Flutterを用いたWeb開発の今後について考える
この記事は『blessing software 夏のブログリレー企画』の4日目の記事です。
昨日はGANGANさん@gangan_nikki のESLintモジュールを用いてNuxt3 + ESLint設定を行うが公開されました。
明日は鉄馬さん@tekihei2317_ の個人開発アプリをRemix + Cloudflare D1に移行してみたが公開される予定です!お楽しみに!
Flutterを用いたWebアプリ開発の課題
2021年にFlutter2が出た際に、WebのサポートがStableになりました。その際に簡単なWeb Appを作ったのですが、大きく3つの課題があると感じていました。
- Webページにしてはファイルサイズが大きい
- Canvasを用いてレンダリングするため、Webページとして扱いづらい
- フォントをWebフォントを利用して描画するため、フォントのダウンロードを行っている間にTofuになる
Webページにしてはファイルサイズが大きい
アプリだからと割り切ってしまう場合は良いですが、Webページとして考えるのであればファイルサイズの肥大化は看過できない問題となります。
Webの優れたUXと言われて読者が思い浮かべるのは阿部寛さんの非公式ホームページでしょう。
Webページを表示する際、ブラウザとサーバの間には常にネットワークがあります。Webページを開くには、ブラウザがサーバーと通信して表示するコンテンツ内容をダウンロードしてくる必要があります。この時、利用しているネットワークの帯域が狭いとダウンロードするのに時間がかかりなかなか最初のページが表示されないと言った事態に陥ります。これは利用ユーザーとしてはストレスを感じる場面の1つです。
Canvasを用いてレンダリングするため、Webページとして扱いづらい
Flutterは独自のレンダリングエンジンを用いて画面を表示します。これはWebにおいても同様で、Flutterを用いてWebアプリを開発する場合、そのWebアプリはCanvasを用いてレンダリングが行われます。
HTMLタグを用いたレンダリング自体も用意はされていますが、現時点でこちらは描画スピードCanvas版に比べて遅かったり、表示崩れを起こすと言った問題があり、デメリットの方が大きいと感じます。
--web-renderer canvaskit
を指定することでCanvasによるレンダリングを常に実現することができます。
しかし、Canvasを用いたレンダリングは文字も含めて1枚の画像として扱われるため、通常のWebページのようにテキストを選択してコピーすることができません。これはWebページを作りたい場合にFlutterは最適解ではないと感じてしまう場面です。
8/14追記
コメントにて、Flutter3.3にてSelectionArea
が追加されているという情報をいただきました。
Web上でもテキストを選択しやすくなっています。
フォントをWebフォントを利用して描画するため、フォントのダウンロードを行っている間にTofuになる
Canvasを用いたレンダリングの場合、表示するフォントはWebフォントを用います。そのため、フォントのデータをダウンロードできるまで、テキストがTofuになる問題があります。
これはレンダリングにCanvasを用いる場合の明確なデメリットではありますが、表示崩れが起きないことやパフォーマンスを考えるとCanvas版を選ぶべきだと思います。
Webサポートの動向
直近のFlutterのWebサポートで特筆すべきものが2つありました。
- WebAssmblyのサポート
- Web Embedded
WebAssmblyのサポート
Flutterの開発言語に用いられているDartが現在WebAssemblyへのコンパイルを試験的に進めています。
これはまだDartのビルドオプションに含まれてはいませんが、FlutterではWebビルドする際にWasmへビルドすることができるようになっています。実行するにはブラウザのサポートがまだ試験段階ということもあり本格的に利用できるようになるのはまだ先のことですが、パフォーマンスがさらに改善されることやより実行ファイルを小さくすることができるといったことが期待されています。
--wasm
を指定することで、Wasm版を試すことができます。
Web Embedded
FlutterをWebページ内に埋め込むことができるようになりました。
今までもFlutterで作られたページをiframe
を用いて埋め込むということは可能でしたが、Webページ内のElementの1つとして埋め込むことができるようになり、相互にに呼び出すことが可能になりました。
特に、Web版では日本語の入力に関してフォントのTofu問題やIMEの変換問題がありましたが、入力周りをWebの既存資源(HTML, JS, CSS)を用いて補間することができればUXの向上を期待できます。
実装例
JSからアクセスしたいオブジェクトやメソッドに対して@JSExport()
アノテーションをつけ、setProperty
を用いることで、JSからFlutterのオブジェクトやメソッドにアクセス可能になります。
どうも現時点ですとFlutterのWeb版はESModule対応していないようで、多少扱いに困る部分がありそうですが、DartからWasmへビルドした際に生成されるJSはESModule版のようですので、今後ESModuleとして扱えるようになるとより利用できる幅が広がることが期待できます。
まとめ
Flutterを用いたWeb開発が主流になるかと聞かれると主流になると言い切れませんが、そろそろ実用できそうだなと雰囲気を個人的には感じています。
とはいえ、アプリをWebに移植したり、CI/CDの一環で動作確認をブラウザ上で行うといった点ではすでに十分に利用できる状況だとは思います。
Wasm版のFlutterが正式に世に出れば、アプリのWeb移植はより行いやすくなるでしょう。DartにおけるWasmのサポートは今後注目のトピックの1つです。
記事のデモに利用したWebページはこちらから確認できます。
最後に
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Discussion
Flutter Webで文字列が選択できない問題ですが、SelectionArea(もしくはSelectableText)が利用できる点にも触れてあると良さそうな気がしました。
DesktopやWebにおける体験の向上を目指してFlutter 3.3からSelectionAreaが追加されています。CanvasKitを利用する場合でも、SelectionAreaを設定することで、HTML版と同等の振る舞いを実現できるように思います。
こちら、私の方で気がつけていませんでした。
追記する形で記事の修正します! 言及ありがとうございます!!