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SE × 編み物 × 技術同人誌——全部「繋ぐ」で繋がっていた話

に公開

はじめに

はじめまして、megusunuです。Zennへの投稿は初めてなので、自己紹介を兼ねた記事を書いてみます。

私には3つの顔があります。

内容
システムエンジニア 18年目。組込み・アプリ開発を経て、今はサーバサイドのリードエンジニア
ハンドメイド作家 編み物で「megusunuLab」として活動。イベント出展・オンライン販売
技術同人誌の著者 3冊刊行。うち1冊が技術書同人誌博覧会で最優秀賞受賞

こう書くと、なんだかすごい人みたいに見えるかもしれません。

でも実態は、だいぶ違うのです。

苦手なこと、たくさんあります

正直に書きます。

飽き性です。アウトプットも安定しません。継続性もない。

時間にはだらしなくて、締切駆動でしか動けない。部屋は散らかってる。「やるやる詐欺」もよくやります。

やりたい!と思ったら衝動的に動いてしまう。作るのは好きだけど、決して効率の良いコードが書けるわけでもない。

やるべきことが達成できていない日が続くと、朝起きて真っ先に逃げる言い訳を考えて、ギリギリまでうだうだして、時間を消費してから仕事に向かう。

そう、優秀と言われる人間では決してない。アウトプットが30点の日もあれば、120点の日もある。揺らぎの多い人間です。

でも、最近思いました。

苦手なことを無理にできるようになるより、苦なく提供できることにフォーカスした方が人は楽しく生きていける。

もちろん、苦手なことを克服しできるようになることや、人に迷惑をかけないように最低限できるようになることは大切ですし、その体験も何事にも変え難いです。
それを否定したいわけではないです。

大事なのは、
自分が苦なくできること、気楽に与えられること、面白いと思えることを見つけて、それを大事に育てること、なのだと思います。

自分が苦手なことを、それをサッとできる人をすごいと思ったり、同じようにできることをめざしたりすることが悪いわけではないのですが、時間は有限ですし、心も有限なので、すり減ってしまいます。

苦なくできることにフォーカスして、生活した方が、人は楽しく生きることができるんじゃないか?と思っています。

時には採算度外視で提供したり、趣味と割り切って活動してもいいと思います。
お金よりも、心に栄養を与えてあげるのが大切な時もあると思います。

私の場合、たまたまそれが「エンジニアリング」と「編み物」と「技術同人誌」でした。

一見バラバラに見えるこの3つですが、でも振り返ると、全部 「繋ぐ」 で繋がっていた様に感じます。

面白いと思ってやったことが、誰かに届いた

2024年、技術書同人誌博覧会で最優秀賞をいただきました。

受賞作のタイトルは「QRコードを編む」。毛糸でQRコードを編んでて、スマホで読み取れるようにするという実験本です。
前半が動機と、なぜ歪んでいても識別できるのか?のQRコードのエンジニアリング技術の話、後半が実際に編んでまた話になっています。

編んだQRコード
実際に編んだQRコード。スマホでよみとれます

ブースに実物を展示していたら、「え、これ本当に読めるんですか?」「写真撮っていいですか?」と何人もの方が足を止めてくれました。

編み物をまったくしない方からも「これは面白い!」と言ってもらえました。

それだけでも十分だったのですが、賞を取れたことは、"読み物としても面白いと思ってもらえたんだ"と自信に繋がりました。

正直、"変わったことしてるな"だけの面白さだけしか提供できていないかも、と思っていたのですが、それだけじゃなかった!と思える事ができました。

実際は、賞が取れなくても、 書きたい と思ったことは書き続けていたと思います。

でも、面白いと思ってやったことが、誰かに届いた

この感覚は、何にも変え難い体験でした。

自分の文章が「伝わるもの」だと分かった…。自己満足の域を超えて、ちゃんと届いていた…。自分が楽しいと思ったことを、知らない誰かも面白いと思ってくれた…。

それぞれ私が面白いと思った技術を繋いで、組み合わせて…。

繋がった、と思いました。

この本は、いにしえの偉大で尊敬するべきオープンソースのエンジニアリング(QRコード)と、これまた、古くから("古く"のオーダーが次元が違うが)伝わってきたアナログな技術の編み物という掛け算から生まれています。

それぞれ単独でも奥深いのですが、組み合わせてキャッチーにして、それぞれをフォーカスしてもらえた!

振り返れば、私のキャリアは繋ぐことで成り立っていたかも知れません。

エンジニアの原点:「壊してもいいから、学んでください」

エンジニアとしての原点は、2007年から6年間携わった、某プラントの定期検査システムの保守・開発でした。

配属されたとき、クライアントのマネージャーから言われた言葉があります。

「50台ほどあるLinux PCを、多少壊してもいいから、おもちゃや実験場として大いに学んでください」

この言葉を聞いた瞬間、すごくワクワクしました。

失敗していい。壊してもいい。やり直せる環境で、私はシェルスクリプトで小さなツールを作り、マニュアル化されていない運用をゼロから「見える化」していきました。

この6年間で学んだことは、今でも私の土台になっています。

  • やり直せる環境の価値
  • 見えないものを見える化する面白さ
  • 立場の違う人たちを繋いで成果を出すこと

編み物との出会い

時は流れて2019年。実家を掃除していたら、そこそこの量の毛糸が出てきました。

「編み物、やってみようかな」

それだけです。深い理由はありませんでした。
小さい頃に教えてもらった編み物をまたやってみたい、と思って再開しました。

私は飽き性です。小さい頃から何かを作り始めては、完成させられなかった思い出があります。
だから、編み物も続かないかも?と思っていました。

でも、続きました。

当時、システム開発のリードエンジニアとして、大きなプロジェクトを抱えていました。成果が見えるのはリリースの瞬間だけで、そそれまでずっと走り続ける日々です。
お客さんからはせっつかれてもクランチしながら、チーム内のトラブルを解決し、なんとかかんとかリリースにこぎつける…。日々磨耗しても、誰も褒めてはくれないし、何かを成した!という達成感も得られない…。

しかし、編み物は違いました。

動画を見ながら手を動かす…。一目一目、少しずつ形になっていく…。30分でコースターが一枚編める…。

大きなプロジェクトでは満たせない「小さな達成欲」を、編み物が満たしてくれた。 締切駆動で動く私には、この「小さなゴール」がちょうど良かったんだと思います。

そして、もう一つ、編み物に惹かれた理由がありました。

やり直せること。

間違えたら、解けばいい。気に入らなければ、ほどいてやり直せばいい。一次元の糸が二次元の平面になり、三次元の立体になる。でも問題があれば、また一次元に戻せる。

間違っても切っても、戻したら、また繋げられる

Gitでコミットを戻せる安心感と同じだ——そう気づいたとき、腑に落ちました。

慎重さが乏しい私にとって、「やり直せる」という安心感は本当に大きかったのです。

さらに、編み物は切り替えスイッチにもなりました。

システム開発で煮詰まったとき、編み物をすると頭がスッキリする。手を動かしていると、考えが整理されました。
特に、明日どうしようか、というような課題を抱えている状態だと、寝ることもしんどいのですが、10分でも無心に手を動かし、達成欲をみたスト、不思議と頭がスッキリして、「よっこらしょ、やりますか」と、モヤモヤしていて定まらなかった方針がすっきりして、また仕事に向かうことが出来ました。

やるべきことから逃げたくなる朝も、編み物を少しやると気持ちが切り替わる。

編み物とエンジニアリング。一見関係なさそうな2つが、私の中で繋がりました。

※以前、会社のブログで「なぜエンジニアは編むのか」という記事を書きました。興味があれば読んでみてください。

技術同人誌:忘れていた夢が戻ってきた

小さい頃、物書きになりたかった夢がありました。小6の七夕でライトノベル作家になりたい。なんて書いた記憶もあります。

でも、いつの間にか忘れていました。

そんな夢を完全に忘れていた頃、知り合いが「技術書典に本を出す」と言い出しました。

「技術書典?」

技術書の同人誌即売会。なるほど、そんなものがあるのか。

話を聞いているうちに、

「私も書けるかも」

と思ってしまったんですよね。いつか書きたい!!と。

小説じゃなく、技術書。しかも商業出版じゃなく、同人誌。50部売れたら上出来の世界…。

でも、自分の名前で本を出せる

忘れていた「物書きになりたい」という気持ちが、思いがけない形で戻ってきた瞬間でした。

それから、これまでに3冊の技術同人誌を書いています。

推しキャラを召喚!LINE BOTで実現する日常
QRコードを編む

No タイトル 内容
1 推しキャラを召喚!LINE BOTで実現する日常 Gemini AI × Google Apps Scriptで作るLINE BOT
2 QRコードを編む 最優秀賞受賞。毛糸でQRコードを編む実験と解説
3 LINE BOTではじめる!「居心地の良い」コミュニケーションの実践 LINE BOT開発の実践ガイド ※1冊目に改訂統合

※1・2は電子版のリンクです。物理本・セット版もあります。

共通するテーマは、「技術 × 創作」の掛け算。そして、誰かと繋がるための情報整理やコミニケーションの整理です。

18年続けられた理由

実は最近、16年ぶりにストレングスファインダーを受け直しました。

ストレングスファインダーは、34の資質から自分の強みを診断するツールです。一般的に、上位の資質は生涯ほとんど変わらないと言われています。

でも、私の場合はかなり変わっていました。たとえば、16年前に1位だった「社交性」が19位に落ちていたり。その他にも大きな変化がいくつかありました。

※詳しい分析は、12月のアドベントカレンダーで書く予定です。お楽しみに。

一方で、16年間ずっと上位にあった資質もありました。

「運命思考」——すべてのものは繋がっている、という感覚。
「着想」——一見繋がりがないものに、繋がりを見つける力。

この2つが、私の繋げることの源泉だったのかもしれないなぁと気づきました。

エンジニアリングと編み物。技術と創作。一見関係なさそうなものを繋げて、キャッチーにしてみる。そこから掛け算で価値を生み出す。それが、苦なくできる素質を私は持ち合わせていたんだ、と気づきました。

また、実は**「SE向き」と言われる資質がほとんど下位だった**ことも、16年間変わらない事実でした。

慎重さ、規律性、分析思考……いわゆる「エンジニアに向いている」と言われる資質が、軒並み下の方にありました。

では、なぜ、システムエンジニアを18年も続けもれたのでしょうか?

理由の一つは、ソフトウェアの世界が「やり直せる」からだと思います。

繰り返しができる。バックアップができる。失敗しても、ロールバックできる。

慎重さが低くても、「やり直せる仕組み」がソフトウェアの世界にはあったのが救いでした。

もう一つは、「繋ぐ」役割に自分の居場所を見つける事ができたからと思います。

現在、サーバサイドのリードエンジニアとして、10人規模のチームで働いています。
私の動きは、天才的なコーディング!!…ではなく、みんなが取りこぼしたところを拾って、なんとかする遊撃のような動き方です。

一人ひとりの得意なことを見て、その隙間を埋める。それが、私なりの「繋ぐ」役割になっています。

SE向きの資質がなくても、自分なりの繋ぎ方で、成果を達成する事ができました。

苦手があっても、楽しく生きていける

弱みや苦手なことに気を取られて、日々が嫌になることもあります。

でも、最近はこう考えるようになりました。

できないことを、人並み以上にできるようにならなくてもいい。

それよりも、自分が苦なくできることは何か、気楽に人に与えられることは何か、面白いと思えることは何か。それを見つけて、大事に育て、執着なく提供することの方がより大切と思うようになりました。

エンジニアリングも、編み物も、技術同人誌も、全部その観点では繋がっています。

また、一つ一つの技術は普通のことですが、組み合わせて提供できると、自分だけが提供できる価値にになります。そして、自分が面白いと思ってやったことが、誰かに届いて、フィードバックをもらえることは、心が喜びます!

苦なく、執着なく提供できるものを提供できるようになり、人生が楽になりました。

おわりに

5年後、10年後のキャリアビジョンは、正直あまりありません。

でも、「やってみたい」と思ったことを繋いでいくのは、これからも変わらないと思います。

振り返ると、私のキャリアは偶然の連鎖でした。

  • 最初の現場で「やり直せる環境」の価値を学んだ
  • 実家の毛糸から編み物を始めた
  • 知り合いの一言で技術同人誌を書いた
  • 面白いと思ってやったことが、誰かに届いた

どれも偶然の連鎖ですが、根幹は、全部繋がっているのです。

最後に少しだけ予告を紹介させてください。

これからZennでは、StrengthsFinder 16年の変化(12月のアドベントカレンダーで公開予定)や、技術 × 創作の掛け算をテーマにした記事を書いていきたいと思っています。

できないことを、人並み以上にできるようにならなくてもいい。自分が楽しいと思えることを見つけて、組み合わせて、誰かに届ける。それで十分、人生は楽しい。

あなたにも、苦なくできること、ありませんか?

ぜひ、それを大事にしてほしいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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