なぜ日本人はグローバル会議でだまっちゃうのか?(ケーススタディ編)
グローバル会議で日本人が黙ってしまう場面、よく見ませんか?
この記事はそんな「あるある」の仕組みと、解決アイディアについて書いた記事の続編です。
前回は、日本の文化背景からくる心理的な構造が「グローバル会議の場では壁になってしまう」ことを紹介しました。
今回の記事では、それが具体的にどういうことかをもう少し掘り下げていきます。
日本人の特性って、実際どんな形で表れるの?
前編で書いてきた「恥の文化」とも言われる日本の国民性は、僕自身もよく大学の授業や書籍で見聞きして知識としては早くから知っていました。が、実際に体験してみるまでは実のところよく腑に落ちなかったと言うのが正直なところです。
以前の別の記事でも触れましたが、英語の得手不得手に関わらず、海外とすれ違うことが典型パターンとしてあります。
ここからは僕が英会話に初めて挑んだころに実際に経験した失敗談をベースに、どのようにしてすれ違いが起きるのか、そこに第一弾で解説した「文化的背景からくる心理」がどう関わっていたかを紹介します。おそらく多くの日本人に共通する悩みだと思いますので、参考にしてもらえるとうれしいです。
説明の直後に飛んでくる質問の嵐
僕が何か説明した後には、海外メンバーは必ずと言っていいほど質問や反論をします。たとえば、よく見かけるのはこんな内容です。
- その要件だと僕らの環境には合わない。なぜならこういうビジネスケースがあるからだ
- WhatはわかったけどWhyとWhenがわからない。なんでこの施策やるの?
- カタログにはこんな機能があるって書いているけど、実装しないのか
- 製品の機能はわかったけど、サービスとしてはどうしていくつもりなんだ
質問の嵐の真意
彼らからすると、この質問の嵐は「前向きによいものを作るための意見や質問」です。
誤解しがちなのですが、異なる意見を突っぱねたいとか、自分たちの意見を押し通したいという意図はほとんどの場合ありません。(もちろん、発言者の性格や状況、会話の文脈、こちらとの信頼関係にもよることは注釈しておきます。)
ありがちな日本的反応
ぶつかることに慣れていない日本人が質問の嵐と遭遇すると、避けようとする防衛心理が自然と働きます。
日本人の防衛心理と勘違いの始まり
日本人同士の会議で意見が活発に飛び交う場面に遭遇してこなかった人ほど、活発な議論はそれだけで「ヒートアップしている、荒れている」と感じてしまいます。
相手は別に怒っているわけではなくて、純粋に自分の意見を伝えようとして一生懸命しゃべっているだけのことがほとんどです。しかし日本人からすると、これが英語の語気も相まって「ガツガツ言ってくる」「なんか怖い」「ぶつかりそう、避けなきゃ」という心理に変換されやすいです。
実際にどんなことが起きるのか
英会話が苦手に感じている人ほど、防衛心理はなおさら助長されます。
英会話が苦手だった頃の僕は、その場の空気(和)を大事にしようとしてよく焦ってました。結果、相手と十分に分かり合えないまま会議を終えることがよくありました。
よくやってしまっていた"焦り"と"よくない行動"
- なんとか会議の場を納めなきゃ
- でも言ってることがわからない / 言ってることはわかったけど、回答できるだけの知識や英語力はない
- どうしようどうしよう
- とりあえずテイのいいことを言ってわかったことにして、この場を納めよう
- 持って帰って、あとで落ち着いてメールを書こう
焦り倒してどうにか場を収めようとした僕は、大して内容をわかってもいないのに "okay, maybe understood. I will email to you later."とだけ言い放って会議を逃げてしまうことがよくありました。
社内で他のチームが海外とのやりとりで同じ苦労しているのをよく見かけるので、この反応や心理は"日本人あるある"だと思います。
"避ける"ことで生まれる負の連鎖
「日本人がぶつかることを避ける」ことにより建設的な議論が成立しなくなることがよくあります。
- お互いの立ち位置や思いが見えない
- どこまでが同じ気持ちで、どこからズレているのかハッキリしない
- どこがズレているかわからないから、相手がなぜ妥協してくれないのかお互いにわからない
- お互いが及第点を取れる落とし所(Landing Point)を探れない
- 結果、出てきた内容が合意できない。無理やり推し進めると、致命的な喧嘩別れに至る
日本では美徳とされる「ぶつからないこと」は、グローバルの場ではこのようにマイナスに働くことが多いです。ちょっとした誤解が後になればなるほど大きな歪みになり、最終的にギスギスした関係性になってしまうのが典型的な失敗パターンです。この失敗はいろんなところで見てきましたし、僕自身も何度も経験してきました。
「あるある」を文化背景から交えて紐解いてみる
前回の記事で解説した「ホンネとタテマエ」「周囲からの視線に対する機微」「ハレとケの切り替え」を踏まえると、この「あるある」の正体が見えてきます。
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議論が苦手な根本原因
- ぶつかることに不慣れで、和を乱さないことを優先しようとする(タテマエで逃げようとしてしまう)
- 自分のホンネでしゃべることに慣れていないから、感じたことをすぐに言語化できない
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相手の質問に必要以上にビビってしまう根本原因
- 英語会議を非日常(ハレ)として捉える+周囲(主に海外チームや上司)からの視線を気にする
- その結果、「きちんと正しいを言おう」とし過ぎて反応できなくなる
グローバルでは当たり前に行われる「議論の最初の一歩としてまずお互いに意見ぶつけること」自体を避けようとする気質が、日本人には文化的な背景としてはあります。実際にはいくつかの要素が(悪い方向に)複合的に合わさって起きていることです。
解決策は「友達になる」に限る
前回の記事でも述べたとおり、リラックスして相手とホンネでぶつかれる関係性が築けていれば - つまり、相手と友達になれていればこんなことにはなりませんでした。
英会話力を磨けば多少焦りや摩擦は減るのかもしれませんが、日本人側が相手との接し方を変えていかないと根本的な解決にはなりません。自分の深層心理から来る壁を乗り越えるための一歩として、どんな要素や構造があってどんな風に作用するのかこのシリーズ記事がお役に立てるとうれしいです。
つづく - ではどうすればいいのか
本編では、失敗談とそれが起きる理由を文化的な背景から来る心理と紐づけて紹介しました。同じような悩みを持っている方はそこそこいるのではないでしょうか。
続編記事では肝心な「じゃあどうすりゃええねん」をいよいよ紹介します。
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