれば必読!
※本当に個人的にはですが…
この書籍で紹介される傾聴、ミラーリング、コーチング等の技術をもとに、自分の色を出しながら「相手に気づかれないように自然に織り交ぜる」ところまでいけるとさらに上の段階に行けるかなって思います(やりすぎるとわざとらしくて相手にバレ、効果が薄れるのも事実)。
はじめてのリーダーのための 実践! フィードバック 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す「全技術」
一言コメント:
フィードバックの基礎が学べる本。「Iメッセージ」「Youメッセージ」の考え方は全社会人に広めたいといっても過言ではない。
チームトポロジー 価値あるソフトウェアをすばやく届ける適応型組織設計
一言コメント:
とーーーーーても好きな本!!!! 組織デザインに興味がある人におすすめ! いろんな名前がついたXXチームというのがいっぱい出てきて覚えるのは大変かもしれませんが、「ああ、うちの会社でいうこのチームね」って臨場感持って読むとすぐ覚えられます。組織設計、チーム設計、コミュニケーション課題解決をしたい人向け。中規模〜大規模のプロダクト開発組織のマネジメント層にとっては必読といってもいいでしょう。
頭のいい人が話す前に考えていること
一言コメント:
頭がいい人になった気持ちになれます。
「変化を嫌う人」を動かす:魅力的な提案が受け入れられない4つの理由
一言コメント:
あまり大きな声で宣伝したくないのですが… プロジェクト承認からユーザー提供機能の変更まで、日常〜仕事のありとあらゆるシーンにおいて、「何かを変える」時に有用です。理論もテクニックも載っていてすごくわかりやすい。
ロングゲーム 今、自分にとっていちばん意味のあることをするために
一言コメント:
一日1%成長したら、あるいは1%停滞したら、10年後にはどんな結果が待ってるだろう?「複利効果」の説明を引用して、長期で頑張ることの大切さを解いてる。 チャレンジングな業務の連続で疲れを感じた時、自分を支えてくれる本です。これも好き。
🏋️ 開発リーダーの その先へ
PM・経営・組織・戦略。 「チームを超えて影響する人」になるための本。
ザ・ゴール
一言コメント:
興奮のあまりこれ一冊で社内ブログ書いてしまったくらい好きな本。
企業の究極の目標ってなんなのか、生産性って何を指標とすべきで、どうすれば上がるのか、ボトルネックをどうやって特定し潰していくか、ボトルネック以外に対処することの無駄さ加減をしれる痛烈な本です。
ジャンルとしては珍しい、「ビジネス小説」でもあります。普通におもろい。
エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング
一言コメント:
今思い返すとほぼVPoEレベルの本かもしれません。組織課題として噴出するありとあらゆる事象が「情報差分」「共有不足」みたいなところで説明でき、じゃあそれはテック的にどうやって解決していこうねが書いてあって興味深い一冊です。リーダー職に慣れてきて一歩先へ!!!!という方に。
プロダクトマネジメントのすべて 事業戦略・IT開発・UXデザイン・マーケティングからチーム・組織運営まで
一言コメント:
PM(PdM)志望で、「プロダクトマネジメントってなんぞや?」を広く知りたい方向け。
私たちのチームではPdM含めて輪読会を行いました。
INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント
一言コメント:
PM(PdM)志望で、「プロダクトマネージャーって何やるんだろうか…」の実務を知りたい方向け。
こちらの方がより深く、思想や行動を具体的に学べます。
EMPOWERED 普通のチームが並外れた製品を生み出すプロダクトリーダーシップ
一言コメント:
開発組織の何かしらのリーダー職志望で、「どうすれば組織が強くなるんだろう」を知りたい方向け。
チーム設計や権限委譲、目標管理等が書いてます。
TRANSFORMED イノベーションを起こし真のDXへと導くプロダクトモデル
一言コメント:
開発組織の何かしらのリーダー職志望で、「どうすれば強い組織に生まれ変われるんだろう」を知りたい方向け。
上2冊の総括として、「じゃあ、今の組織をどういうステップで変化させていこう?」が知れる、より泥臭い部分にも踏み込んだ内容になっています。
冒険する組織のつくりかた「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法
一言コメント:
エンジニアリング本ではないのでエンジニアでない方にも読めます。
今までずっと抱えていた、「どうやったらみんながもっと楽しくなり、チームとしても成長するんだろうか?なんで今うまくいってないように感じるのか?」といったモヤモヤがこれ読んだら一瞬でクリアになりました。
扱っている問題の大きさから、決して単純ではない内容なのに、書籍中で紹介される「「Creative Cultivation Model(CCM)」2025年版を頭に浮かべつつ読み進めると、全てがスッと頭に入ってきます。
「軍事的世界観」から抜け出し、組織やチームを「冒険的世界観」でもっと良くしたい方におすすめ。経営リーダー、ミドルマネジメント、現場リーダーまで誰でも有効活用できます。むしろそういう人にこそ読んでもらいたい。
HIGH OUTPUT MANAGEMENT
一言コメント:
「マネージャーのアウトプット = 自分のチームのアウトプット + 自分が影響を与えられるすべてのチームのアウトプット の総量」。
もう一度。
「マネージャーのアウトプット = 自分のチームのアウトプット + 自分が影響を与えられるすべてのチームのアウトプット の総量」。
私はこれを「マネージャーは影響力を持て」ということだと解釈しています。現在チームリーダー以上の人、あるいはこれからチームリーダー以上になりたい人にすごくおすすめです。
おわりに
いっぱい読んできたなあ…(遠い目)
この5年間、日々の業務や組織の状況に向き合いながら、本に助けられることが非常に多くありました。どれもこれも、暗黙的に明示的に、自分の中で生きてるなあと日々実感しています。
これから同じような領域を学びたい方にとって、少しでも参考になれば嬉しいです!
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