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宇宙からの地球観測第4章 人工衛星の軌道と太陽同期準回帰軌道

2024/05/02に公開

宇宙からの地球観測 第4章の問題は、周期と高度の問題です。だんだん衛星開発にとって実践的な内容になってきます。

課題4.1

JERS-1では太陽同期準回帰軌道を選んだ。1日あたりの周回数は15-1/44であった。その場合に、軌道高度を求めよ。なお、地球半径を6,371 km、地球表面での重力加速度を9.8 m/s²とする。

基本公式の理解

課題を読んだだけで、周期と高度に関係があるのだということが分かります。地球上で暮らしていると高さとスピードは全然別物のように考えていますが、宇宙という理論的な世界では万有引力の公式で高度:距離と速度が結びつくんだろうということが第三章を読んだあとなので想像ができます。

太陽同期準回帰起動

太陽同期というのが、太陽光を受ける角度が常に一定ということです。地球は1年で太陽の周りを一周しているので、太陽同期するということは 地球の公転にあわせて、人工衛星の軌道面が回っていくということを意味しています。

準回帰軌道というのは、M日ごとに人工衛星が同じ地点を通る、1日あたり人工衛星が地球を周る周回数が有理数で表せるということです。Nを一日あたりの周回数、LをM日での周回数(または、独立な地表に現れる軌跡数)Kは一に当たりの起動周回数の整数部分、Iを余りとすると準回帰軌道の場合、下記のように表すことができます。

N=LM=K+IMN=\dfrac{L}{M}=K+\dfrac{I}{M}

周期と高度の関係式

第三章とも関係する遠心力と重力の釣り合いより
(本文式4.4)

mv2R+H=mg(RR+H)2m\dfrac{v^2}{R+H} = mg\left(\dfrac{R}{R+H}\right)^2

(4.5)衛星速度
v=gR+HRv=\sqrt{\dfrac{g}{R+H}}R

RRは地球半径、ggは地表での重力加速度 HHは衛星高度
(4.6)衛星周期
T=2π(R+H)v=2π(R+H)32Rg12T=\dfrac{2\pi (R+H)}{v}=\dfrac{2\pi (R+H)^\frac{3}{2}}{Rg^\frac{1}{2}}

(4.7)周回数

N=86400Rg122π(R+H)32N=\dfrac{86400Rg^\frac{1}{2}}{2\pi (R+H)^\frac{3}{2}}

回答4.1

4.7 を変形して

H=(86400Rg122πN)23RH=\left(\dfrac{86400Rg^\frac{1}{2}}{2\pi N}\right)^\frac{2}{3}-R

import numpy as np

# 定数の定義
R = 6371  # 地球の半径 [km]
g = 0.0098  # 重力定数 [m/s²]
T = 86400  # 一日の秒数

# 式 (4.7) から軌道高度 H を求める関数
def find_orbit_height(N):
    return (86400 * R * np.sqrt(g) / (2 * np.pi * N))**(2/3) - R

# 与えられた周回数
N_given = 15-(1/44)  
print(f"H:{find_orbit_height(N_given):.2f}")
==
H:576.28

高度576km
本文表4.3 には実際の値568 とあるので 誤差10km 程度には計算できるということですね。(感動。)

課題4.2

ALOSでは太陽同期準回帰軌道を選んだ。1日あたりの周回数は14+27/46であった。その場合に、軌道高度を求めよ。なお、地球半径を6,371 km、地球表面での重力加速度を9.8 m/s²とする。

回答4.2

これは4.1 が解けていればもう一瞬ですね

# 与えられた周回数
N_given = 14+(27/46)
print(f"H:{find_orbit_height(N_given):.2f}")
==
H:699.66

課題4.3

観測幅20 kmのセンサを地球観測衛星に搭載して、太陽同期準回帰軌道を飛行させたい。赤道上でのオーバーラップ0%程度としたとき、この衛星が投入されるべき軌道の高度、対応するK、I、MNの一例を求めよ。答えは複数の組み合わせがあるので、1つを計算しなさい。なお、赤道周りの長さは40,000 kmとする。

問題の理解

観測幅:Wという言葉が新しく出てきました。 なんとなく衛星が観測できる幅をいっていることは分かります。 赤道の周が40000 km として、M:回帰日数、N:周期 としてM*Nの撮像のパターンがあるというのは4.1 で理解しました。 よって地球をある程度網羅して観測したい場合、衛星の周期を設計するときは下記の関係式を意識するのですね。

(本文式4.8)

MN40000WMN \geq \dfrac{40000}{W}

回答4.3

W=20 , 4.8 よりMN2000MN \geq 2000 となる M.Nの組み合わせを考えてみる。
単純にM=20、N100として 上記に代入すると高度はマイナスになってしまいますね、、

あらためていくつかのNを代入してみて高度の変化を見てみます。

# 与えられた周回数と高度の関係
print(f"N:0 H:{find_orbit_height(0):.2f}")
print(f"N:1 H:{find_orbit_height(1):.2f}")
print(f"N:2 H:{find_orbit_height(2):.2f}")
print(f"N:5 H:{find_orbit_height(5):.2f}")
print(f"N:10 H:{find_orbit_height(10):.2f}")
print(f"N:15 H:{find_orbit_height(15):.2f}")
print(f"N:16 H:{find_orbit_height(16):.2f}")
print(f"N:17 H:{find_orbit_height(17):.2f}")
print(f"N:18 H:{find_orbit_height(18):.2f}")
--
N:0 H:inf
N:1 H:35841.04
N:2 H:20220.92
N:5 H:8065.31
N:10 H:2723.31
N:15 H:569.26
N:16 H:276.98
N:17 H:13.65
N:18 H:-225.06

なるほど、、 静止衛星が一日一回周るので、その時の高度が35841km ,
17回で13km なのでもう宇宙じゃないくらいなので、あり得ないと。すごい式ですね。
ということはL2000 Nは17未満で下記のK,I,Mが整数になる組み合わせを考えれば良さそうですね

N=LM=K+IMN=\dfrac{L}{M}=K+\dfrac{I}{M}

少し変形して2000=KM+I2000=KM+I
いくらでもつくれそうですが、実際の衛星運用では、観測回数はなるべく増やして回帰も短くしたいはずです。そんな組み合わせで考えると
K=16 M=125 I=0 にすると 高度276km N=16 125 日ごとに同じ時間、地点を撮像できます。
K=15 M=133 I=5 にすると 高度557.68km N=15513315\frac{5}{133} 133 日ごとに同じ時間、地点になりますね。IはMを超えなければよいのでもっとMを短くしたいとかんがえると
K=15 M=126 I=110  これで高度312.3km N=1511012615\frac{110}{126} 126 日ごとに回帰する軌道が作れました!(面白いですね。)

上記の式からさらに分かることとして、ここでMを小さくしたい(同じ地点を同じ時間で撮影したい)とおもうと、撮像できるパターン数Lもへる。一方でNには上限があることがわかったので、地球の全体を観測したい場合は同じ時間というのは諦めて、Mを増やす、もしくは物理的に衛星の数を増やしていくという方針になっていくという基本原則がわかりました。

すごく面白いですね、万有引力と遠心力の関係が 衛星開発のビジネスモデル、原則の大枠を決めていくということが初めて実感できました。

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