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FreeCADベースの3D CAD「Ondsel ES」がいい感じかも

2024/05/15に公開

この記事は何?

FreeCADベースで開発されたOndsel ESが非常にいい感じだったので、触ってみて良かったな、と思ったところを紹介します。逆説的にFreeCADのひどいところ紹介になっているような気もしますが・・。

Ondselって何?

Ondsel ES(以下Ondsel)はFreeCADベースのパラメトリック3D CADソフトウェアです。FreeCADのコントリビュータが設立した公益法人Ondsel社により開発されています。

OndselはFreeCADの最新開発ブランチのソースをベースに独自のUI/UX改善や機能拡張が行われており、FreeCADで皆が感じているであろう使いにくさ、取っつきにくさが大幅に改善されています。

Ondselのすべての機能を使うには費用を支払う必要がありますが、FreeCADと同等(かそれ以上)の3D CAD機能は無償で利用可能です。また、無償版であっても商用利用が可能(少なくとも、本記事執筆時点のTerms of Useには商用利用禁止条項は見つけられなかった)ですので、ホビー設計者はOndselをBetter FreeCADとして利用できると思います。

また、Ondselで追加・改善された機能はFreeCADにフィードバックされるようですので、FreeCADユーザにとってもうれしい話ですね。

前提バージョン

本記事は下記バージョンをベースに記載されています。今後のバージョンアップによって画面や内容が変わる可能性があります。

  • Ondsel 2024.2
  • FreeCAD 0.21.1

いいところの紹介

「普通に見れる」UI

FreeCADのこのような画面が...

こうなりました。

Ondselには再設計されたテーマが付属しています。FreeCADのデフォルトテーマは、文字や選択箇所の識別が困難な配色であったり、ボタン類の余白が少なすぎて窮屈な印象でしたが、Ondselではそれらが改善されています。もう寸法の数字を読むのに目をこらす必要はありません。

UI配置も改善されており、左ペインはツリービューのみとなり、背景が透過されてFusionライクな見た目になっています。タスクは右ペインに移動され、いささか開発者向けな見た目でありすぎたプロパティパネルはその裏側に隠されています。

閉じても閉じてもエラーがあるたびに飛び出してきて画面を占有してきたレポートビューはステータスバーの中に収納され、必要なときにだけ開いて見ることができるようになったようです。

ツールバーに埋もれていたワークベンチ選択はドロップダウンからボタンに改められています。画面最上部に配置されているため、タブのような切り替えの役割を感じやすいですね。

HiDPIなモニターにおいて文字が豆粒サイズで見えないのは残念ながら変わっていないようです。このスクリーンショットのフォントサイズとマーカーサイズは私が調整しました。3Dビュー中のフォントの変更もシステムフォントから変更できないままですね。もっと視認性の高いフォントに変えたいところです。

寸法ツールなどSchetcherの改善

FreeCADではスケッチに寸法を設定する際、拘束の種類を意識して様々な拘束ツールを使い分ける必要がありました。

Ondselでは新たに「寸法」ツールが導入され、適切な拘束の種類を自動判別してくれるようになりました。もちろん従来の拘束ツールも残されているので、拘束の種類を意識したい場合も安心です。

例えば寸法ツールで左下の頂点を選択し、カーソルを下の方に動かせば幅の寸法(水平距離拘束)を、左の方に動かせば奥行きの寸法(垂直距離拘束)に変化する、といった具合です。

ちなみにSketcherワークベンチだけでなく、Techdrawワークベンチの寸法ツールも同様に改善されているようですね。

そのほか、スケッチ作業を高速化するための様々な改善が含まれているようです。

ワークベンチが整理され、Part Designがデフォルトに

FreeCADはやりたい作業ごとにワークベンチを切り替えて作業する操作体系になっていますが、ワークベンチの数が結構多いうえにフラットに並んでいるため、どれをどの順番で使えばいいのか見ただけでは理解不能でした。特にモデリングを行うためのPartとPart Design、図面を引くためのDraftとTechDrawなど、それぞれ同じことができるようで微妙に違っています。

それにもかかわらず、FreeCADを起動すると常にStartワークベンチから開始するため、初心者は何を選べばいいかわからないのに何かを選ぶ必要がある状況に置かれ、取っつきにくさの象徴のようになっていました。

Ondselではデフォルトで読み込まれるワークベンチが厳選され、DraftとPartが排除されています。Startタブ(Startワークベンチからタブに変更されたようです)にて新規作成を選ぶと、自動でPart Designワークベンチに移動し、Part Designを中心とした操作が自然体で開始できるようになっています。

Part Designワークベンチ内での導線はFreeCADの時点でもよく設計されていて、代表的な操作はツールバーを探さなくともタスクから辿ることができ、必要なワークベンチへの切り替えも自動で行ってくれるなど、モデリング時点ではワークベンチをあまり意識しなくてもよくなっています。

計測ツールの改善

FreeCADの計測ツールは距離計測と角度計測の2つだけで、それぞれを使い分ける必要がありました。また、一度計測してしまうと個別に削除することができず、すべての計測を一括で消すことしかできませんでした。

OndselではMeasureツール(まだ日本語訳がない模様)として一新されています。計測対象を3Dビューで選択すると、様々な計測が行えます。

追加した計測はオブジェクトとして管理されるので、その他のオブジェクトと同様に個別の表示/非表示や削除が行えます。

変数セット

FreeCADでは変数を扱えないため、代わりにSpreadsheetワークベンチを用いて擬似的に変数を実現していました。Ondselではついに真の変数が導入されています。

追加は残念ながら個別の画面で1つずつになります。

追加した変数は数式エディタから呼び出せます。

定義済みの変数はVarSetのプロパティパネルで一覧できます。

正直、変数としてだけ見るとまだSpreadsheetでの擬似変数のほうが使い勝手が良い感じがしますね。この機能の本質はOndsel Lensでモデルを公開する際に、利用者がパラメータでモデルをカスタマイズできるようになる点にあるようです。

板金モデリング機能、アセンブリ機能の組み込み

FreeCADには標準で含まれていない、板金やアセンブリ機能がOndselでは標準で組み込まれました、私はこれらの機能を使ったことがないのでわかりませんが、機能自体の改善や機能追加も行われているようです。

おわり

書き終わってみればOndselのリリースノートの焼き直しのようになりましたが、FreeCADの些細なストレスから解放されたので私はハッピーです。今使えていない機能も使い倒していきたいですね~。

拙著「自作キーボードケース設計ガイド in FreeCAD」もOndselバージョンで書き直してみようかな・・(ステマ)。

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