WordPressでのWeb制作は『安い』のか
法人のみならず個人でもWebサイトを持つということは珍しいことではなくなっている。企業ではサービスごとにWebサイトを分けることも多く、Webサイトの需要というものはなくなることはないだろう。
WordPressもその中にいる。シェアも大きく「WordPressでWeb制作します」という事業者も多い。その中に「WordPressのWeb制作は安い」という通説があったりもするのだが、これは事実なのだろうか。
ここの認識が発注側と制作側でずれていると、だれも幸せにならないWeb制作になってしまうため、わたしなりの認識を紹介する。
最初に結論
WordPressによるWeb制作は『安い』とは言えない。
ただし、発注・運用側が手間を惜しまなければ価格を抑えることができる。
そもそもWeb制作の金額は何で決まるのか
Web制作は基本的に人の知識や技術によって作られている。
制作費というのはどのくらいの技術や知識が必要で、どのくらいの時間かける必要があるのかで決まる。
この技術や知識というのがWordPressのことだったり、HTMLやCSS、PHP、MySQL、サーバーなどの、Webサイトを形作っている専門的な「なにか」だったりする。
もちろんここには、経験やノウハウという数値や資格でもあらわすとこのできない「なにか」も含まれているのだ。
その「なにか」に対しての対価として金額が決まってくる。これはWordPressに限った話ではなく、Web制作全般で言えることである。
完全に「ヒト」によって変わってくるため、Web制作における相場というのはあってないようなものなのだ。
WordPressでのWeb制作は安いのか
はっきりと言うと、安くはない。
むしろ需要が高まっているため年々高くなってきていると考えられる。
前述したとおりWeb制作の金額は技術や知識によって変わる。
WordPressでできることが増え、設計の考え方も変わってきている中、新しい環境に技術や知識をアップデートしていかなくてはならない。
また、別で紹介したブロックエディタによるテーマの考え方の変化により、オリジナルテーマでの開発の手間が圧倒的に上がっている。
WordPressでWebサイトを制作するときのテーマの考え方
これらを考慮すると、「設計や運用の事前考慮して制作してくれる」というところにお願いすると、金額は高くなるのだ。
しかも、WordPressは作って終わりではない。必ず管理・保守が必要になってくる。
WordPressの保守とは一体何をやっているのか
これが自分でできないということであれば、ランニングコストも考慮しなければならないのだ。
なぜ『安い』というイメージが広がったのか
おそらく、ホームページというものが作られた当初の時代のイメージが残っているからかと思われる。
その頃は静的なHTMLファイルをサーバーにアップしてホームページの更新をしていた。
Web制作会社はページごとに依頼され、その分のお金を支払ってもらっていた。
お知らせを更新するだけでも、更新しなければならないファイルが多いため、その分のお金がかかったのだ。
そんな中で出てきたのがCMSというシステムである。
管理画面があり、そのなかで操作することでページを生成してくれる仕組みのものだ。WordPressもこれにあたる。
この仕組みが出てきたことで、お知らせなどの簡易的な更新は発注しなくても運用側でできるようになったわけだ。
以前と比べれば圧倒的なコストダウンにつながったことだろう。
このイメージが強く、『安い』といまだにいわれている可能性があるのだ。
また、近年だとクラウドソーシングということが広まったことも原因の一端だろう。
自分の余っている時間をお小遣い稼ぎに使うということもでき、WordPressに関するあれこれも格安でおこなってくれる場合もある。
このような事情から『安い』というイメージが広がったのだろう。
『安い』ことはいいことか
発注者側目線で言えば、『安い』のはいいことだ!と言うひともいるかもしれない。
ただこれは、大きな間違いである。
先ほども紹介したとおりWeb制作の金額は制作側の技術や知識、経験などによって決まる。
『安い』ということは、これらが足りていないという可能性が非常に高いのだ。
加えてWordPressは独自実装の部分も多く、単純にHTMLやCSS、PHPの知識があるだけでは対応しきれない部分も多い。
強引に実装すればアップデートや運用していく上で不具合が出てしまう可能性が高まるのだ。
こうなってしまったら、また誰かに依頼し修正してもらうことになる。
まさに「安物買いの銭失い」となってしまう。
ここで難しいところは『高い』からと言って技術や知識があるかどうかはわからないというところにある。そのあたりの見極めは必要だ。
WordPressの情報の海から『信頼』を見つけ出すには
少しでも安く抑えたい場合はどうすればいいのか
これは、発注時のWebサイトへの欲を抑えることで、その分安く抑えることができると考えられる。
うちだけの完全オリジナルにしたい、動きもつけて見栄えも良くしたいという要望もあったりします。これはその分デザイン費が積まれ、WordPressに合わせて実装をする必要もあり、見積もりが高騰する原因となる。
また、使うかどうか分からない機能は公開して運用に慣れてから追加するようにするといい。
運用が思っていたよりもうまくいかず、追加機能使う余裕なんてなかったみたいなことも多いのだ。
ここで重要なのは見積もりの際に予算を制作会社に伝えることである。
「予算感がわからないので概算ください」ということはよくあるのだが、概算は情報も少なく要望だけど丸呑みにして作ることが多いので、予算を大幅にオーバーすることが多い。
実は必要な範囲のものはいろいろと機能やデザインを限定するなどして予算に合わせるようなこともできたりするのだが、概算だとそれはわからない。
まっとうな制作会社は「予算ギリギリまで絞り出そう」という考えではなく「予算内でどこまでできるか」を考えてくれるはずである。
あとは、公開後の更新を自分のところでおこなっていけば、更新代行という費用を払う必要はないのだ。
まとめ
正直なところ今の時代Webサイトを持つのにWordPressで作る必要はない。
Saas型でWebサイトを構築できるようなサービスも出ている。
それでも、自分のところで自由にできるWebサイトを持つことに価値が無くなったわけではない。
Webを取り巻く環境が変わってきているのも事実ではあるので、知識や認識のアップデートはしていったほうがいいのである。
事業者側は『安い』ことを売りにするのではなく、もっと本質的な部分で勝負したいものだ。
Discussion
いつも面白い記事ありがとうございます。
門外漢ですが、WordPressの案件は上から下が広いってイメージです。
記事中の記載の部分で、
そう考えるに至った経験とかデータなりがあると思うので、その辺面白そうだなと。
WordPressの日本でのCMSの中でのシェアはの依然として高く、「とりあえずWordPressで」という感じになっているところがあると予想できます。
W3Techs - CMS (Japan)
供給側がどれだけ増えたのかというのは不明ではあります。
肌感としてはWordPressで決まった形のWebサイトを作ることはできる人は増えていても、クライアントの要望や運用まで考慮して対応できる人はほとんど増えていません。
発注者はそこまで求めていることも多いため、結果としてそこまでできる制作者の需要が高まっていると考えられるんじゃないかと思っています。そうなると、そういう人は忙しいわけで、単価が上がっていくんですよね。
なるほど。
確かにそこまでやるってなると多少WordPressやったことありますとかだと対応できないですね。結構複雑ですし。
お金持ってる会社さんとかだとお金払っても良いからWordPressの知見が溜まってる人に頼みたいけど、、、って感じですよね。
ありがとうございます。