「スクラムマスター道」✕「ChatGPT」を使ったスクラムマスターAction
「スクラムマスター道」✕「ChatGPT」を使ったスクラムマスターAction
Specteeでエンジニアをしている峯田、國久、和山です。
今回は、業務で抱えていたスクラムマスターの課題を「スクラムマスター道」を参照しつつ「ChatGPT」を使って対応してみた話を共有します。
背景と課題
私たちが所属するチームでは、アジャイル開発手法のひとつであるスクラムを採用しています。このスクラムでは、スクラムチームの有効性に責任を持つスクラムマスターが存在しており、スクラムガイドやカンファレンス、資料などを見ていると、プロダクトの成功において無視できない存在に思えます。
しかしながら、このスクラムマスターは、今までのエンジニアや就職するまでの人生において馴染みのある存在ではなく、スクラムマスターに関する漠然とした不安や課題はつきません。その中で、まず対処すべき2つの課題に焦点を絞りその対策を考えました。
課題1:スクラムマスターの価値が分かりづらい
スクラムマスター目線における課題感
- スクラムマスターがチームにどんな理由でどんなことをするとよいのか分からずモヤモヤしていた。
- 工夫はしつつも、スプリントイベントを上手くこなす(e.g., ファシリ、レトロ設計)以上の価値は生み出せている気がしなかった。
- スクラムマスターとして成長できているのかも分からない。
スクラムマスター以外の開発者目線における課題感
- スクラムマスターって結局何しているの? チームにどんな価値があるの?
- スクラムマスターの人をどうやって補助したら良いのか分からん
打開策
スクラムで卓越した成果を収める方法・グレートスクラムマスターになるための方法である「スクラムマスター道」のコア要素を整理します。これによって、チーム全体でスクラムマスターの理解を深め、スクラムマスターが動きやすくなるようにします。
※ スクラムマスター道の詳細はこの記事では触れません。
課題2:専任のスクラムマスターがいない
- 開発者と兼任であるため、スクラムマスターの調査等に多くの時間を割けない
- スクラムマスターを深めるエネルギーも高くはない
- スクラムマスターとして何か新しい行動への一歩を踏み出しにくい
打開策
ChatGPTに、スクラムマスター道のコア要素から業務に落とし込めるアクションを提案してもらう。
※ 今回のケースではChatGPTに正しい答えを求めているわけではなく、アイディア出しの意味合いが強いのでプロンプトや細かい結果に関しては省略します。
目的
「スクラムマスター道」のコア要素に対する理解を深めつつ、ChatGPTを使ってこの要素を業務に落とし込むためのアクションを提案し実践する。これによって、チーム内でのスクラムマスターに対する理解を深め、スクラムマスターの価値を高めていく。
方法
次の1~6をスクラムマスターを中心に進めました。特に、5のチームにスクラムマスターとして何に取り組んでいるかを忘れず公開することが大事だと思います。これを怠ると「スクラムマスターってよく分からない存在だな」というチームの課題が払拭されません。
※ 本記事は方法論を重視しているわけではないため、具体的な整理方法や詳細は省き、大まかなフローのみ紹介します。
- スクラムマスター道のコア要素とその詳細を整理する
- コア要素の詳細ごとに、満たせるようなアクションをChatGPTに提案してもらう
- チームの状況から、その項目が満たせているかを判断する
- 適用すべき項目があれば、チームに合わせたアクションに落とし込む
- 満たせている項目と適用に向けてアクションに落とし込んでいるものをチーム全体で共有する
- 要素に対する項目を全て消化しても、まだ足りないと感じたら、さらに項目を増やす
課題の解決
次に、課題の解決例に関していくつか紹介します。
課題1:スクラムマスターの価値が分かりづらい
①スクラムマスターの価値が分からない
👉️ チームに対するスクラムマスターの価値を認識し、チームからスクラムマスターを補助しやすくなった。やることが明確化されたため、スクラムマスターを誰か一人に押し付けず、ローテーションで気軽に回しやすくなった。これによって、スクラムマスターの属人化も回避しやすくなった。
②スクラムマスターとしてどんな行動を起こすとよいのか?でモヤモヤしていた
👉️ アクションに落とし込み、実際に行動したため、漠然とした不安が解消された。結果的に、余計に悩む時間も減った。
課題2:専任のスクラムマスターがいない
①多くの時間をスクラムマスターの調査等には割けない
👉️ あまり時間を割くことなく、不安に対する変化を起こすことができた。
スクラムマスターアクション例
オープンクエスチョンを投げかける(メタスキル>好奇心)
デイリースクラムやレトロスペクティブで、チームの意見をより深めるための問いかけを試せた。その結果、ファシリとしてチームの自発性を促せられるようになり、より深い議論に展開できるようなった。
オープンクエスチョンの例:この課題に対して他にどんな解決方法が考えられる?
新しいツールやテクノロジーの評価セッションを実施(メタスキル>好奇心)
デイリーミーティングの前に、チームで最新技術に関する情報を閲覧する時間を設定した。これによって、新ツールやリリース情報への感度が高まり、チームに即取り入れられるものは、バックログに積んで対応計画を立てるようになった。
ビジネスゴールの確認と共有(学習>ビジネス)
開発者がストーリーの目的やビジネス価値に対する理解が不足している状態でタスクに取り掛かかり、POが期待する成果物と少し異なるものを作成してしまうことがあった。そのため、ビジネスゴール・ニーズをストーリーに書くようにして、チーム全体で自分たちの業務が果たす価値を理解するという対応をした。この結果、ストーリーが達成したい価値への理解が深まり、成果物の品質が向上した。当項目はチームとして改善の余地が多いこと、POと一緒にアクションを出していくことが効果的だと考え、まずはPOが果たす責務について学ぶ勉強会(PO責務調査勉強会)を設けた。
感想・注意点
- ChatGPTに項目を提案してもらっているため、正確性に欠ける部分があることは理解している。しかし、ただよく分からない理想論に頭を悩ませ何もできないよりかは、不正確な要素はあっても何か行動(変化)を起こせるほうがマシなのかなと考えている。
- また、ChatGPTから提案してくれたアクション項目をこなせばよいというわけではないことも理解してる。あくまで最初の一歩を踏む出すためのきっかけ作りであり、ChatGPTの提案で足りないと思うことは(上記のPO責務調査勉強会の例にあるように)、個別で深めている。
- スクラムを良くするために本を読んだりカンファレンスの資料を漁ることも意味はある。しかし、経験則を大事にしているスクラムにおいて、それを具体的なアクションに落とし込めなければ、チームに価値をもたらせないのかなと感じた。
まとめ
- スクラムマスターの価値を理解し高めるために、スクラムマスター道の要素を整理し、チーム全体を俯瞰した具体的なアクションに落とし込んだ。
- 結果として、スクラムマスターとして支援できている要素とそうでない要素が明確になり、プロダクトの成功に近づくより良い変化を取り入れるができた。
- 今後は、チームだけでなく、組織全体を巻き込みよりプロダクトの価値を高めるような支援をチーム全体で実践していきたい。
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