ウェルスナビのオフィス移転における情報システム部門の携わり方について
はじめに
こんにちは、ウェルスナビの深田です。
普段は、CIT・コーポレートセキュリティというチーム(以降、CIT チームと呼称)に所属し、社内 IT・社内セキュリティといった、いわゆる情シスやコーポレート IT と呼ばれる領域を担当しています。
2018年11月にウェルスナビに入社し、前オフィスへの本社移転、上場対応、ゼロトラストセキュリティプロジェクト、現オフィスへの本社移転等を対応し現在に至ります。
直近では前述した現オフィスへの本社移転に関する IT 全般(ネットワーク、監視カメラ、入退室システム、PBX 等)を1年間担当していました(2024年10月28日に移転完了)。
本記事では、直近の本社移転に CIT チームがどう携わったかについて、備忘の意味も込めて記載したいと思います。
収容する人数やデバイス数、フロアの面積や予算なども記載していますので参考にしてもらえればと思います。
本社移転のプレスリリースはこちらです。
対象読者
以下の方々を想定し記載しています。
- 情報システム部門として移転に携わる方
- 移転の IT 領域について興味がある方
移転全体のスケジュール
最初に CIT チーム目線でのスケジュールを以下に記載します。
CIT チームとしては1年間かけた形となります。
- 2023年11月上旬 IT 領域に関する案件について要件作成
- 2023年11月下旬 各案件についてベンダー様に要件を打診
- 2023年12月下旬 レイアウトが概ね完成
- 2024年02月下旬 各案件についてソリューション・ベンダー様を確定・発注
- 2024年10月上旬 IT 領域に関する案件について環境構築・導入完了
- 2024年10月中旬 全社的に移転後オフィスでの業務確認完了
- 2024年10月28日 移転後オフィスでの初営業日
移転における CIT チームの役割
CIT チームとしては、IT 領域だけというより移転プロジェクトのメインメンバーとして参加しました。
CIT チームの対応内容としては以下となります。
- 移転プロジェクトチームへの参加
- 移転に関する定例会への出席
- 移転に関する各内容の方向性確定のサポート
- IT に関する以下案件の対応(要件整理、ソリューション・ベンダー様選定、発注、進行管理)
- ネットワーク環境
- 監視カメラ
- 入退室システム
- クラウドPBX
- FAX
- 複合機
私個人としては、IT 領域のプロジェクトリーダーとして対応しました。
移転全体の体制図の概要としては以下の通りです。
※だいぶ簡略化しています
IT 領域に関する要件整理から移転直前までの流れ
以降では、IT 領域に関する要件整理から移転後の初営業日までの流れを各項目ごとに分けて記載していきます。
IT 領域に関する移転の要件整理
大前提として、移転後に収容可能な従業員数は最大で500名程度を想定していたため、その数をカバーできる設計とする必要がありました。
また移転前からの課題としてネットワークが体感として遅いという問題があり、その点を重点的に改善する必要がありました。
CIT チームが関わる案件ごとの要件概要は以下の通りです。
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全体
- 移転先確定から移転完了までの期間は約1年間であること
- 移転後オフィスでは500名1000デバイスの収容を想定すること
- 入居するフロアの面積は約960坪であること
- CIT チームから発注する案件の予算枠は5000万円であること
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ネットワーク環境
- 500名1000デバイスが快適に業務を実施できるネットワーク環境とすること
- 安定性確保のため、インターネット回線は専用線や帯域保証型、帯域専有型を検討すること
- 安定性確保のため、インターネット回線やネットワーク機器は冗長構成とすること
- 利便性確保のため、無線 LAN / 有線 LAN をフロア全体に敷設すること
- 利便性確保のため、有線 LAN は全座席に配線すること
- 快適な業務環境のため、Wi-Fi 6E および 6GHz の利用を積極的に検討すること
- UTM の必要性を再検討すること( SWG などを提供する Netskope を全端末に導入しているため)
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監視カメラ・入退室システム
- メンテナンス性向上のため SaaS 型を検討すること
- 利便性向上のため、カード以外の認証方法を模索すること(顔認証等)
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クラウドPBX
- 現状に不満や追加の要件は無いが、移転を機に再検討すること
-
FAX
- メンテナンス性向上のため SaaS 型としたい
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複合機
- セキュリティレベルを向上したいため、印刷時・スキャン時認証方法の強化を検討すること(カード認証等)
各案件の発注
移転日から逆算して各案件のスケジュールを大まかに算出しました。
スケジュールの算出には以下が大きな要素となりました。
- 移転日
- 見積額
- 発注から導入完了までの期間
- レイアウトに関係するかどうか
- ステークホルダー
結果的には、上記要素が強く関係する「ネットワーク環境」が一番優先度高く、次点が「監視カメラ・入退室システム」となりました。
優先順位確定後は、レイアウト確定前に大まかな要件を作成し候補となるソリューション、ベンダーを探し見積を取得しつつ、レイアウト確定後やレイアウト修正の度に微修正を繰り返す形で発注を実施しました。
各案件の発注後から導入まで
基本的には各案件個別で導入まで進めていきますが、移転という兼ね合いから以下2点を考慮しながらの対応となりました。
-
各案件で必要なネットワーク的な要素の集約(以下、要素例)
- IPアドレス
- 有線か無線か
- 有線であれば PoE が必要か
- 無線であれば WPA3 に対応しているかどうか
- 通信要件(URL、IP、ポート)
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移転全体のスケジュールとの兼合い(以下、要素例)
- 電源工事後にネットワーク機器を入れる必要がある
- 机上に有線 LAN ケーブルを立ち上げる場合には最低限机が導入済みである必要がある
- 監視カメラなどを導入する前にネットワーク環境を整える必要がある
各案件で必要なネットワーク的な要素の集約については、基本的にはプロジェクトリーダーである私が各案件をフォローしながら集約していきました。
また、移転全体のスケジュールとの兼合いについては移転 PM 業者様に管理いただいたため大変助かりました。
各案件導入後から移転直前まで
業務継続が不可能なトラブルが発生しないよう、移転前にどれだけトラブルの目をつむかを重要視していました。そのため、以下のような対応をすることでリスクを低減させました。
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各案件毎の正常動作確認を実施
- 例えばファイアウォールであれば各ポリシー毎の通信要件が全て疎通可能かなどを実施
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アクセス元 IP アドレス制御を実施している SaaS への 移転先オフィスの IP アドレス追加手配・管理を実施
- SaaS によっては設定の変更に時間がかかるものもあるため、余裕をもって追加手配を実施し、対象全てが完了するように管理を実施
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各チーム毎に移転先オフィスでも業務を実施できることの確認手配・管理を実施
- 特に、アクセス元 IP アドレス制限を実施している SaaS へのアクセス確認や、業務継続上クリティカルな業務の確認を必須とし各チームに手配・管理を実施
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移転前オフィスにて引き続き業務を継続できるよう手配・管理を実施
- 最悪の場合は移転前オフィスで業務を継続できるように、運用面、機器の保守面、サービスの契約面を手配・管理
移転後の初営業日について
ウェルスナビではチームによっては一定のルールに従いリモートでの業務が可能ですが、問い合わせやトラブルを考慮して CIT チームは全員出社としました。
幸いにも業務継続が不可能なトラブルなどは発生せず、例えば特定のチームのみ移転前オフィスに戻るような事態も発生しませんでした。
移転を通しての感想
ここからは今回の移転を通しての感想を良かった点などに分けて記載していきます。
良かった点
- 500名収容規模の移転を経験できた点
- 移転前オフィスに戻らざるをえないような業務上の問題が発生しなかった点
- 各案件について最新の動向を知ることができ、最新の技術に触れられた点
- 移転プロジェクト前にリリースされた Slack のリスト機能をテストも兼ねて活用できた点(タスク管理として)
反省点
- 一部案件について、他のメンバーに任せきりとなってしまいマネジメントが行き届かなかった点
- うまく回してくれたメンバーに感謝しかありません。
- 一部案件について、案件中のドキュメントや完成図書のサンプルを発注前にもらい、発注先選定の判断材料とすべきだった点
- 必要なドキュメントの種類は伝えていたものの、内容について期待値との乖離があったため
苦労した点
私自身、現オフィスへ移転する前にウェルスナビでの移転を一度経験し、その際に IT 領域の全てを対応していたためあまり心配しておらず、実際に、オフィス環境としての知識的な面での苦労はありませんでした。
最も労力のかかったネットワーク環境という観点では、以前のオフィスに比べてチャレンジングな選定・構成とした点は苦労もしましたが、とても楽しく大変勉強になりました。
ネットワークには Wi-Fi 6E および 6GHz を採用したり、インターネット回線に 10Gpbs の回線を採用したという点もあり、ネットワーク機器も 10Gbps を考慮し、かつSD-WAN を採用しています。
また以前の移転に比べ従業員数やデバイス数が倍以上になっているという点もあり、移転後に業務が問題なく行えること、という点を強く意識した動きが大変でした。
例えば、各チームが主管となっている SaaS などでオフィスのインターネット回線を用いた IP アドレス制限をしているものを棚卸しし移転先のインターネット回線の IP アドレスを登録する進捗を管理したり、各チームが移転先オフィスで業務が正しく行えることの進捗管理を実施したり等です。
最後に
以上で、本記事の紹介を終わらせていただきます。
この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
また、各案件や移転 PM を担当いただいた会社様にはこの場を借りて感謝申し上げます。
前述しましたが、移転後のネットワーク環境の要件や実装の詳細については別途記事を作成予定ですので、ぜひご期待ください。
また、ウェルスナビでは一緒に働く仲間を募集しています。
働く世代に豊かさを、というミッションを私たちと一緒に目指していきませんか?
興味のある方は、こちらからご応募お待ちしております。
※募集が公開されていない時期もありますのでご了承ください著者プロフィール
深田 航(ふかだ わたる)
2018年11月 入社
社内IT・社内セキュリティ(いわゆる情シスやコーポレートIT)担当
以前投稿した記事はこちら
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