私が考える組織マネジメント
はじめに
システム基盤グループの責任者をやっている幡です。
当グループでは、SREやサイバーセキュリティ、コーポレートITなどのプロダクトおよびコーポレートの基盤に関するチームを統括しています。
今回は、私がウェルスナビで移行錯誤しながら実践してきた「組織マネジメント」についてお話しさせていただきます。
対象読者
- 組織のマネジメントをされている方
- マネジメントをこれから目指される、興味をお持ちの方
組織マネジメントについて
大小様々な組織においてマネジメントを行なってきて感じていることは「マネジメントの目的は組織の大きさで変わるものではない」ということです。
私がマネジメントを始めた頃から変わらずマネジメントの目的は、「組織のアウトプットの最大化」と考えています。
組織においてアウトプットが最大化されている状態は「全員が”今”のパフォーマンスを100%発揮し、全員が成長し続けることで”これから”のパフォーマンスを上げ続けている」だと思っています。
このシンプルで明快な状態を作り上げる、またはキープすることは非常に難しく、さまざまな問題によって妨げられます。
今回は、その問題を解決するために行なってきたマネジメント施策の一部を紹介していきたいと思います。
組織マネジメントイメージ
これから、アウトプットを最大化させていくために解決すべき課題を3つ紹介させていただきます。
これらを解決することで、どうマネジメントが機能し、アウトプットの最大化に繋がるのかを図に表現しました。
組織マネジメントがうまく機能してゴールを達成した場合のイメージ
解決したい課題その1 - 全員が同じ方向を向きたい
アウトプットを最大化するには、全員が同じ目標に向かって無駄なく進む必要があります。
これに関してまず行なったこととして、グループに所属するチームそれぞれのビジョンと中長期の戦略をマネジメント層で策定しました。
ビジョンや戦略はゴールに向かって伸びる大きな道です。
道の先にある目的地は会社や開発組織が目指す先と同じにする必要がありますが、どのような道にするのか?については「魅力的で楽しそうなもの」にすることが良いと思っています。
ガタガタで単調な道より、みんなが楽しそう!と思ってくれる道の方が組織のパフォーマンスは必ず出ます。
みんなが迷わず楽しそうと思ってくれる道を作るには、会社や開発組織がやろうとしていることや、所属するメンバーの特性を深く理解することが必要です。
これはまさに日頃のマネジメントの腕の見せ所です!
明確なビジョンや戦略がなく進んだ場合のイメージ
解決したい課題その2 - 役割や求められていることの認識を揃えたい
組織に所属してくれているメンバーそれぞれに役割と期待値があると思います。
これらの役割や期待値は、マネジメント層とメンバーの間で乖離することがよくあります。
1on1など、日頃からしっかりと会話して擦り合わせておくことで解像度を高めていくのが王道ですが、各チームのマネジメント層の間でも認識に乖離があったりします。
そこで、グループのマネジメント施策として「グレード表」というものを作成しました。
元々ウェルスナビでは「グレード」と呼ばれるものがあり、グレード毎に役割と期待値が設定されています。
それを各チーム、各グレード毎にどういったアウトプットや行動を期待するのかなど、色々な側面からさらに文字化したものが「グレード表」になります。
1つの仕事を行うにしても、チーム内向けのものなのか、チーム外向けのものなのか、ステークホルダーはどこなのか、どういった立場なのか、規模はどの程度なのか、技術的なチャレンジはあるのか、などによって難易度は異なってきます。
これらを事前にしっかりと文字化しておくことで、自分のグレードであれば、どのレベルの仕事を、どういった動きをして、どのレベルのアウトプットを出すことが求められているのか?をバイアスがかからない状態で理解することができます。
また、一つ上のグレードを目指すために必要なものも明確になるので「成長」の見える化にも使えます。
評価の際によくある「XXXをやりました!」「いや、ここまでやって欲しかった」という手遅れな会話も、事前にグレード表をベースに期待値を擦り合わせておくことで回避できると思います。
期待値のすり合わせが十分ではなくゴール出来なかった場合のイメージ
解決したい課題その3 - アウトプットのクオリティコントロールを行いたい
マネジメント層の大きな役割の一つに「組織が出すアウトプットのクオリティをコントロールする」があります。
メンバーのアウトプットが、背景や目的をしっかりと織り込んだ期待通りのものになっているのか、優先順位は合っているのか、セキュリティや持続可能性は担保されているのか、確実に着地できるのか(リスクはないのか)などをマネジメント層がしっかりと確認する必要があります。
ここで重要なのは「パレートの法則」に従って、組織として重要な施策のクオリティコントロールを中心に行い、決して「マイクロマネジメントをしない」ということです。
パレートの法則というのは、全体の80%の成果が20%の行動から生まれるという考えです。
組織において重要な20%は何なのか、その20%のクオリティを最大化させるためにはどうすれば良いのかを考えマネジメント施策を作成しました。
作成するにあたって考えたことは「20%を確実に着地させること」と「20%のクオリティを担保すること」でした。
まずはグループ内における20%は何なのかを「重要施策」として明確に定義しました。
20%を確実に着地させるために、その施策を進める中で発生する「リスク」を把握し、対応することを考えました。
このリスクの把握は難易度が高いもので、全メンバーがリスクベースで物事を考え、適切にマネジメント層にエスカレーションする必要があります。
メンバーとしては「なんとかなるだろう」と考えているものでも、マネジメント層から見ると「それはやばい」というものがよくあります。
リスクベースでの会話が出来るようになるには、リスクをリスクとして捉えられるようになる必要があり、これはトレーニングするしかないと思っています。
そこで、グループ全体で「エスカレーションMTG」という会議体を作り、そこではリスクをベースに重要施策の進捗をメンバーから報告してもらうようにしました。
最初は「何を報告すればいいか分からない」という意見も出ましたが、回数を重ねていく中で、徐々にではありますがマネジメント層が欲しいリスク情報をエスカレーションしてくれるようになってきています。
次に「20%のクオリティを担保すること」に関しては、現段階では試行錯誤中ですが「意思決定のドキュメント(ADR)を作成」することで達成していこうと考えています。
なぜそのアーキテクチャ、運用設計になったのかを背景、目的、セキュリティや持続可能性などを観点に整理したドキュメントを構築前にしっかりと書き、関係者と会話しておくことで一定のクオリティは担保できると思っています。
この施策に関しては一部チームでは導入済みですが、グループ全体としては2025年から本格的に導入していこうと思っているので、機会があればまた紹介させていただきます。
クオリティコントロールが不十分で期待する結果にならなかった場合のイメージ
最後に
以上が今回ご紹介させていただきたかったマネジメント施策になります。
これらの施策は主に「全員が”今”のパフォーマンスを100%発揮」するためのものになりますが、これに加えて「全員が成長し続けることで”これから”のパフォーマンスを上げ続ける」ためのマネジメント施策も重要です。
今、10人で100のアウトプットを出している組織を、将来120,150のアウトプットを出すためにはメンバーの成長、採用、業務の効率化・自動化などが必要になってきます。
まだまだやるべき事も多くあり、試行錯誤している段階ですが、これから組織をマネジメントする方や目指そうと思っている方、すでにやっている方の助けになれば幸いです。
著者プロフィール
幡 光洋(はた みつひろ)
2018年4月入社
システム基盤グループ責任者 兼 システム基盤チーム責任者 兼 AI推進チーム責任者
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