一気通貫OJTのススメ 〜 若手エンジニアが短期間で実力をつける秘訣〜
若手を短期間で伸ばす最も効果的な方法
― 小さな案件を一気通貫で任せる ―
こんにちは、和田です。
普段は、https://smhctech.hatenablog.jp/ で技術マネジメントのブログを書いていますが、
zenn.devにもお邪魔させていただき、交流をしていきたいと思います。
私は現在56歳、ソフトウェア開発歴は26年になります。
長く現場にいる中で、若手時代の自分を含め、多くの若手が成長していく姿を見てきました。
その経験から、若手の成長を最も効果的に促す指導法について確信していることがあります。
結論
若手を短期間で伸ばすには、小さい案件を一気通貫で任せることです。
一気通貫とは?
ここでいう「一気通貫」とは、要件定義からリリース、保守まで、プロジェクトの全工程を自分で回すことを指します。
大規模案件では難しいですが、数時間〜数日で完結する小規模案件なら十分に可能です。
たとえ成果物が「トップページの一文を修正する」だけであっても、やり方次第で得られる経験値と効果は計り知れません。
むしろ、小さな案件ほどOJTのコントロールがしやすく、育成効果を高めやすいのです。
私の新人時代:無理やりでも全工程
※これは残業や高負荷を推奨する話ではなく、当時の背景説明です。
私が新人だった頃(90年代末〜2000年代初頭)はITバブルで常に人手不足。
入社1年目から要件定義、設計、実装、テスト、リリース、保守まで、ほぼすべての工程を経験させられました。
もちろん残業は多く、帰宅は終電が当たり前。深夜タクシー帰宅も日常茶飯事。
当時は働き方改革もなく、「ブラック」が代名詞のような時代です。
しかし振り返ると、この無理やりでも全工程を経験したことが、エンジニアとしての基礎体力を作りました。
業界の変化と新しい課題
その後、業界全体で働き方改善が進み、残業は減少。
現場では「できることだけやればいい」という雰囲気が強まりました。
これは良い変化ですが、育成面では以下の弊害があります。
- 上流工程(要件定義・基本設計):ベテラン・有識者が担当
- 下流工程(詳細設計・実装・テスト):若手・新人が担当
この構造では、若手が上流工程を経験する機会がほとんどなく、全体像を理解しないまま年数だけが経つケースが増えています。
一気通貫の力:なぜ効くのか?
小さな案件を一気通貫で担当すると、若手は短期間で以下を習得します。
-
全体像の理解
要件定義からリリースまでの流れを具体的に把握できる。 -
顧客とのやり取り
メール、打ち合わせ、質問の仕方など実務的コミュニケーション力が磨かれる。 -
課題管理・スケジュール感覚
作業順序やリスクを自分で考える習慣がつく。 -
自発的な問題発見
「このままでいいのか?」と指示外の問題に気づく視野が広がる。
こうした能力は、どんな技術トレーニングよりも基礎力を底上げします。
実例:トップページの一文変更
普通のやり方(分業型)
1. 先輩が顧客から依頼を受ける
2. 若手は対象ソースを先輩から受け取り、修正だけ行う
3. 修正ファイルを先輩に渡して完了
→ 顧客背景や全体像は不明のまま。
一気通貫のやり方
1. 顧客からの依頼を直接受ける(または受信メールを確認)
2. 顧客への了承メール作成・送信
3. 作業計画・スケジュール作成、課題管理表更新
4. ソースコード調査、影響範囲特定
5. 関連ドキュメント更新
6. 試験項目作成・実施
7. 作業完了報告と顧客検証依頼
8. リリース日程調整、本番反映
9. 本番確認後、リリース完了報告
10. 必要なら運用保守報告書も更新
※ 各工程でリーダーがレビューしますが、主役は若手です。
効果のスピード感
-
分業型OJT
- テスト担当:3か月
- 製造担当:1年
- 設計担当:さらに1年
→ 一人前まで約2年
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一気通貫OJT
- 1〜2か月で案件を一人で回せるようになる
- 小規模なら1〜2週間で効果を実感
応用編:主体性を引き出す
例:トップページ修正依頼が「夏のセール告知」。
作業中、別の商品ページが通常価格のままだと気づく。
そこで顧客に問い合わせる提案をリーダーに相談——。
この「気づいて動く」姿勢こそ、一気通貫経験の成果です。
工程を全部見ているからこそ、指示外の問題にも気づけます。
育成側のポイント
- 初回は必ずリーダーが全工程レビュー
- 案件は小さく(成功体験を積ませる)
- 技術面だけでなく報告・連絡・相談も指導
- 「顧客に感謝されるところまで」をゴールに
まとめ
- 若手を伸ばす最短ルートは小さな案件の一気通貫任せ
- 主体性・全体把握力・コミュニケーション力が同時に育つ
- 初期のサポートは必要だが、数か月後に大きなリターン
育成担当なら、明日から「小さな一気通貫案件」を作ってみてください。
若手なら、この方法を組織に提案してみましょう。
きっと成長スピードの違いを実感できるはずです。
普段は、https://smhctech.hatenablog.jp/ で技術マネジメントのブログを書いています。
もしよろしければ、ご覧ください。
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