組織改編は成長の機会:エンジニアリングマネージャーが学んだこと
はじめに
この記事は、エンジニアリングマネージャーやリーダーとして組織運営に関わる方に向けて書いています。
組織改編は多くのマネージャーにとって避けて通れない大きなイベントです。私自身、3年間のエンジニアリングマネージャーとしての経験の中で、何度かその難しさと向き合ってきました。
本記事では、直近で携わった組織改編のリアルな事例と、その際に考えたこと、取り組んだことを率直にご紹介します。明確な正解はありませんが、読者の皆さんが自らの状況に当てはめて考えられるヒントとなれば幸いです。
背景・状況説明
私が直近で経験した組織改編は、ドメイン別の組織構造から機能別組織への大規模な再編成でした。私はシステム開発部の部長として5つのチーム(約20名)を統括していました。
変更前の状況:
- ドメイン別で複数の領域に分かれており、その中に営業・開発組織がそれぞれ存在
- 各ドメイン内で営業と開発が密接に連携していた
- チーム規模は比較的小さく、意思決定が迅速だった
- 私のチームメンバーは5チーム約20名で構成
変更後の状況:
- ドメインでの分類をなくし、全社として営業・開発として再編成
- 開発部のチームメンバーが大幅に増加(約20名→約30名)
- 従来のドメイン間の壁がなくなり、全社的な視点での開発が可能に
この改編の背景には、サイロ化への危機感が大きくありました(サイロ化=部門ごとの壁ができ、横断的な連携や情報共有が難しくなる現象)。
ドメインごとの体制が長く続いたことで、
- チーム間の情報共有やノウハウの横展開が進みにくい
- 似たような課題や技術的負債を、各ドメインで個別に抱えてしまう
- プロダクトやサービスを横断した新しい価値創出が難しい
といった課題が顕在化してきました。
競争環境や事業成長のスピードが増す中、サイロを解消して全社の力を結集することが急務となりました。
問題・課題
組織改編に直面した際、以下のような課題に気づきました。
1. 経営層と現場の立場の違い
経営層としては組織改編に強い意図があり、スピード感を持って改編を行い、新組織で推進していきたいという思いがありました。一方で、現場としては混乱を最小限にしたいという思いがあり、この立場の違いが様々な場面で表面化しました。
2. 事前のすり合わせ不足
新組織で統合することになるチームのマネージャーとの事前すり合わせや信頼関係構築が不十分なところがあり、新体制の目標議論の際に認識のズレが生じました。特に、改編後の具体的な運営方針や役割分担について、十分な議論・相談ができていませんでした。
3. チームメンバーの不安と混乱
改編の発表直後、多くのメンバーから不安の声が上がりました。「今までのチームはどうなるのか」「新しいチームではどのような役割を担うのか」「今までの関係性は維持されるのか」といった質問が相次ぎました。
4. コミュニケーションの複雑化
チームが大きくなることで、コミュニケーションの経路が複雑になり、情報の伝達や意思決定のプロセスが曖昧になる可能性がありました。
課題への具体的対応
これらの課題に対して、以下のような行動を取りました。
1. 腹を割ったコミュニケーションの実施
新体制の目標議論で認識のズレが生じた際、あらためて腹を割ったコミュニケーションを実施しました。お互いの立場や状況を理解し、課題を洗い出し、建設的な議論を経て目標設定を行い、これから進んでいく方向性を明確にしました。
2. 1on1を通じた関係構築
その反省点を活かして、他のチームの新しいメンバーとも1on1の機会を設定しました。まずはお互いのことを知るところからスタートさせ、スムーズな関係構築の第一歩を踏み出せました。
3. 透明性を重視したコミュニケーション
改編の目的や背景、そして今後の方向性について、できるだけ詳しく説明しました。後から疑問が出てくる場合もあるので繰り返し粘り強く対応しました。メンバーからの質問には正直に答え、決まっていないことや分からないことは「これから調整させてください」と伝えました。
4. 段階的な移行プロセス
急激な変化を避け、段階的に移行を進めました。いきなり完璧な正解を求めず、まずは新しいチーム体制での作業を試行し、問題があれば調整するというアプローチを取りました。
結果・学び
この取り組みを通じて、以下のような結果と学びを得ました。
1. 事前準備の重要性
新組織で統合することになるチームのマネージャーとの事前すり合わせや信頼関係構築の重要性を痛感しました。組織改編は、改編後の運営方針まで含めて事前に十分な議論を行うことが重要です。
2. 立場の違いを理解することの大切さ
立場や状況の違いを理解し、それぞれの立場での課題や要望を把握することの重要性を学びました。この理解があってこそ、建設的な議論が可能になります。
3. 1on1の効果
新しいメンバーとの1on1を通じて、お互いのことを知ることから始めることで、スムーズな関係構築ができました。特に組織改編時には、個別の関係構築が重要だと感じます。
4. 継続的なフォローアップの必要性
改編後も定期的にメンバーの声を聞き、必要に応じて調整を続けることが重要だと感じています。組織改編は一度のイベントではなく、継続的なプロセスです。
まとめ・次への一歩
組織改編は確かに困難な課題ですが、適切なアプローチを取ることで、チームの成長と発展の機会にすることができます。
重要なポイント
- 事前準備の重要性 - 統合予定チームのマネージャーとのすり合わせと信頼関係構築
- 立場の違いの理解 - 経営層と現場のそれぞれの立場での課題把握
- 1on1を通じた関係構築 - 新しいメンバーとの個別関係構築
- 透明性を重視したコミュニケーション
- 継続的なフォローアップ
次への一歩
具体的な動きはこれからで、この後も課題はたくさん出ると思いますが、都度適切に対応していきたいと思います。今後、組織改編を経験する際は、今回の学びを活かしつつ、さらに以下の点にも注意を払いたいと思います。
- 改編前の準備期間をより長く設ける
- 経営層と現場の立場の違いをより早い段階で認識する
- 改編後の成果を定量的に測定する
- チーム規模の変化に応じたコミュニケーション戦略の見直し
組織改編は、マネージャーとしての成長の機会でもあります。完璧な答えはありませんが、プロセスを重視し、チームと共に学び続ける姿勢が大切だと感じています。
変化を恐れず、チームで成長していきましょう!
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