VSCodeが導くZenn執筆環境ボイラープレート
Zenn CLIに最適化されたVSCode環境で書くために
これから「Zennに記事をたくさん投稿するぞ!」の気持ちを意気込みだけで終わらせないために、VSCodeに最適化されたZenn執筆環境のボイラープレート[1]を作成しました。
Githubのテンプレートリポジトリとして公開しているので、テンプレートを複製してすぐに記事を書き始めることができます。
Zenn執筆環境ボイラープレートの特徴
- Zenn執筆に最適化されたVSCode拡張機能やスニペットが自動的にインストールされます。
- VSCodeの見た目がZennライクなテーマカラーになって編集対象が明確になります。
- Zenn CLIを使ってローカル環境でプレビューを確認しながら記事を書くことができます。
- 記事の内容は
markdownlint
,textlint
で静的解析(lint)を行います。 - 英単語の誤字がないか
cspell
(Code Spell Checker)でチェックします。 -
husky
とlint-staged
でコミット時に自動でlintします。そのため、不正な形式の文章はコミットされません。
前提:VSCodeとDocker(Dev Container)が必要
記事を編集するエディタはVSCode(Visual Studio Code)を使います。Zennの執筆に最適化されたVSCodeの拡張機能やスニペットがインストールされます。
また、Dockerで専用コンテナを準備して執筆環境をつくります。そのため、ローカル環境にDockerのインストールが必要です。特にこだわりが無ければ、GUIで簡単にDockerコンテナを導入できるDocker Desktopが(個人利用であれば)無料で使えて便利です。VSCodeからコンテナにアクセスして執筆するためDev ContainersのVSCode拡張機能も必要です。
VSCodeのdevcontainer環境は、独立した開発環境をつくるには打って付けの構築手法です。しかし構築のための手間と準備は必要なので、面倒だしちょっと難しそうだと思われる方もいるでしょう。
ボイラープレートであれば事前に必要な設定がすべて組み込まれているので、VSCodeとDockerさえインストールされていれば、そのまま使うことができます。
ボイラープレートの使い方
Githubテンプレートからリポジトリを複製する
Githubのテンプレートリポジトリの右上にある "Use this template" をクリックして、ボイラープレートからリポジトリを複製します。
Githubテンプレートからリポジトリを複製
コンテナを立ち上げる
VSCodeで複製したリポジトリをクローンして "Reopen in Container" でコンテナを立ち上げます。
VSCodeでDev Containerを立ち上げ
Dockerコンテナの構成管理のために、Docker Composeを使っています。コンテナを立ち上げると ./docker-compose.yml
と docker/Dockerfile
の内容に基づきコンテナ環境を構築します。
その後で package.json
に記述したライブラリがインストールされます。さらに devcontainer.json
に書かれた設定によって、VSCode拡張機能がインストールされます。
devcontainerの中からルート直下のdocker-compose.ymlを使っている理由
実際のコンテナ構成として使われるのはルート直下にある ./docker-compose.yml
の設定ファイルです。.devcontainer/docker-compose.yml
では、既存の設定ファイルをオーバーライドする記述を入れてます。(公式が提供しているこちらの設定ファイルを参考にしています)このような構成にしておくと、VSCode環境以外でもDocker Composeの設定ファイルを使い回すことができます。
既存のDocker Composeをオーバーライドする方法については以下の記事にとても詳しくまとまっていました。
Zenn CLIを使う準備をする
ローカルのエディタでZennの記事が執筆できる zenn-cli
もインストールされます。GitHubリポジトリと連携手順はZenn公式が書いている以下の記事で丁寧に解説されています。
ここまでの手順でZennの記事を書き始める準備は完了しています。zenn-cli
を使った記事の書き方は、同じくZenn公式が書いている以下の記事を参考にしてください。
ボイラープレートの設定内容
記事を書く際は、Zennに最適化されたVSCode拡張機能やスニペットを使うと便利です。また、コミット時に静的解析(lint)が実行されます。文章が不正な場合、警告メッセージが表示されてコミットできません。
詳しい設定について、後述していきます。
記事を書くための設定
Zenn CLIコマンドはnpmスクリプトから1クリックで実行
記事のプレビュー(npx zenn preview
)や記事の新規作成(npx zenn new:article
)はnpmスクリプトに登録しています。VSCodeのサイドバーから1クリックで実行できます。
Zenn CLIのコマンドはサイドバーから1クリックで実行
VSCode拡張機能でマークダウンを効率よく書く
マークダウンの文章を書く効率を上げる目的で以下の拡張機能を入れています。
拡張機能 | 説明 |
---|---|
Markdown All in One | ショートカットや便利なコマンド |
:emojisense: | 絵文字入力の補助 |
Insert Date String | 現在時刻をショートカット入力(Zennの日時フォーマット YYYY-MM-DD hh:mm で入力されるよう設定済) |
Copy file name | ファイル名を右クリックメニューからコピー |
Path Intellisense | パスを入力補完 |
拡張機能の使い方は以下の記事で詳しく解説しています。よければ参考にしてください。
独自のマークダウン記法はVSCodeスニペットで
.vscode/markdown.code-snippets
にZenn独自の記法を含むマークダウン記法のスニペットを登録しています。使っていきながらご自身で使いやすいスニペットに書き換えることも可能です。
静的解析(lint)の設定
テキストにはコンパイルもなければ、実際に読まれるときの動的なチェックもありません。事前の静的解析は「糸くず(lint)」を取る以上に重要な役割を占めると考えています。
このボイラープレートには、以下に対してlintする設定が入っています。
- マークダウンの形式(
markdownlint
) - 文章の校正(
textlint
) - 英単語の誤字(
cspell
)
くわえて、マークダウンファイル以外はコードフォーマット(自動整形)を prettier
を使って実施します。マークダウンファイルはmarkdownlintと設定が競合するため、意図的に対象から外しています。
VSCodeエディタ上で問題があればリアルタイムで確認
静的解析(lint)はVSCodeの拡張機能も入れているので、問題があればエディタ上で常に確認できます。
拡張機能 | 説明 |
---|---|
markdownlint | VSCodeのエディタ上でマークダウン構造を解析 |
vscode-textlint | VSCodeのエディタ上でテキストを解析 |
Code Spell Checker | VSCodeのエディタ上で英単語の誤字をチェック |
Prettier - Code formatter | VSCodeでコードフォーマット(自動整形) |
コミット時にも確認して不正な形式のマークダウンを警告
husky
と lint-staged
でコミット時に自動でlintします。そのため、不正な形式の文章はコミットされません。
コミット時のlintについては以下の記事に詳しく書いてます。知りたい方は参考にしてください。
lintの詳細設定
ボイラープレートなので、特に設定を変更せずそのまま使えます。この部分も、使っていきながら好みの設定に書き換えてください。以下では初期設定内容について説明します。
markdownlint
デフォルトの構文チェックは厳しめに設定されています。
そのため .vscode/settings.json
と .markdownlint-cli2.jsonc
で一部ルールを調整しています。
"markdownlint.config": {
"line-length": false, // MD013: Disable the maximum number of characters per sentence
"no-duplicate-heading": false, // MD024: Allow duplicate heading text
"no-trailing-punctuation": false, // MD026: Allow headings with . ,;:
"no-inline-html": false, // MD033: Allow HTML description
"no-bare-urls": false // MD034: Allow URLs to be written as is
}
textlint
ベースとして以下の2つのプリセットを適用しています。
プリセット名 | 説明 |
---|---|
textlint-rule-preset-ja-spacing | 日本語のスペース有無を決定するtextlintルールプリセット |
textlint-rule-preset-ja-technical-writing | 技術文書向けのtextlintルールプリセット |
プリセットのままだと厳し過ぎる箇所があるため .textlintrc
で設定を一部上書きしています。
{
"plugins": {
"@textlint/markdown": {
"extensions": [
".md"
]
}
},
"filters": {
"comments": true
},
"rules": {
"prh": {
"rulePaths": [
"./prh/index.yml"
]
},
"preset-ja-technical-writing": {
"sentence-length": {
"max": 150
},
"no-exclamation-question-mark": {
"allowFullWidthExclamation": true,
"allowFullWidthQuestion": true
},
"ja-no-successive-word": false,
"ja-no-mixed-period": {
"allowPeriodMarks": [
":",
":"
]
},
"no-doubled-joshi": {
"strict": false,
"allow": [
"も",
"や",
"か"
],
"separatorCharacters": [
",",
",",
"、",
".",
".",
"。",
"?",
"!",
"?",
"!",
"「",
"」",
"\"",
"”",
"“"
]
}
},
"preset-ja-spacing": {
"ja-space-around-code": {
"before": true,
"after": true
}
}
}
}
また、校正用辞書を /prh/rules
へ追加できるようにしています。初期設定では /prh/rules/tech.yml
に技術用語の校正辞書をいくつか登録しています。必要に応じて用語を追加してください。
meta:
- title: 技術用語の固有名詞ルール
rules:
- expected: インターフェース
patterns:
- インターフェイス
- インタフェース
- インタフェイス
prh: 技術用語
- expected: ソフトウェア
pattern: ソフトウェアー
prh: 技術用語
- expected: ハードウェア
pattern: ハードウェアー
prh: 技術用語
- expected: デフォルト
pattern: ディフォルト
prh: 技術用語
cspell
許可する言葉は .cspell.json
の words
に追加します。対象の文字列にカーソルを合わせてVSCodeのクイックフィックスで登録するのが便利です。
VSCodeのクイックフィックスでcspellのwordsに登録
Prettier
.prettierignore
に *.md
記載して、マークダウンファイルをコードフォーマットの対象外にしています。その他の設定は特に入れていません。自動整形時はデフォルト設定が適用されます。
Zenn執筆環境ボイラープレートのGithubリポジトリ
ここまでお読みいただきありがとうございました。Zenn CLIで記事を書いてみたい!と思っていたけど設定が面倒でこれまで重い腰が上がらなかった方は、この機会にぜひご利用ください。
Qiita執筆環境のボイラープレート
同様の仕組みで作成したQiita執筆環境のボイラープレートも公開しています。非公式のQiita連携ツールを使って、ZennのようにGithub連携して記事を書くことができます。Qiitaで記事を書いている方は、こちらも合わせて参考にしてみてください。
技術ブログと同じ環境でZennを書けるようにした結果
もともと「技術ブログと同じ環境で記事が書けたら、効率もモチベーションも上がりそう」がボイラープレート作成に至ったきかっけでした。実際につくってみて、作業効率以上に情報発信面でメリットを感じることができました。
詳しくは以下の記事にまとめています。よろしければご覧ください。
-
中身を自分で埋める必要がある「テンプレート」に対して、変更せずにそのまま使える定型的なソースコードや設定ファイル群を意味します。 ↩︎
Discussion
良記事ありがとうございます。
devcontainer便利ですよね……。
cspellは初めて知りました、早速取り入れてみようと思います。
誤字がございましたので、PRを発行しております。
お手すきの際にご確認いただければ。
修正ありがとうございます!マージしました。
ボイラープレートの公開ありがとうございます。
Zenn 記事作成の環境を見直したいなと思っていたので textlint の設定など参考になります。
そして少し確認なのですが、こちらのボイラープレートは GitHub Codespaces はサポート外でしょうか?
参考に動かしてみようと Codespace を作成したところ Codespace では
workspaceFolder
が無視されてしまうので動作しませんでした。状況としては Codespace 側がマウントしているワークスペース(リポジトリ)では
node_modules
にマウントされているボリュームが見えないため NPM スクリプトなどが失敗します。現在、困っている状況ではないのでサポート外であっても支障はありません。ですが、念の為お知らせしておいた方がよいかと思いコメントしました。
あとは、
node_modules
が空の状況のときに、npx
でエラーになっていました。こちらは、あとで Issue か PR を送ります。
Codespace、未検証でした。VSCodeがよく使われうる環境は対応したいので、確認します。
プルリクもありがとうございます!確認させていただきます。
ご返信ありがとうございます。
それでは、わかっている範囲で GitHub の方に Issue 立てます。よろしくお願いいたします。