【Private LoRa】Private LoRa通信モジュールをはじめよう
この記事は通信業界アドベントカレンダー Advent Calendar 2021の19日目の記事です.
はじめに
IoTシステムには重要な四つの構成要素があります.その構成要素とは,「エッジデバイス」「通信技術」「データ処理」「可視化アプリケーション」です.これらの構成要素の中でも,特に「通信技術」はIoTシステムの中枢を担っており,重要であると言えます.私の研究室では,この「通信技術」としてPrivate LoRa通信をよく使います.
株式会社EASELが提供している「ES920LR2」はPrivate LoRa通信モジュールの一つです.この記事では,ES920LR2を活用する上で最低限知っておいて欲しい知識に関してまとめました.私の研究室内での引き続ぎ的な意味合いをメインの目的として書く記事ですが,「これからES920LR2を使ってやるぞ」って思っている方のお役にも立てれば幸いです.
Private LoRa通信とは
Private LoRa通信は,近年IoTシステムの通信技術として注目を集めているLPWA(Low Power Wide Area)通信規格の一つです.Private LoRa通信の特長として,通信距離が従来の通信方式と比較して長いことや日本国内では通信ライセンスが不要であること,容易にIoTシステムの専用ネットワークを構築できる汎用性の高さなどが挙げられます.(その他の特長も詳しく知りたい方は株式会社EASELのホームページをご覧ください.)さらに,Private LoRa通信は通信料金がかからないので,モジュールを買いさえすれば気兼ねなく通信機能を使うことができます.
私の研究室でPrivate LoRa通信をよく使っている理由も,上記に挙げた特長(特に,ネットワーク構築の容易さ及び通信料金がかからないこと)にあると言えます.
ES920LR2について
ES920LR2はPrivate LoRa通信を利用可能な920MHz帯無線通信モジュールです.このES920LR2をIoTシステムの通信ネットワークノードとして展開し,同じくPrivate LoRa通信可能なゲートウェイ(ES920GWX2など)と合わせることでシンプルなスター型の通信ネットワークを容易に構築できます.
つまり,ES920LR2をエッジデバイスに搭載することによって「センサデバイスから得られたデータを送信すること」ができるようになります.さらに,このES920LR2を搭載したエッジデバイスを多数用意し,Private LoRa通信ゲートウェイを設置することで「IoTシステムに必要なセンサデータを収集すること」もできるようになります.
どうしたらES920LR2を使って通信ができるのか
上記までの説明で,「ES920LR2はPrivate LoRa通信を使ってデータを集められるのね」くらいの認識になって頂けたと思います.なので,ここでは次に,「どうしたらES920LR2を使ってデータ送信ができるようになるのか」についてお話し致します.
大雑把に結論から述べると,「無線通信パラメータを一致」させて「送信先のアドレスを正しく設定」するだけで,最低限のES920LR2を用いたPrivate LoRa通信ができるようになります.
そもそも,ES920LR2は無線通信設定を事前に行うことで,静的ルーティングによるスター型ネットワークを実現します.要は「あるES920LR2がどんな通信設定で誰に通信を送信するのか」を各モジュールに対して事前に決めておくことで通信ネットワークを実現できるということです.
そして,具体的にどのような設定を行えば良いかというと,上記の結論で述べたように「無線通信パラメータを一致」させて「送信先のアドレスを正しく設定」すれば良いのです.ここで「無線通信パラメータ設定」及び「アドレス設定」のそれぞれに関して設定すべき項目を下記の表に示します.さらに,最低限のPrivate LoRa通信を実現するための通信設定の具体例を図に示します.繰り返しにはなりますが,「無線通信パラメータを一致」していて「送信先のアドレスを正しく設定」されていることに注意してください.
無線通信パラメータ設定項目
コマンド | 設定内容 | 備考 |
---|---|---|
protocol | 通信プロトコル設定 | ES920LR2の通信プロトコル |
bw | 帯域幅設定 | 広いほど多くの情報を転送することが可能 |
sf | 拡散率設定 | 大きいほど同時に接続できるモジュールの数が増える |
channel | チャンネル設定 | 分割した周波数帯域のうち,どの帯域を使用するか |
アドレス設定項目
コマンド | 設定内容 | 備考 |
---|---|---|
panid | PANネットワークアドレス設定 | ES920LR2が参加するPANネットワークのアドレス |
ownid | 自ノードネットワークアドレス設定 | ES920LR2自身のアドレス |
dstid | 送信先ノードネットワークアドレス設定 | ES920LR2がデータを送信するモジュールのアドレス |
この記事で紹介しているES920LR2の設定項目は,あくまで最低限の通信疎通を実現するための設定項目です.その他にも消費電力を抑えたり,中継機能を実現する設定項目も存在します.興味のある方はコマンド仕様書をご覧下さい.
まとめ
この記事を読んで,Private LoRa通信やES920LR2に関して,なんとなく「そんなもんなんだな」と思ってもらえていれば幸いです.
ES920LR2の機能はこの記事に示したものだけではなく,「中継機能」や「双方向通信機能」などIoTシステムを構築する上で便利な機能がまだまだあります.これらの機能も含めて実際にES920LR2を使いながら,覚えてもらうとわかりやすいですし,実際にシステムに反映しやすいので良いと思います.なので,これから実際にセンサやマイコンとPrivate LoRa通信モジュールを組み合わせた使い方も記事にしていこうと思ってます.
※ご意見や疑問点などご連絡頂けますと幸いです.
参考
IoTコンサルティングと無線開発 ODM供給 | EASEL
LoRaWANとプライベートLoRaの違い
ES920LR2データシート_1.04.pdf
ES920LR2コマンド仕様ソフトウェア説明書_1.04.pdf
通信速度に影響する? 帯域幅とは
Private LoRa通信関連の記事シリーズ
Private LoRa通信モジュールに関する記事をいくつか書いておりますので,興味がございましたら合わせてご覧ください.
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