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【論文紹介】ベイズ最適化による抗微生物ペプチド推薦システム
はじめに
2024年12月に開催されたLaboratory Automation月例勉強会 / 2024.12において、ベイズ最適化を用いた抗微生物ペプチド創薬システムの発表を聞く機会がありとても感銘を受けたので、元論文を参照しつつ内容を調べました。
論文情報
Design of antimicrobial peptides containing non-proteinogenic amino acids using multi-objective Bayesian optimisation
著者情報
- 横浜市立大学 / 生命情報系 / 寺山慧研究室 / 村上優貴 氏
目的
- 抗微生物ペプチドの設計は、「抗菌作用」と「毒性(副作用)」などの複数のパラメータを同時に最適化する必要のあるMulti-objective optimization problemであり、難しい。
- Multi-objective optimization problemを解く手法の一つであるベイズ最適化と、実験によるフィードバックを組み合わせ、効率よく抗微生物ペプチドの設計を行うことを目指す。
手法
- 本プラットフォーム「MODAN」は、3つの層からなる。
- 第一層「surrogate model」では、SMILIES表記のシーケンスから、活性(6つの抗菌作用と1つの毒性)を予測するモデルを学習させる。なお、新しいペプチドにも対応しやすいよう、入力はSMILES表記のシーケンスのみで良いようにしている。学習には、PHYSBOというベイズ最適化のためのライブラリを使用した。
- 続いて第二層「recommendation」では、リードペプチドの1つまたは2つのアミノ酸や残基を置換した候補ペプチド群を生成し、第一層で学習したモデルに入力して出力された活性予測値をもとに、「Probability of Improvement」という評価関数を計算して、その値でソートする。
- 第三層「experimentation」では、スコアが良かったペプチドを合成し、実際の活性を評価する。
結果
- 抗菌ペプチドMagainin 2をリードペプチドとして、より活性の高いペプチドを、MODANを2ラウンド回して探索した。
- 第一ラウンドでは、123390種類の候補化合物から、活性が高いと予測された7つのペプチドが抽出され、それを合成したところ、もとのリードペプチドよりも作用は向上しつつ副作用は軽減したペプチド「Peptide 1-7」が得られた。
- 第二ラウンドでは、合成した7つのペプチドの情報を第一層のデータセットに追加して再学習させたうえで、もとのペプチドと「Peptide 1-7」をリードペプチドとして候補をさらに探索した。予測された9つのペプチドを合成したところ、「Peptide 1-7」と同様の抗菌作用を持つペプチドが3つ得られた。
- それら高評価のペプチドの構造を評価したところ、α-Helix構造が抗菌作用に影響しているという、先行研究を支持する結果が得られた。
考察
- わずか2回の最適化ラウンドで、リードペプチドよりも活性の強く副作用の小さいペプチドが4つ得られた。各層の改良によってより効果的にできる可能性がある。
- 計算量の都合でアミノ酸置換箇所を2か所に制限しており、ドメイン知識と組み合わせて置換可能場所をうまく設計するのが望ましい。
- 設計したペプチドを検証する実験は、まだ手作業が必須。
Discussion