エンジニアリングマネジメント系の書籍と感想
はじめに
エンジニアリングマネージャーという仕事をご存じでしょうか。
エンジニアリングマネージャーはエンジニアのマネジメントを行う役職で、採用や評価、プロジェクトのアサイン、エンジニアの育成や技術的なリード含む多岐にわたる領域を主導します。
私はSIerに所属しており、肩書こそ違えどエンジニアリングマネージャーのような仕事を担当しています。
※担当直後は案件掛け持ち(リードエンジニア、コンサル、PMとそれぞれ違う役割で参画)で余力がなかったり、年上の部下への接し方に悩んだりもしましたが何とかなりました。
その中でエンジニアリングマネジメントに関する3つのの書籍を読んだので紹介します。
- エンジニアリングマネージャーのしごと ―チームが必要とするマネージャーになる方法
- エレガントパズル エンジニアのマネジメントという難問にあなたはどう立ち向かうのか
- エンジニアリングが好きな私たちのための エンジニアリングマネジャー入門
概要とポイント
エンジニアリングマネージャーのしごと ―チームが必要とするマネージャーになる方法
マネージャーのアウトプット = あなたのアウトプット + あなたが影響を与えた他のチームのアウトプット
エンジニアリングマネジメントをリーダーシップとキャリア全体の成長の観点から捉えています。
簡単にポイントをまとめると
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エンジニアからマネージャーへの移行
- エンジニアとマネージャーの役割の違いを理解し、個人の貢献者からチーム全体をリードする意識を持つことが重要。
- チームを管理する前にまずは自分を管理することを意識する。
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個人と働く
- メンバーの強みと弱みを理解し、パフォーマンスを最大化させる。
- メンバーのキャリア開発のために定期的なフィードバックと目標設定が必要でメンタリングとコーチングによりここに合わせて対応することが重要。
- フィードバックは具体的かつポジティブに伝える。
- 1on1は信頼関係を築き、意見や懸念を把握するために重要なツール。
- 会社内で部門を超えたネットワークを構築し、会社全体に影響を与えることがチームやマネージャー自身に好影響となる。
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マネジメントの全体像
- 透明性を維持し、必要十分な情報を共有する。
- 自分自身やチームに良い効果をもたらすためには社内政治にも目を向ける必要がある。
- 時には権限を委譲しタスクを手放すことも重要。時間に余裕を持つことが仕事でも心身の健康のためにも重要。
- チームにテックトークの文化を持ち込もう。
- チームの文化は自分が自分でいることで作られる
エレガントパズル エンジニアのマネジメントという難問にあなたはどう立ち向かうのか
人は会社を去るのではなく、マネジャーのもとを去る
急成長し、変革していく環境の中でのエンジニアリングマネジメントの課題や解決方法に焦点を当てた本です。
チームの大きさから技術的負債の管理、後継者の育成まで様々な観点を解説していて非常に参考になりました。
エンジニアリングマネジメントをシステムとしてとらえるシステム思考の考え方が大きなポイントです。
簡単にポイントをまとめると
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チームのサイズと構造について
- マネージャーは6~8人のエンジニアを管理するのが理想。
- 4人未満の小さなチームは効果的なチームではない。
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成長するチームの4状態
- 遅延、現状維持、負債返済中、革新の4段階を経ることでチームはよりよい状態となる
- マネージャーはそれぞれの段階で適切な支援を行うことが必要
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システム思考で変革する
- システム思考:複雑な問題や状況を全体でとらえ、各要素の相互作用を理解し、解決策を見つけるための思考
- 変革をリードし、チームのパフォーマンスを上げるためにはシステム思考と適切なメトリクスで評価することが重要
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アプローチ
- システム思考:複雑な問題や状況を全体でとらえ、各要素の相互作用を理解し、解決策を見つけるための思考
- 変革をリードし、チームのパフォーマンスを上げるためにはシステム思考と適切なメトリクスで評価することが重要
エンジニアリングが好きな私たちのための エンジニアリングマネジャー入門
自分が良いマネジャーではないと心配していること自体が、良いマネジャーになるための大事な要素なのです。
思いやりは、この仕事をうまくやるために不可欠なのです。
この本は「人の価値観」や「人への向き合い方」等、最初から最後まで「人」にフォーカスがあてられている点が印象的でした。
エンジニアリングマネジメントを「人中心思考」でとらえる考え方がポイントです。
簡単にポイントをまとめると
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価値観を重視する
- 個人、チーム、組織の価値観を意識し、他人の価値観に配慮し、その境界線を尊重する。
- チームの文化と士気をいい状態に保つことが責任の中でも大事な部分。
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コラボレーション
- 何かを成し遂げるための戦術的詳細ではなく、成果に向けてみんなの足並みをそろえること
- チームのパフォーマンスとメンバーの成長をサポートする役割がある。
- 良いチームを作るためには、信頼関係と安全な環境を築くことが重要。
- ダイバーシティとインクルージョンの推進も、健全なチーム文化を育てるためのキー要素。
- 透明性のあるコミュニケーションが重要。
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自分の仕事
-他者のために最高の仕事をするためには自分を大切にしなければならない。
-自分を信じてくれる人たちに囲まれることが大切。
まとめ
どの書籍もエンジニアリングマネージャーが直面する課題に対するアドバイスとチームを導くためのリーダーシップや重要性が含まれています。
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「エレガントパズル」
理論的な部分が多く、システマチックかつ戦略的なアプローチを重視したい方におすすめかと思います。 -
「エンジニアリングマネジャー入門」
「人の価値観」や「人への向き合い方」といった人中心のアプローチを重視したい方におすすめです。 -
「エンジニアリングマネージャーのしごと」
リーダーシップの開発に重点を置きつつ実践的なアドバイスが多く、エンジニアからマネージャーになった直後の方におすすめです。
おわりに
技術に興味があり、エンジニアとしてずっと技術に携わりたいと思う方も多いと思います。私もその一人です。
とはいえ、会社でのポジションやキャリアを考えるといつかマネージャーに上がることも視野に入れなければならないと思います。
おそらくマネージャーになった直後、特に技術志向の方は今までの仕事と大きく変わってギャップに悩んだり、転職を考えることもあるかもしれません。
マネージャーにはエンジニアとは違った面白さがあると思います。
様々なプロジェクトを成功に導いたり、メンバーのキャリアを考えたり時には成長に喜んだりすることができます。
今後もマネジメントを行う中で様々な壁にぶつかったり悩むことが多いと思います。
その時にはこれらの本を読み返してマネジメントのあるべき姿や心構えを振り返ってみたいと思います。
ちなみに、私は技術を諦めたわけではなく、引き続き活動を続けています。
常にアンテナを張ること、尖った技術ではなく幅広く技術をキャッチアップするアーキテクト思考でいることを意識しています。
アーキテクト思考に関してはこの本が参考になります。
昨年より全社的な技術イベントの取りまとめや部門の技術力向上のリードを任されたり、他部門から技術アドバイザーを依頼されたりと少しずつ自分のポジションを確立できたのかなと思います。
来年はAWS All Certifications EngineersとAWS Top Engineerへの応募を目指して頑張っています。
メンバーを育成しつつ自身もより先に進んでいくことでチーム全体で面白い仕事ができると思うのでこれからも頑張っていけたらと思います!
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