スクラムガイドを8ヶ月かけて読み合わせてみた01 〜目的・効果・感想〜
私達の所属する部署ではプロダクト開発の手法として、複数チームでスクラムを導入しています。
今回は有志でスクラムガイドの読み合わせをし、そこから得た気づきを紹介します!
読み合わせをしたスクラムガイドはこちら
本記事では、スクラムガイド読み合わせの進め方や得られた効果について整理しました。
特に印象に残ったトピックは別記事にて紹介しています!合わせてご覧ください。
スクラムガイド読み合わせを開催した目的
1. スクラムの価値と原則を理解する
- スクラムの経験主義と価値基準を正しく理解する
- スクラムチームの責任と各イベントの目的を理解し実践に生かす
2. スクラムガイドを通して、現状のスクラムを振り返る
- 現状とあるべき姿のギャップを知る
- Whatではなく、Whyが何か知れると良い
終わった後どんな状態になっていたいか(完了の定義)
- ガイドブックの内容を理解し、他人に説明できる状態である(e.g., 基本理念、責任、イベント)
- TryがNotionにまとめられ、業務に応用できている
進め方
いつどこで
- 毎週1時間。Google Meet上で。
参加者
- 複数のスクラムチームから有志で。
開催期間(どのくらいかかったか)
- 2024.06-2025.01(8ヶ月)
具体的な進め方
- 当日読みながら、感想や疑問点を整理し全体で理解を深める。
- 疑問点の整理は参加者で対話しつつ、必要に応じて生成AIを用いて解釈を得た。
- 可能であれば、アクションに落とし込めるものを考え業務に落とし込む。
整理方法
- Notionを活用
- 意味のある段落ごとに、トグルで区切り感想や疑問点、アクションを記す
各段落ごとに感想・アクションを出しました
スクラムガイドの読みあわせで得られた事
-
効果①:全員で同じ資料を読むことで、理解・解釈を揃える事につながりました
- より深いスクラムに対する理解
-
効果②:スプリント期間中の活動の改善を試みるようになりました
- スクラムを用いた活動の意義の再認識
-
効果③:他チームの課題、それに対する対処事例に関して議論できる場が形成されました
- 他チームとのコミュニケーションパスの形成
効果①: 全員で同じ資料を読むことで、理解・解釈を揃える事につながりました
Before
- 勉強会の参加者が所属するチームは、いずれもスクラムで開発を行っていますが、スクラムに関する知識や経験の差により、それぞれが独自の解釈をしており、共通認識が形成されていませんでした。
After
- スクラムガイドの読み合わせをし、その内容を参加者同士で議論・深掘りを行いました。それにより、スクラムに対する理解度を向上させるとともに、共通認識を形成することができました。
- Notionを活用し、ガイドの内容に加えて感想やアクションも記録したため、スクラム勉強会に参加していない人に対しても、話し合った内容を共有することが可能になりました。
効果②: スプリント期間中の活動の改善を試みるようになりました
Before
- レビューやレトロスペクティブといった活動について深く考えず、作業のようにイベントをこなしているだけのメンバーがいました。
After
- スクラムガイドの内容を基に、実際のチームでのスクラム活動と比較しながら深掘りを行うことで、何故スクラムを行うのか共通認識を取りました。
- スクラムの意義の再認識により、ただの業務報告になっていたデイリーを見直す等、スプリント期間中の活動を改善しました。
効果③: 他チームの課題、それに対する対処事例に関して議論できる場が形成されました
Before
- Specteeでは複数チームがプロダクト開発の手法としてスクラムを導入しています。しかし、スクラムマスター同士が交流する機会はあっても、スクラムで開発を行っているチームメンバー間の交流はほとんどありませんでした。
After
- 本勉強会では開発者とスクラムマスターが共にスクラムガイドを読み合わせ、その内容について自チームの開発者やスクラムマスターの視点から課題や活動を共有することで、課題の解決策を模索する場が提供されました。
- これにより、チームが抱える課題の解決に近づくだけでなく、新たにチーム間のコミュニケーションパスが生まれ、業務における他チームとの連携が円滑になりました。
各自の感想
スクラムガイドの読み合わせを終えた後、振り返りの時間を取りました。そこで出た良かった点(Good)と、今後の改善点(More)をいくつか紹介します。
Good
スクラムの理解が深まったという意見が多くありました。
「なんとなくスクラムで開発している」状態から抜け出し、スクラムの基本理念や考え方、目指す方向性について理解が進んだと感じたメンバーが多かったです。
- さっと読んで理解したつもりになっていたが、実際に議論することで、自分の理解の浅さを実感する場面があった。この会が終わったとしても、理解したつもりにならないようにしたいと思った。
- 「スクラムとは何か」が明確になり、スタートラインに立てた感じがする。今後も定期的に読み返し、新たな解釈を得られるようにしたい。
進め方に関しても、少しずつ改善を重ねながら進められた点が良かったという意見がありました。
- ファシリテーターを交代しながら進めたり、コメントの書き方を工夫したりと、小さな改善を積み重ねることができた。
- 想定より時間をかけて議論したが、それだけ深く考えられ、充実した時間だった。
- 各チームの悩みを相談するきっかけにもなり、横のつながりが生まれたのも良かった。やはり、いろんなチームが話せる場は貴重だと感じた。
More
一方で、進め方についての改善点も挙がりました。
- ファシリテーターは明示的にローテーション制にしても良かったかもしれない。
- もっと議論したい余地があったので、今後も継続的に意見交換する場があると良さそう。
また、今回は生成AIを活用しながら議論を進めましたが、その中で「理解促進には役立った一方で、情報の真偽が気になることがあった」という意見も出ました。AIの解釈を踏まえつつ、公式な情報と照らし合わせるやメンバーと議論を重ねることの重要性を改めて感じました。
全体の振り返り。皆でワイワイしながらやりました!
アジャイルコーチの視点:スクラムガイドを超えた学び
スクラムガイド読み合わせには、アジャイルコーチの稲野 (Jhonny) さんにも参加いただきました。
ここでは、本取り組みを通じて稲野さんが感じたことをご紹介します。
2024年6月に始まり、約8ヶ月間。週1回1時間とはいえ、合計25回にわたる取り組みでした。
わずか17ページのドキュメントを、皆で集まり、読み解き、議論し、学びを得ながら実践を続け、行動変容につなげてきました。そして遂に完走を迎えたこと、本当に素晴らしい成果です。「継続的に学ぶ」姿勢を貫いたことは、まさにアジャイルの体現そのもの。お見事です!皆さんに改めて敬意を表します。
スクラムは意図的に不完全であり、スクラムガイドは意図的に抽象的です。
その中で、自分たちなりの答えを探し求める作業は決して容易ではなかったはずです。それでも皆さんはやり遂げました。そこで得た共通認識や、個々の違いを尊重する姿勢、そして実際に生まれた行動変容は、大きな成果と言えるでしょう。
また、この活動が実現できたのは、皆さんの努力だけでなく、組織としての目標を急遽まとめ、支援してくださったマネージャー陣の存在も大きかったと思います。限られた時間の中で方針を明確にし、道筋を示してくださったことに加え、対話の場を作り、皆さんの意見を受け止めながら共に考えてくださったことにも、心より感謝です。
これまでさまざまな支援先でスクラムガイドの勉強会を行ってきましたが、どこでも一定の成果は得られています。
その中でも、皆さんの「行動変容につなげる」という意識の高さは特に印象的でした。毎回の学びを自身の行動に反映させるだけでなく、チームの意義を見つめ直し、さらにはマネージャーや組織全体の目標・課題について対話を深めたことは、個人、チーム、組織のいずれにとっても大きな意義があったのではないかと思います。
今回の取り組みを通じて「継続的に学ぶ」ことの価値を実感されたことでしょう。
また、そこから生まれた変化のインパクトも体験されたことと思います。これこそがアジャイルの醍醐味ですね!
変化し、変化を生み出し続ける皆さんが、これからどのような未来を築いていくのかを楽しみにしています!
まとめ
半年間にわたるスクラムガイドの読み合わせを通じて、スクラムへの理解を深めることができました。
この会で得た知見やアクションを各チームに持ち帰り、実践することで、スクラムの「経験主義」を体感する良い機会にもなったと感じています。
この記事を読んでくださった皆さんも、ぜひ誘い合ってスクラムガイドの読み合わせを試してみてはいかがでしょうか。
新たな気づきや、チームの成長につながるきっかけになるかもしれません!
本記事を読んでの感想・ご意見などをぜひコメント欄に書いていただけると嬉しいです!
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