慎重さ32位のSEが18年生き残れた理由——そしてAI時代に有利かもしれない話
1人アドベントカレンダー2025 2日目。
16年ぶりにストレングスファインダーを受け直し、せっかくなので振り返り・自己分析してみたら、意外な発見があったので、共有したいと思います!
はじめに
先日の記事「SE × 編み物 × 技術同人誌——全部「繋ぐ」で繋がっていた話」で、こんなことを書かせていただきました。
16年前も今も変わらなかったのは、「典型的なSE像」の資質がほとんど下位だったこと。
今回はその話を、もう少し深掘りしたいと思います!
16年ぶりにストレングスファインダーを受け直しました
ストレングスファインダー(クリフトン・ストレングス)は、「4つの領域」「34の資質」から自分の強みを診断する検査です。
この診断は、自身の得意な「才能(資質)」に焦点を当て、それを「強み」として活用することを目的としています。特に、強みとなる"資質"は、使うことに慣れすぎているからこそ自分では強みであることに気づくにくく、改めて強みの資質を知り、活かすための診断になります。
ぜひ、おすすめなので受けたことがない方は受けてみてください。(そして、上位の資質を教えてください!色々と資質について、こういうところあるよねーとあーだこーだ話したいです!)
ただし、有料の診断ですのでご注意。もし、この記事に興味が出てきたら、さあ、才能(じぶん)に目覚めようの本に、34の資質の説明に加えて、ウェブテストのアクセスコードがついているので、手に入れてみてください。
(別の診断ですが、無料のVIA診断もおすすめです。6つの美徳と24の強みをランキングにした診断で、上位の強みを見るだけなら無料で受けることができます。)
そんなストレングスファインダーの診断ですが、一般的に、上位の資質は生涯ほとんど変わらないと言われています(意識せずに使っている資質のため)。
それでも前回受けた2009年から、プライベートも居住環境も仕事も変わった--、特にひとり会社とはいえ、会社を立ち上げたのもあり、落ち着いたら一度見直そうと思っていましたので、ちょっと落ち着いた今年、再診断をすることにしました。
結果は——かなり変わっていました。
衝撃の比較結果
まず、上位5位の変化から。
2009年(16年前)
| 順位 | 資質 |
|---|---|
| 1位 | 社交性 |
| 2位 | 包含 |
| 3位 | 運命思考 |
| 4位 | 着想 |
| 5位 | 達成欲 |
2025年(現在)
| 順位 | 資質 |
|---|---|
| 1位 | 着想 |
| 2位 | 運命思考 |
| 3位 | アレンジ |
| 4位 | 戦略性 |
| 5位 | 収集心 |
社交性が1位から19位に落ちていました。
代わりに、アレンジが26位から3位に急上昇していました。
「典型的なSE」の資質は、相変わらず下位だった
変わったものもあれば、変わらなかったものもある--。
特に印象的だったのは、「典型的なSE像」の資質が相変わらず下位だったこと。
| 資質 | 2009年 | 2025年 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 慎重さ | 33位 | 32位 | +1 |
| 規律性 | 29位 | 30位 | -1 |
| 分析思考 | 15位 | 23位 | -8 |
データを緻密に扱い、慎重にコードを書き、規律正しく作業する…。
いわゆる「安全に堅実に開発するエンジニア」のイメージからは、16年前も今も、かけ離れていました。
じゃあ、なんで18年も続けられたのか?
正直、自分でも不思議でした。
でも、16年分の結果を並べてみて、気づいたことがあります。
「弱み」を補う「強み」があった。
慎重さ32位を補っていたもの
回復志向:14位(16年間安定)
「壊れたものを直したい」という資質です。
慎重さがない私は、事前に完璧にすることが苦手です。
でも、壊れたら直せばいい。そう思えるから、まず動けたのだと思います。
今の現状を良くするために、デバッグやログ解析作業に没頭できるのも、この資質のおかげかもしれません。
自分で言うのもなんですが、"困ったこと"が起きた時の集中力と行動力--、どちらかというと粘り強さに近いかもしれません。
「なぜ、そのバグが起きたのか?」を追求するのが苦じゃない--。
状態を立て直すためには、地道なログ調査を行い、ちょっとしたログからの推測し、否定できる情報があるかないか精査するのを厭わないです。
自分の担当範囲のシステムも、コードやログが見れるなら調べにいったり、こちらができる対応は手が打てないと思うまで提案と行動をします。
(正直、あまり良くないかもしれませんが)スイッチが入ると、動くまで深夜を超えてもデバッグすることもありました。
学習欲:6位(16年間安定)
「知らないことを知る過程が楽しい」という資質です。
新しい技術が次々と出てくるこの業界で、学び続けることが苦にならないのは、大きな武器だったとも思います。
勤勉で意欲的な人が多いエンジニアの世界で、いつでも最先端の技術を追いかけています!とまでは豪語できないですが、新しい技術を学ぶことには抵抗はない方だ、とだけは間違い無いと思います。(技術選定に保守的ではないとは思っています)
私の感覚では、新しい技術も、基本的なコア知識はそののこまで変わらないと思っているので(差分をアップデートすればいいだけ)、ゼロから学ぶでは無いとおもえるのもあって、学ぶことに抵抗が少ないだけかもしれないです。
着想:4位→1位
「一見関係ないものを繋げる」という資質です。
プロセス通り(規律通り)に進めることが出来なくても、別のやり方を思いつく素質なのだと、SE人生を振り返って実感しています。
計画をいくら緻密に立てて、プランBを作っても(私はここら辺は苦手なので、優秀なPMさん、ありがとう・・・)--、プロジェクトでは予想してなかった事態は起きます。
(予想しないことが起きる、システム開発でそんな経験をした人は、多いのではないでしょうか…?)
そんな行き詰まった状況の時に、閃きでもないのですが…、もしかしたらでやってみたことが解決策に繋がったことがありました。
たとえば、起こっている事象を問題だと思っているということは、「もしかしたら、こういう根本の問題がおこっているのでは?」と思い、質問してみるとビンゴ--。
根本の問題を解決する方法は、まだまだ検討する余地があり、なんと解決に漕ぎ着けることができた経験はいくつか思い浮かびます。
規律性が低い私は、プロセスを守ることや期限厳守などでチームの迷惑をかけることも少なくなかったと思うのですが、一方で、行き詰まった状況でなんとかする力は高かったのではないか、と思います。
16年間変わらなかった「核」
学習欲と回復志向は、16年間ほぼ同じ順位でした。
これが私の「核」だったんだと思います。
今回は詳しくは触れませんが、着想や運命思考の他、戦略性、学習欲、ポジティブ、達成欲もあいかわらず今も16年前も上位10位には入っていました。
環境が変わっても、技術が変わっても、この核の資質を生かしていたから、柔軟に適応できたのだと思います。
ソフトウェアの世界が「やり直せる」から続けられた
もう一つ、気づいたことがあります。
**ソフトウェアの世界は「やり直せる」**環境であること。
- Ctrl+Zで戻せる
- Gitでコミットを元に戻せる
- バックアップをとって再現させることが簡単
- テスト環境で失敗しても、本番には影響しない
慎重さがなくても、「やり直せる仕組み」があれば、なんとかなったのだと思います。
また、学習欲の高さも組み合わさって、更に、アドバンテージに繋がったとおもいます。
「トライ・アンド・エラー」を繰り返し、身をもって学んだことも数多くあります。
※12/1の記事で書いた編み物も同じですね。間違えたら、解けばいいという、やり直せる安心感が私を支えてくれている気がします。
嬉しかった変化:最上志向が最下位を脱出した
実は、密かに気にしていた資質がありました。
最上志向。
「より良くしたい」「質を高めたい」という資質です。
2009年、私の最上志向は34位——文字通りの最下位でした。
エンジニアとして、ハンドメイド作家として、技術同人誌の著者として--。
「表現者として成功できないのでは?」
そんな不安がずっとありましたが、今回の再診断で、最上志向は20位まで上がっていました。
34位→20位。+14の上昇。
技術書を3冊書いて、最優秀賞をもらって、ハンドメイド作品を何百個も作って。
「もっと良いものを作りたい」という気持ちが、16年かけて育っていたのかもしれません。
そして、面白いのは、20位という「中位」であることです。
最上志向が上位すぎると、完璧主義で動けなくなるリスクが出てくると思うのですが、
2009年の診断で最下位を生かすために、"Quick and Dirty"でもアウトプットすることを強みとしよう!と行動してきた"私のらしさ"も両立できる順位だったということです。
ちなみに、日本人は最上志向が出現率1位の資質らしいです。
つまり、最上志向が高い人が多い中で、私は超レアな存在だったとも言えます。
周りが「もっと良くしてから…」と躊躇している間に、「とりあえず出す」ができたので、
「出し続けられる」こと自体が、実は武器だったのかもしれません。
専門家の視点:コーチングで気づいたこと
順位の変化が気になって、ストレングスファインダーのコーチングを受けてみました。
コーチから言われたのは、意外な言葉でした。
「社交性と包含は、今の環境で発揮できていないだけ。
アレンジという形で出力されるようになったんだと思いますよ」
2009年、私は「人と会って繋ぐ」ことで成果を出していました。(そういう行動をすることが、生存戦略だったのでは?とも言っていただきました)
オフィスに出社して、対面でコミュニケーションを取って、ステークホルダーを調整して。
でも2025年、働き方は大きく変わりました。
リモートワーク中心で、複業で3つの役割を並行。限られた時間で最大効率を出す必要がある--。
「誰とでも仲良く」するエネルギーを、「複数の仕事を効率的に回す」ことに振り向けた結果が、アレンジの急上昇だったのかもしれません。(2009年時点はアレンジは26位でした)
また、コーチングの直前に受けたVIAの診断でも、愛情や感謝が高く出ていたのもあり、"社交性や包含の素質自体は持っているが、今の環境では出力の仕方が変わっているのだと思います"とのことでした。
強みは「消える」のではなく「形を変える」。
この視点をもらえたのは、コーチングを受けてよかったことの一つです。
おまけ:母親との和解
コーチングでは、幼少期のエピソードも掘り下げました。
高校生の頃、どんどん成人に近づくにつれ強く思っていた気持ちがありました。
それは、幼い頃に亡くなった母のイメージが"すぐ理不尽に怒る・ヒステリックな嫌な女性"の記憶が強く、絶対に母親のようにはなりたくないと思っていたことです。
今現在はそんな記憶も薄くなっていたのもあるのですが、コーチングの中で話をしていくうちに、理不尽・ヒステリックという記憶が「人間臭くて、割と共感できるかも」と思えるようになったことです。
これは予想外の収穫でした。
追記:コーチからの補足
この記事を公開後、コスギさんから補足をいただきました。
最上志向はクリエイティブな資質ではないので大丈夫🙆♀️
そしてエンジニアには回復志向さん多いですよ。仕様をキッチリ実装するのが得意だからかもしれません。
むしろ、最上志向のエンジニアさんは自分のこだわりがあるので、「こうした方がいいかも」と決めた仕様を変えたくなる傾向はあります。だからフリーの方に散見されるかも?
ホント、やり方の違いだけですね🥳
最上志向が上位になくても安心してね!という心強いメッセージ、嬉しかったです。「回復志向がエンジニアに多い」というのも嬉しい収穫でした!
AI時代、「慎重さ」は重しになる?
ここからは、少し未来の話をします。
AI時代、「慎重さ」の低さは、実は価値は変わるんじゃないか--。最近、そう思うようになりました。
それは、なぜか?
AIがカバーしてくれる領域
AIという、人間の機能を拡張するツールが出てきた、昨今、私の弱みは補強できるのではないか--。そう考えるようになってきたのです。
例えば、
- コードのミスを避ける → AIがレビュー・補完してくれる
- 慎重にテストを書く → AIがテストケースを生成してくれる
- リスクを事前に洗い出す → AIが網羅的にチェックしてくれる
「慎重さ」がカバーしていた領域の一部を、AIで代替できるようになったのではないでしょうか。
逆に「慎重さ」が足かせになる場面
逆に、「慎重さ」が高いと--。
- AIの提案を「本当に大丈夫か?」と疑いすぎて、スピードが落ちる
- 「まず試してみる」ができず、検証に時間をかけすぎる
- 不確実性の高い状況で決断が遅れる
AI時代は「まず動かして、壊れたら直す」のサイクルがさらに速くなることを考慮すると、
「やり直せる」前提で動ける人の方が有利になる場面が増えるのかもしれません。
私の資質構成、実はAI時代向き?
| 資質 | AI時代での活かし方 |
|---|---|
| 着想 | AIに「こういう組み合わせどう?」と投げることができ、思いついたことをどんどん試せる |
| 学習欲 | 新しいAIツールをどんどん試せる |
| 回復志向 | AIが出したエラーを直すのが苦にならない |
| 運命思考 | 異分野を繋げる発想ができる |
| 慎重さ(低) | 「まず試す」が自然にできる |
「典型的なSE資質が低い」ことが、むしろAI時代の適応力になっている可能性もあるのでは--?
もちろん、これは仮説です。
でも、16年前に「向いてない」と思っていた資質構成が、時代の変化で「有利」になるかもしれない。
そう考えると、少し面白いですよね。
今回は、「慎重さ」の低さをAI時代での生かし方で考えましたが、もちろん、「慎重さ」が高いことによるAI時代の生かし方もあるので、そこは誤解なきよう。
※ストレングスファインダー×AI活用については、今回コーチングを受けたコスギさんのコラム「ストレングスファインダーの活用とChatGPT」も参考になります。
「向いてない」は「違うやり方がある」ってこと。
「やり直せる」環境なら、慎重さがなくても大丈夫だし、「繋ぐ」役割なら、分析思考が低くても価値を出せる。
自分の特性と相性のいい環境を見つけられるかどうか、だと思います。
あと、世界の流れ、自らを取り巻く環境によっても、強みの活かし方は変わることも頭の片隅に置いておくべき、と再認識しました。
現に、今回の変化と同じく、5年後、10年後に受け直したら、きっと違う結果や活かし方がみえてくるのだと思います。その変化が、キャリアの軌跡を映し出してくれるかもしれません。
少なくとも、私は、2009年よりも楽しく、快適に仕事ができているので、良い方向に素質を活かせているのだと思います。
おわりに
16年間のストレングスファインダーを比較して、気づいたことを最後に。
- 「弱み」を補う「強み」があった
- ソフトウェアの「やり直せる」特性に救われた
- 強みは「消える」のではなく「形を変える」
- AI時代、「典型的じゃない」が武器になるかもしれない
できないことを、できるようにならなくてもいい
自分が苦なくできることを見つけて、それを活かせる、喜んでくれる環境を見つけること。
時代が変われば、「向いてない」が「有利」になることもある--。
私の経験や振り返りが、今現在のキャリアや、向き不向きにで思うように成果が出ない人の助けになれば幸いです。
※今回受けたコーチング:カエルコムニス ストレングスコーチング
明日は「Cookieサイズ制限4096バイトとの戦い」を書きます。
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