💭

人間関係トラブルへの対応:先入観を捨てて事象に向き合うリーダーの役割

に公開

はじめに

メンバーから「誰々とうまくいかなくて辛い」「もう一緒に仕事ができない」といった人間関係の悩みを相談されることは、マネージャーにとって避けて通れない課題です。

特に難しいのは、過去の経験や印象から「この人はこういう人だから」という先入観を持ってしまい、目の前の事象を客観的に見られなくなることです。マネージャーとしての経験が豊富になるほど、この先入観の罠に陥りやすくなります。

経験や過去の知見は大切ですが、それが判断のショートカットを生み、本質を見落とす"落とし穴"になることもあります。組織の効率化志向が、無意識の判断ショートカットを生みやすい環境を作っていることも一因です。

私自身、エンジニアリングマネージャーとして3年間活動する中で、様々な人間関係のトラブルに対応してきました。その都度、どう対応すべきか悩み、試行錯誤しながら学んできました。

この記事では、人間関係のトラブルを受けた際の私の正直な気持ちと、それに対する対応のプロセスを共有します。特に「先入観を捨てて事象に向き合う」ことの重要性について、実体験を通じてお伝えします。明確な正解はありませんが、同じような状況に直面するマネージャーの方々の参考になればと思います。

背景・状況説明

人間関係のトラブルは様々な形で発生します。チームメンバー同士の意見の対立、コミュニケーションの齟齬、他部署との連携問題、他チームのマネージャーとの関係性悪化など、内容も深刻度も多岐にわたります。

私が経験した具体的な例として、特に印象に残っているのは以下のようなケースです。

チームメンバー同士の意見の対立
あるプロジェクトで、AさんとBさんが技術的なアプローチについて激しく対立していました。Aさんは「もう一緒に仕事ができない」と相談に来て、Bさんとの協力を拒否する状況にまで発展していました。

対立したAさんとBさんは、双方の本心や制約を聞き合う場を作ったことで歩み寄りが生まれ、現在も協力してプロジェクトを進めています。

他部署との連携問題
営業部のCさんが「開発部のDさんが協力的でない」と相談に来たことがあります。具体的には、顧客からの要望に対してDさんが「技術的に難しい」と一方的に判断し、代替案の検討を避けているという状況でした。

CさんとDさんの間で、顧客の真のニーズと技術的制約について丁寧に話し合った結果、双方が納得できる代替案を見つけることができました。

これらのトラブルは、どれもチームの雰囲気や生産性に大きな影響を与える可能性がありました。

問題・課題

人間関係のトラブルの相談を受けたとき、マネージャーとしても正直かなり重い気持ちになります。特に責任感の強いマネージャーであれば、チームの雰囲気が悪くなったり、プロジェクトが停滞したりする可能性を考えると非常に悩ましい状況に陥ります。

「なんとかしなければ、リカバリーをしなければ」という思いが強くなると、傾聴よりも解決策を考える方向に思考がいきがちです。メンバーの気持ちを受け止める前に、「どうすればこの状況を解決できるか」と考えてしまいがちです。

また、本人の中で「こうしたい」という案があっても、それが本当に本人の望むものなのかはわかりません。片方の意見だけを聞いていると、実際の状況と異なる場合もあります。

マネージャーとして適切な対応をしたいという思いが強い反面、どう対応すべきかわからないことへの焦りも感じます。人間関係のトラブルは複雑で、簡単に解決できる問題ではないことが多いからです。

さらに、過去の言動などで「この人はこういう人だから」という先入観を持ってしまうことがあります。過去の情報は重要ですが、マネージャーとしては色々な情報が逆に邪魔をする場合があるので注意が必要です。目の前の事象にちゃんと向き合うことが重要です。

行動・対応

これらの課題に対して、以下のような対応を心がけるようになりました。

まず、本人の気持ちに寄り添わずに答えを急ぐとうまくいかないことがあることを学びました。

解決策を考える前に、まずはメンバーの話をじっくりと聞くことを心がけます。感情的な反応を避け、冷静に会話を進めることで、メンバーの本当の気持ちや背景を理解できるようになります。

過去の言動による先入観を捨てて、目の前の事象を客観的に把握・評価することを心がけます。過去の情報は参考にはしますが、それだけで判断せず、現在の状況を客観的に把握するようにしています。

人間関係の悩みについては、片方の意見ではなく双方の意見を聞くことが重要です。相手が自分のチーム以外なら、相手チームのマネージャーや自分の上司など適切な人を巻き込んで対応します。

相性の問題で解決が困難な場合、やむなくポジションや配置転換を検討することもあります。これは決して逃避ではなく、チーム全体の生産性とメンバーの成長を考慮した最終的な選択肢です。

DMで相談を受けたらなるべく早くミーティングでヒアリングを行い、ヒアリングをしたらなるべく早くネクストアクションを取るようにしています。相談したあとの初動の早さで印象はかなり変わります。

冷静に会話して、希望を聞いたうえで、チームや会社の状況も率直に伝えて現実的なラインを探ります。メンバーの希望を理解しつつ、組織の制約や状況も正直に伝えることで、双方が納得できる解決策を見つけられることがあります。

実践的なTips

【先入観を捨てる方法】

  • 相談を受けた際は、まず「過去の印象は一旦置いておこう」と意識する
  • 相手の話を聞く前に、自分の先入観を紙に書き出してみる
  • 「もし初めて会った人だったら、どう感じるか」と考える

【双方の意見を聞く工夫】

  • 片方の話を聞いた後、必ず「もう一方の意見も聞かせてください」と言う
  • 事実と感情を分けて整理する
  • 共通点と相違点を明確にする

【迅速な初動チェックリスト】

  • 相談を受けたら24時間以内にミーティングを設定
  • ミーティング後48時間以内にネクストアクションを実行
  • 関係者への連絡は必ず文書で残す

結果・学び

このような対応を通じて、以下のような結果と学びを得ました。

人間関係のトラブルを適切に受け止めることで、チーム内の心理的安全性が向上しました。メンバーが安心して相談できる環境が作られ、小さな問題が大きな問題になる前に気づけるようになりました。

適切な対応により、他チームとの関係性も改善され、組織全体の協力体制が向上しました。人間関係のトラブルは、適切に解決することで組織全体の成長機会にもなります。

人間関係のトラブルへの対応を通じて、マネージャーとしての傾聴力や共感力が向上しました。また、感情的な反応を避け、冷静に対応することの重要性を学びました。さらに、先入観を捨てて事象に向き合うことの大切さも実感しました。

過去の失敗を経て、今は双方の意見を丁寧に傾聴し、課題の本質にアプローチする姿勢を大切にしています。先入観に囚われず、目の前の事象を客観的に把握・評価することで、より良い解決策を見つけられるようになりました。

適切な対応により、メンバーとの信頼関係が深まり、チームの結束力が向上しました。問題を一緒に解決していく過程で、チームとしての一体感が生まれることもありました。

人間関係のトラブルは、実は早期発見・早期対応の機会でもあります。小さな不満や悩みを放置せず、積極的に相談を受け止めることで、大きな問題に発展することを防げます。

実際に経験した失敗談として、先入観が頭にあり、バイアスが掛かった状態で相談者のヒアリングをしてしまったことがあります。その結果、もう一方の相手の方の意見や状況を適切に受け取れずに対応してしまいました。

あとから振り返ると、相談者側にも課題があって、フィードバックすべきだったが成長機会を適切に提供できなかったかもしれません。この経験を通じて、先入観を捨てることの重要性と、双方の意見を聞くことの大切さを痛感しました。

まとめ・次への一歩

チーム内の人間関係トラブルは、マネージャーにとって確かに重い課題です。しかし、特に「先入観を捨てて事象に向き合う」ことを心がけることで、チームの心理的安全性向上やメンバーの成長、そしてマネージャー自身の成長につながる機会でもあります。

重要なポイント

  1. まずは受け止める - 解決策を急がず、メンバーの気持ちを受け止める
  2. 傾聴を重視 - 話をじっくり聞き、本当の気持ちを理解する
  3. 先入観を捨てる - 過去の情報に囚われず、目の前の事象に向き合う
  4. 双方の意見を聞く - 片方の意見だけでなく、関係者全員の意見を確認する
  5. 成長機会を見逃さない - 相談者側の課題も適切にフィードバックする
  6. 迅速な初動 - 相談を受けたら早めに対応し、安心してもらう
  7. 適切な人を巻き込む - 必要に応じて上司や他部署のマネージャーを巻き込む
  8. 最終手段の検討 - 相性の問題で解決困難な場合は配置転換も検討する

次への一歩

今後も、人間関係のトラブルを恐れずに積極的に受け止め、チームの心理的安全性を保ちながら、メンバーと共に成長していきたいと思います。

人間関係のトラブルは、実はチームとマネージャーの両方にとって成長の機会なのかもしれません。適切な対応により、組織全体の協力体制も向上させることができるのです。

読者への問いかけ

最後に、読者の皆さんに一つ質問を投げかけたいと思います。

人間関係のトラブルで、先入観を持って対応してしまった経験はありますか?

その時、どのような結果になりましたか?そして、今ならどのように対応しますか?

この振り返りを通じて、より良いマネージャーシップを実践するためのヒントを見つけられるかもしれません。

あなたが現場で実践している工夫や、うまくいった/いかなかった事例などぜひコメントで教えてください!皆さんと共に学び合える場を作っていきたいと思います。

関連記事

Discussion