【崩壊スターレイル】カットシーンを観る Vol.2 ヤリーロVI編
本記事は『崩壊スターレイル』の VFX がどういったテクニックで制作されているかを観察・推察しながら紐解き、開発者向けに知見として形に残しておくことを目的としており、YouTubeに上がっている動画を引用させていただいています。
ヤリーロVI編
崩壊スターレイルはバージョン 1.0 リリース時点で羅浮までストーリーが実装されていたんですね！確かにヤリーロIVまでだとすぐにやることが無くなってしまいそうですが、グラフィック的にはかなりの物量になるかと思うので純粋に凄いと思いました。
今回はそんな中で最初の惑星である「ヤリーロVI」の物語を観ていきます。
星座のパーティクル
宇宙にクジラが浮かぶ様子から始まりますが、クジラに纏わりつくように AfterEffects のプラグイン「Plexus」でできるような星座っぽいパーティクルが流れています。玉のパーティクルをリボンで繋ぐなど方法は色々あると思いますが、決め打ちでモデルを用意してしまうのが手っ取り早いですね。このシーンも決め打ちの形状で用意して変形などもしていないように見えます。
動画：https://youtu.be/KoIGWrFM_Qs?t=10
まぶたの開閉
アニメでよくある、黒い領域を上下させる表現です。こちらは UE であればポスプロマテリアルでやるも良し、カメラにメッシュパーティクルを貼り付けてやるも良しでしょうか。パーティクルでやる場合にはカラーグレーディングやライティングの影響を受けないよう気を付けないといけなかったりしますね。
動画：https://youtu.be/KoIGWrFM_Qs?t=2
トランジション表現
空想（？）の世界から現実世界に引き戻される際、三月なのかが横からフレームインしてきてから背景にデジタルっぽいブロック状の発光と歪みが入ったエフェクトが入って切り替わります。この感じであれば、なのかの奥に板ポリモデルを置いてマテリアルで表現するだけでも十分できそうですね。
動画：https://youtu.be/KoIGWrFM_Qs?t=23
見せ方の妙
変な声に主人公はハッとして左の方を見ますが、その後に右を向くとなのかが声を出していたことが分かります。こちらは実際の主人公の目線に立つとなのかが変な声を出しているのは最初から視界内で見えているはずなので現実的に考えれば明らかに不自然な挙動なのですが、視聴者の視点だと「変な声がして驚いた後に発信源がなのかだと分かる」という流れにしたくて、主人公に視聴者と同じように演技させることで没入させている例になるのかなと思いました。こういう嘘ってカットシーンで沢山ありますよね。
動画：https://youtu.be/KoIGWrFM_Qs?t=36
星穹列車のワープ
星穹列車がワープします。列車のマテリアルには先頭から後方に向かって色を変えられるような仕込みが入っていて、列車を包むエフェクトの輪っかを境に色が変わっていくかのような表現をしています。また同時に輪郭表示も同じようにマスクアニメーションできるようになっているのが分かります。
動画：https://youtu.be/KoIGWrFM_Qs?t=51
スターウォーズなどでもよく見られますが、宇宙の星々が放射状にラインのように伸びていく表現は色々な実現方法がありますが、少々手間になりますね。シェーダーを作るか、リボンまたはスケールで奇麗に伸ばせるようなパーティクルでやるかでしょうか。
車両内で光が通り過ぎると青くなるのは凝っていますね。画面に色収差や歪みも大きくかけつつ、青い色調に変化するのはカラーグレーディングのマスクアニメーションに見えます。
動画：https://youtu.be/KoIGWrFM_Qs?t=52
列車がワープした先では、画面全体に放射ブラーをかけつつも発光した列車には縦の直線ブラーがかかっています。この直線ブラーは画面全体にはかけてなさそうなので列車にだけ乗せるというマスク処理ができるようになっているのかな‥？
動画：https://youtu.be/KoIGWrFM_Qs?t=59
ジェパード登場
胸元のクリスタルのようなパーツがキラリと光りますが、鉄壁であることを強調するためでしょうか。強く吹いていた冷気が収まった後、雪が静かだったのがまた吹雪いて‥戦闘態勢に入る時にまた雪が止んで SE も止まり静かになります。まるで天候を操っているかのような演出ですが、雰囲気だけのためのものであまり意味は無さそう‥？
動画：https://youtu.be/KoIGWrFM_Qs?t=78
異空間へのゲート
ゲートの奥に別の世界があるように見せたり、キャラクターがゲートに入る際にどう誤魔化すかというのは色んなゲームで工夫があると思います。ここではゲートに入る瞬間大きく歪ませて誤魔化していますね。
動画：https://youtu.be/KoIGWrFM_Qs?t=106
逃走シーン
ただ走っているだけのショットですが、アニメでよくあるスピード感を出すための集中線を入れていますね。入れるほどかなとも思いましたが、崩壊スターレイルは集中線を多用している印象があります。
動画：https://youtu.be/KoIGWrFM_Qs?t=120
兵士に襲われるシーン
集中線と、槍に力を籠める表現として槍本体を発光させていたり、兵士に槍による攻撃がヒットした瞬間には強いブラーを入れていますね。
動画：https://youtu.be/KoIGWrFM_Qs?t=141
ブローニャが銃を構えた瞬間にも集中線。
煙幕
サンポによる煙幕展開の場面ですが、半透明の煙は板ポリなのでうまくキャラクターを挟むよう前後に置かないとモデルに突き刺さってしまいます。特にソシャゲは負荷を気にしてかソフトパーティクルを入れず割り切る傾向にあるので、なるべく見た目を損なう刺さり方にならないよう気を遣っている感じがします。
動画：https://youtu.be/KoIGWrFM_Qs?t=155
スローモーション
銃弾を撃たれて危ない一瞬のスローモーション演出ですが、放射ブラー + 強めの色収差で見せていますね。スローモーションを演出する際には、等速でモーションとエフェクトを作っておいてカットシーン内で再生速度を遅くするか、または「スローになった風」のモーションとエフェクトを用意するかの２択になります。一連のモーションの最中でスローになったり戻ったりが挟まれる場合、後者はエフェクトデータ内でタイミングに合わせてアニメーションを付けないといけなくて結構大変ですよね。
ゼーレによる銃弾の切断表現。背景ごとズレていますが、ポスプロで絵をズラしているか、マテリアルの屈折でズラしているかでしょうか。
ガラスが砕け散る際、元から破片のパーティクルは中心を避けた形で放出されていて、色収差と放射ブラーだけでなく、画面周囲に虹色のオーラのような要素を配置していますね。
一枚絵？
カカリナが頭の中で星核の声に唆されているシーン。一枚絵にパーティクルを少し乗せつつカラーグレーディングと被写界深度だけで演出している感じでしょうか。
動画：https://youtu.be/KoIGWrFM_Qs?t=205
次のショットでも、背景・椅子・本・カップの破片の全てが一枚絵に見えます。必殺技演出でも一枚絵を使ってうまく省力化している感じがします。
巨大ロボット
４つの目がキランと光るのはエヴァのオマージュかも知れないですね。横長のフレアは斜めに配置すると不格好に見えやすいので、真横にするのがセオリーな感じはあります。
一方、ダークソウル２の呪縛者が登場するカットシーンは珍しく斜めにフレアが焚かれるケースです。モノアイのようになっていて斜め向きなので、苦渋の決断だったのかな？と思いました。。
動画：https://youtu.be/3CpvafwZUK0?list=PL7bwjwx5WwdcSGSZ4c4vHT5Dgh94RiRUL&t=144
姫子による爆撃シーン。ちゃんと直前に上空が薄っすらと赤くなり、爆撃時も赤い大きなポイントライトでロボットを照らしていますね。エフェクトにライトを入れるのは説得力を増すために非常に大事なので、描画負荷が許すならなるべくしっかり入れるようにしたいですね。
動画：https://youtu.be/KoIGWrFM_Qs?t=321
カカリア消滅
キャラクターが消滅して光の粒子になるようなシーンは色んなアニメ・ゲームで行われますが、ここではホワイトアウトで誤魔化していますね。オンパロス編もカットシーンを観ていますが、演出にかなりの労力を割いている場面が多い一方で、ホワイトアウトやショットで誤魔化している場面も結構見られます。
動画：https://youtu.be/KoIGWrFM_Qs?t=455
その後、空にオーロラが浮かび上がるのは良い演出ですね。明るい未来を表現している？
余談：みんなの力で上に行くシーン
FFVIIアドベントチルドレンなんかを思い出すシーンです（ちなみにその際のユフィの動きが面白過ぎるのですが）。この槍‥どんな軌道で飛んできたの‥？（そして丹恒はこの槍をいつ回収したのか？）
動画：https://youtu.be/KoIGWrFM_Qs?t=366
前回の「宇宙ステーション ヘルタ編」はこちら。 続きの「羅浮編１」はこちら。
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