ARIMA を復習するのであります!〜AR(p)編〜(時系列解析)
\infty )過程への書き換え
AR(p) 過程の Lag Operator を用いた表記とMA(以下のように次数
ここで、以下のような Lag Operator
これを用いて、上記の AR(p) 過程は以下のように表すことができる:
ここで、
このとき、
となる
のように表すことができる。
なお、
したがって式(2)は、式(1)のAR(p)過程を以下のようなMA(
以降、
p=1 における例
AR(1)過程
が与えられたとき、
のように表すことができる。
このとき、
と置いて
と表すことができる。
なお、これは式(3)のAR(1)過程をMA(
に書き換えられることを意味している。
以下、これらを示す。
\infty )への書き換え
AR(1)からMA(導出の前に、
のように、
Lag Operator を用いた導出
同様の結果を、今度は Lag Operator を用いて示す。
式(3)の両辺に
このとき左辺は、
と表すことができる。
ここで
が言える。
したがって、
とおくと
と表すことができる。
p=2 における例
MA(\infty) への書き換え
AR(2) から AR(2) モデル
を、
と表す。
このとき、
となる
と表すことができる。なお、これはMA(
導出
まず、
と書き換える。
このとき、
したがって、
すると、
と置くと
が成り立つ。
したがって、
であるので、
とおけば、
かつ
のようにMA(
再び AR(p) に戻る
前節の AR(2) のときの考え方と同様にして、冒頭で述べた一般の
つまり、
と表した時の
したがって、
とおけば
が成り立ち、かつ
のように
参考文献
- J.D.Hamilton, Time Series Analysis (Princeton Univ Pr, 1994)
AR(p) 過程の定常状態における期待値
以下のように次数
このとき、
そして、定常状態では
この投稿では、この定常状態における AR(p) 過程の期待値の導出を3通り紹介する。
方法1: 最もシンプルな導出
ここで式(1)の両辺について期待値を取ると、
したがって、上記の式を
となり、式(2)が成立することが示された。
方法2: Lag Operator を用いた方法
下記の投稿で紹介したように、Lag Operator
なお、
さらに、
の形で表すことができる。
ここで、
であり[2]、また
なので[3]、式(3)の両辺について期待値を取ると
となり式(2)が示された。
方法3: 行列を用いた方法
式(1)は、以下のようにベクトル・行列を用いて書き表すことができる:
以下、
を用いて式(4)を以下のように表す:
すると、
のように表される。
ここで、
したがって、前述の条件が満たされている場合は式(6)は以下のように書き表すことができる:
ここで、
であること(後述 補足3)と
となる。
したがって、
とならなくてはいけない。これを満たすのは、
の時であり、したがって
以上から、
が示された。
補足
\boldsymbol{0} になることの簡易な証明
1: 固有値の大きさが全て1より小さい行列の階乗の極限が 行列
となることを示す。
ここで
すると、
ここで、 固有値
となる。
したがって、式(A.1.1)は
となり、第意は示された。
\boldsymbol{\Phi} の固有方程式と固有値
2: 行列 ここでは行列
ここで、
かつ、
であることから、
が言える。
さらにここで行列式
を右からかけることで、
となり、さらに同様のことを繰り返すことで最終的に、
したがって、
と表すことができ、この方程式の根が
ここで
と同値である。
以上から、
\boldsymbol{\Phi} の階乗の無限級数
3: 行列 以下では、
が成り立つことを示す。
まず、
と置く。
このとき
となる。
ここで、本文中で述べたように
したがって、
さらにこの時補足1より
となる。
以上から式(A.2.1)が示された。
参考文献
- J.D.Hamilton, Time Series Analysis (Princeton Univ Pr, 1994)
-
時系列
が弱定常状態にあるとは、期待値\{y_t\} 、分散E[y_t] 、自己共分散V[y_t] が時刻Cov[y_t, y_{t-k}] に依らず一定であることを言う。 ↩︎t -
もう少し詳しく書くと、
について|\lambda_k|<1 なので、\frac{1}{1 - \lambda_k L}c = (1 + \lambda_k L + \lambda_k^2 L^2 + ...)c = (1 + \lambda_k + \lambda_k^2 + ...)c=\frac{c}{1-\lambda_k} になる。 ↩︎\frac{1}{\phi(L)}c = \frac{1}{\phi(1)}c -
もう少し正確に記述する。まず、 MA(
) 過程\infty は、y_t = c + \theta_0 \varepsilon_t + \theta_1 \varepsilon_{t-1} + \theta_2 \varepsilon_{t-2} + ... の時(弱)定常である。一方、 AR(p) 過程\sum_{i=0}^\infty \theta_i^2 < \infty は\phi(L)y_t = \varepsilon_t の根が全て単位円の外側にあれば、これを MA(\phi(z)=0 ) 過程\infty の形で表した時y_t = \frac{1}{\phi(L)}\varepsilon_t = \psi_0 \varepsilon_t + \psi_1 \varepsilon_{t-1} + \psi_2 \varepsilon_{t-2} + ... となる。したがって\sum_{i=0}^\infty \psi_i^2 < \infty は(弱)定常となり平均値が存在し、その値は0となる。 ↩︎\frac{1}{\phi(L)}\varepsilon_t -
もう少し詳しく書くと、実数
を用いてr, \theta と表した時、\lambda_k=r e^{i\theta} なので|r|<1 . ↩︎\lambda_k^n = r^n e^{in\theta} \xrightarrow{n\to\infty}0