「エンジニアのためのマネジメント入門」第1章を読んで
はじめに
この記事は、以下書籍を読んで、自分のインプットの整理としてまとめています。まずは初めの1章からです。
第1章 こんにちは、マネージャー
この本の序章とも言える第1章では、マネージャーの役割やマネージャーがこなすべき職務であるマネジメントについて議論し、エンジニアのためのマネジメント入門(以下、本書)における定義づけをしています。
マネジメントの語義は「管理すること」であり、ビジネスにおける管理することは経営管理と呼ばれる領域として存在します。経営管理の始まりは1900年ごろであり、本書では、経理管理論の始祖とも呼ばれるファヨールの管理的活動と管理原則を引用しています。
管理的活動
- 計画:将来を予測して企業の戦略を実現する計画や目標を立てる
- 組織:権限と責任を割り当て組織体を設計する
- 命令:計画を実行させるために指示を出す
- 調整:各チームのアウトプットやコミュニケーションを結合して調和させる
- 統制:すべての活動が計画通りに遂行できているか監視して状況に合わせて修正する
管理原則(マネジメントに関わるものを抜粋)
- 分業:組織が大きくなるほど、分業化される。職能が専門化し、権限が分化される
- 権限と責任:命令する権限を有し、それに伴う責任を負う
- 命令の一元性:指揮命令系統を一元化し、構成員は一人の管理者から命令を受け取る
- 指揮の一元性:目標達成のための責任者は一人、計画は一つである
- 階層組織:指揮命令を確実にするため、責任者を階層化する
さらにドラッカーによるマネジメントの定義も援用され、本書ではマネージャーを「組織に成果を上げさせるための活動をする者」としています。
ドラッカーのマネジメントの定義
マネジメントとは、組織に成果を上げさせるための機能です。機能とは、組織の目的を達成するための手段であり、人となります。
エンジニアリング組織においては、マネジメントの文脈に加えてエンジニアリングも考慮する必要があります。本書ではエンジニアリングとは「不確実なものを効率よく削減していくこと」という立場がとられています。プロダクトを作るだけでなく、成果物をアウトプットする過程に存在するチームからステイクホルダー、あるいは自社だけでなくサプライチェーン全体までのリスクを削減することを指します。エンジニアリングのマネジメントは、エンジニアをマネジメントするのではなく、不確実なものを削減するエンジニアリングをマネジメントすることとされます。
エンジニアリングマネージャーの業務を挙げると、ソフトウェアの設計開発から人材の採用育成まで多岐に渡ります。このような業務を行うのがエンジニアリングマネージャーである、と定義するのは困難であり、特定の組織における職務としての定義はあっても一般化された定義は必ずしも一致しないでしょう。
本書ではマネジメントのドメインを以下九つの専門領域で示しています。
- プロダクトマネジメント
- プロジェクトマネジメント
- チームマネジメント
- テクノロジーマネジメント
- エンジニアリングマネジメント
- ピープルマネジメント
- ストラテジックマネジメント
- ビジネスパフォーマンスマネジメント
- ラインマネジメント
組織の状況によって各領域を使い分ける必要があり、このことからもエンジニアリングマネージャーが一口にこんな職務を行う人物であると言うのは難しいでしょう。一方で、調査結果を取り上げ上記九つのうち以下四つが多い傾向にあると示しています。
- ピープルマネジメント:人材の獲得、最適化、維持の一連のプロセス管理
- プロジェクトマネジメント:プロジェクトの総合的な管理
- プロダクトマネジメント:プロダクトのライフサイクル全てにわたる管理
- テクノロジーマネジメント:組織が利用する技術の管理
マネージャーも経験を積むにつれてキャリアを進めていく。チームのマネジメントから始まり、最終的には幹部としてビジョンを描くポジションとなります。
- リーダー:テックリードやリードエンジニアとしてチームやプロジェクトの牽引
- チームのマネジメント:チーム作りや運営、目標設定から評価、フィードバック
- 複数チームのマネジメント:複数チームに対する意思決定、マネージャー候補の育成
- 複数マネージャーのマネジメント:マネージャーがチームとして成果を上げられるよう支援。経営幹部が示すロードマップを実現していく
- 経営幹部:技術戦略やビジョンを描き組織を動かす
感想
学生時代に経営学を学んでいたこともあり、マネジメントという考え方についてはおおよそ同じものを学んできたという印象でした。一方で、リーダーやマネジメントの業務についてはまだ深く考えきれていない部分が多く、考え方の整理について非常に有用でした。メンバーからリーダーになり、当然ですが成果物だけでなくチームという人の観点でも成果を求められるようになる、と改めて認識させられました。一通り読んではいませんが、続く2章以降では、コミュニケーション手法、人材育成、技術、またチームや組織、戦略のマネジメントについて書かれ、エンジニアのマネジメントについてかなり整理して書かれている印象です。技術、管理問わずリーダーになる人向けの参考書としても良さそうです!
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