自律的な組織とは何か
はじめに
こんにちは。PharmaXでエンジニアリングマネージャーをしている古家(@enzerubank)です。
最近エンジニアリングマネージャーとして理想のプロダクト開発組織のイメージを考えているのですが、よく開発組織の理想として挙げられる自律的な組織についての解像度を高める必要があるなと思い、調べた内容をまとめてみました。
今回の内容は自律的な組織にどう近づけばいいのかという話よりかは、自律的な組織を考える上での前提を理解することを目的にしています。
自律的な組織の原点は?
そもそもなぜ自律的な組織を目指すのかというと、その原点はMIT(マサチューセッツ工科大学)のピーター・センゲ教授が1990年に発行したThe Fifth Disciplineから流れが始まっています。
本書で「Learning Organization(学習する組織)」という概念を提唱しました。つまり、組織としての強さは学習能力の高さで決まるということです。
ピーター・センゲは本の中で「あらゆるレベルのスタッフの意欲と学習能力を活かす術を見出した組織」が学習する組織であり、実現するための方法論として5つのディシプリン(学習領域)を提示しました。
現在では学習する組織はマネジメントの基本的な考え方の一つとして定着しており、今日注目されている1990年代以降に生み出されたマネジメント手法の多くは、学習する組織の考えを踏まえた上で作られています。
自律型組織、サーバントリーダーシップ、エンパワーメント、コーチング、ナレッジマネジメントといった手法は、この基本である学習する組織を理解しなければ導入しても効果がないと言われています。
学習する組織に関連がありそうな他の手法
1990年代といえば、トヨタ生産方式(TPS)を元に「リーン」が生み出され、それが「アジャイル」につながり、アジャイル開発手法の発展につながっていきました。
ピーター・センゲは、これらは全て「どのように学習するかが重要である」という認識を示す大きな流れの中で次々と現れた波であったと解説しています。
1990年代後半に提唱されたナレッジマネジメントの基本理論である「SECIモデル」も、スクラムという言葉が生まれるきっかけを生んだ野中教授が提唱しているので、この流れの中で体系化されてきた理論なんだろうなと思いました。
スクラムの中でスクラムマスターはサーバントリーダーシップを発揮する存在であるとされているのも、この学習する組織の概念を実現するためのピースの一つだと言えそうです。
近年ではエンジニアリングマネージャーの仕事の1つとされている1on1も、相手の話を傾聴して時にはコーチングしたり、エンパワーメントすることが求められたりと、学習する組織の概念を理解した上でのマネジメントの手法なのだろうなと。
あとはOKRもそうですね。1人1人の自律性を引き出す目標設定手法として適切に運用できれば、学習する組織の実現を進められるのだと思います。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の言語化が必要だと言われているのも、学習する組織の理論で説明できます。本書で上げられている5つのディシプリン(学習領域)の中に共有ビジョンというものがあります。これは、組織全体で互いに個人ビジョンを聞き合い、共有ビジョンを紡ぎ、今の現実と対比して未来に対して創造的な姿勢で取り組むということです。
MVVがなかなか浸透しないと悩んでいる組織はここに解決のヒントがありそうですね。
自律的な組織づくりをいきなり目指すと失敗しそう
ここまで書いてきた通り、自律的な組織を作るには前提として理解しておかないといけない専門知識がとても多いです。経営者が精通しているか、組織作りのプロに役員に入ってもらうくらいしないと、いきなり本格的に取り組むのは難しい感じがします。
自律的な組織づくりの失敗パターンについてはこちらの記事が参考になりました。
現実的にはいきなり会社全体の組織を変えようとするのではなく、ボトムアップからのアプローチで、最小単位のチームから少しずつ自律的な組織にしていくのが良いでしょう。
スクラムはそのためのアプローチとしてとても良いものなので、開発チームを起点としてプロダクトチーム→事業部→全社といった風に少しずつ自律の輪をひろげていけるといいですね。
さいごに
いかがだったでしょうか?いきなり自律的な組織を目指すのではなく、まずはその基本概念である「学習する組織」について学びを深めた方が良さそうということがわかったかと思います。
自分もこれから本格的に学ぼうと思っているので、また知見が溜まったら記事にしたいと思います。自律的な組織づくりに悩んでいるエンジニア・EMの方の参考に少しでもなれば幸いです。
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