初めての技術書典15にAWS本で出典するまでの全記録
2023/11/12 Zennで作ったCloudFormation本の内容を元に、技術書典15で出典してきました☺️
・Zenn本(こいつを)
・技術書典15での出品ページ(こうした)
技術書典とは技術書の同人誌イベントです。つまり個人間で簡単に本を売ったり買ったりすることができます。
実際にこの状況にたどり着くまでに何をしたかを記録しておきたいと思います。初見には厳しいポイントが多々ありますので、これから初めて本を出す人にとって助けになる記事になればと思います。
6月〜7月 環境構築
まずは下記の環境をCloudFormationで作りました。仕事とは関係なく個人の時間でまずは座学から入って、ちまちまコードを書いて作ってたので1ヶ月くらいかかりました。
8月 Zenn本を作る
①の内容を踏まえてそのまま本をつくりました。そしてこの本を作り終えた頃に技術書典が11/12にあることを知り、出典をケツイします✨
9月 技術書典参加申込 → 入稿用の環境を作る
参加申込
出典には申し込みが必ず必要です。申込は開催の2か月くらい前に始まるので最新情報はXを常チェックしておきましょう。なお出典には1000円かかります。
出典がOKされるとサークルのメンバー(当日売り子ができる人)登録が3人まで可能です。出典を申請した人自身も登録する必要があるので忘れずにやっておきましょう。
入稿用の環境を作る
入稿とは印刷の用の電子データを作ることです。個人的にナレッジもなく、まわりに有識者がいたわけでもなかったのでここがけっこうきつかった1つ目のポイントでした。印刷会社が本に刷るにはいろんな制約があるので、それ用のフォーマットにするにはそれなりに壁があります。Googleドキュメントとかでできないこともないですが、やっぱり専用のシステムを使った方がより本らしい雰囲気が出るのでほぼ必須と考えて良いかと思います。またチームで本を作る場合もGit管理が必要になるので、よりそれ用のシステムが必要になります。
そこで界隈では有名なReVIEW-Templateを使いました。正直神ツール以外のなにものでもないです。これを使えば一発で印刷業者が印刷できる状態にもっていけます。
ReVIEW-Templateの利用方法
基本はGit CloneしてDockerを動かすだけですが、私はまずZenn本で書いたため、markdownからRe:VIEW形式に変更する必要がありました。その辺りの手法も含めて解説していきます。
①Git clone(私が使ったバージョンは5.8でした)
git clone https://github.com/ReVIEW-Template
②article配下で編集
・config.yml
表紙などデフォルトで設定されてる内容はここで編集します。また、markdownからRe:VIEW形式の変換もここで設定します。
# pandoc2reviewを利用してMarkdownコンテンツを取り込むには、以下を有効にする
contentdir: _refiles
※参考
・article.md
ここに記事を書いていきます。いいところでファイルを分割してもよいかと思います。私は章ごとにわけました。
・catalog.yml
article配下に配置した記事ファイル .md をPDF出力するにはここに記載します。catalog.yml内の拡張子は .re のまま .md ファイルを読み込ませました。
③DockerでPDF出力
最後にcloneしたディレクトリでDockerを動かします。
./buiild-in-doker.sh
ここで注意なのですが、Dockerのバージョンによっては動きませんでした。わたしは最終的に3.6.0で稼働させましたが、4.23.0や、2.XX.XX(すみません後ろの数字は失念)では動きませんでした。Docekrバージョンの指定はなかったので、動かない原因がバージョンとは読めず、解決に結構時間を使ってしまいました。
また、数日端末を放置するとDockerが動かなくなる事象が1度だけ起こりました。そのときはまたGit Cloneからやり直しました。
10月初旬〜中旬 markdownからRe:VIEW形式への変換→文章校正
変換
実際にPDFに出力するとわかるのですが、Zennのmarkdownから変換しているからか、体裁がガタガタになりました。下記の記述を参考にしながら直していく必要があります。
基本は上記記述方法にのっとって記載すれば問題ないですが、コードの記載部分で、はみ出しが起こったので手動で改行しました。(たぶんうまいこと設定ファイル書き換えればシステム側で改善はできると思います)
文書校正
全部変換がおわったら次は文書の校正です。テキスト校正くんでもある程度校正はできますが、細かいところまでは校正してくれなかったのでやっぱり目視での修正は必要です。ここはできれば自分ではない人にやってもらうとよいでしょう。そうなるとGitの利用も必要になってきますね。
※テキスト校正くん
10月下旬 審査依頼→表紙作成→入稿
このあたりがラストスパートって感じです。ここがきつかったポイントの2つ目になりますが、マイルストーンになる工程なのでより気をつけましょう。なお入稿とは、印刷業者に印刷依頼をすることです。
審査依頼(商品の追加)
技術書典では規約違反した書籍が出回らないようチェックするシステムがあります。なので、出典前には必ずこの審査依頼をかける必要があります。よほどおかしなことを書かなければ落ちないようです。審査を待ってるとイベント当日に本が間に合わなくなるので、審査中でも入稿かけちゃう人が多いようです。 私もぎりぎりだったので、この手法をとりました。実際に審査が通ったのは開催日のちょっと前だった記憶なので、やはり審査が通ってから入稿はかなり時間的に厳しくなると思います。
最終的な期限としては審査は最低3日ということなので、最悪オフライン3日前に審査を出しておけばギリギリ間に合うかと思います。ただこれだと印刷が間に合わなくなるので、結局は入稿日がマイルストーンということになるでしょう。
商品の追加自体は難しくないので項目にそってつらつらと書いていきましょう。
表紙作成
前提として私は印刷を日光企画さんに依頼したので、ここのフォーマット沿う必要があります。
私はA5フルカラーを利用しました。こやつをダウンロードして表紙を書いていきます。
作成にはいろいろなツールを試しましたが、結局Photoshopを使いました。印刷にはいろいろな制約があるので、やっぱりちゃんとしたツール使った方がよいというのが結論です。利用は1週間だけなら無料です。
実際のレイアウトはこんな感じ。
テンプレートの下に注意が書きがあるので必ずそれに従って書きましょう。微妙なサイズ調整やレイヤーをまとめるとかそのあたりが書いてあります。サイズの調整はミリ単位のかなり細かいレベルで調整するので、雑にやらないように。余白の残し方や裏表紙の長さがポイントです。全体のバランスはガイドを置きまくってとりましょう。(日光企画さんがそうやってました)また、CMYKじゃないとダメ!みたいな指定もあるようですが、実際はRGBでも印刷できますよとのことでした。
入稿
Webから印刷依頼をすると指定の項目がいろいろあって、初心者にはけっこうハードルが高いです。なので私は池袋にある日光企画さんに直接データを持っていきました。データは表紙/.psdと、本文/.pdfをわけてUSBで渡すので準備を忘れずに。またその場で表紙を直すことも考えて、ノートならPCも持っていくと安全安心です。
あとは噂通り、とてもきさくな店員が作り方を導いてくれます。私は実際に技術書展で購入した本を持っていって、それを見本に印刷の方法を決めていきました。自分は技術書典で標準的と思われるオンデマンド平トジフルカラーセットのA5で作りました。
料金は下記の表の通りです。入稿はできるだけ早いと割引があるので是非狙いましょう。
何冊印刷すればいいのか
さぁここで何冊印刷するのかという誰もが悩むテーマにぶちあたります。私は50部印刷しましたが、オフライン当日で完売できたのでちょうど良い印刷数でした。ある程度認知されているテーマの本であればこの50という数字は良い数字かと思います。よりメジャーなテーマであれば増やしたり、よりニッチなテーマであればもっとさげたりとうまく調整していきましょう。なお、オンラインでも販売する場合は郵送という作業も発生します。売れ残りを郵送すれば、その分精算できるので多少は多めに印刷してもよいかなと思います。
郵送は日光企画から会場へ、売れ残りは会場から自宅へ送ってもらえます。電車で本のダンボールを持つような羽目になることはないので、そこも安心してください。
11月上旬 マーケット出品→展示の準備→最終確認
審査、入稿とが終わればけっこう安心です。ここではマーケット出品を行います。
マーケット出品
技術書典のマイページから販売物の管理と同様ポチポチと登録していきます。基本は全販売方法を利用した方がよいかと思います。販売設定があるのでここを販売中にしておくように注意しましょう。
さて、ここで印刷数同様悩むのが価格設定です。私は以下の用に設定しました。
オンオフ | 販売方法 | 価格 | 設定理由 |
---|---|---|---|
オフライン | 電子 | ¥1,000 | 書典の基本価格 |
オフライン | 電子+紙本 | ¥1,000 | 紙を売りたいため電子と同じ |
オフライン | 電子+紙本郵送 | ¥1,000 | 郵送でお金かかるけど、せっかく会場きてくれたので |
オンライン | 電子 | ¥1,000 | 書典の基本価格 |
オンライン | 電子+紙本郵送 | ¥1,200 | 会場きてくれた人との差別化 |
まず基本の価格は¥1,000としました。この価格が書典のスタンダードかなと思います。私は70ページでしたが、よほどボリュームが少ないとか大きいとかがない限りこの価格設定でよさそうです。あとは紙を売りたいという思いもあったので、電子と金額を変えませんでした。また、会場に来てくれた人へのメリットも作りたかったので、オフラインは郵送でもその場の紙本売りと同価格としました。
ここで注意なのが郵送です。例えば当日紙の本を全て売り切ってしまったとして、郵送が数冊しか購入されなかったとすると、郵送分は赤字になります。これは印刷が40部までは5部ずつ、40部以降は10部ずつしか印刷できないからというのと、印刷数が少なければ少ないほど1冊あたりの料金があがるからです。なのでベストな売り方は最初に100部程度印刷して、それを会場と郵送でぴったり100冊売り切ることです。郵送は単に赤字にしかならないリスクもあるので、オンオフどちらももう少し料金をあげてもよいかなと思いました。
ここまでくればXで宣伝できるので、是非ポストしましょう。Xやってなければこれを機にやりましょう。
展示の準備
本記事冒頭の写真の通りですが、100均でいろいろアイテムを買いました。初めてなのでまだよわよわな展示ですが、初回ならこんなもんでいいと思います。
■必須
・見本の本たて:必須です。見本は2冊あった方がいいので、2個買っておきましょう。
・ポップ(大きい付箋とか):価格とか書くのに必要です。
■必要なら
・名刺置き:持ってるなら置いておきましょう。
・マット:大きいのが見つからず、ランチマットを買いました。雰囲気でるのであった方がいいです。
・カード入れ:QRを2つおくために買いました。これはなくてもいいかなって感じでした。
■欲しいとおもったもの
・大きいマット:やっぱり机を全体的に覆ったほうがより雰囲気がでます。
・もっと目立てる道具:ポスター、チラシ、旗、本を置く大きい高めの台座などがあるといいなと思いました。
最終確認
最後に当日の売り方や郵送方法の確認、サークルメンバへの情報共有などをやりました。
当日の売り方
会場でQRコードを置くカードがもらえるので、それを専用アプリから読み取って貰えばOKです。たまに現金の人がいますが、取扱いNGではないようです。私も1名だけ現金の方がいらっしゃいましたが、お釣りは用意しなくてよいでしょう。そういう意味でも¥1,000円という価格設定が良いかと思います。現金の方は電子版が渡せないので、必要ならそれ用にアップしてQRとかを用意する必要があります。私はここまでは用意せず、紙の本だけお渡しすることにしました。
郵送方法
個人で郵送もしくは、オンライン販売終了後に運営へ送付し、一括郵送してもらえるようです。郵送で足りない分は印刷業者に印刷を再依頼して、それを運営に送りましょう。また運営側でもあとから印刷という名目で印刷してくれるようなのでこれを使うのもアリです。
※参考
https://techbookfest.zendesk.com/hc/ja/sections/4403811887373-書き終わったら
https://techbookfest.zendesk.com/hc/ja/sections/4416518368653-後から印刷について
サークルメンバへの共有
私はありがたいことに売り子の協力者がいてくれたので、二人に当日のタイムスケジュールや、本の内容を共有しました。当たり前ですが買う人とは本の内容で会話できた方がいいので、しっかり共有しておきましょう。
オフラインイベント当日
さぁいよいよイベント当日です。
・タイムスケジュール
※Aは著者の私です。販売開始は11時からでした。
時間 | 担当 | やること | 人の多さ |
---|---|---|---|
10:00~ | A B | 設営/周りの人にあいさつ | 普通 |
13:00~ | A C | Bが休憩 | 多い |
14:00~ | A B | Cが休憩 | 多い |
15:00~ | B C | Aが休憩 | 普通 |
16:00~ | A B C | みんなで販売 | 少ない |
休憩中は他のサークル周ったり、食事にいったりでした。先にサークルを周っておくと後できてもらえたりもしますが、やはり著者の人はできるだけ自ブースにいた方がいいので、ピークが終えるまでは動かない方がいいでしょう。あとは11時の開始までに時間に余裕があったので、近くのブースはあいさつをしておきました。基本ブースはある程度のジャンルで括られているので、仲間、運命共同体みたいなものですね。自分の分野を盛り上げるためにも一緒に戦ってる気持ちでした。
・時間のピークちゃん
ピークはお昼すぎから夕方にかけてでした。チケットが売り切れになっていたお昼くらいまでをピークと想定してましたが、後ろの若干ずれました。おそらくみんなゆっくり回るので後ろが詰まってしまったのだと思います。ピークになると見本が足りなくなることが何回か起きたので、ここはしっかり著者は残った方がいいです。
・ブースにきてくれた人とのコミュニケーション
買ってくれた人の7割以上は会話させていただきました。やはりオフラインの醍醐味はここかなと思います。インフラエンジニア、AWSエンジニア、アプリエンジニア、業務で悩みがある人などいろんな人がいました。AWS界隈の多種多様な境遇の声をきけたことがとても嬉しかったです。貴重な出会いですので、X(名刺)も交換したりしました。あとはやはり会話させてもらうと買ってくれる人も多かったイメージです。話しかけると結構お話してくれる人が大半でしたが、人によってはあんまりという感じの人もいるので、そこは空気を読んで相手を不快にさせないように注意しましょう。
名刺は自分で作った方が良いので、以下の私の記事を参考にしてみてください。
あとは自分の会社の人、AWSコミュニティ界隈の人、友人もきて買ってくれました。多分1〜2割の購入者は知り合いだっと思います。正直これめちゃくちゃ嬉しいです。本当にありがとうございました😢
・イベント終了
終了の1、2時間前には紙の本が50冊が完売しました。当日の売り上げの9割以上は紙の本+電子でした。(ちなみにオンラインだと電子のみと電子+紙で半々くらいの割合です)そのあとも人がちらほらいらっしゃって、電子で買ってくれる人もいました。そして17時に撤収。ありがたいことに会場でゴミの回収もしてくれます。ここで本が余った人は郵送もしてくれるようなので、必要なら会場から自宅へ郵送しましょう。(あとから印刷のため運営に送っておくというのは郵送日時が指定されているので、この時点ではたぶん無理だと思います。)
さいごに 嬉しかったことと反省点
嬉しかったこと
・本がうれたこと
当たり前ですが嬉しかったです。まさか紙の本売り切れるとは思ってませんでした。やはりAWSというジャンルのパワーを強く感じました。自分の境遇にも感謝しないといけないですね。
・購入者とコミュニケーションがとれたこと
前述の通りですがとても嬉しかったです。私の本が少しでも業務とかの助けになったら本望です。
・知り合いがきてくれたこと
これも前述の通りです。転職しなきゃこの境遇には巡り会えなかったので改めて転職してよかったなと思いました。
・友人がサークル販売や校正に協力してくれたこと
これもまた前述の通りですが、前職での友人が協力してくれました。自分にブースをまわる時間や、知り合いとお喋りできる時間も作れてとても助かりました。そして何より楽しかったです。一人だと結構寂しかっただろうなと思います。終わったあとの打ち上げにいけるのもそれっぽくていいですね。
・佐々木さんのお隣で販売できたこと
AWSの本といえば佐々木さんです。私の技術同人誌は佐々木さんのIAM本が出会いでした。それ以外の本もたくさん持っています。偶然にもそんな方の隣で販売できました。佐々木さんのブースはとても人気でさすがでした。私の本の売れ行きにも間違いなく恩恵があったと思います。
佐々木さんのX
AWS IAMのマニアックな話
・主催のmhidakaさんが本を買ってくれたこと
ずっとYouTubeみてたのでお話できてすごい嬉しかったです。自分の本のコメントなんかもいただけたりして、感無量でした。
mhidakaさんのX
技術書典 YouTubeチャンネル
反省点
総合的にうまくっいったので、正直あんまりないですが一応。
・印刷部数
これは読みきれない部分でもありますし、反省というほどでもないのですが、もう少し多く印刷してもよかったなと思いました。前述の通り、印刷は2回に分けるとコストが上がってしまいますし、当日売れ残りがあってもそれを郵送分にに回せるので。
・金額設定
印刷部数と絡みますが、郵送系は赤字になるリスクがあるのでもう少し高く設定してもよかったかなと思いました。
さいごのさいごに
以上です。サークルメンバ、本をご購入くださったみなさん、改めてありがとうございました。オンラインは2023/11/26まで販売中なのでよろしくお願いします。オンライン終了後に何か追記できることがあれば、この記事に追記しておこうと思います。次回の技術書典でも新しい本でまた出典できたらなと思います☺️
Discussion
参考にしていただいて、ありがとうございます!
こういうことがあると、記事を書いてよかったなと思います。
コメントありがとうございます!
ご本人からいただけるのとても嬉しいです。
markdownからreviewへの記事は、
ほとんどなかった記憶なので当時とても助かりました。