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スクラムガイドを8ヶ月かけて読み合わせてみた02 〜スクラムの三本柱・スクラムマスターの責任〜

2025/03/12に公開

私達の所属する部署ではプロダクト開発の手法として、複数チームでスクラムを導入しています。
今回は有志でスクラムガイドの読み合わせをし、そこから得た気づきを紹介します!

読み合わせをしたスクラムガイドはこちら
(本文中の引用は、以下のリンクからのものです)
https://scrumguides.org/docs/scrumguide/v2020/2020-Scrum-Guide-Japanese.pdf

スクラムガイド読み合わせの概要についてはこちら
https://zenn.dev/spectee/articles/spectee-scrum-guide

別トピックの記事も書いています!
https://zenn.dev/spectee/articles/d55153f2cc0235

印象に残ったトピック

本記事では三本柱とスクラムマスターの責務について議論した内容を紹介します。

トピック1: 三本柱

スクラムの三本柱(透明性・検査・適応)について、読み合わせを行った結果得た知見をまとめました。

透明性

創発的なプロセスや作業は、作業を実⾏する⼈とその作業を受け取る⼈に⾒える必要がある。スクラムにおける重要な意思決定は、3 つの正式な作成物を認知する状態に基づいている。透明性の低い作成物は、価値を低下させ、リスクを⾼める意思決定につながる可能性がある。透明性によって検査が可能になる。
透明性のない検査は、誤解を招き、ムダなものである。

属人化の回避、タスクの見える化だけにとどまらず、「3つの正式な成果物(プロダクトバックログ・スプリントバックログ・インクリメント)」全てにおいて透明性を担保する必要があるとされており、読む前と読んだ後とでは、この「透明性」ということを担保することの大変さの認識に違いが出てきていると感じています。チーム内にとどまらず、ステークホルダ全体に関連するものなのだと再認識する結果となりました。


検査

スクラムの作成物と合意されたゴールに向けた進捗状況は、頻繁かつ熱⼼に検査されなければならない。これは、潜在的に望ましくない変化や問題を検知するためである。スクラムでは、検査を⽀援するために、5 つのイベントでリズムを提供している。

スクラムにおける5つのイベントは検査を支援する役割も担っていることが、スクラムガイドを呼んだ上で得た新鮮な知見でした。
頻繁かつ定期的に行うこと事に意味があり、そのための5つのイベントでのリズムではありますが、イベントが形骸化してしまう、いわゆる「ゾンビスクラム」にならないように注意したいと感じました。
また、そもそも「ゾンビ」となってしまっていないかの検査及び適応も意識してやっていく必要があると実感しました。

適応にて触れている「許容範囲を逸脱している」ことを検査するためにも、デイリーなどのスクラムイベントにおいてそれを意識することも重要だということも学ぶことができました。


適応

プロセスのいずれかの側⾯が許容範囲を逸脱していたり、成果となるプロダクトが受け⼊れられなかったりしたときは、適⽤しているプロセスや製造している構成要素を調整する必要がある。それ以上の逸脱を最⼩限に抑えるため、できるだけ早く調整しなければならない。

今回、適応について皆で考えるに際し、「許容範囲を逸脱している」ことをどのように判断するのか、といった議論があり、そこで話し合った結果、逸脱には主に以下の4つの観点があることがわかりました。

「スケジュールの遅延」、「品質の問題」、「スコープの変更」、「リソースの問題」

これらの観点を各スクラムイベントで検査することで、「成果となるプロダクトが受け入れられなかった」となる前に未然に防ぎ、迅速に適応へ移ることができるのではないか、という発見もありました。
また、正しく迅速な適応を行うためにも、先に挙げられた、「検査」が大事であり、それを担保する「透明性」も必然的に重要となることを学ぶことができました。

感想

基本的に「〜なければならない」「〜必要がある」等の強い口調で書かれている箇所は、基本的にこの3つを守らなければ達成できないようなことが書いてありました。

それがスクラム初学者や、「三本柱」の存在がまだ定着していない人にとっては理不尽な捉えられ方をする傾向がこの会で読み合わせをしている中でも散見していたように思えます。
そのため、スクラムをチーム、ないし組織内で広める際には三本柱のことを強く意識させることで、その後のスクラムガイドの読み込みや、共通単語として使えるため有効であると実感しました。

また、ここでは触れていませんが
「スクラムの5つの価値基準」である「確約(Commitment)」「集中(Focus)」「公開(Openness)」「尊敬(Respect)」「勇気(Courage)」をチームが意識し体現することが、三本柱の実現と深く関わっています。
そのため、「三本柱」をチーム内に浸透させたい思っているのであれば、こちらも合わせて学習する必要があると考えます。

「三本柱」にしても、「スクラムの5つの価値基準」にしても、チームが活動する際の指針とすることで意思決定も行いやすくなります。
定期的にチーム内の認識のチェックをしていくことで、自分たちのチームがスクラムからズレていないかを確認することができるでしょう。

「スクラムとは?」という疑問が浮かぶたび、このスクラムガイドを読み返したいと思いました。

アクション

  • 透明性
    • 「ストーリーの詳細を気にしなくとも成果物を見るだけで内容を把握できる単位でストーリーを分解する」
      • ストーリーのレベルでなくとも、一つのタスクに対しても細分化し、必要があれば別タスクに分ける余地を設けることも行いました。
    • 結果:チーム内での障害の共有等がスムーズになり、問題解決までの時間が短くなりました。
  • 検査
    • 「スケジュールの遅延」、「品質の問題」、「スコープの変更」、「リソースの問題」 について各スクラムイベントにて、これらの観点を意識できるような問いかけを心がける」
    • 「スプリントゴールの達成を阻害する要因を見つけ出すように問いかけを行う」
    • 結果:チーム内での障害の共有がスムーズになり、その数も増えました。
  • 適応
    • 「『難しいよねぇ』で終わらせない、すぐ実行できるレベルのtryを考えていく」
    • 結果:棚上げしがちな難しい問題を、棚上げすることなく、工夫して取り組むことができるようになった。

トピック2: スクラムマスターの責任

スクラムマスターの責任として大きく2つ定義しています。

  • スクラムの確⽴に対する責任
  • スクラムチームの有効性に対する責任

これらの責任を通して、スクラムチームとより⼤きな組織に奉仕する真のリーダーを体現することが期待されます。

責任①: スクラムの確⽴に対する責任

スクラムマスターは、スクラムガイドで定義されたスクラムを確⽴させることの結果に責任を持つ。スクラムマスターは、スクラムチームと組織において、スクラムの理論とプラクティスを全員に理解してもらえるよう⽀援することで、その責任を果たす。

スクラムを導入したばかりのチームでは、スクラムに対する理解が浅いことが想像できます。スクラムマスターはスクラムの各イベントや作成物の目的をチームに共有し理解を促します。
私のチームは全員がこの読み合わせ会に参加したため、スクラムの理論とプラクティスに対するチーム全体の理解が深まり、スクラムの確立に貢献できたと感じています。このような学習の場を設けたことは、スクラムの定着にとって有意義な取り組みでした。

責任②: スクラムチームの有効性に対する責任

スクラムマスターは、スクラムチームの有効性に責任を持つ。スクラムマスターは、スクラムチームがスクラムフレームワーク内でプラクティスを改善できるようにすることで、その責任を果たす。

ここでいう「有効性」は「スクラムチームが効果的に機能し、高いパフォーマンスを発揮できること」を指すと考えることができます。スクラムマスターは、チームがスクラムのフレームワークを適切に活用できているかを見極め、三本柱(透明性・検査・適用)が実現できていない場合には、チームを支援し、チームがプラクティスを改善するように促す必要があります。

スクラムマスターが行う支援
スクラムマスターは、スクラムチーム/プロダクトオーナー/組織に対してさまざまな形で支援を行います。ただし、スクラムマスターがするのはあくまで「支援」であり、それをどのように「実践」するかは支援される側が決めるということが大切な観点です。

感想

このセクションに関する議論では、スクラムマスターの立ち回りの難しさに関する次のような感想が多く挙がり、参加者全員がスクラムマスターというロールについて十分に理解しきれていないことが分かりました。

  • スクラムマスターはあくまで立ち位置はプレイヤー(開発者)ではなく、監督に近い。
  • トップダウンでスクラムマスターを任された場合、スクラムマスターとしてどう働きかけるかをまず勉強しないといけない。
  • スクラムの理論とプラクティスをただ説明するだけでは受け入れでもらえるとは限らない。
    • スクラムをチームに浸透させるための銀の弾丸はない。
    • チームの三本柱の状態を観察し、適切なタイミングでチームに振り返りの場を提供していく。
  • 開発者とスクラムマスターの兼務をしなければいけないときの立ち回り方が難しい。
    • どうしても開発者目線になってしまう。

アクション

  • 「スクラムマスター道」をもとに、スクラムマスターの支援内容を具体的に調査してみました。詳しくは別の記事にまとめています。

https://zenn.dev/spectee/articles/4ab9a75bad4179

  • 現行のスクラムイベントとスクラムの作成物について、スクラムガイドから目的を引用し「現状のままで良いのか?そもそもこのイベントの目的は何か?」をチームで議論する時間を設けました。結果、各イベントの改善点が明確になり、より効果的に機能させることにつながりました。

議論
スクラムガイドの節を元にチーム内で議論しました!

まとめ: スクラムの三本柱を意識した実践を

本記事では、スクラムの三本柱(透明性・検査・適応)の重要性や、スクラムマスターの責務について紹介しました。スクラムを効果的に運用するためには、三本柱を意識しながらチームの状況を観察し、適切な支援を行うことが不可欠です。以下に簡単なまとめを記します。

  • 透明性: 意思決定の基盤となる情報を見える化する。
  • 検査: 透明性を前提に、状況を正しく把握し改善の機会を探る。
  • 適応: 検査の結果をもとに、プロセスやプラクティスを調整する。
  • スクラムマスターはスクラムの確立と、チームの有効性向上に責任を持つ。
  • スクラムの導入・改善には、単なる説明ではなく、実践と振り返りを重ねることが重要。

アクション

  • 「スクラムマスター道」を参考にし、スクラムマスターの支援内容を具体的に整理。
  • スクラムイベントや作成物の目的をチームで議論し、現状の課題を洗い出す。
  • 三本柱の観点から、チームの現状を振り返る場を定期的に設け、改善を継続する。

三本柱を意識したスクラム運用を通じて、チームの成長を促していきたいと思います!

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