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統計検定1級合格体験記

2025/03/02に公開

このたび、2024年11月実施の統計検定1級に合格し、優秀賞をいただいたので、振り返りを本記事にまとめたいと思います。
これから受験したいと考えている方のモチベ・勉強法の参考になれば幸いです

https://www.toukei-kentei.jp/info/past/pbt2024

1. 前提

A. 統計検定とはなんぞや

統計検定1級は、日本統計学会が公式に認定している資格試験で、統計学の知識と応用力を問う代物。1級試験は以下の2つにわかれており、両者ともに試験時間90分の記述式となっている。

  • 統計数理:統計学の理論・数理的基礎
  • 統計応用:実務レベルのデータ分析・統計モデリング

レベル感は大学卒業~専門課程と同等で、受験者はデータサイエンティスト/研究者/コンサルタントなど幅広い。統計学を体系的に理解し、実務や研究で活用できるスキルを身につけたことを証明する資格となっている。

B. 当方略歴

  • 大学・大学院:理学部 物理系修士 (量子統計物理専攻)
  • 企業:一般企業 研究開発部 (データサイエンティスト・AIエンジニア)

なお、物理課程で統計物理という分野があるが、数学としての統計とは基本的に別物と考えてよい。後になって、「大学の時習ったあれって数理統計のこれのことか...」のような気づきはある。

C. モチベーション

そもそも数学が好きではあったが、データサイエンティストとして活動する中で、統計的知識の整理が自身の中であいまいだったため、思考の整理・統計知識の体系化とその基礎力証明を受験の動機にした。

2. 勉強方法

A. 勉強期間

勉強期間は1年弱くらい。配分は以下の通り。

期間 時間 内容
2024/01~2024/04 100H 後述する現代数理統計学の基礎2~9章の読破・要約ノート作成
2024/04~2024/09 100H 後述するデータ解析のための数理統計入門の読破・演習問題回答
2024/09~2024/11 80H 統計検定1級過去問2018~2023回答

B. テキスト

① 現代数理統計学の基礎 [著] 久保川達也

https://www.kyoritsu-pub.co.jp/book/b10003681.html

② データ解析のための数理統計入門 [著] 久保川達也

https://www.kyoritsu-pub.co.jp/book/b10033628.html

③ 日本統計学会公式認定 統計検定1級 公式問題集 [著] 日本統計学会

C. 勉強方法

Process1:テキスト①の読了
まずは、テキスト①の2章から読み始め、教科書内にある証明の後追いからはじめた。物理学科出身のこともあり、紙とペンで行う泥臭い計算が好きだったので、証明はルーズリーフに殴り書きし、重要な定理はiPadやノートに色付きでまとめた。知識の体系化が目的なので、章ごとに読破しつつも、頭の中で章同士の関係性の結合・並び替えを行う。結果として、以下の順番で頭に入れた。

実際のiPadまとめノート(一部)

iPadまとめノートは、空き時間で眺めるようにしていた。「中心極限定理の導出は?」とぱっと聞かれても答えられるように頭の中でトレースする。カフェなどのiPadを展開できる場では、iPad上に証明しては消してを繰り返した。

Process2:テキスト②による補填
テキスト①の繰り返しの過程で、どうしても頭から抜けていく項目があった。例えば、標本統計の章で「標本平均 \bar{X}と、不偏分散 U^2の独立性の証明」について、Helmert行列を使っているが、天下り的で腑に落ちず、結果的に証明の丸暗記になってしまっていた。このような部分で、テキスト②にあった別の証明方法を読んで、頭の中に落とし込んだ。

また、理論だけでは本質的な理解ができているか不安だったので、章末の演習問題もノートに解き始めた。不足分の問題はテキスト①で補った。この時点で当人の中で、ある程度チートシートが出来上がっており、よく使う公式+その証明はシンプルに頭の中で体系化されていた。
(※ チートシートは試験後に以下でまとめた)

https://zenn.dev/yufuji25/articles/5e7ed3b7288f73

Process3:本丸の過去問回答
テキスト①,②で得た知識をもとに実践と称して、2018年以降の過去問を解き始める。1周目は半分程度の正答率で、解答を見て解きなおし → 2周目・3周目と繰り返した。

3. お気持ち

A. 試験6ヶ月前

「一通り公式の導出はできるようになったので、まぁいけるんちゃうか」と考えていた。暇な時間にテキスト①の演習問題を数問解いたことが適度な自信になっていた。

B. 試験1ヶ月前

演習量が少ないことが裏目に出る。過去問が1週目は(もちろん)解けず、当人のなかでめちゃめちゃ焦った。ここまでくるとやるしか選択肢がない、と踏ん張り過去問を繰り返し解き進めた。試験1週間前には過去問で8~9割程度の正答率を出せるようになったので、「どうにかなるか...」と思いはじめる。

C. 試験前日

不安症なので、テキスト3つ分 + まとめノート + 過去問ノート + iPadに加え、「電卓も最悪壊れる場合があるかも😐」と想定して2つリュックに突っ込んだ。1泊なのに1人だけ登山家レベルの持ち物だった。

ホテルについてからは、過去問2年分をiPadで解きなおし + テキストで「これは出題されんやろ」と思った部分の証明を読んでいた。(※出題されない方の山張りに限って外れ出題されることは、人生で往々にしてあったので逆張りした。実際、順序統計量に関しては出題されないと思い 見直し回数を減らしていたが、当日普通に出題された。)

D. 試験中

数理統計の選択問題を問1~問5のどれにしようか選定している時点で、緊張で頭がスタックした
最初の3分はぺらぺらと問題用紙をめくるだけで、解答用紙は白紙のままであった。それでも、「この問題見たことあるなぁ...」という大問から着手し、その流れで解き進めた。不安症の性なので、ケアレスミスだけは未然に防ぐように1問ずつ確実に潰した。試験時間は解き終わりぴったりで、最後の見直しをする暇はなかった。

E. 試験後

この時点での合格しているかどうかの予測(自信)は感覚値として50~60%だった。ケアレスミスがない前提で、空白にした問題の数から逆算しても感覚値50~60%は妥当な気がしていた。

F. 結果発表 (12月)

受験番号をWeb上で確認。「うーん、まぁ落ちても来年受ければえっか」というお気持ちだったが、結果的には合格しており、優秀賞まで頂いた。もちろん嬉しさもあったが、結果が分かったうえで本問の解きなおしがしたくなり、解いてみると空白にしていた問題も解けた。当日は緊張で解けないフィルターがあったのかもしれない。

4. まとめ

反省点

今振り返ってみると、半年以上のスパンをかけて\textcolor{red}{理論をやりすぎていた節}があった。理論:演習=4:6くらいのバランスの方が、むしろ理論を理解する手助けになり、結果として勉強効率がよかったかもしれない。

サマリ

  • 勉強時間:最低でも300Hくらい必要
  • テキスト:久保川統計 + 過去問
  • 勉強方法:
    • 理論:久保川統計の証明をなぞり、章ごとに(頭の中で)チートシートを作成
    • 演習:久保川統計の演習 + 過去問をひたすらに繰り返す
  • マインド:
    • (不安症ゆえだが) 堅実にわかるところの点数を取りに行く戦法は結果的に有効
    • 演習量がもう少し多ければ緊張なくして受験できたはず。理論:演習=4:6くらいが望ましかった。

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