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エンジニアリングマネージャーと企業を強くする組織開発

2024/03/09に公開

はじめに

組織開発とは、組織や組織間の問題にアプローチし、組織をよりよくしていく取り組みのことを指します。今後ますます価値観が多様化し、仕事に対する向き合い方、就業形態の違い、役割や権限も多様化してきています。組織内の人や部門間のつながりを強化し、活性化するための組織開発が注目され、企業の大小とわず多くの取り組みがなされています。エンジニア組織のマネジメントも踏まえつつ、企業を強くする組織開発について考察していきたいと思います。

エンジニア組織のマネジメント

ソフトウェアの開発力が企業の競争力の源泉となっている現代社会において、コア組織のひとつはエンジニア組織だと言えます。エンジニア組織のマネジメントにおいては、エンジニアリングマネージャーが中心となりますが、その存在はとても重要かつ貴重です。エンジニアリングマネージャーは、エンジニアとしてのスキルを持ちながら、マネジメントスキルも持ち合わせていることが求められますが、以下のような課題に直面し、仕事の難易度がとても高いです。

  • ソフトウェアの設計思想やセキュリティに関する考え方の違いによる人間関係のトラブル
  • 評価制度の設計
  • エンジニアのキャリアパス
  • エンジニア組織の風通しのよさ(働く環境)
  • エンジニアのモチベーションの維持

組織開発とエンジニア組織マネジメントの関連性

エンジニア組織の管理は難易度が高く、最適化しようとマネジメントしようとすればするほど全体俯瞰を忘れがちです。しかしながら、問題の根本はエンジニア組織の中だけに閉じないことが多いです。特にB to Bのサービスを主力としている企業の場合は、より特価したビジネスドメイン知識、業界の商慣習への理解や振る舞い方への配慮が必要となり、営業、マーケティング、法務、人事など他部門との連携がより深まっていきます。それぞれの組織が経営目標に向かってそれぞれの立場を主張するため、そのプレッシャーやモチベーションはいい意味でも悪い意味でも他部門に波及していき、それが意外とエンジニアのやる気を削いでいたりします。よって組織の課題解決には他組織、もしくは企業全体の問題にアプローチする組織開発の考え方が必要となります。

組織開発実施の背景

組織開発とは、組織や組織間の問題にアプローチし、組織をよりよくしていく取り組みのことを指しますが、昨今組織開発が重要視されるのには以下の背景があります。

  • 再現性の高いビジネスモデルが見出しにくい
  • COVID-19(新型コロナ)の影響による働き方の変化
  • SDGs(持続可能な開発目標)の達成
  • サステナビリティの観点からの企業価値の向上

もはや組織開発は、企業の成長戦略の一環として捉えられるべきであり、組織開発のゴールは、企業の持続可能な成長を実現することだといえます。

組織開発を始めるに当たって

いざ組織開発を始めようと思っても、日々忙しく仕事をしている中で、そういったことに時間を使うこと自体への理解を得られないこともあると思います。
しかも、他の組織や部門を巻き込んでやろうものなら、様々な反発の声も聞こえて来そうです。そのため、まずは、組織開発を実施してどういう状態を得ようとしているのか、そしてそれを通じてどういう成果を出そうとしているのかを理解してもらうことが重要です。例えば、組織開発によって得られる「良い状態」とは以下の3つのように定義してもよいと思います[1]

  • 能動性:企業、組織として目標を達成できる(試合に勝つ、戦いに勝てると自信がもてる)
  • 健全性: 明るく活発、適切な言葉遣いで会話できる(チームの雰囲気がよい)
  • 継続性: よい状態を自分たちで維持できる(目標達成やチームの雰囲気)

「良い状態」を作りだし、成果として以下図のように「関係」、「思考」、「行動」、「結果」それぞれのクオリティを上げる循環が回せれば、組織開発は成功、強い組織の集合体、つまり強い企業を作れるのではないかと思います。

組織開発成功の循環

                ┌───────  関係性の質向上  ───────┐

           結果の質向上                      思考の質向上

                └───────   行動の質向上  ───────┘

この循環を回すには組織風土も含めて徐々に会社を変革していく必要があるため、一朝一夕にはなし得ないと思います。ローマは一日にしてならず、千里の道も一歩からという言葉もありますが、まずは思い切って行動に移していきたいですね。

まとめ

再現性の高いビジネスモデルを見出すことがむずかしい状況に加えて、SDGsやサステナビリティなどの観点から社会的存在意義ある企業や組織という視点も重要になってきています。そのため、個人レベル、組織レベル、企業、更には企業間レベルでの「関係」、「思考」、「行動」、「結果」の質を上げていくことが今後も求められていきます。各企業や組織は自組織だけに目を向けるのではなく、「組織開発」の重要性を認知し成長戦略の一環として捉える必要があります。例えばエンジニア組織が直面する課題も、実は企業全体の問題にアプローチする組織開発が必要では無いか、その視点で経営層も議論に参加し実行に移していくことが求められていくのではないかと思います。エンジニアリングマネジャーや組織開発の仕事はとても難しいですが、その分、やりがいも大きいですね。

脚注
  1. 裏を返せば、今そういう状態になっていないということの共通認識も得る必要はあります。 ↩︎

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