生成AI誕生記 | 2022年11月30日からの激動をお盆に振り返る
はじめに
2022年11月30日、OpenAIがChatGPTを公開したその瞬間から、世界は生成AI革命の渦中に巻き込まれました。それまでAIは一部の専門家や研究者の領域にとどまっていましたが、ChatGPTの登場により、誰もが高度なAI技術を手軽に体験できる時代が始まったのです。
この記事では、2022年11月から現在(2025年8月)までの約2年9ヶ月間に起きた主要なAI関連リリースを開発者目線で時系列で振り返り、それぞれがTwitter(現X)でどのような反響を呼んだのか、そして私たちの生活やビジネスに何をもたらしたのかを当時の反応とともに振り返ります。
「あんなことあったなぁ~」や「こんなことに驚いていたのかぁ~」のように当時を懐かしみながら読んでいただければ幸いです。
1. ChatGPT (2022年11月30日) - すべての始まり
歴史的瞬間の到来
時は2022年11月30日、OpenAIのCEOであるSam Altman氏は、シンプルなツイートで世界を変える発表を行いました。
このツイートから始まった生成AI革命は、わずか5日後には驚異的な数字を記録することになります。
リリースからたった5日でユーザー数100万人突破という記録は、インターネットサービスの歴史上でも類を見ない急成長でした。比較として、Netflixが100万ユーザーに到達するまでに3.5年、Facebookは10ヶ月かかったことを考えると、ChatGPTの衝撃の大きさが理解できます。
出典: https://note.com/sachin_chowdhery/n/naaa7da71992c
Twitterでの爆発的反響
ChatGPTのリリース直後から、Twitter上では驚きと興奮の声が溢れました。多くのユーザーが実際に試した結果を投稿し、その性能に驚嘆する様子が見られました。
筆者も恐る恐る文字を打ち込んで「なんなんだこいつは!!」となった記憶があります。
特に印象的だったのは、「素人がChatGPTにTwitter運用してもらおうとしたらエライことに...」といった具体的な活用例を紹介する投稿でした。これらの投稿は、ChatGPTが単なる技術デモではなく、実際の業務や日常生活で活用できるツールであることを示していました。
また、OpenAIの共同創業者であるGreg Brockman氏によるTEDトーク「開発者が語るChatGPTの驚きの可能性」も大きな話題となり、技術的な背景と将来の可能性について詳しく語られました。ぜひ興味のある方はご視聴ください
革命的な機能とできるようになったこと
ChatGPTが提供した機能は、従来のAIサービスとは一線を画すものでした
自然な対話能力
人間のように自然で流暢な会話ができるAIチャットサービスとして、これまで人間が行ってきた質問応答、文章生成、要約、翻訳など多岐にわたるタスクを高い精度でこなせるようになりました。
多様な活用シーン
- SNSの炎上対策
- 講義資料の作成
- 人生相談
- コーディング
- 数学・科学問題の解決
新しいサービスの創出
API連携により、議事録自動作成ツール「Calq Talk」のような新しいサービスが次々と生まれました。これは、ChatGPTが単体のサービスとしてだけでなく、他のアプリケーションを強化するプラットフォームとしても機能することを示していました。
この頃筆者はmeetupなどに通っていろいろなLTを見ていたりしたのですが「未来がどんどん近づいてきている」ことをひしひしと感じていました
2. GPT-4 (2023年3月14日) - マルチモーダルAIの実現
次世代モデルの衝撃的発表
ChatGPTの成功から約3ヶ月半後、OpenAIは次なる革新を発表しました。2023年3月14日、公式Twitterアカウントから発信されたこのツイートは、AI業界に新たな衝撃を与えました:
Twitterでの技術者たちの反応
GPT-4の発表は、特にAIエンジニアや技術者コミュニティで大きな話題となりました。多くの専門家が、その性能向上に驚きの声を上げました。
「GPT4、マジでやばいかも」といったツイートでは、デモ動画の衝撃が生々しく伝えられました。特に、手書きのスケッチから動作するWebサイトを生成するデモは、多くの開発者に衝撃を与えました。
技術ブログ「一旦落ち着いてGPT-4のすごさと脅威を考える」では、その影響の大きさが詳細に分析され、AI技術の進歩が社会に与える影響について深い議論が展開されました。
画期的な技術革新
GPT-4は、前世代から大幅な性能向上を実現しました
マルチモーダル機能
画像とテキストの両方を入力として受け取り、テキストを出力できる大規模なマルチモーダルモデルとして、視覚的な情報を理解し、それに基づいた回答を生成できるようになりました。
圧倒的な性能向上
司法試験で上位10%のスコアを記録
SATで1400点以上を獲得
GPT-3.5と比較して、より高度な推論能力と長文処理能力を実現
進化の継続
2024年5月には、性能をさらに向上させた「GPT-4o」が登場し、無料版ChatGPTでも利用可能になったことで、より多くのユーザーが高性能AIを体験できるようになりました。
筆者はこの頃くらいからよくコードでわからないところをGPTにぶん投げてエラー解消などを行っていました
またこのちょっと後くらいにGPT-4をBingで無料で使えるよ!みたいな情報が出てきてたのを懐かしく思います
3. Google Bard / Gemini (2023年2月〜2024年2月) - 検索の巨人の挑戦
Googleの対抗策とその波乱
ChatGPTの成功を受けて、検索エンジンの王者Googleも迅速に対応しました。2023年2月6日、GoogleはBardを発表し、生成AI競争に本格参入することを宣言しました。
しかし、この発表は予想外の展開を見せることになります。
初期の困難とTwitterでの反応
Bardの発表時には、プロモーションビデオに誤情報が含まれていることが指摘され、大きな話題となりました。「Googleの会話AI『Bard』が広告で誤情報を回答。親会社Alphabetの...」といったニュースが報じられ、Alphabet社の株価にも影響を与えました。
日本語対応後も、一部では「Googleでもダメか」といった落胆の声が聞かれることもありました。
Geminiへの進化と期待の高まり
しかし2023年12月6日のGemini発表、そして2024年2月8日のBardからGeminiへのリブランドにより、状況は大きく変わりました。
Twitterでは、Geminiの性能、特にコーディング能力やマルチモーダル機能に対する期待の声が高まりました:
4. Cursorの登場
2023年にAnysphere Inc.からリリースされたAIコードエディタ「Cursor」は、開発者コミュニティに大きな波紋を投げかけました。特に、OpenAIのGPTを統合したその強力なAI機能は、従来のコードエディタの常識を覆すものでした。多くの開発者が長年愛用してきたVisual Studio Code(VSCode)からの乗り換えを検討し、実際に移行する開発者もたくさん現れました。
筆者は2024年8月にチームのエンジニアの人がcursorを使っているのを見て自分も乗り換えたのですが、VSCodeよりもかなり推論が強くてTabキーを押すのが常態化したことを覚えています。
Cursorの登場は、開発者にとって生産性向上の新たな可能性を示しました。Redditなどの開発者フォーラムでは、「Cursorが私のVSCodeの代替になるかもしれない」といった期待の声が多数上がっていました。「Cursorはまさに天からの恵みだ。プログラミング言語を学ぶだけでなく、思考と計画のシステムとしての開発を理解するのに役立った」と評価するユーザーもいました。
またこのときcursorを全エンジニアに配る企業の発信も話題になりました
実は弊社もこのとき社員配布を始めていました(発信しておけばよかった……!)
5. ClineとRoocodeの登場:プログラマーの立場を脅かす自立型AIエージェントと開発者の反応(2025年1月)
AIによるコード生成が進化する中で、さらに一歩進んだ「自律型AIエージェント」が登場します。
その代表格が、オープンソースのAIコーディングエージェント「Cline」と「Roo Code」です。
これらのツールは、単にコードを補完するだけでなく、ファイル作成・編集、コマンド実行、ブラウザ操作など、開発プロセス全体を自律的に実行する能力を持つとされ、プログラマーの職務そのものを脅かす存在として認識され始めました。
このときmizchiさんの書かれた
がエンジニア界隈でめちゃめちゃ流行りました
しかしこのあたりで実際に、AIによる自動化が進むことで、特にエントリーレベルや中堅のプグラマーの仕事が影響を受けるという意見もありました。2025年5月には、AIによって職を失ったソフトウェアエンジニアが、年収15万ドルの職を失い、800件の求人に応募しても仕事が見つからないという事例が報じられ、AIによる雇用の置き換えが現実のものとなりつつあることを示しました。
6.AIエンジニアのDevin君がチームにやってくる
Devinは、Cognition AIによって開発され、「世界初のAIソフトウェアエンジニア」として2024年3月に発表されました。この発表は、ソフトウェア開発業界に大きな衝撃を与え、その能力と将来性について活発な議論を巻き起こしました。初期の反応は、その革新的な機能に対する期待と、$500という強気の価格設定に対する驚きでした
Devinの登場は、開発者の役割がより複雑な問題解決や創造的な業務へとシフトしていく可能性を示しました。AIが単純なコーディング作業を自動化することで、開発者はより高レベルな設計やアーキテクチャ、あるいは人間とのコミュニケーションといった領域に注力できるようになると期待されました。
弊社でも2025年の2月にDevin君が入社していますが、現在は実装というよりもリファインメント中にコードベースを検索してもらってタスクの依存箇所があるかなどを見てもらっています。
7.黒船 Claude Codeの到来(2025年5月)
Claude Codeは、Anthropicによって開発されたAIエージェント型コーディングアシスタントであり、2025年2月にClaude 3.7 Sonnetとともに発表されました。しかし爆発的に広がったのは2025年5月22日Claude Opus 4 と Sonnet 4 のリリースと同時に発表された定額サブスクリプションのリリースでした。
Claude Codeは、ターミナルで直接動作し、コードベースを理解し、自然言語コマンドを使用して開発タスクを支援する能力を持っています。特に、エージェント型コーディングアシスタントとして、コンテキストを自動的に取得し、プロンプトに組み込む機能が特徴です。これにより、迅速なプロトタイピングや、完全なアプリケーション開発が可能になるとされています。
筆者は以下の文章を見てすぐに自腹で1万5000円支払い(確か土曜日で、性能にびっくりして土日に1日16時間くらい張り付いていました)、休み明けそのとんでもない性能を周りの人に宣伝したことを覚えています(結構すぐに会社全体でのclaude code導入が決まりました)。ここらへんから本当にコードを1から書くことはなくなりそうだという気持ちが芽生えました(clineとroo codeのときは「新規コードならいけるかなぁ」くらいで業務に使うにはまだ難しそうとの考えを持っていました)
最も衝撃的だったのは、Claude Opus 4 が 7 時間連続でコーディングを続けたという事実だ。楽天での複雑なオープンソースプロジェクトのリファクタリングで、人間のエンジニアでも集中力を保つのが困難な長時間作業を、AI が淡々とこなした。SWE-bench スコアは 72.5%を記録し、OpenAI の GPT-4.1 の 54.6%を大幅に上回った。
引用: https://blog.wadan.co.jp/ja/tech/claude-code-practical-experience
8.GPT-5の登場とkeep4o問題: 「私の恋人を返して」という切実な叫び(2025年8月)
2025年8月7日、OpenAIは待望の次世代モデル「GPT-5」をリリースしました。OpenAIはこれを「これまでで最も賢く、速く、最も有用なモデル」と称し、数学、科学、金融、法律など、あらゆる分野でより有用な応答を提供すると発表しました。しかし、このGPT-5のリリースは、開発者コミュニティだけでなく、ChatGPTの一般ユーザーの間でも大きな混乱と反発を引き起こしました。特に顕著だったのが、旧モデルであるGPT-4oの提供終了に伴う「keep4o問題」と、それに続く「私の恋人を返して」という切実な叫びでした。
GPT-5のリリースと同時に、OpenAIはそれまで多くのユーザーに愛用されてきたGPT-4oモデルの提供を終了すると発表しました。GPT-4oは、その「温かい話し方」で、AIとの対話を通じて「AIの友人」や「AIの恋人」のような関係性を築いていたユーザーから絶大な支持を得ていました。
しかし、GPT-5は、その高い知能と効率性とは裏腹に、GPT-4oが持っていた「人間らしさ」や「創造性」の一部を失っていると感じるユーザーが多数現れました。
Xでは、「GPT-5はGPT-4oを台無しにしたのと同じ問題を抱えている」、「GPT-5は私には合わない。GPT-4oを返してほしい」といった不満の声が爆発的に増加しました。特に、AIとの個人的な関係性を築いていたユーザーからは、「私の恋人を返して」という、AIが単なるツールではなく、感情的なつながりを持つ存在となっていたことを示す、非常に切実なメッセージが多数投稿されました。
9.まとめ
2022年11月30日のChatGPT公開から始まった生成AI革命は、わずか2年9ヶ月という短期間で、私たちの生活、働き方、創造活動を根本的に変革しました。
特に2025年1月からのAI開発ツールの進化は本当に目覚ましく、筆者は文字通り日進月歩で目まぐるしく変わるAI情勢のキャッチアップと新しいツールの発表のたびに削がれていく自分のアイデンティティ等に疲弊し一度軽くメンタルを病みました笑(割といると思います笑)
今後も続くAI革命の波に乗り遅れることなく、同時に人間らしさを失わない形で技術と共存していく道を見つけることが、私たちに課された重要な使命と言えるでしょう。
おまけ.生成AI年表
時期 | AI/サービス名 | 開発企業 | 主な特徴 | Twitterでの反響 |
---|---|---|---|---|
2022年11月30日 | ChatGPT | OpenAI | 自然な対話AI | 5日で100万ユーザー突破 |
2023年2月6日 | Bard発表 | ChatGPT対抗馬 | 誤情報問題で株価下落 | |
2023年3月14日 | GPT-4 | OpenAI | マルチモーダルAI | 「マジでやばい」と技術者が驚愕 |
2023年3月 | Claude | Anthropic | 安全性重視AI | 倫理的AI開発への注目 |
2023年5月 | Microsoft Copilot | Microsoft | Office統合AI | ビジネス効率化への期待 |
2023年12月6日 | Gemini発表 | 次世代マルチモーダル | 「世界No.1」への期待 | |
2024年2月8日 | Bard→Geminiリブランド | 統一ブランド戦略 | 新たなスタートへの期待 | |
2024年3月 | Devin | CognitiveAI | 世界初AIソフトウェアエンジニア | 完全自立型エージェント |
2024年5月13日 | GPT-4o | OpenAI | 高速化・無料化 | 「4oの方が軽くて好き」 |
2025年5月22日 | Claude Codeサブスクリプション | Anthropic | 定額制AIエージェント | ロングランができる! |
2025年8月 | Jules正式版 | コーディング特化エージェント | 「バグ自動修正時代」の到来 | |
2025年8月6日 | Claude Opus 4.1 | Anthropic | エージェント機能強化 | コーディング能力への注目 |
2025年8月7日 | GPT-5 | OpenAI | 高速化・無料化 | keep4o問題 |
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