8/18-19 組織を動かすマネジャーになるための「ナラティヴ・アプローチ」実践講座をうけてきた
はじめに
あれは2018年夏ごろだったでしょうか。
今自分のいる会社を一つの「心身」にたとえたらどうなるんだろう?と問いから、臨床心理士の妻にすすめるままに いろんな本を読んでみました。読んだ結果、会社は以下のような「統合失調症」になっているのかもしれないなぁと思い至りました。
- 外部(世の中・お客さん)とはほぼ関係なく、内部で衝突を繰り返している
- 衝突の結果、声の大きい声が「幻聴」として響きわたり、本来企業活動として成長不可欠な声が「声ならぬ声」になっている
- 答えの出ない問い、正解がない問いに対する耐性が乏しくなっている、結果、「答え」を安易に求める、「答え」を出してくれるモノに依存している
- 企業全体として活気がない
- なにより病という認識(=病識)がない
これって、企業が成熟していく過程で普遍的に起こりうる現象ではなかろうか、組織論の立場でそんなことを論じていることはないのだろうか、いろいろ調べていく中で、宇田川元一先生の著書「他者と働く 「わかりあえなさ」から始める組織論」に出会いました。その感想は 以前 Qiitaにまとめています。
また、調べていく過程で、統合失調症治療で注目されているオープンダイアローグ(以下、ODと略)に出会い、オープンダイアローグネットワークジャパン(ODNJP)がだしている
「対話実践のガイドライン」聞く・話すのワークを、東海ダイアローグ(仮)のみなさんと 2か月に1回 定期的に行うようになりました。加えて、このワークを、コロナ禍前にオフラインでは社内でやってみたことがあり、最近では、社外でオンラインでも実験したことがあります。
今回、組織を動かすマネジャーになるための「ナラティヴ・アプローチ」実践講座 オンライン の中で学ぶ 2on2は、聞く・話すのワークと進め方が非常に似ており、一方で、ナラティブアプローチということで OD と違う点もきっとあるだろう、オンラインでの工夫もそれなりにあるじゃないかと期待しエントリーしました。
と同時に、自分自身が完全なクライアントな立場になることは少なく、抽象度をさげて具体的にうまく話せないことに課題を感じていたことも、受講目的の一つでした。
やったこと
ここでは、簡単に項目だけあげます。やっている過程で、各受講者の方々の生々しいお話や悩みを聞かせていただきました。したがって、講座内での詳細にはふみこまないことをご了承ください。
- 基礎講座 まずは宇多川先生の講義
- 2on2の実演 受講生の中から一人出てきて、実際に 2on2 の実演
- グループワーク(2on2)ここからはグループにわかれて 2on2の実施
- グループワーク(当事者研究) 2on2による対話から、シートに基づき一人ワークを行い、メンバーからフィードバックをもらう
- まとめ 別グループにわかれてお互い感想をのべる
わかったこと
2on2自体は、聞く・話すのワークと構造とほぼ同じ
1グループ4人、聞く人、話す人、残り2人がリフレクティングするという進め方は、同じでした。サポートにリクルートマネジメントソリューションズ(以下、RMSと略)の方が1人はいっていただけました。
違う点といえば、ODの聞く・話すのワークが、聞く・話すを役割を完全にわけ、途中で遮らないというお作法があるのに比べ、2on2の場合 話す人の問題のみをとりあげ(他の人の問題はその人が話すターンで)他の人は素直に感じたことを話すが、縛りになっていました。あと、2on2 の場合、反転質問という特殊な質問があって、困りごとを「悪化」させたり、他のチームで「再現」したりするにはどうすればよいかという問いを投げかけることが推奨されました。
いずれにしろ、対話を続け促進するためという点では同じだと感じました。
2on2で浮かび上がってきた課題を、当事者研究というアプローチで外在化して課題として定着する
2on2 で話している過程で、「声ならぬ声」「新たな現実」が課題という形で発見されてきます。ただ、その課題はまだ弱々しいものなので、「妖怪」という形で外に出し(=外在化)その「妖怪」を研究していこうというアプローチをとっていました。以前自分が社内外でやってみた 関わり方の研究
とアプローチが似ている側面があるものの、課題の明確化・客観化・定着という観点で洗練されており、やってみると想像以上に簡単に外在化できたので「やってみるもんだなぁ」と素直に感激しました。
自分は「話せたか」
東海ダイアローグ(仮)での経験から、抽象度をさげて具体的にうまく話せない、言い換えると、ややもすると客観的で他人の言葉で話してしまっていることに課題を感じていました。
今回、あくまでも自分目線で話したいと思ったので、下手な手書きで参加者の皆さんには申し訳なかったのですが、自分からはこう見えている、おそらく相手からはこう見えているだろうと、予めグラレコを準備し、それを見せながら話をしました。
話の内容は割愛しますが、グループ内のメンバから「思いが伝わるといいですね」とフィードバックをいただき、講座を受講する前は「妖怪」なるものが一つだと思っていたのが実は複数、しかも背後にさらに二つほどいることが具象化・認識できたので、まだまだ改善の余地があるものの、だいぶ話せるようになったと感じています。
講座の感想
まず、講座の構造が対話の構造になるともっとよくなると感じました。
わたしには、対話の定義が、デヴィッド・ボームのダイアローグの定義、すなわち、
「我々の中で、我々を通し、そして自分たちの間で(に)生じ、進み、続く、意味の(絶え間 ない)流れ」
が一番しっくりきています。
2on2の過程でせっかく浮き出てきた課題を、一人に戻ってワークをし、グループに戻って話をする、また、別のグループにわかれて感想を言い合う。
この構造が本当に「意味の絶え間ない流れ」を促進しやすくなっていたのでしょうか。
この講座の構造をカイゼンするだけで、同じグループ内のメンバであがった「グループでカウンセリングをうけているみたい、社内をよくしようと受講したのに「自分の」カウンセリングになっている」という感想・もやもやは起こらなかったのではないのかなと感じました。
また、最後の感想を言い合う際、参加者の中には「妖怪というよりもジョジョのスタンドなのかもしれませんね」という興味深い感想を述べたのに、サポートにはいっていた RMS の方が「スタンド知らないですね」の一言で話を切ってしまっていたのは残念でした。
その意味で、サポートに入る RMS の方々が、もう少し対話ができるようになってくるとよりよくなるのにとも感じました。あとで記事「「人事のための人事」や「全体一律の人事システム」から事業は生まれない──組織の物語「ナラティヴ」とは 」みて気づいたのですが、RMS荒金さんも素晴らしい よい苦労「若い社員が十分に成長しきる前に、会社を出てしまう」をされているようなので、最初にそういうお話をされるとよりよかったと思います(その辺りの話、是非 差し支えない範囲でお聴きしたかったです)。
つぎに、正直ぺてるの家にそんなに詳しいわけではないですが、せっかくぺてるの家を取り上げていたので、講座の構成要素として、ぺてるの家が大事にしていること、弱さの情報公開、降りていく生き方・苦労を取り戻す、SST あたりを取り入れてみるのもおもしろいのかなぁと感じました。
先生のご専門組織戦略、組織論に即して考えていくと、「弱さの情報公開」で対話に持ち込み、「降りていく生き方・苦労を取り戻す」で組織の普遍的・本質的な苦労(課題)が炙り出され、SSTによって言えなかったこと・言いにくいことが確実に伝わりさらに対話の場が広がり、創発的戦略につながっていく。そんな風に受け取ってみましたがいかがでしょうか?
あと、質問の技法として反転を取り上げられていましたよね、その前にもう少し基本的なこと、人の話を遮らない、「ふんふん、ほうほう、へえへえ」とひたすら聴くこと、経験がないことは「ちょっと経験がないことなぁ、もう少し詳しく教えてくれないかなぁ」といった聴く(コミュニケーションの公理に基づく)基本に触れられるとよいのかなぁと感じました。正直、自分のような初学者には反転質問は使いどころがとても難しいと感じています。
オープンダイアローグについて
ミーティング時間は1回90分あれば充分、リフレクティングはより聴く・対話を続けるためなのでできるだけ短くがポイントのようです。確かに急性期の場合は10数日間連続でミーティングが開かれることもありますが、あくまでもクライアントさんの希望にそった形で行われるそうです。宇多川先生のご説明だと、四六時中ずっと延々ミーティングしているように受け取れたのでちょっと気になりました。誤解して受け取っていましたらすみません。
つぎやること
とはいえ、今抱えている もやもやしたことをうまく課題に変えることはできました、どこから変えていくか、アプローチは見えてきたとおもっています。何よりも「妖怪」が潜んでおり、今向き合いたい「妖怪」と、一旦脇においておく「妖怪」、これらの整理もできたのは収穫でした。
今、現在、本講座でできた ふりかえりと整理に基づいて、実際に活動を始めています。
結果は。。まだまだ道半ばですが、手応えを感じています。思った以上に目線はあっていることがわかったし、共感・賛同してくれる「仲間」がいることもわかった。課題は、今まで対話の機会がなく、それ故スキルがついてきていないこともわかった。対話を続けることができれば、もっとよくなる。そんな手応えを感じています。
さいごに
正直なところ、講座受講後いろいろともやもやしていて、本稿を書き始めたものの、本当に書ききるかどうか、そして公開するかどうか、随分と悩みました。
わたしの長年の話し方に課題があり、ネットスラングでいうマサカリをなげるというか、研究者・エンジニアっぽいレビューの言い方・付き離したような言い方になってしまう、何よりも上から目線の「教えてやる」的な言い方になっていることを恐れていたからです。
正直、現在でも適切な言い方・書き方になっているかどうかわかりません。
もし、上記のように受け取ってしまう方がいらっしゃるとしたら、それは本稿を読んだ方々からみたナラティブ(解釈の枠組み)にまさしく即していないことになり、申し訳なく感じます。すみません。
ただ。
まず何よりも自らの頭と気持ちの整理をしたかった。
つぎに目指している方向・目的は同じように感じ、何かしら協力できることもあるようにも感じたのも一つにあります。
そして何より、整理ができなくては前に進めないなと感じました。
わたしのODの師匠が常々話をしたあとにこういっています。
「ファシリをしてくれている人には労をねぎらう意味でもポジティブフィードバックを、ネガティブフィードバックではへこんでしまう。そしてセミナーをうけもっている自分にはもっとよくなるフィードバック、コレクティブフィードバックがほしい」と仰っていることも後押しになりました。おそらく宇田川先生、飯田さんも同じ気持ちではないかと。
ここまで時間がかかったのはこういう理由からです。
宇田川先生・RMS研究員の飯塚さん はじめ、議論に参加してくれた荒金さん、同じグループになったメンバの皆さんには、ほんと感謝です。どうもありがとうございました。
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