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PyPI公開へ向けた最終調整 CIと不要ファイル整理(開発日記 No.100)

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はじめに

前回の開発日記で、いよいよ主要な開発作業と品質保証プロセスが完了し、リリース準備が整いました。テストもE2EもCIも全てパスし、PR作成、Issueクローズ、タグ付けまで終え、開発フェーズは一段落したところです。

しかし、PyPIでの公開という最終目標に向けて、まだいくつか詰めるべき点がありました。本日は、その最終調整として、PyPIパッケージングの最終確認、リポジトリ内の不要ファイル整理、そしてCIパイプラインの微修正に取り組むことにしました。

背景と目的

このプロジェクトは、特定の変換処理を行うPythonパッケージとして開発を進めてきました。最終的には多くの人に使ってもらえるよう、Pythonの公式パッケージリポジトリであるPyPIで公開することを目指しています。

PyPIで公開するためには、パッケージの構成が適切であること、不要なファイルが含まれていないこと、そして品質を保証するためのCI/CDパイプラインが完璧に機能していることが不可欠です。特に、CIで実行されるテストのカバレッジレポートを正確に取得し、PRコメントなどに記載する仕組みは、継続的な品質維持のために非常に重要です。

前日までのCI実行で、どうやらPRコメントへのカバレッジ記載処理がうまくいっていないらしい、という懸念が残っていました。また、開発中に一時的に作成された不要なファイルもリポジトリ内に散見されました。これらの課題を解消し、PyPI公開に向けてクリーンで信頼性の高い状態にすることが本日の目的です。

検討内容

CIのカバレッジ記載処理の不備については、CIログやCodecovの設定を見直す必要がありました。特に、複数のPythonバージョンでテストを実行しているため、それぞれのカバレッジレポートをどのように統合してCodecovに送信するかがポイントになります。Codecov連携の認証設定も確認が必要です。また、品質基準としてカバレッジ率の閾値を設けることも検討しました。

PyPIパッケージングに関しては、現代的なPythonプロジェクトで推奨されているpyproject.tomlを使ったビルドシステム(PEP 517/518)を採用することにしました。これにより、ビルドツールに依存しない標準的な方法でパッケージを作成できます。また、パッケージに含めるべきファイルと含めないファイルを明確にするためにMANIFEST.inも必要になります。

不要ファイルの整理については、開発中に生成された一時ファイルや、もう使用しない古い出力ファイルなどをリストアップし、リポジトリから完全に削除する方針としました。

実装内容

まずはCIパイプラインの修正から着手しました。

  1. CIワークフロー (.github/workflows/ci.yml) の更新:

    • 複数のPythonバージョンで実行されるテストジョブで生成されたカバレッジレポートを、Codecovにアップロードする前に統合するステップを追加しました。
    • Codecov連携を最適化し、GitHub Actionsのシークレットに設定した認証トークンを使用するように変更しました。これにより、より安全かつ確実にレポートを送信できます。
    • カバレッジ率が指定した閾値(今回は80%)を下回った場合にCIが警告を出すように、カバレッジ閾値チェック機能を実装しました。
  2. Codecov設定ファイル (codecov.yml) の作成:

    • Codecovでのカバレッジレポートの処理方法や、閾値チェックの詳細などを定義する codecov.yml ファイルをプロジェクトルートに新規作成しました。
  3. パッケージング関連ファイルの作成:

    • プロジェクトのビルド設定を定義する pyproject.toml を新規作成しました。これにより、build などの標準ツールでパッケージをビルドできるようになります。
    • パッケージに含める非コードファイル(例: README, ライセンスファイルなど)を指定するための MANIFEST.in を新規作成しました。
  4. 不要ファイルの削除:

    • 開発中に一時的に生成された custom_output.mddummy_output.md というファイルをリポジトリから削除しました。

これらの変更をローカルで確認した後、コミットしてGitHubリポジトリにプッシュしました。これにより、CIパイプラインが自動的にトリガーされ、修正が正しく機能するかを確認できます。

技術的なポイント

今回の作業における技術的なポイントはいくつかあります。

  • 複数環境でのカバレッジ統合: 複数のPythonバージョンやOSでテストを実行する場合、それぞれの環境で生成されたカバレッジレポートをCodecovのようなサービスで正しく集計・表示させるためには、レポートを統合して送信する必要があります。Codecov CLIなどが提供する機能を利用するのが一般的です。
  • PEP 517/518準拠のパッケージング: pyproject.toml を使用することで、特定のビルドツール(setuptools, poetryなど)に依存せず、標準的なインターフェースでプロジェクトをビルドできるようになります。これは現代的なPythonパッケージ開発のベストプラクティスです。
  • MANIFEST.in の役割: setup.pypyproject.toml だけでは指定しきれない、パッケージに含めるべき非コードファイル(データファイル、設定ファイルなど)を MANIFEST.in で明示的に指定することで、意図しないファイルがパッケージに含まれるのを防ぎます。
  • CIでのカバレッジ閾値チェック: CIパイプラインにカバレッジ閾値チェックを組み込むことで、コード変更によってカバレッジ率が低下した場合に早期に検知できます。これはコード品質を維持するための重要な仕組みです。

所感

PyPI公開という最終目標が見えてきた段階での、こういった「お掃除」や「インフラ整備」は、地味ながらも非常に重要だと改めて感じました。特にCI/CD周りは、一度設定すれば終わりではなく、プロジェクトの進化に合わせてメンテナンスが必要な部分ですね。

Codecov連携の微調整は、ドキュメントを読みながら試行錯誤する部分もありましたが、複数バージョンのカバレッジが綺麗に統合されて表示されるようになった時は、ちょっとした達成感がありました。これで、今後の開発でもカバレッジ率を常に意識しながら進められます。

また、pyproject.tomlMANIFEST.inを整備し、不要なファイルを削除したことで、リポジトリがスッキリして気持ちが良いです。まるで引っ越し前に部屋を片付けているような感覚でした。これで、公開されたパッケージを受け取った人が、必要なファイルだけを手に入れられる状態になったはずです。

懸念していたCIの不備を解消できたことで、安心して次のステップに進める準備が整いました。

今後の課題

PyPI公開に向けての技術的な準備はほぼ整いましたが、公開後を見据えた課題もいくつかあります。

  • 公開後のアナウンスとドキュメント: パッケージを公開したら、多くの人に知ってもらい、使ってもらうためのアナウンスや、分かりやすいドキュメント整備が必要です。
  • ユーザーからのフィードバック: 実際に使ってもらう中で出てくるであろうフィードバックを収集し、改善に繋げる体制をどう作るか。
  • CI/CDのさらなる進化: 今回はカバレッジ記載の修正がメインでしたが、将来的にはリリースプロセスの自動化など、CI/CDパイプラインをさらに強化することも検討できます。

まとめ

本日は、PyPI公開に向けた最終調整として、CIパイプラインの修正、パッケージング関連ファイルの整備、不要ファイルの削除を行いました。

具体的には、複数Pythonバージョンのカバレッジ統合やCodecov連携の最適化を含むCIワークフローの改善、pyproject.tomlMANIFEST.inの作成、そして開発中に生成された不要ファイルの削除を実施しました。

これにより、リポジトリはクリーンになり、CIパイプラインはカバレッジ記載を含む必要な機能を備え、PyPI公開に向けた技術的な準備がほぼ完了しました。いよいよリリースが現実味を帯びてきて、ワクワクしています。

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